« 帰宅 -スラム考- | トップページ | インド会社法解説その1 -会社設立にかかる外資規制- »

インド外資規制解説その13 -FIIによる参加証券(Participatory Notes)発行に対する規制-

外資規制解説はいったんお休みする予定だったのですが、応用編で解説しようと思っていた外国機関投資家(FII)及びそのサブアカウントによる参加証券(Participatory Notes)の発行について、近時その規制に関する動きがあったため、とりあえず速報ということで取り上げたいと思います。

--

以下、記載を一部修正しました。

--

2007年10月16日に、インド証券取引委員会(SEBI)は、外国機関投資家(FII)による参加証券(Participatory Notes)の発行規制を内容とする、海外投資家のデリバティブ(金融派生商品)の利用を制限する資金流入抑制政策を提案しました。

Participatory Notesとは、株式や株価指数その他の有価証券の価格変動に運用成果が連動する債券のことをいいます。株式や株価指数等の価格変動により、債券自体の価値がダイレクトに上下するため、実質的には株式を保有しているのと同様の効果があります。

既に述べてきたとおり、現在、FII以外の外国投資家がインドの証券取引所で直接株式その他の有価証券を売買することは禁止されています。
そのため、これまでは、FII及びそのサブアカウントがParticipatory NotesをFIIでない外国投資家に発行することにより、FIIでない外国投資家が事実上インド株式に直接投資することが行われていました。

つまり、インドの証券取引所で直接株式等の売買ができるFII及びそのサブアカウントが、インドの株式や株価指数等の価格変動に運用成果が直接に連動するParticipatory Notesを発行することにより、これを購入したFIIでない外国投資家が、FIIを通じて事実上インドの証券取引所で取引される株式等に投資できるという効果を生み出していたのです。
SEBIの発表によれば、2007年8月末現在、FII及びそのサブアカウントによるParticipatory Notesの発行残高は約900億米ドルとなっており、これはインドのFII全体の投資額の約51%となります(発行されたParticipatory Notesの価額は、FIIの保有金額としてカウントされるため、このような計算が可能となります。)。

ただ、このようなParticipatory Notesを利用したFII以外の外国投資家による直接投資は、 外資コントロールを目的としたFII制度の潜脱という面は否定できません。
また、FIIをいわば器としてのみ利用し、その後ろに多数の投資家がぶらさがっているという構造になる結果、市場参加者の透明性という観点からも問題があります(Participatory Notesの引受人の情報は市場からは見えません。)。

そのため、適切な外資のコントロールという観点から、SEBIは、以下を概要とする資金流入抑制政策を提案しました(あくまで提案段階であり、まだ導入が確定したわけではありません。)。

1.FII及びそのサブアカウントによるParticipatory Notesの新規発行は認めない。
2.FII及びそのサブアカウントが発行した現存のParticipatory Notesに係るポジションは、18ヶ月以内に解消されなければならない。解消の進捗状況は、SEBIにより監視される。
3.現在Participatory Notesでオフショア派生商品(ODI)を発行しているFIIは、サブアカウントを含む保護預かり残高の想定元本が40%未満の場合には(デリバティブによるものを除く)、その保護預かり残高の5%までのオフショア派生商品(ODI)の追加発行を認める。Participatory Notesの保護預かり残高の想定元本が40%(デリバティブによるものを除く)を超える場合には、40%を限度として書き換えのみ認める。

SEBIは、上記提案を可決するための会議の開催を2007年10月25日に予定しており、FIIに対して上記提案への意見提出を2007年10月20日までに行うことを要請しています。

--

この10月16日のSEBIの提案を受け、翌日10月17日のインドの株式市場は、一時サーキットブレイクシステム(市場全体の株式価格が急落した場合に、一時的に証券取引所全体の売買を停止する機能。)が発動するほど下落しました。

この事態に慌てたインド財務相は記者会見を行い、インドでは海外からの投資を今後も歓迎し、今回の規制はParticipatory Notesを禁止するというものではなく、あくまでも資金流入の適正化を図るものであるとの声明を出しました。
また、SEBIの議長も、取材に対し、今回の提案はParticipatory Notesを禁止するものではなく適正化の手段として使うものであると述べました(ただ、提案内容を見る限り、どうみてもParticipatory Notesを禁止する規制内容なので、SEBIの議長の発言の趣旨は不明です。)。

その結果、1時間の取引停止後、取引は再開され、買戻しが入りました。

関連記事(JETROのウェブサイトより)
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/in/topics/49318

--

今回の提案は、「インドの証券取引所で取引したければ、Participatory Notes経由ではなく、きちんとFIIとして登録を受けて直接行いなさい」という当局の意思を示したものと思われます。

とはいえ、現在、Participatory Notesを購入している外国投資家の多くは、FIIとなりうる資格を持った機関投資家です。にもかかわらず、あえてFIIとしての登録を受けずにParticipatory Notes経由でインド株式に投資しているのは、インドにおけるFIIの登録手続に手間と時間がかかるからに他なりません。

上記提案が、そのまま通るかどうかはまだ不透明ですが、もし提案が通る場合には、同時にSEBIによるFIIの登録を簡素化・迅速化するとの対応を取らなければ、これまでParticipatory Notes経由でインド株式に投資していた外国投資家の離散を招きかねず、インド株式市場に深刻な影響を与える可能性があります。
さらに、現時点では、提案が通った場合に、今後18ヶ月の間、すでに発行されているParticipatory Notesの取引ができるのかどうかも不明確なままとなっています。

というわけで、上記提案をめぐって、インド株式市場はしばらくの間は不安定な状態になる可能性があります。

--

なお、今回の内容を記載するにあたっては、新生インベストメント・マネジメント株式会社による新生・フラトンVPICファンドに関する2007年10月18日の「インドの投資規制の検討について」と題するリリースを参照させていただきました。

この件について今後何か動きがあれば、その都度レポートしたいと思います。

|

« 帰宅 -スラム考- | トップページ | インド会社法解説その1 -会社設立にかかる外資規制- »

インド外資規制解説」カテゴリの記事

コメント

なるほど。なぜ、FIIに登録しないのか疑問でしたが、解決されました!!

引き続きインドの制度・法律についtの解説を続けてください。参考にさせていただきます!!!

>piyori様

コメントありがとうございます。
日記よりも断然力を入れて書いている外資規制解説にコメントをいただけて嬉しいです。

これからも力と時間の及ぶ限り、インドの法制度を紹介していきたいと思いますので、宜しくお願いいたします。

投稿: piyori | 2007年10月19日 (金) 16時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 帰宅 -スラム考- | トップページ | インド会社法解説その1 -会社設立にかかる外資規制- »