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インド会社法解説その2 -Public CompanyとPrivate Company-

(2008年2月に一部修正・加筆)

インドにおいて会社関係を規律する法律は、インド会社法(Companies Act, 1956)であり、会社設立も同法に従って行われます。
インド会社法は、会社の設立、運営、解散のすべてを規律する法律であり、日本でいえば会社法に相当します。

さて、会社設立に際しては、まずは設立する会社をPublic CompanyとするかPrivate Companyとするかを決める必要があります。

Public CompanyとPrivate Companyとの別は、日本の会社法上の公開会社と非公開会社(正確に言えば、「公開会社」ではない会社)との別に準じます。すなわち、前者は株式譲渡が自由とされている会社、校舎は株式譲渡が制限されている(譲渡に会社の承認が必要とされる)会社です。

インド会社法上、Private Companyは、株式の譲渡が制限されているなどの制約がある反面、増資、株主総会の召集、取締役の選定等に関するコンプライアンス規定が免除されており、より柔軟に組織を設立、運営することが可能となっています。
一方、Public Companyは、株式譲渡が自由とされていることから、Private Companyに比べて厳格なコンプライアンス規定が適用されます。Public Companyの唯一にして最大のメリットは、証券取引所に上場できることにあります。
このあたりは日本の会社法上の公開会社、非公開会社のメリット、デメリットとほとんど同じです。

Private Companyとして設立した会社であっても、会社登記局(Registrar of Companies)の承認を得て定款を変更し、Public Companyに組織変更することが可能です。
日本の会社法上は、株式の譲渡制限を外すことは組織変更とは解されませんが、インド会社法では一種の組織変更とみなされるようです。

したがって、通常はPrivate Companyとして会社を設立し、ある程度業績が上がって、いよいよ上場という段階になってPublic Companyに組織変更するというのが一般的な設立プロセスです。
このあたりも日本とほとんど同じですね。

さて、インド会社法上、会社を設立する場合、基本定款(Memorandum of Association)及び付随定款(Articles of Association)を作成する必要があります(このあたりは次回以降に詳しく解説します。)。
会社をPrivate Companyとして設立するためには、付属定款に以下の事項を盛り込む必要があります。

・株式の譲渡につき、会社(取締役会または取締役)の承認を要件とする。
・株主数の上限を50人とする。
・株式及び社債の公募を禁止する。
・会社が株主、取締役及びその親族以外の者から借り入れを受けることを禁止する。

非公開会社の最低資本金は10万ルピー(約30万円)とされており、その会社名には「Private Limited」という文言を入れる必要があります。
一方、公開会社の最低資本金は50万ルピー(約150万円)とされており、その会社名には「Limited」という文言を入れる必要があります。
ちなみに、アメリカや日本だと、「有限責任の会社」を表す英語として、”Inc.”や“Co., Ltd”等の文言も使用されますが、インド会社法では、法律上「Limited」という文言に統一されているのが興味深いです。

また、Private Companyの株主及び取締役の人数は、それぞれ最低2人とされています。
ここの重要なポイントは、「株主」の数も2人とされている点です。
したがって、Private Companyを設立する場合、一人株主の会社ということはありえず、また、「(形式的に)100%子会社として設立する」ということも不可能です。また、株主は会社の存続中常に2人以上である必要があるため、2人で設立して、設立直後に片方が株式をもう片方に譲渡するという方法もとることができません。

ここで登場するのが、「Nominal shareholder」(名目的株主)というインド会社法上の概念です。
簡単に言えば、名目的株主とは、その保有する株式から自ら利益を享受せず、第三者の利益のために株式を保有する株主をいいます。誰が誰のために名目的株主となっているかは、株主側から会社に通知する必要があります。
たとえば、株主A、Bがいるとして、BがAのために名目的株主となっている場合、Bはその保有する株式について配当を受けることはできず、AがBに代わって配当を受領することとされています(ただし、いわゆる共益権に属する株主総会における議決権は、名目的株主(B)の元に留保されます。)。

実務上、この名目的株主を利用して事実上の100%子会社を設立する方法として、ある会社が99%の持分を保有し、残り1%をその会社の創業者、株主、子会社等が、当該会社のための名目的株主として保有するということが行われています。

一方、Public Companyの株主の最低人数は7人、取締役の人数は最低3人とされています。
Public Companyについては、そもそも上場が予定されている会社なので、株主の数の下限はあまり問題にはなりません。

注意する必要があるのは、インド会社法上、上記Public CompanyとPrivate Companyに加えて、「Subsidiary of Public Company」(公開会社の子会社)という概念がある点です。
「公開会社の子会社」には、Private Companyとして設立された会社であっても、Public Companyとみなされます。そのため、Private Companyとして設立したにもかかわらず、会社側の運営の負担が大きくなってしまいます。

さらに問題なのは、インド会社法第4条第7項(外資系企業からの悪名が高い有名な条文です。)は、外国会社の子会社として設立される会社は、その持分がすべて単一または複数の外国の会社により保有されていなければ、上記「公開会社の子会社」とみなすと定めています。
したがって、外国会社がインド企業と合弁会社を設立する場合で、外国会社側が過半数の持分を保有する場合、当該合弁会社は「公開会社の子会社」として、Public Companyに該当するとみなされ、Public Companyに適用される厳格なコンプライアンス規定の適用を受けてしまうということになります。

これは結構重要で、しかも多くの日本企業の現地法人が、実際はPublic Company扱いなのにPrivate Companyだと勘違いしているところなので、以下詳述します。かなりややこしいところなので、ご注意ください。

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インド会社法特有の概念として、「Private Companyでない会社の子会社であるPrivate Company(a private company which is a subsidiary of a company which is not a private company)」があり、これに該当する場合、当該会社が単体でPrivate Companyの要件を満たしていたとしても、Public Companyとして扱われることとなります。(インド会社法第3条第1項(iv)(c))。

この場合において、親会社となる会社がインド国外の会社(日本企業その他の外国企業)である場合、当該親会社がインドで設立されたと仮定した場合にPublic Companyに該当する場合には、当該親会社は「Private Companyでない会社」に該当することになるとされます(インド会社法第4条第7項)。

日本の会社法上は、いわゆるPrivate Company(日本法上のPrivate Company)といえども、わざわざ定款の規定で株主数を制限したり、株式等の公募発行を禁止したりはしていないのが通常であり、また、日本の会社法上最低資本金規制は撤廃されているものの、インドへの進出を企図する程度の規模を有する会社は50万ルピー(約150万円)以上の資本金を有しているのが通常です。そのため、ほとんど全ての日本企業はインド会社法上「Private Companyでない会社」に該当すると考えられます。

したがって、日本企業がインドに設立した現地法人は、単体でPrivate Companyの要件をみたしていたとしても、全て「Private Companyでない会社の子会社であるPrivate Company」に該当し、したがってPublic Companyとして扱われることとなるのが原則となります。
ただし、上記扱いには例外があり、「Private Companyでない会社の子会社であるPrivate Company」の株式が、全て単独または複数のインド国外の株主により保有されていれば、当該会社はPrivate Companyとして扱われることとなります(なお、「Private Companyでない会社の子会社」が単体でPublic Companyの要件をみたしている場合、当該会社はPublic Companyとなることは勿論です。)。

そのため、日本企業が合弁会社ではなく単独で現地法人を設立する場合 、当該現地法人がPrivate Companyの要件を満たしていれば、当該現地法人はPrivate Companyとして扱われます。また、複数の外国株主の合計が100%となる場合でも上記例外規定は適用されるため、例えば日本企業(親会社)本体による株式保有割合を8割とし、その100%子会社(インド以外の国に設立された子会社)による株式保有割合を2割とすることによっても、上記例外規定の適用を受けることができます。

一方、日本企業がインド内国会社と合弁会社を設立する場合、上記例外規定の適用を受けることはできません。
もっとも、インド会社法上、「子会社(subsidiary)」は、原則として「会社の過半数の議決権を、取締役会構成をコントロールできる株主に保有されている会社」と定義されているため(インド会社法第4条第1項)、合弁会社において、もしインド内国会社側の出資割合が過半数を超えている場合、そもそも当該会社は日本企業の「子会社」には該当しないことになります。

したがって、例えば日本企業が4割出資、インド内国会社が6割を出資するような合弁会社の場合、当該インド内国会社がPublic Companyでない限り、当該会社は「Private Companyでない会社の子会社」には該当しないことになります。

ところで、上述のとおり、Private Companyの株主は2人以上でなければならないとされているため、外国企業が「単一」の親会社になることは不可能とも思えます。
しかし、ここでいう「単一」とは、上述の名目的株主による実質的100%保有を含む概念であるため、名目的株主を経由した実質的な100%株主であれば、上記第4条の7の適用は免れることになります。

なお、複数の外国会社を合計して100%でも良いので、名目的株主を利用せず、例えば外国親会社が8割、その100%外国子会社が2割を保有することによっても、同条の適用を免れることが可能です。

要するに上記規定が実質的に問題となるのは、外国企業とインド企業の合弁会社を設立するケースで、外国資本が持分の過半数を保有する場合にほぼ限られます。

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公開会社と非公開会社に適用される規制の相違については、あまりにも数が多いので割愛します。ご興味のある方は、「インドの投資・会計・税務ガイドブック」(あずさ監査法人・KPMG編)の192、193頁をご参照ください。同書は、インドの投資規制を概観したおそらく現時点で唯一の日本語の本であり、非常に参考になります。

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次回は会社登記局への申請手続を解説したいと思います。

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