« インド外資規制解説その13 -FIIによる参加証券(Participatory Notes)発行に対する規制- | トップページ | コックローチ・バトル »

インド会社法解説その1 -会社設立にかかる外資規制-

このシリーズでは、インドで会社を設立、運営、解散する場合の制度、規制について解説していきたいと思います。

なお、今回は外資規制解説と内容が被りますが、日本の会社がインドに会社を設立する前のチェック事項として必要な内容であるため、予めご了承ください。

--

インド外資規制解説その2で解説したとおり、外国人または外国会社がインド国内にビジネス拠点を持つ場合、Sole Proprietorship、Partnership、Company、Branch、Liaison Office、Project Officeの6つの形態があります。

このうち、Sole Proprietorshipは組織というよりは単なる個人事業主というべきものであること、Partnershipはビジネスの事業体として利用するのは難しいことは既に解説したとおりです。

また、組織体のうち、Branch、Liaison Office、Project Officeは、この順番に行いうる行為が制限されており、最も多くのことを行いうるBranchでも、行いうるのは
・本社の代表、代理
・物の輸出入
・専門的分野に係るコンサルティングサービス
・調査業務
・技術、金融のコラボレーションのプロモーション、ITソフトウェアサービスのプロモーション、技術サポートのプロモーション、外国の航空事業や船舶事業を営む会社のプロモーション
に限定されています。

したがって、外国資本がインド国内において自由な事業活動を行う場合、現地法人あるいは合弁会社として会社を設立することが必要となります。

もっとも、既に述べてきたとおり、インド外国為替管理法(FEMA)上、外国資本による投資が禁止あるいは外国資本による出資比率規制が設けられている事業分野があるため、会社を設立するにあたっては、まず当該会社により営もうとする事業が外資規制の適用を受ける事業かどうかを検討する必要があります。

事業分野にかかる外資規制の種類には、大きく分けて以下の5種類があります。
規制はいわゆるネガティブリスト方式であり、インドへの直接投資案件は、以下のネガティブリストに該当しなければ外資出資比率100%までがAutomatic Routeで自動認可されることになります。
(ネガティブリストの分類はJETROのものに従いました。)

1.国有企業に留保されている2業種(原子力、鉄道)
2.1951年産業開発及び規制法により、産業ライセンス取得が義務付けられている産業
3.2005年1月12日より以前に、既にインド企業と資本・技術提携を行っている外資系企業が新たに同一業種において企業を設立する場合
4.外国投資が禁止されている産業
5.個別に出資比率上限規制・ガイドラインがある産業

規制の詳細については、下記JETROのウェブサイトをご参照ください。以下では、概要を解説していきたいと思います。
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/in/invest_02/

1.国有企業に留保されている2業種(原子力、鉄道)

これらについては現在のところ外国資本による投資は一切認められていません。
したがって、出資比率を問わず、外国資本がこれらの事業を営むことを目的とした会社を設立することはできません。

2.1951年産業開発及び規制法により、産業ライセンス取得が義務付けられている産業

①強制ライセンス指定の特定業種、②小規模企業(Small Scale Industries。SSI。)への24%超の出資、及び③1991年インド政府新投資ポリシー(New Industrial Policy, 1991 of the Government India)で指定された規制地域への投資については、それぞれ事前に産業ライセンス(後述のインド外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board。FIPB)の事前承認とは別のもの。なお、2006年2月10日以降、産業ライセンスを要する事業については、別途FIPBの事前認可を取得することは不要となっています。)を取得する必要があります。

①から③の具体的内容については、上記JETROのウェブサイトの「規制業種・禁止業種」のⅡをご参照ください。

これらの産業ライセンス取得が義務付けられている産業について、外国資本がこれらの事業を営むことを目的とした会社を(②については一定の出資比率以上で)設立する場合、事前にインド政府商工省(Ministry of Commerce and Industry)内の産業政策促進局(Department of Industrial Policy & Promotion)から産業ライセンスを取得する必要があります。
通常、産業政策促進局への申請から4~6週間で、産業ライセンスが付与されます。

3.2005年1月12日より以前に、既にインド企業と資本・技術提携を行っている外資系企業が新たに同一業種において企業を設立する場合

2005年プレスノート1号及び3号(※)によれば、2005年1月12日現在、既にインド企業と合弁などの資本提携、技術提携契約などを結んでいる外国企業が、同一業種で新たな会社を設立する場合、または他社と資本・技術提携契約を締結する場合には、インド政府の事前承認を得ることが義務付けられています(2005年1月12日以降に設立された合弁会社や、締結された契約は対象となりません。)。

ただし、①投資家がベンチャーキャピタルファンドである場合、②既存の合弁相手のシェアが3%未満の場合、③既存の合弁もしくは提携による事業が休止状態の場合については承認は不要となります。

このインド政府による承認は、インド外国投資促進委員会による承認とは別に必要となります。
この規制の趣旨は、既存の合弁パートナー企業や提携先企業を保護する点にあります。

よって、上記要件に該当する外国企業については、新たに会社を設立する場合、インド政府から承認を得る必要があります。

(※)プレスノートとは、前述のインド政府商工省内の産業政策促進局が、必要に応じて発布する通達、ガイドラインです。法令ではありませんが、日本における通達、ガイドラインとほぼ同様の実務上の拘束力を有します。
ちなみに、以前紹介した日本語解説が掲載されている下記ウェブサイトは、この産業政策促進局のサイトです。
http://dipp.nic.in/

4.外国投資が禁止されている産業

①賭博
②宝くじ
③小売業(単一ブランド商品の小売を除く。単一ブランド商品の小売については、51%を上限とした外国資本出資が認められている。)
④原子力

については、2006年プレスノート4号で明示的に外国資本による投資が禁止されています。

また、明示的ではないものの、
・チットファンド(一定人数の個人がお金を出し合い、抽選等により特定の個人に分配するファンド。宝くじに類似する。)やニディカンパニー(相互互助金融会社)
・2005年プレスノート2号で認められた不動産開発・建設業以外の、不動産関連事業(移転可能開発権利の売買)
・農業(ガイドラインに従った草花、園芸、種子栽培、畜産、野菜栽培を除く)および農園業(紅茶農園を除く)
についても、外国資本による投資は禁止されています。

したがって、外国資本がこれらの事業を営む会社を設立することは、出資比率にかかわらず認められません。

5.個別に出資比率上限規制・ガイドラインがある産業

具体的内容については、上記JETROのウェブサイトの「規制業種・禁止業種」のVをご参照ください。

Automatic Routeによる投資上限を超える投資については、インド外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board。FIPB)の承認を得る必要があります。
FIPBによる承認上限が100%以下に抑えられている事業分野もあり、このような事業分野については、外国資本は最大でも74%、49%、26%の出資比率(数字は事業分野によって異なる。)しか持つことができません。

なお、上記74%、49%、26%という数字は、インドにおける株主総会特別決議の要件が「株主の4分の3以上の賛成」と定められていること、及び株主総会通常決議の要件が、「株主の過半数の賛成」と定められていることと関連します。
つまり、74%上限の場合、通常決議事項は外国資本の意思のみで決議できますが、特別決議は不可能ということです。また、49%上限及び26%上限の場合、特別決議は阻止できますが、通常決議は外国資本の意思のみによっては阻止できません(もちろん、後者よりも前者の方が可能性は高くなります。)。

--

以上をまとめると、インドで現地法人を設立するにあたっては、当該会社が営む事業について、

1 国有企業に留保されている2業種(原子力、鉄道)に該当しないか
2 産業ライセンスを必要としないか
3 2005年プレスノート1号及び3号による政府承認を必要としないか
4 そもそも外資による投資が禁止されている事業に該当しないか
5 外国資本による投資上限、及びFIPBの承認が必要か

の各事項を設立前に確認しておく必要があるということになります。

自分で書いていて思いましたが、これを全てチェックするのはものすごく面倒ですね…

特に、2の産業ライセンスの要否について、2007年10月現在、小規模企業(Small Scale Industries。SSI。) の営む事業として指定されている事業は300種類を超えているため(下記ウェブサイト参照)、事前チェックは果てしなく面倒になりそうです。
http://www.smallindustryindia.com/publications/reserveditems/Reserved_item_list_114_items.pdf

--

次回以降は、具体的な会社設立手続を解説していきたいと思います。

|

« インド外資規制解説その13 -FIIによる参加証券(Participatory Notes)発行に対する規制- | トップページ | コックローチ・バトル »

インド会社法解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« インド外資規制解説その13 -FIIによる参加証券(Participatory Notes)発行に対する規制- | トップページ | コックローチ・バトル »