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人使い

今の事務所には、いわゆる秘書(あるいは事務員)の制度がありません。
そのため、弁護士は基本的に事務処理を自分で行っており、また、たとえば電話がかかってきた場合、話中であればそれっきりとなり、コールバックのメモ等が残されることもありません。

その代わりというか、オフィスの隅には召使らしき人が複数控えており(見た目といい役割といい、「召使」(servant)という表現がぴったりなのです。)、ちょっとしたお願い事や自分でできない事務処理については、これらの人にお願いすることになります。

この召使、普段はロンドンの衛兵のごとく直立不動で立っていますが、いったん願い事を受けると速やかに事務を開始するという、なかなか頼もしい存在です。
とはいえ、「仕事をお願いするまで立って待っている」、「常に頭を下げられる」、「二人称として「Sir」と呼びかけられる」というあたりに、今でも少し違和感があります。

この違和感は、どうも「使用人を使役すること」自体に対する違和感から来ているような気がします(もちろん、日本でも秘書には仕事をお願いしますが、それはあくまで仕事上の役割としてお願いしているだけであり、もちろん秘書が立って待っているとか頭を下げるということはありません。)。

そこで、今回は、「人を使役すること」に対するインドでの感覚について、少し考察してみたいと思います。

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門番、扉開け係、床拭き係、洗濯係、食器洗い係
インドでは、とにかく人が何でもやります。

インドに来た当初は、ショップやレストラン等の入り口に扉開け係がずっと立っていて、客が出たり入ったりするごとにいちいち手で扉を開けている様子や、川辺の洗濯屋さん(お金を払うと手で洗濯してくれる)を見て、ちょっとした違和感があったのですが、今では少なくともインドにおいては合理的なシステムだと納得しています。

日本でもインドでも、「人間が楽をする」という目的は同じです。
ただ、その目的を達成するのに、機械の力を借りているか、他の人間の力を借りているかというだけです。

日本なら、ホテルの床を拭くにはモップマシーンを使い、扉開け係の代わりに自動ドアを設置し、洗濯係の代わりに全自動洗濯機を、食器洗い係の代わりに食洗器を使うでしょう。
インドでは、まだそのような機械は一般に普及していませんし、何より人間を使った方が圧倒的にコストが安いです。

一度でもインド(特に大都市)に来られたことがある方はイメージできると思いますが、この国にはとにかく人間が溢れています。
もちろん、私のいるムンバイも、街には人間がうじゃうじゃいます。

価値は需要と供給により決まります。
人の供給が圧倒的である国では、「人を使うこと」に対するコストが安くなるというのは、ある意味で当然です。
高いお金を出して、自動ドアを設置するくらいなら、月4000ルピーで人を雇って扉を開閉させた方が安くつくのです。

「わざわざ扉の開け閉めだけのために人を雇うなんて…」
「使役される側の人格を無視している」
と、何となく日本人が感じてしまうのは、現在の日本人が受けている教育を背景として生じる、「自分の楽のために人間を奉仕させる」ことに対する倫理的背徳感があるからにすぎません。
そして、それはカースト制度に馴染んだ一般のインド人には存在しない感覚です。

「なんでこの店は自動ドア設置しないんだよ、面倒だなあ」と日本人が思うのと、「扉の開け閉め係くらい雇えよ」とインド人が思うのは、本質的には同じなのです。

もちろん、インドにおいて、「使役する人間もされる人間も、そのこと自体を奇異なことだとは思わない」のは、カースト制度などの社会的、宗教的な理由が背景にあります。
ただ、こと経済的合理性という1点から見ても、インドにおいては、機械ではなく人を使役することが、少なくとも現時点では理にかなっているのでしょう。

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まとまりのない文章になってしまいましたが、要するに、他人を使用人として使役することに違和感を覚えていてはインドではうまくやって行けないかも、ということです。

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