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2007年11月

コックローチ・バトル3 -そして伝説へ-

時は戦国の世。
印度国もまた内乱の中にあった。

印度国における碁基武利との攻防は一進一退を繰り返していた。
碁基武利軍は正に神出鬼没であり、その行軍を捕捉することがまず困難である。
また、捕捉したとしても、現状では有効な攻撃手段がなく、手作りの叩き棒で追い払うのが精一杯である。

つい先日、碁基武利軍から備蓄食料を食い荒らすというゲリラ攻撃を受け、これにより手痛い打撃を受けたにもかかわらず、当主は反撃に出ることを躊躇していた。

--

「上様、今日は折り入ってお話がございます」
「おう、じいか。なんじゃ、改まって」
「上様、巷では上様のことを何と呼んでいるかご存じですか?」
「…何が言いたい」
「腰抜け大将と呼ばれておりまするぞ」
「ふふ…まあ良い、好きに言わせておけ」
「なんと!!そのようなお姿、身罷られた大殿がお耳にしたらどれほど嘆かれることか」
「口やかましく言うな。勝ち目のない戦はできぬのじゃ」
「本当に腰抜けになってしまわれたのですな…」
「何だと、いくらじいとは言え、言葉に気を付けぬと長生きはできぬぞ」
「いいや黙りませぬ。老い先短いそれがしの命など惜しくも何ともありませぬわい」
「むう、分かった、分かった。わしの負けじゃ」

碁基武利に一泡吹かせてやりたいのは、誰よりも彼自身だったのだ。

「とはいえ、無策ではのう」
「ご安心めされい。このじい、先の戦より何もせずに居眠りしていたわけではございませぬ」
「む?」
「密かに南蛮商人に申しつけ、このようなものを買い付けておりまする」

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「なんじゃ、これは?」
「これは、碁基死穢屠(ごきじえと)と呼ばれる武器で、碁基武利の殲滅に、ことのほか力を発揮する南蛮渡来の武具にございまする」
「おお、そのようなものが。さすがじいじゃ。じゃが、はて…。これはどのように使うのか」
「至極簡単にございます。碁基死穢屠の上部を押せば、碁基武利にとって猛毒の霧が発生しまする。この霧を浴びた碁基武利は、半刻と生きておられませぬ」
「ぬう、恐ろしい武器じゃな。そのような危険な霧、我らには害はないのか」
「南蛮商人に尋ねたところ、多少吸ったり体についたりするくらいでは無害とのことです」
「でかしたぞ、じい。これがあれば百人力、いや千人力じゃ。碁基武利などもはや恐るるに足りず!」
「おお、上様。じいはそのような上様が見とうございました」
「誰ぞある!具足を持てい」
 
戦意を取り戻した後の行動は早かった。
戦支度は早々に整い、碁基死穢屠は7段の構えで各部隊に備えられていた。
しばらくの間は碁基武利軍は見えなかったが、当主が保存用の水の箱を持ち上げた際、斥候から進軍の報告が入った。

「碁基武利の若武者が見えたぞ。この陣立ての中に単軍で突っ込んでくるなど飛んで火に入る夏の虫よ」
「迎撃なさいますか」
「言うまでもない。総員に碁基死穢屠を構えさせよ」
「はっ」
「まだ、まだじゃ。十分に引き付けよ」
「おお、その沈着な指揮、まるで大殿の姿を見ているようじゃ。このじい、この年まで生きてきた甲斐がありましたわい」
「撃てーい!」

碁基死穢屠の三連斉射を受けた碁基武利軍は、それでもしばらくは高速移動を維持したが、やがて動かなくなった。

「まったく南蛮の技術はすごいものじゃ」
「まだ碁基死穢屠は十分な量がございます」
「うむ、この勢いで碁基武利どもを殲滅してくれようぞ」
「おお、上様、どこまでもお供いたしまする」

--

後に「戦国の名勝負」にも謳われた、印度国における覇権争いを決定づけた一戦の記録である。

この緒戦がきっかけとなり、この後、碁基武利軍は勢いを失う。
碁基死穢屠の力で印度国が再統一されるまで、それほど長い時間はかからなかった。
その後、印度国は戦国屈指の強国として名を馳せたのである。

印度兵は、その強さと果敢さを称えられ、後世において「印度日本一の兵、古よりの物語にもこれなき由」と謳われた。

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インド会社法解説その9 -会社の機関 取締役、取締役会①-

前回から少し間が空いてしまいました。

最近、この解説を書くにあたって読まなければならない文献、条文の量が増えてきており、1つの記事を書くのに10時間近く英語の文献に目を通さなければならないという状況になっています。
そのため、今後も更新の頻度は落ちる可能性がありますが、できるだけ正確な解説を行うために必要な時間としてご理解をいただければと思います。

インドの法令は発展途上国としてはよく整備されていますが、規定が不十分、あるいは一読しても意味が理解できないという条文も多くあり(基本的に判例法の国であるということもあるのでしょうが)、理解するにはかなりの苦労が伴います。
日本だって旧商法を外国人が読んで意味が理解できたかというと怪しいので仕方がないのでしょうが、研究が進むにつれてわからないことが雪だるま式に増えていく現状に、いささか閉口気味です。

愚痴ですね。

さて、前置きはここまで。

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インドの会社の取締役は、株主総会の普通決議により選任されます(インド会社法255条)。

(以下、例によって条文リンクを貼り付けておきますので、各条文の原文をご参照ください。)
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

同条では、「取締役の選任は株主総会決議による」とだけ規定されており、「普通決議」とは規定されていないのですが、日本の会社法と同様、特別決議事項でない事項についてはすべて普通決議事項であると解されるため、取締役の選任も普通決議事項となるわけです(なお、特別決議事項については「インド会社法解説その7」をご参照ください。)。
ちなみに、解任の場合は「普通決議」(ordinary resolution)と明示されていたりします(インド会社法284条)。

※こういった条文間の文言の不整合から見られるとおり、どうもインドでは、日本の内閣法制局が追い求めるような「法令の文言に対する厳格性(条文文言の一義性)」がないようです。判例法の国なので、成文法の文言の厳格さにはこだわらないということなんでしょうかね。

同条1項は少し変わった規定で、Public Company および「Subsidiary of Private Company」(この概念については、「インド会社法解説その2」をご参照ください)については、定款において「定時株主総会ごとにすべての取締役が退任する」との規定がない場合には、取締役総員の3分の2を下らない数の取締役は、交代あるいは再任されなければならないとされています。

255条は1項と2項があるのですが、原文が少し読みにくいので、インド人弁護士に意味を確認したところ、266条と併せて以下のような原則を示すものであるとのことでした。

1.Public Company および「Subsidiary of Private Company」について、
①定款において「定時株主総会ごとにすべての取締役が退任する」との規定がある場合、定時株主総会ごとに取締役は退任しなければならない(上場会社は基本的にこの規定を置いているようです)。
②一方、定款にそのような規定を設けていない場合、
A 定員の3分の2以上の数の取締役は、「ローテーションで退任する取締役」のカテゴリーに入る。
B 同カテゴリーに入った取締役のうち半分(=定員の3分の1)は、定時株主総会ごと(=1年ごと)に退任する。退任の順序は、在任期間が長い者からとなる。在任期間が同じ取締役が複数いる場合、くじ引きで決める(だって条文にそう書いてあるんだもの)。
C A以外カテゴリーの定員の3分の1未満の取締役については、法令および定款の規定にしたがって選任可能である。任期は定款の規定に従えばよく、定時総会ごとに退任する必要はない(Cについては、創業者一族がこのカテゴリーの取締役につくことが多いようです。)。

2.Private Companyについて
上記Cと同じく、法令および定款の規定にしたがって選任可能である(任期は定款の規定に従えばよく、定時総会ごとに退任する必要はない。)

上記の通常の選任による場合のほか、会社設立時の当初株式の引受人のうち、個人である者は、株主総会で取締役が適式に選任されるまでは、取締役の地位にあるものとみなされます(当初取締役。インド会社法254条)。

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解任については、上で少し述べましたが、取締役は、株主総会での普通決議により、原則としていつでも解任することが可能です(インド会社法284条)。

Private Companyについては、上記のPublic Companyと同じ3分の2のローテーション解任制度を自発的に設けた場合、取締役の解任ができなくなることもあるようです。

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インド会社法上、下記の非適格要件を満たさない限り、取締役には誰でもなることができます。国籍を問わないので日本人でも取締役に就任可能ですし、インドの居住者である必要もありません。
ただし、一定の業種については、いわゆる業法規制により、インドの国籍保有者でなければManaging Director(日本法上の代表取締役)になれない等の制約があります。

取締役の非適確要件については、インド会社法274条に規定されており、以下のとおり日本の会社法とあまり変わらない内容となっています。

・裁判所により心身薄弱者の認定を受けた者
・免責前の破産者
・破産申立者
・有罪判決を受け、6ヶ月以上拘留されて、かつ判決から5年が経過していない者
・当初取締役につき、資本金の払い込みを懈怠した場合
・インド会社法203条の規定により、裁判所から不適格者との認定を受けた者(過去に会社設立、運営、清算に関して有罪判決を受けた者等が該当)

また、取締役は同時に15社を超える会社の取締役を兼ねてはならないとされているため(インド会社法275条)、すでに15社の取締役に就任している場合、さらに別の会社の取締役となることはできません。

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次回は取締役会についての解説です。

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最近のこと

「最近あまりひどい目にあっていないようで面白くない」というお便りをいただきました。

呪われろ

いや、少なくとも1日に1回くらいは、日本人の通常の感覚からして耐えられない目、ひどい目にあってますよ。
いちいち書いていないというだけで。

嘘だと思ったら、ぜひムンバイで生活してみてください。
いろいろ思い知ることができると思います。

とはいえ、インドに着いた当初よりも、辛いとか嫌だと感じる基準はだいぶ下がりました。
自己防衛本能が働いたというか、この基準を敏感なまま保っていると、発狂しかねないということでしょう。

「なんで客を乗せている途中に公衆トイレに寄るの?お前のトイレタイムまで俺は料金を請求されるのか?」とか、
「あとお前絶対手を洗ってないから俺に触るな(インド人の男は、相手が男女を問わずよく体に触ってきます)」とか。

気にしない気にしない。

以下雑文。

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・牛乳
インドでは、生乳の牛乳(日本で普通に売っている牛乳)が手に入りません。
牛乳好きの人間としては、これは由々しき事態です。

なぜ生乳の牛乳がないのかについてはよくわかりませんが、
①牛は神聖な生き物なので、その乳を飲むなんてとんでもない
②搾乳手順や殺菌手順、新鮮さを保ったまま流通させる方法(要するに冷蔵流通)が確立していないので、生乳を流通させられない
かのどっちかだと思います。

流通過程での冷凍保管が必要な冷凍食品とかは普通に見かけるので、①の理由の方が強いのかな、と勝手に思っています。
まあ、牛乳の本質は動物の母乳なので、神聖な動物の乳を飲むという行為に抵抗があるというのはわからなくもありません。

生乳の代わりに、インドで流通しているのが、ネスレの保存乳です。
この保存乳、開封までは常温保存可能で、かつ賞味期限は製造から120日以内という恐ろしい仕様です。
たぶん恐ろしい量の防腐剤が入っているのでしょう(まあ、ネスレの商品なので健康に害があるということはないでしょうが。)。

ちなみに、あまり美味しくありません。変な粉ミルクを飲まされている感じです。
この保存乳、はたして本当に牛乳からできているのか、いったい何から作られていてどういう内容になっているのか、多少不安を抱きつつ毎日飲んでいます。

・インターネット
以前、自宅にブロードバンドが開通したと書きましたが、どうやらそれは間違いだったことがわかってきました。

先日、ちょっとした理由があって、パソコンが通信をどのように認識しているかを調べたのですが、どうやらブロードバンドではなく、携帯電話と同じパケット通信で情報をやりとりしているということがわかりました。
なんで有線通信でパケット通信やねん。

まあパケット通信とはいえ、1パケットあたりの単位がそれなりに大きく、かつ1秒間に20パケット前後のやりとりはあるので(ただし極めて不安定)、電話線とかと比べると早いです。
が、それも多少はという程度で、ブロードバンドとしては完全に落第点です。
動画は全く見られませんし、iTunesでの音楽のダウンロードには異常に時間がかかります。
CD1枚分ダウンロードするのに1時間近くかかるのは、ものすごく不便です。

インドで通信するようになってつくづく思ったのが、「今の日本(あるいは先進国)のインターネットの仕組みは、ユーザーがブロードバンドでアクセスするということを前提に作成されている」ということです。
日本のちょっとしたサイトにアクセスしようとしても、トップページがフラッシュ仕様になっていたりして、表示されるまでにものすごく時間がかかります。
日本の光ファイバーやADSLであれば、ものの数秒で表示されるのでしょうが、パケットのやりとりで表示しようとすると1分近くかかることも珍しくありません。

まあ、これは日本で高速インターネット網が普及しているということの裏返しでもあるので、基本的には良いことだと思うのですが、反面、高速インターネットが行きわたっていない国からの日本のウェブサイトへのアクセスを妨げているような気がしてなりません。
少なくとも、外国向けの情報も発信しようとしているサイトでは、トップページに無意味なムービーを入れたりするのはやめた方がよいと思います。

・言葉の定義
インドで生活していると、インド人と日本人との間の言葉に対する定義の違いをつくづく感じます。

たとえば、上で述べたブロードバンド。
家を借りるときの条件として、「ブロードバンドインターネットにアクセスできること」は最上位優先条件の1つであり、不動産業者にも何度も念押ししていました。
ところが、蓋を開けてみればパケット通信です。
確かにインドの一般的な基準からすれば、十分に高速通信なのでしょうが、日本のADSLの感覚で「ブロードバンド」という言葉を使っていた身としては、期待はずれもいいところです。

ほかにも、「すぐ着く(すぐ行く)」、「近い」、「早い」、「きれい」などなど、こちらがその言葉に与えている定義とインド人の定義とが全く違うとしか思えないことがよくあります。
インド人から正確な情報を引き出したいときは、抽象的な言葉はできるだけ使わない方がいいです。たとえば、到着までの時間を聞く場合、「あと○分?」という感じで具体的に聞いたほうがよいです(まあ、その場合でも「10分」と答えられてしまうんですが)。

なんで今更こんなことをいうかというと、インド人が「辛くない」と勧めてくれたカレーを食べてひどい目にあったらからなんですが。

・パソコン
ノートPCの調子がかなり悪いです。
ウインドウを5つ以上開いて作業をしていると、突然フリーズする確率が日に日に高くなってきました。
突然フリーズされて作業データがすべて失われたことも数知れず。

買ってからそろそろ丸3年なので、全体にガタが来ているのでしょうが、今故障されたら本当にたまりません。
休み時間を多めにとりつつ、何とかだましだまし使おうと思います。

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(追記)

ご指摘いただいたとおり、牛乳はロングライフミルクなので、上に書いている保存についての話は的外れなのですが、当時感じていたことということでこのまま残しておきます。
でも、やっぱりこれまずい…

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アウランガバード旅行記 -アジャンタ編-

バスのピックアップ時間である午前8時半の20分前に目を覚ましました。
前日は目覚ましも何も使わずにそのまま寝てしまったので(まさか翌朝まで寝るとは思わなかった)、起きて時計をみたときにはかなり焦りました。

5分でシャワーを浴び、出発準備完了。
一泊二日の旅ということで、ほとんど荷物を持ってきていなかったのが幸いしました。

珍しくバスは8時半ぴったりにホテルに来ました。
どうやら、アウランガバード各所のホテルを回って観光客をピックアップしているようで、その後も7、8個のホテルを回り、アジャンタに向けて出発したのは9時すぎでした。

道路の周りには田舎の風景が広がっています。
牛や馬、ヤギなどのおなじみの動物をたくさん見かけました。

バスに揺られること2時間半、アジャンタ石窟寺院群の入り口に到着です。
アジャンタに行くには、入り口からシャトルバスに乗り換える必要があります。

アジャンタ石窟寺院群の全貌です。
美しい渓谷を抜けると、突然多数の石窟寺院が広がるという感じで、なかなかの壮観です。

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Img_2901                                                                                                                     

              

アジャンタには、全部で28の石窟寺院がありますが、有名なのは第1窟、第17窟、第26窟といったあたりです。

ガイドに連れられて、まずは第1窟に入ります。

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えーと、真っ暗です

光が壁画に悪影響を与えるとの理由で、洞窟の中の光は最小限に抑えられています。
最初はよく見えなかったのですが、しばらくすると目が慣れてきました。

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うーん…

暗い上に絵の痛みが激しく、何が書かれているのかがよくわかりません(写真だときれいに見えますが、肉眼ではこれほど鮮やかには見えません)。
剥落部分が多いのはしょうがないとしても、色もくすんでおり、純粋に芸術作品としてみた場合、あまり高い点はつけられません。
ただ、1500年前の絵ということを考えるとやっぱりすごいと思います。
なんといっても、日本中が大騒ぎした高松塚古墳よりもまだ古い時代の壁画です。

それにしても、1500年前にも人間は仏陀の絵を描いていたのかと思うと、宗教と芸術というのはつくづく切っても切れない関係にあるものだなあと。

そのまま石窟を回ります。
どれも同じように見えつつもそれぞれ個性があり、なかなか興味深いです。

Img_2887Img_2885                                                                      

第17窟は、最もきれいに壁画が保存されていて、絵の内容も理解しやすいものが多く、個人的には一番好きです。

Img_2903Img_2904                                                                                  

第26窟の涅槃像です。

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(おまけ)アジャンタの前にいた猿。野生のリスもたくさんいました。

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一通り石窟寺院群を見終わった後、近くのレストランで遅めの昼ごはんを食べました。
出てきたのは例によってカレーですが、これがやたらと辛く、半分も食べられませんでした。
スパイスの風味には何とか慣れてきたのですが、インド式の味覚が壊れているとしか思えない唐辛子の量には、今後も慣れる気がしません。
そういえば、同じ唐辛子好きの韓国の人はインド料理にあまり抵抗がないそうです。

同じ道のりでホテルに戻ります。
アジャンタではかなり歩いたので少し疲れました。
ふと周囲を見回すと、乗客全員が爆睡していました。

ホテルで少し休んだ後、空港に向かいます。
驚いたことに、帰りは飛行機が定刻どおり飛びました。
定時どおり出発することにこれほど感動できる体質になってしまうとは。日本に帰ったら毎日が感謝感激の日々になりそうです。

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さて、2日でエローラ、アジャンタ両石窟寺院を回ったわけですが、個人的にはアジャンタの壁画よりもエローラの彫刻の方が印象に残りました。
気宇壮大としか表現できないカイラサナータ寺院は一見の価値はあると思います。
また、アジャンタの壁画も決して劣るものではなく、人によってはこちらの方が好きな人もいるのではないかと思われます。

おまけとして、ビビ・カ・マクバラも、タージ・マハルを見たことがない人には十分に楽しめる建築でした。

いずれにしても、アウランガバードはインドの中でも訪れて損はない街だと思います。
高級リゾートホテルもありますし、宿泊面でも不安はありません。
インドに訪れる機会があれば、是非立ち寄ってみてください。

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インド会社法解説その8 -会社の機関 株主総会③-

(2008年2月、5月に一部修正加筆)

名目的株主に関して、会社法解説その2では、

「株主A、Bがいるとして、BがCのために名目的株主となっている場合、Bはその保有する株式について自らの意思で議決権を行使したり、配当益等の利益を受領したりすることはできず、Cのためにそれらの全てを行うことになります。」

と書きましたが、当事者のほか、議決権についての記載に誤りがありましたので、以下のとおり訂正させていただきます(本文は既に訂正済みです)。

「たとえば、株主A、Bがいるとして、BがAのために名目的株主となっている場合、Bはその保有する株式について配当を受けることはできず、AがBに代わって配当を受領することとされています(ただし、いわゆる共益権に属する株主総会における議決権は、名目的株主(B)の元に留保されます)。」

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前々回に株主総会の定足数について解説したのですが、その関係で少し補足説明をしたいと思います。

会社法解説その2で述べたとおり、インド会社法では、株主の最低人数が定められており、その数はPublic Companyにつき7人、Private Companyにつき2人とされています。
この規制ゆえに、たとえば外国企業が実質100%子会社を設立したい場合、「Nominal shareholder」(名目的株主)を利用することになります。

名目的株主については、インド会社法187C条が定めており、それによれば、名目的株主は、そのbeneficial interestを他の株主に受けさせることができるとされています。

原文(下線部は筆者による)
187C条1項
Notwithstanding anything contained in section 150, section 153B or section 187B, a person, whose name is entered, at the commencement of the Companies (Amendment) Act, 1974, or at any time thereafter, in the register of members of a company as the holder of a share in that company but who does not hold the beneficial interest in such share, shall, within such time and in such form as may be prescribed, make a declaration to the company specifying the name and other particulars of the person who holds the beneficial interest in such share.

上記187C条1項にいうbeneficial interestには、株主総会における議決権は含まれません。
日本法的にいうと、beneficial interestは、専ら配当を受ける権利等の自益権のことをいい、会社の経営に参与する権利(共益権)はここには含まれません。

すなわち、名目的株主は、配当を受ける権利を第三者(実質的株主)に与えることはできますが、株主総会における議決権を与えることはできません。
したがって、名目的株主といえども、株主総会における議決権は有していることになります。そのため、名目的株主は、株主総会における定足数を構成する株主としてカウントされます。

以前述べたとおり、株主総会の定足数は、Public Companyにおいては5人、Private Companyにおいては2人(ただし、定款でこれより多い人数を定めている場合、それに従う(インド会社法174条))。ですが、名目的株主も数のカウントに含まれるということです(議決権を保有しているので当然といえば当然ですが)。

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株主総会には、proxy(委任状)により代理人が出席することも可能とされています(インド会社法176条)。
ただし、代理人には株主総会における発言権がなく、ただ議決権を行使できるのみです。

株主がproxyを与えられる者について、法令上は特に制限はありません。ただ、上場会社では、定款の規定により、代理人は株主に限っていることが多いようです。
なお、名目的株主が実質的株主に対してproxyを出すということも認められています。

また、株主が法人の場合、当該株主は取締役会決議により、株主総会に出席する代表者(representative)を選任することができます(187条1項(a))。
この「代表者(representative)」は、上記「代理人(proxy)」とは別の概念であり、上述のとおり、後者は株主総会における発言権がないのに対して、前者は株主総会における発言権を有します。

したがって、株主総会で質問等を行う予定である場合、株主が法人である場合には代表者を選任し、また株主が個人である場合、自ら株主総会に出席する必要があるということになります。

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株主総会決議における議決のとり方は、挙手により行われるのが原則です(インド会社法第177条)。

決議要件は、前回述べたとおり、通常決議につき出席株主の過半数の賛成、特別決議につき出席株主の4分の3以上の賛成ですが、挙手による決議が行われる場合、保有議決権数ではなく挙手人数により決議の成否が決まります(つまり、1議決権1票ではなく、1人1票となります)。
この点、どのような場合でも保有議決権数を基準として多数決を行う日本の会社法と大きく異なるため、十分な注意が必要です。

たとえば、出資比率(保有議決権数)が日本側60%、インド側40%であるが、株主数は日本側2人、インド側5人であればという合弁会社(Public Company)を想定します。

このケースで、日本側株主およびインド側株主の全員が株主総会に出席した場合で、インド側株主全員が賛成挙手し、日本側株主全員が反対挙手した場合、5対2で賛成挙手者が過半数を超えているため、保有議決権数は日本側株主の方が上回っているにもかかわらず、通常決議が成立してしまいます。
また、同じケースで、もし日本側株主が1人欠席すれば、4分の3以上の賛成挙手により、特別決議さえ成立してしまいます。

一方、定款に規定がある場合、およびインド会社法上投票による決議が必要とされる場合、株主総会決議は投票により行われ、この場合には多数決の基準は議決権数となります。
インド会社法上、投票による決議が必要とされるのは、①Public Companyにおいて、5万ルピー以上の株式資本を有する出席株主または総議決権の10分の1以上を保有する出席株主が議長に請求した場合、②Private Companyにおいて、出席株主が7人以下の場合出席株主1人が、出席株主が8人以上の場合出席株主の2人以上が議長に請求した場合、③その他の会社(保証付有限会社、無限責任会社)の場合、総議決権の10分の1以上を保有する株主が議長に請求した場合となります(インド会社法第179条第1項)。

以上から、日本企業がインドに合弁会社を設立する場合、法的リスク回避の見地から、
・定款に株主総会決議は投票による旨の規定を設ける
・株主の頭数を一定以上確保する(これは株主総会の定足数が議決権数ではなく頭数ベースとなっていることに対する対応にもなります)
・上記がいずれもインド側合弁相手により拒否されるなどした場合、株主総会ごとに日本側出席株主が必要に応じて投票による決議を議長に請求する
といった対応が必要となると考えられます。

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株主総会の審議、決議の内容については、株主総会開催日から30日以内に議事録を作成する必要があります(インド会社法193条)。
議事録には、株主総会の議長が署名します。

また、株主総会における決議内容は、同様に株主総会開催日からから30日以内にRegistrar of Company(会社登記局)に提出されなければなりません。
そのため、実務的には30日以内に議事録を作成し、その議事録を会社登記局に提出するという手順で処理がなされます。

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次回からは取締役、取締役会の解説です。

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アウランガバード旅行記 -エローラ編-

土曜日朝のJET Airline(インド国内の航空会社。サービスの良さに定評あり)の飛行機でムンバイからアウランガバードに向かいます。

スケジュールは7時15分発ですが、実際離陸したのは午後9時前。
まあ、いつものことです。
搭乗してから1時間半以上待たされたのですが、熟睡していたので待ち時間は気になりませんでした。

約1時間弱のフライトの後、ホテルからの迎えの車に乗り、10時過ぎにようやくホテルに到着しました。
到着がかなり遅れてしまったため、既にエローラ、アジャンタ行きのツアーバスは全て出発してしまっています。

ホテルで話を聞くと、この時間からだとアジャンタは少し遅いが、エローラなら十分行って帰ってこられるとか(エローラはアウランガバードから車で1時間弱で行けますが、アジャンタは100km以上離れており、車でも3時間弱くらいかかるそうです。)。
ちなみに、このホテルはClassicという現地の旅行会社が直営しているホテルで、レセプションでツアーの申し込みが簡単にできます。ただ、その分、お値段は1泊1000ルピー(約3000円)と、インドにしてはそれなりに高いです。

そこで、ホテルの車をチャーターしてエローラ石窟寺院に向かうことに。
1日チャーターで、ドライバー兼ガイドに払うチップも含めて1000ルピーでした。

途中、Daulatabadという古代の砦に少し寄りました。

Img_2626ここは、岩山をそっくりそのまま砦にしたもので、なかなか威圧感があります。遠くから見ただけでしたが、そのすごさは十分に伝わってきました。

さらに30分ほど車に揺られ、エローラに到着しました。
入り口で入場料と駐車料金を支払います。
駐車料金は10ルピーと安かったのですが、例によって、入場料はインド人10ルピーに対して外国人250ルピーと極端な差です。
250ルピーの代わりに5ドルでも良いという話だったので、手持ちのドルで払ってしまいました(レートで換算すると5ドルの方が安くなります。)

エローラ石窟寺院は、全部で34の石窟寺院群から成るのですが、その中でも最大かつ最高の建築は、16番目のKailasanath(カイラサナータ)寺院です。
ちなみに、入場券のチェックはカイラサナータ寺院の前でしかしておらず、事実上他の石窟寺院群はフリーパスで入れてしまうあたり、いかにカイラサナータ寺院がエローラで大きな地位を占めているかということが伺われます。

さっそくカイラサナータ寺院に入ります。

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これは凄いです。
なんというか、とにかく凄いです

彫刻の繊細さや美しさという点では、カンボジアのアンコール・ワットに一歩譲りますが、全体の構造や彫刻の豪快さでは文句なしにこちらの方が上です。
何より凄いのが、この建物全体が岩肌を彫りぬいてできたものであることです。

つまり、この建物や塔は、石を持ってきて作られたのではなく、もともとあった岩肌から作られたのです。足し算ではなく全て引き算で作られたのです。

よほど全体の構造を計算して彫らないと、引き算でこの規模の建物は作れません。
彫り始めたのは西暦756年なので、日本だとまだ平安時代にすらなっていません。

これまで色々な史跡、建物を見てきましたが、その中でも最上位に入ります。
一生に一回は見ておいた方が良いです(アンコール・ワットを見て感動した人なら特に)。

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Img_2703カイラサナータ寺院を、岩壁の上から撮った写真です。高さは30メートルを超えており、上から見下ろすと、いっそうその凄さがわかります。

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ちなみに、岩壁の上には、側道を通って上っていくのですが、インドらしく当然落下防止用の手すりなどないので、かなり危険です。                           

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カイラサナータ寺院の後、他の石窟寺院群も見て回ります。
カイラサナータ寺院のインパクトにはさすがにおよばないものの、それでもとても岩壁を彫って作ったとは思えない素晴らしい寺院に出会えました。

ゼロの概念といい、インド人の創造の力は本当に素晴らしいと思います。

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夕方にエローラからアウランガバード市内に戻ってきた後、ホテルに戻る前にBibi-ka-Maqbara(ビビ・カ・マクバラ)に寄りました。
入場料は、インド人が5ルピー、外国人が100ルピーまたは2ドルです。相変わらずすごい差です。

Img_2822タージ・マハルをモデルにして建築された廟だけあって、「ミニ・タージ・マハル」と呼ばれるほど、タージ・マハルに似ています。
池の向こうに見える姿は、さながらタージ・マハルです。

Img_2825ただ、さすがにタージ・マハルほどの費用をかけるわけにはいかなかったらしく、大理石は一部にしか使われていないそうです。
それでも十分美しいです。

Img_2823夕暮れに入りかけた中、美しい庭園を抜け、ぶらぶら歩くのはとても気持ち良いです。

インド人の家族連れがたくさん来ており、逆に外国人はほとんど見かけませんでした。 安い入場料もあり、地元の人々の憩いの場になっているようです。                                                                                      

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ホテルには午後6時過ぎころに戻りました。
レセプションで次の日のアジャンタバスツアーの予約を取ります。
往復+ガイド付きで300ルピー。まずまずリーズナブルだと思います。
朝8時半にホテルにバスが迎えに来るとのこと。

部屋に入って埃に汚れた顔を洗います。
小ぎれいという表現がぴったりの部屋です。

ご飯までまだ少しあるなー、と思いつつ横になり、あっという間に眠りに落ちました。
まさかそのまま次の日の朝8時過ぎまで眠り続けるとは思いませんでしたが。

確かに朝早かったとはいえ、これはあんまりです。
どうもインドに来てから睡眠時間がやたらと増えて困っています…

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ぶらり石窟寺院

明日から土日でアジャンタ石窟寺院とエローラ石窟寺院を観光してきます。
両石窟寺院は、ムンバイから飛行機で45分のAurangabad(アウランガバード)にあり、ムンバイからも簡単にアクセスできます。
週末だけを使って世界史で習った史跡に行けるというのは素晴らしいなあと。

アジャンタの壁画は前々からものすごく見たかったので、とても楽しみです。
エローラ石窟寺院は、石だけで彫りぬかれた寺院だそうで、以前行ったアンコール・ワットと比べてどう違うかに興味がそそられます。

インドに来て初の観光旅行ですが、他にもインドを去るまでに行っておきたいところは結構あります。

・Agra(アグラ)
いわずと知れたタージ・マハル。
月夜のタージ・マハルはこの世のものとは思えないくらい美しいそうです。

・Banaras / Varanasi(バナラス/ヴァラーナスィ)
ガンジス川の河畔の町。ベナレスという名前で有名ですね。
さすがにバタフライはできませんが、やはりインドに来てガンジス川は外せません。
(どうでもいいですが、英語とヒンディー語では、「ナ」と「ラ」がひっくり返っています。きっとイギリス人が聞き間違えたのでしょう。よって、「バナラス」も「バラナシ(ヴァラナシ)」も、どっちも正解です。)

・Buddha Gaya(ブッダ・ガヤ)
仏陀が菩提樹下で悟りを開いた場所。
バナラスから電車で4時間くらいだそうなので、バナラスのついでに煩悩を削ぎ落としてこようかと。

・Darjiling(ダージリン)
ヒマラヤ山脈をバックに紅茶を一杯。
避暑地としてインド国内でも人気があります。

・Goa(ゴア)
ビーチリゾートとして有名です。
泳いだ後のアーユルヴェーダはとても気持ちいいそうです。

・Chennai(チェンナイ)
旧マドラスですね。
チェンナイだけでなく、インドが生んだ無限の天才、Srinivasa Ramanujanが生まれ育ったタミルナドゥ州の街クンバコナムはぜひ見ておきたいです。

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さて、いくつ行けるかな。

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インド会社法解説その7 -会社の機関 株主総会②-

(2008年5月に一部修正加筆)

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株主総会の決議には、通常決議と特別決議の2種類があります。

普通決議は決算書類の承認や役員の選任等の通常の事項を承認するための決議であり、特別決議は合併や解散等の一定の重要事項を承認するための決議です。
ただ、日本の特別決議の対象がかなり重要な事項に限定されているのに対し、インドでは特別決議が比較的緩やかに必要とされます。

株主総会普通決議は過半数の賛成で、特別決議は4分の3以上の賛成で、それぞれ成立します(ただし、単純に有効投票の過半数、4分の3以上というわけではありません。下記解説参照。)。
特別決議には4分の3以上の賛成が必要という点、3分の2以上の賛成で足りる日本の会社法とは大きく異なりますので、ご注意ください。
ちなみに、4分の3以上というのはかなり厳しい要件であり、インドでは特別決議というのはかなり大事として捉えられていることがわかります。

株主総会の特別決議が必要な事項は以下のとおりです。
気合で目を通しましたが、訳し間違い等の可能性もありますので、詳細な情報は、原文をご参照いただければと思います(AやBとあるのは、日本法の条文の枝番号に相当します。)。
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

・会社の目的または登録住所の変更(インド会社法17条)
・社名変更(同21条、25条3項)
・附属定款の変更(同31条)
・自己株式の購入(同77A条)
・sweat equity(会社への貢献に対して現金報酬の代わりに発行される株式)の発行(同79A条)
・株式の追加発行または債務や社債等の株式への転換(同81条)
・未払いの資本金がある場合に、当該未払い部分について払込みをしなくていいとする決定を行う場合(会社解散のために行われる場合を除く)(同99条)
・減資(同100条)
・種類株式の設定の承認(同106条)
・登録住所を管轄州の外に移転する場合(同146条2項。なお、この場合、17条に基づく特別決議も必要となると考えられます)
・新規事業の開始(同149条2A項(b)。なお、この場合、会社の事業目的の変更を伴うと考えられることから、17条に基づく特別決議も必要となると考えられます。)
・管轄州内における登記の維持(同163条1項(i)。インド法の概念として、登録住所の移転後ももともとの登記管轄地に登記を残しておくことにより、その管轄地に簡単に戻ることができるとの考えがあるようです。)
・一定長期にわたって利益が出ない事業の費用のために積み立てられた資本金に対する利息の支払い(同208条2項、3項)
・中央政府、州政府および/または公的金融機関が併せて25%以上議決権を保有している会社の監査役の選任(同237条(a)(i))
・資本金が5,000,000ルピー(約1500万円)以上の会社が、単一の売買代理人を選任する場合(同294AA条3項)
・(定款上必要とされている場合に)取締役の報酬の決定(同309条1項)
・中央政府の承認を得て、マネージングディレクターその他のフルタイムの取締役以外の取締役の報酬を決定する場合(同309条4項、7項)
・会社の取締役からの借り入れの承認(同314条1項、1B項)
・役員を無限責任にするために基本定款の変更(同323条1項)
・資本金の60%を超え、かつ準備金の100%を超える貸付や保証の供与(同372A条)
・裁判所申し立てによる解散(同433条(a))
・自主解散(同484条1項(b))
・清算人の報酬決定、解散にかかる事業譲渡の承認(同494条1項(b))
・自主解散の場合における清算人への一定事項の委任、その他の事項の決定(512条1項、517条、546条1項(b)、550条1項(b))
・登記された会社の構成の変更(同579条1項)

なお、上記のうち81条について、Private Companyの場合には新株発行につきそもそも株主総会決議は不要であるため、特別決議も不要となります。

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株主総会普通決議は、定足数が満たされていることを前提に、召集通知が適切に発送され、出席した議決権行使者(株主本人だけでなく、その代理人も含む。)の議決権総数のうち、反対票を上回る賛成票の数が得られた場合に成立します(インド会社法189条1項)。

ここで注意しなければいけないのは、決議の成立要件は、厳密には「有効投票の過半数の賛成」ではなく、「反対票を上回る賛成票」であることです。
会社法189条1項の原文(抜粋)は、以下のとおりです。

“A resolution shall be an ordinary resolution when at a general meeting of which the notice required under this Act has been duly given, the votes cast (whether on a show of hands, or on a poll, as the case may be), in favour of the resolution (including the casting vote, if any, of the chairman) by members who, being entitled so to do, vote in person, or where proxies are allowed, by proxy, exceed the votes, if any, cast against the resolution by members so entitled and voting.”

したがって、株主が投票を放棄した場合など、「反対票」が増えなかった場合には、「賛成票」が有効投票の過半数を超えなくても、反対票の総数さえ超えていれば決議は成立しうることになります。
これは日本の会社法とはかなり大きな相違です。

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一方、株主総会特別決議は、定足数が満たされていることを前提に、

①召集通知に特別決議を行う旨が記載されていること
②召集通知が適切に発送されていること
③出席した議決権行使者(株主本人だけでなく、その代理人も含む。)の議決権総数のうち、反対票の3倍を下回らない賛成票が得られたこと

を全て満たした場合に成立します(インド会社法189条2項)。

普通決議と同様、決議の成立要件は、厳密には「有効投票の4分の3以上の賛成」ではなく、「反対票の3倍を下回らない賛成票」であることです。
会社法189条2項の原文(抜粋)は、以下のとおりです。

“A resolution shall be a special resolution when (中略) the votes cast in favour of the resolution (whether on a show of hands, or on a poll, as the case may be) by members who, being entitled so to do, vote in person, or where proxies are allowed, by proxy, are not less than three times the number of the votes, if any, cast against the resolution by members so entitled and voting”

したがって、株主が投票を放棄した場合など、「反対票」が増えなかった場合には、「賛成票」が有効投票の4分の3以上とならなくても、反対票の総数の3倍以上であれば特別決議は成立しうることになります。

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株主総会は今回で終わるつもりだったのですが、少し長くなってしまったため、もう1回延長したいと思います。

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ディワリ玉

昨日から軽い食あたり気味で体調が悪いです。
この程度の症状なら特に日常生活に支障はないのですが、それなりに消耗しています。
それよりも、「特に心当たりがないのに食あたりになる」ことに慣れつつある自分が恐ろしいです。

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Diwali(ディワリ)中の週末も変わらずテニスにいそしんでいました。
このテニス、インド人のコーチに球出ししてもらって2時間ずっと練習するというもので、なかなか硬派です。中学、高校時代の部活の感覚を思い出します。

さて、テニスの後はいつもコート代とコーチ代を参加者で分担して払うのですが(ちなみに、2時間コートを借りてコーチ代と併せて毎回1人200ルピー(約600円)前後です。)、今回はいつも取りまとめていただいている方に「コーチにディワリを渡すので、各自プラス100ルピー」と言われました。

ディワリを渡す??

聞くと、どうやらインドではディワリのときに、使用人や普段仕事をお願いしている人に対してお金を渡す風習があるのだとか。
この渡すお金のことも「ディワリ」と呼ばれているとのことです。

そういうものかと納得して家に帰ったところ、入り口の前でガードマンが3人ほど待ち構えていました。
にっこり笑って、「Sir, Happy Diwali !」と紙を差し出すガードマン。
見ると、同じマンション内の各フラットから払われたディワリの金額が書かれています。

ああ、そういうことね。

こうやって集めたディワリを、ガードマンや掃除係の間で分配するようです。
見ると金額は各フラットによってまちまちで、多いところだと3000ルピー、少ないところで1500ルピーくらいでした。

単身者ということもあり、2000ルピーくらいでいいかと思ってお金を渡したのですが、ものすごく不満そうな顔をされ、何回も「2000 Rupee, Sir ?」と聞き返されました。
どうも日本人はもっとお金を持っているはずだと思っているようです。
ムカっときたので、「2000 Rupee. Yes」と答え、さっさと部屋の中に入りました。

ちなみに、ディワリは強制ではないので払わないことも可能だそうですが、もし払わなかった場合、部屋の前を掃除してもらえなくなったりするなどの有形無形の嫌がらせが起きるそうです

それにしても、インド人がお金を受け取るときのあの悪びれなさはすごいと思います。
支払う義務のないお金なのに、もらう側が「足りない」と不満を露わにするのは日本では考えられないリアクションなので、どう対応したらいいのかちょっと困ります。
2000ルピー(約6000円)は日本人にとっても結構な金額なのですが。

とりあえず、お年玉は日本だけの風習ではなかったというのは、1つ発見です。

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後で聞いたのですが、使用人はディワリを年に1度のボーナスとしてものすごく楽しみにしているそうです。
そう聞くと、もう少しあげてもよかったかなと。

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(追記)
自分のマンションの前を警備してくれているガードマン達に、後で個別にディワリを渡しました。
中途半端な解決ですが、まあ個別のボーナスということで。

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インド会社法解説その6 -会社の機関 株主総会①-

今回から数回に分けて、インド会社法(Companies Act, 1956)上の会社の機関の解説をしていきたいと思います。

ちなみに、教科書的な順序だと、機関よりも先に株式についての解説が来るのが普通ですが、ちょっとまだ株式については研究が進んでおらず、また、日本の会社がインドに現地法人やJVを設立する場合に、種類株式等を発行するのはかなり後の話になるかと思われるため、まずは全ての株式が普通株式であるとの前提に基づいて、機関について解説していきたいと思います。

また、ブログ本文で言及している条文については、下記リンクからインド会社法全条文にとべますので、ご参照ください。

http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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インド会社法上、株主総会には定時株主総会と臨時株主総会があります。

インド会社法上、定時株主総会の開催について定めるのは166条です。
同条によれば、会社は15ヶ月に1回以上の頻度で定時株主総会を開催しなければならないとされています(ただし、最初の定時株主総会は設立時から18ヶ月以内に開催すれば足りるとされています。)。

一方、開催の時期については特に規定はありません。
ただし、日本の決算報告書に相当するAnnual Returnという書類が定時株主総会に提出され、承認を受けなければならないとされているところ、Annual Returnは6ヶ月以内に作成されたものでなければならないとされているため、会計年度の末日から6ヶ月以内というのが事実上の定時株主総会の開催期限となります。

ちなみに、会社の会計年度について、インド税法上、法人税の課税年度が4月1日から3月31日までと定められていることから、多くの会社は決算期を4月1日から3月31日までとしています。
このあたりは日本と同じですね。
なお、定時株主総会の開催頻度が15ヶ月に1回以上とされていることと対応して、会計年度も15ヶ月まで延長可能です(さらに3ヶ月を上限として延長することも可能ですが、その場合初年度を除いては会社登記局(Registrar of Company)の承認が必要です。)。

一方、臨時株主総会については、会社は所要の手続きさえ踏めば、いつでもこれを開催することができます。

なお、上記の例外として、会社設立後最初の株主総会(定時株主総会とはまた別の総会)については、会社設立後1ヶ月経過後6ヶ月以内に開催しなければならないとされています(インド会社法165条)。
これは、法令上の株主総会(Statutory Meeting)と呼ばれており、決算書類等の承認の代わりにStatutory Reportという一定の事項を記載した書類を承認するための総会です。

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以下、株主総会関係条文を逐条的に解説します。

株主総会の招集通知は、開催日の21日前までに発送されなければならないのが原則ですが、定時株主総会においては議決権を持つ株主全ての同意を得た場合、臨時株主総会においては95%の株主の同意を得た場合には、召集期間を短縮することも可能です(インド会社法171条)。

召集通知は、全ての株主に対して送付されますが、①株主が死亡した場合や破産した場合等においては当該株主の代理人に、②インド国内に登録住所がない株主において、当該株主が法定監査人を書類の受取人として指定している場合、当該法定監査人に、送付されることとなります(インド会社法172条)。

また、召集通知には、開催日時、場所及び決議事項が記載され、決議事項によっては決議内容を説明する文書の添付が必要とされます(インド会社法173条)。

株主総会の定足数は、Public Companyにおいては5人、Private Companyにおいては2人となります。ただし、定款でこれより多い人数を定めている場合、それに従います(インド会社法174条)。
出席者が保有する議決権の割合ではなく、人数で定足数を決めているところがユニークです。

実はこのことは結構重要で、たとえば、合弁会社(Public Company)において、出資比率(保有議決権数)が日本側60%、インド側40%である場合であっても、株主の人数(名目的株主を含む。)が日本側2人、インド側5人であれば、定款に定足数の加重規定がない限り、インド側の株主が全員出席するだけで定足数がみたされてしまうということになります。
株主総会決議は出席株主のみによる議決権行使により行われるのが原則であるため、公開会社である合弁会社においてインド側の株主の人数が5名を超えている場合、合弁パートナーとの意見の不一致等を理由として日本側の株主が株主総会をボイコットしたとしても、インド側の株主のみで株主総会を開催し、普通決議事項および特別決議事項ともに決議できてしまうことになるのです。
そのため、インドで合弁会社を設立する場合、議決権数のみならず株主数にも注意する必要があり、定款で定足数を加重するなどの対応が必要となると考えられます。

なお、同じインド会社法174条によれば、株主総会の予定開催時刻から30分を過ぎても定足数を満たさず、株主から株主総会不成立の要求が出た場合、当該株主総会は不成立となるとされています。
この場合、取締役会が別の日程を指定するか、日程指定がない場合、ちょうど1週間後の同じ時間、場所で株主総会が開催されることになります。このやり直しの株主総会でも、30分過ぎても定足数が集まらなかった場合、定足数を満たしたものとみなされます。
(個人的に、ものすごーくインドっぽい規定だと思います。174条3項や5項に「『half an hour』以内に行われなかったら…」と大真面目に規定されているのですが、その前に時間に遅れるなよと。)

株主総会の議長は、定款に記載された者が務めますが、定款に規定のない場合、その場で多数決で選任されます(インド会社法175条)。

Proxy(委任状)により株主総会に代理人を出席させることも可能ですが、この場合、代理人は株主総会において発言することはできず、議決権を行使できるのみとなります(インド会社法176条)。
ちなみに、決議は原則として挙手で行うべしとインド会社法177条に規定されています(投票による議決権行使も可能)。

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少し長くなりましたので、今回はこれくらいにして、次回でもう一度株主総会を取り上げたいと思います。

とりあえず、このあたりの手続きは全てインド会社法の条文に細かく規定されていますので、条文を読めばほぼ理解できてしまいます。
インド会社法全条文の日本語訳があればとても便利だと思います。
自力で作る気は全くありませんが。

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謹賀新年

インドでは一足先に新年を迎えました。

Happy Diwali !!

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Diwali

インドは、今週、Diwali(ディワリ)と呼ばれるヒンディーの正月を迎えます。
といっても、日本の正月のように餅でも食べてのんびりする、といったのどかなものではなく、例によってのお祭り騒ぎです。

町中がライトアップされており、浮かれた雰囲気が伝わってきます。

事務所の入り口も美しく花で飾られています。

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ちなみに、これは回廊に色砂を幾何学模様に蒔いたものです。近づいて見ると、砂から出来ているのがわかります。

この1週間は多くの弁護士が長期の休みを取っており、事務所自体も明日はお休みです。

Pb070114また、めでたいお正月ということで、事務所でスペシャルランチが提供されました。
たくさんの料理が並んでいます。
まあ、全部カレー味なんですが

さて、お正月をお祝いするのは実に結構なことなのですが、1つだけ問題が。

今週月曜日からずっと、街中でひたすら爆竹が鳴らされています。
Diwaliに限らず、インドではお祭りの際には爆竹を鳴らす習慣があるようなのですが、今回のは数も量も桁違いです。

爆竹くらい…、と思った方。

甘い。

この国の爆竹は、火薬の量が半端ではないので(子供の安全とか絶対考えていない量です)、音がものすごいのです。

空気が震え、鼓膜が揺れます。
窓を閉め切った家の中にいても、熟睡状態から一発で起きるくらいの音量です。
この音にまぎれて爆弾テロをやられたら、最初は絶対にわからないと思います。

昔、司法修習の一環で富士山に自衛隊の演習を見に行ったときのミサイル着弾の音を思い出しました(爆心地からの距離は全く違いますが。)。
一定以上の音を体験したことのある方はわかると思いますが、音というよりも空気の振動を全身で感じるあの感じです。

何回か爆竹を鳴らしている現場を見ましたが、大人も子供も実にうれしそうに線香で火をつけています。
少なくとも日本人にとって、花火は音ではなく光と色を楽しむものだと思うのですが(音はどちらかといえば副産物扱い)、インド人は爆発音が大好きなようです。
しかも、どうやら音が大きければ大きいほど、数がたくさん鳴れば鳴るほど素晴らしいとされているようであり、爆発の宴はエスカレートしていく一方です。

とはいえ、その音を夜中過ぎまで聞かされ続ける側としてはたまったものではありません。
歩いていて、突然ものすごい爆発音が聞こえて飛び上がったことも数知れず。
もはや玩具の音量ではありません(実際、インド法上、爆竹の火薬の量が規制されているかどうかは謎です。)。

日本人会で聞いたところでは、金曜日から週末にかけては、さらに大量の爆竹が町中で1日中鳴らされ続けるそうです。
下手したら眠れないこともあるとか。

インド人に呪いあれ。

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インド会社法解説その5 -定款記載事項-

(2008年6月、オンラインでの会社設立申請手続に対応するよう、大幅に記載を修正)

これまで解説してきたとおり、電子署名認証(DSC)および取締役識別番号(DIN)取得後の会社の設立手続には、①商号承認申請、②会社設立登記申請の2段階がありますが、そのいずれの申請においても添付書類として必要となるのが、基本定款(Memorandum of Association)及び附属定款(Articles of Association)です。

インド会社法(Companies Act, 1956)は、法令自体の別紙として、これら両定款のモデルを提示してくれています。
これはなかなかすごいことで、日本で言えば会社法の法令の条文の一部として定款のモデルが規定されているようなものです(法令の別紙は通常法令の一部分とみなされ、公布もされます。)。

インド会社法が上記両定款のモデルを提示しているのは、Schedule1(別紙1)においてです。
以下、ご参考として、インド会社法の全条文のサイトとSchedule1のサイトのリンクを貼り付けておきます(例によってプライベートサイトなので、正確性は完全には保証できません。)。

インド会社法全条文:
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

Schedule1:
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/SCHEDULE%20659%20-%20674/sSCI%20-%20659.htm

Schedule1には、AからEまでの5つのTableがあり、このうちAがいわゆる株式会社の附属定款(Articles of Association)のモデル、Bが同じく基本定款(Memorandum of Association)のモデルとなります。また、Cは「資本金のない保証付株式会社」の基本定款及び附属定款のモデル、Dは「資本金のある保証付株式会社」の基本定款及び附属定款のモデル、Eは無限責任会社の基本定款及び附属定款のモデルとなります。

Table AとBは、いわゆる通常の株式会社(会社は有限責任。株主は出資の限度で責任を負う。日本法上の株式会社に相当する。)の附属定款及び基本定款であり、最もメジャーなタイプの会社のモデル定款になります。
他のタイプの会社は、1つのTableの中に、あるタイプの会社の基本定款と付随定款のモデルがセットで入っていますが、株式会社は最もよく選択される形式ということもあってか基本定款と付随定款が2つのTableに分かれています。ちなみに、なぜか附属定款がA、基本定款がBと順番が逆です。

Table CからEまでは、それぞれのTableの中に、会社の基本定款と付随定款のモデルがセットで入っています。

Table Cは「資本金のない保証付株式会社」、Table Dは、「資本金のある保証付株式会社」のモデル定款です。
「保証付株式会社」は、「原則として会社は有限責任であり、株主は出資の限度で責任を負うが、会社が解散するに至った場合、株主があらかじめ定められた金額を上限として会社の債務に対して責任を負う。」という概念の会社です。
ポイントは、①債権者が株主に直接責任を追及できるのは会社が解散した場合に限られていること、②株主が責任を負う金額は、あらかじめ定められていること(無限責任ではない。)という点です。
なお、Table CとDの相違である資本金の有無は、解散に至った場合に、債権者への引き当て資産としての会社の資本金を持つか持たないかという違いです。

Table Eは、いわゆる無限責任会社(社員(出資主)が無限連帯責任を負う。日本法でいう合名会社に相当する。)のモデル定款です。
「保証付株式会社」との主な相違は、①会社が解散に至っていなくとも社員に責任追及できる、②社員が責任を負う金額に制限がない、の2点です。

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さて、日本企業がインドに進出するにあたって通常設立するのは株式会社であるため、以下ではTable A(附属定款モデル)及びB(基本定款モデル)に絞って解説したいと思います。

まずは基本定款について、Table Bを見ればわかりますが、記載事項はそれほど多くありません。

具体的には、
①会社名(Public Company の場合は最後に「Limited」と入れ、Private Companyの場合は最後に「Private Limited」と入れる。)
②会社の登録住所の所在州名
③事業目的
④有限責任会社である旨
⑤資本金及び総株式数
⑥株式の当初引受人の氏名、住所、保有株式数等
をフォームにしたがって記載することになります。

次に、附属定款について、Table Aには条文が99まであるため、逐一取り上げるのは難しいことから、大項目のみピックアップしたいと思います。

・定義(Interpretation)…第1条
・株式(Share Capital and Variation of Rights)…第2条~46条
・株主総会(General Meetings)…第47条~63条
・取締役会(Board of Directors)…第64条~81条
・執行役(秘書役)(Manager or Secretary)…第82条、83条
・社印(The Seal)…第84条
・配当及び留保金(Dividends and Reserve)…第85条~94条
・計算(Accounts)…第95条~97条
・清算(Winding Up)…第98条
・賠償(Indemnity)…第99条

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ところで、基本定款については、その内容(商号、事業目的等)的に「標準」ということがありえないため、Table Bはあくまでモデル書式にすぎません。

一方、Table Aについては、インド会社法上、会社がその適用を一部または全部排除することを明示した独自の定款を採用しない限り、会社の附属定款として適用されることが規定されています(28条)。
すなわち、Table Aは、デフォルトの附属定款であり、会社設立者あるいは株主により変更されない限り、そのまま会社の附属定款として適用されることになります。そのため、Table Aは、単なるサンプル、モデルを超えた意味を有しており、そのために「標準附属定款」と呼ばれることもある。

特に合弁会社を設立する場合、標準附属定款をそのまま採用した場合には日本企業に不利になることもあるため、日本企業が株主としての権利を守るためには、標準附属定款に手を加えた独自の定款を採用すべきであると考えられます。
もっとも、標準附属定款の規定を取捨選択または修正することは、法令上の必要的記載事項であるかどうかの判断、修正した場合の会社運営への影響等の点で、高度な法律上の知識が必要となるため、各会社の実情に応じて現地の弁護士等の専門家に相談すすべきでしょう。

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次回からは、株式会社の機関について解説していく予定です。

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故障

日本から持ってきたDVDプレーヤーが壊れました。
正確に言えば壊しました。

このプレーヤー、実は到着当初から調子が悪く、音声が突然消えてしまうという症状が出ていたのですが(おそらく、輸送過程で衝撃を受けたためではないかと思われます。)、少し前に完全に音が出なくなってしまいました。
それまではいったん再生を停止したり電源を切ったりすると音が復活していたのですが、今回はいろいろ操作してもまったく反応がありません。

2、3日放っておいたら直るかと淡い期待をかけてみましたが、勿論そんなに甘くはありません。どうやら、音声の装置が本格的に故障してしまったようです。

さて困った。
このプレーヤーは日本で買ったものなので、インドで修理が可能かどうか。
そもそも、メーカーがインドに拠点を持っているのかもわかりませんし、インドでの連絡先もわかりません。
また、仮に修理が物理的に可能であるとして、このプレーヤーはだいたい4年前に買ったのですが、経験上それくらい前の商品になってしまうと修理するよりも新品を買ったほうが安いというくらい修理代が高くつくことが多いです。

いろいろ考えた挙句、思い余って自力で修理を試みることに(←これが間違っていました。)

ドライバーを使ってネジを外し、DVDプレーヤーのカバーを開けます。

機械の内部を一目見た瞬間、「無理だ」と思いました。

ICチップが大量に載った基盤が並んでおり、明らかに文系の人間には太刀打ちできなさそうなオーラが出ています。
基盤はそれぞれネジで固定されており、どこをどういじったらどうなるのかが全くわかりません。コードも複雑に絡んでおり、見た感じどうしようもありません。

それでも、このまま何もせずカバーを戻しては事態が改善しないので、ドライバーで音源の接続部分をつついたり、コードをいったん外して再接続したりしてみました。
故障部分を理解して行っている行為ではないので、無駄な抵抗です。

結局、修理として有効と思われることは何ひとつできず、そのままカバーを閉めました。

とはいえ、一応機械の内部に刺激は与えたため、もしかしたら、という淡い期待を込めて電源に接続します。

金槌で金属板をたたいているような音が部屋中に響き渡りました。
メインスイッチも入れておらず、しかもあまりにも変な音なので、最初はそれがスピーカーから出ている音だとは気がつかなかったほどです。
10秒ほどその音が続いた後、突然静かになりました。

その後は、どのボタンを押しても、電源から外しても再接続しても全く反応がありません。
どうも中途半端に中身をいじった結果、完全に壊れてしまったようです。
あの音は断末魔の叫びだったようです

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教訓:精密機械を自力でいじろうとしてはいけない。

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自業自得とはいえ、DVDが見られなくなってしまったのはとても痛いです。
お笑いビデオが見られなくなってしまった今、心の健康をどうやって維持するか真剣に悩み中です。

Pb050110残骸の写真です。
再分解して修理を試みたのですが、当然無理でした

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猛暑

ムンバイは11月に入ってから暑い日々が続いています。
これから2週間くらいがSecond Summerのピークだそうで、昼間の気温は35度くらいまで上がります。

自宅のエアコンの調子が相変わらず悪いため、これまでは天井のファンでしのいでいましたが、ここしばらくは暑い空気をかき混ぜるだけになっており、奥の手の部屋打ち水をしてもあまり効果がありません。
寝苦しさに耐えながら、ひたすら暑い時期が終わるのを待っています。

それにしても、日本からインドに来たのが8月なので、7月から考えると都合4ヶ月間、夏の暑さに耐え続けていることになります。

日本の夏もそうですが、ムンバイも湿度が高く、空気はねっとりとしています。
夏は嫌いな季節ではありませんが、いい加減疲れてしまったので、そろそろ終わってほしいところです。

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10月31日に、事務所のハロウィンパーティーに参加しました。

テーマカラーは赤。
もちろん、平服で参加するのは不可です。
前回の仮装パーティーといい、この事務所は結構コスチューム好きのようです。

Pb010104

Pb010107Pb010106

ハロウィンの仮装というか、なんだか見た目は仮面舞踏会です。

ハロウィンイベントに参加したのは初めてだったので、なかなか楽しめました。

先日はラクシュミ女神のお祭りでしたが、こんな風にキリスト教系のイベントとヒンディーのイベントをチャンポンで祝っているあたり、日本と似た宗教的寛容性を感じられ、なかなか面白いなあと。

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インド会社法解説その4 -会社設立登記申請-

(2008年6月、オンラインでの会社設立申請手続に対応するよう、大幅に記載を修正)

無事会社の商号が承認されたら、商号承認から6か月以内に、会社自体の設立登記申請に入ります。

商号承認申請と同様、会社設立登記申請は、インド企業省のウェブサイト
http://www.mca.gov.in/index.html
を通じたオンライン申請により行います。

会社設立登記申請には、以下に述べる3つのFormおよびそれらの添付書類を、オンラインを通じて所轄の会社登記局に対して提出することが必要となります。なお、オンラインで提出される全てのFormには、設立登記申請者の電子署名の貼付が必要となります。
また、添付書類のうち、インド国外で作成されたものについては、全て当該作成国における公証役場またはインド大使館での認証が必要となります。

1 Form1

Form1は、会社設立に際して、インド会社法上の手続を完了したことの宣言です。
その記載内容は以下のとおりとなります。

①商号承認申請において利用した支払領収書(Challan)記載の番号(SRN) (番号入力時に自動的に申請社名が反映される)
②授権資本額、発行済み株式数、株式額面総額
③引受人(Subscriber。FORM1Aで発起人である者を記載。なお、法人の場合、会社設立のための委任状を保有している者の情報を記載します)
④氏名、父親の氏名、国籍、生年月日、職業、パスポート番号、現住所(本籍と一緒である場合記載不要)、本籍、メールアドレス
※法人の場合、氏名については「○○ Company Through 氏名」と記載
 
記入完了後、印紙税(税額については別表参照)の支払いのために印紙税局(Stamp Office)でスタンプを受け、PDF化して、(2)の添付書類とともに提出します。
  
また、Form1の添付書類は以下のとおりです。

①基本定款(Memorandum of Association。発起人2人の署名を記載の上、オリジナルとコピーを一部ずつ提出。なお、最終ページには、株主の詳細(住所・氏名・父親の名前・保有株数等)その他の記載が必要となりますが、これらは全て手書きで行われる必要があります)
②附属定款(Articles of Asssociation。同じく、発起人2人の署名を記載の上、オリジナルとコピーを一部ずつ提出。同様に、最終ページには、株主の詳細(住所・氏名・父親の名前・保有株数等)その他の記載が必要となるが、これらは全て手書きで行われる必要がある)
③取締役(発起人)による会社設立を決議する取締役会議事録(会社設立決議書)
④委任状(弁護士、会計士、コンサルタントその他会社設立に際して授権を受けた者に対する委任状を提出)

なお、全ての添付書類の提出には印紙税がかかり、印紙税局(Stamp Office)でスタンプを受けた書類をPDFにし、Form1に添付することになります。

2 Form 18

Form 18は、設立された会社の住所登録申請です。
記載事項は以下のとおりです。

①発起人の現在のオフィスの住所
②商号承認申請において利用した支払領収書(Challan)記載の番号(SRN) (番号入力時に自動的に申請社名が反映される)
③新会社の住所
④所轄の警察署の住所

また、Form18については、会計士または会社秘書役により、当該内容が申請であることについての証明を得る必要があり、これらの者の電子署名の貼付が必要となります。

さらに、添付書類として、新会社の住所について第三者の宣言(declaration。「この会社の住所はここにある」ということを記載した書類)をPDFにして添付する必要があります。

3 Form 32

Form 32は、取締役情報を登録するフォームです。
記載事項は以下のとおりです。

①商号承認申請において利用した支払領収書(Challan)記載の番号(SRN) (番号入力時に自動的に申請社名が反映されます)
②取締役の人数(創立時の取締役数)
③各取締役のDIN
④会社秘書役の情報(会社秘書役を雇用しない場合、記載不用)

また、Form18と同様、Form32については、会計士または会社秘書役により、当該内容が申請であることについての証明を得る必要があり、これらの者の電子署名の貼付が必要となります。
なお、Form32は、取締役が選任されるたびに、当該選任日から30日以内の提出が必要とされます。

さらに、添付書類として、

①取締役の就任承諾書(Consent Letter。取締役全員の就任承諾書を1つのPDFに集約する必要がある)
②商号使用を正式に認める会社登記局からのレターの写し

をPDFにして提出する必要があります。

なお、もし商号承認から6ヶ月以内に会社設立登記申請を行わなかった場合、商号の権利を維持し続けるためには追加の申請と登録費用が必要となります。

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また、日本と同じく、会社登記の際には登録免許税の支払いが必要となります。
ここで注意すべきは、税額の計算根拠となる数字は、資本金額ではなく授権資本金額であるという点です。

授権資本金額は、増加できる資本金額の上限であり、日本でいう授権株式数に対応します。授権株式数は発行する株式の数に着目しているのに対し、授権資本金額は(発行株式数を問わず)増加しうる資本金の上限額に着目しています。
インドでは、資本金額のみならず、授権資本金額も登記事項とされており、登録免許税はこの授権資本金額をベースに計算されます。
すなわち、登記時点で資本金額が低くとも、授権資本金額が高ければ、授権資本金額に合わせた登録免許税を支払わなければならないのです。

授権資本額を変更するためには、会社登記局に変更の登記申請を行う必要があり、これには一定程度手間と時間がかかります。
そのため、将来の資本金の増額を見据えた場合、授権資本額にはあらかじめある程度余裕をもたせた方が良いのですが、あまりに多額にしてしまうと登録免許税の負担が重くなってしまうため、バランスをとることが必要となります。

登録免許税の具体的な金額及び計算方法は、以下のとおりです(1ルピー=約3円)。

①10万ルピーまで 
→4000ルピー
②10万ルピー超50万ルピー以下
→①に加えて、10万ルピーを超える分につき、1万ルピーにつき300インドルピーが追加
③50万ルピー超500万ルピー以下
→①と②により算出される額に加えて、50万ルピーを超える分につき、1万ルピーにつき200ルピーが追加
④500万ルピー超1000万ルピー以下
→①から③により算出される額に加えて、500万ルピーを超える分につき、1万ルピーにつき100ルピーが追加
⑤1000万ルピー超
→①から④により算出される額に加えて、1000万ルピーを超える分につき、1万ルピーにつき50ルピーが追加

例えば、授権資本金額を700万ルピーとする会社を設立する場合、④のカテゴリーに当てはまり、

4000(①)+12000(②)+90000(③)+20000(④)=126000ルピー

が登録免許税額となります。

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ちなみに、会社設立時に授権株式数の4分の1以上の株式発行が要求される日本の会社法(37条3項)と異なり、インド会社法上は、授権資本額に対する資本金の割合規制は設立時も設立後も存在しません。
そのため、授権資本額が、実際の資本金額の100倍となっているというようなアレンジも可能です。

もっとも、上述のとおり、登録免許税は、資本金額(Paid-up capital)ではなく授権資本額(Authorized capital)に対してかかるため、通常は授権資本額を資本金額よりも極めて大きくするメリットはありません。

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会社登記局による登記申請審査後、無事会社が登記された場合、会社登記局から設立証明書(Certificate of Incorporation)が発行されます。

資本金の払い込みは、設立証明書の発行後に可能となります。
株主となる者及び会社は、資本金の払込から30日以内に、インド連邦準備銀行(Reserve Bank of India)に対して、資本金の払込みと株式発行に関するインド外国為替管理法上の報告書を提出します。

なお、Private Companyについては資本金の払込みがなされた後、すぐにその業務を開始することができますが、Public Companyについては上記設立証明書発行と資本金の払込みに加えて、会社登記局から営業開始証明書(Certificate of Commencement of Business)という書類の発行を受けるまでは業務を開始できません。

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このほか、会社設立後は、すみやかに税務当局に対して税務番号の申請を行う必要があります。

税務番号には、Permanent Account Number (PAC) とTax Deduction Account Number(TDAN)の2種類があります。
前者は税務当局による当該会社の登録番号であり、会社による税務申告その他税務署とのやりとりは基本的にこの番号をID番号として行われます。一方、後者は会社が源泉徴収が必要となる支払いを行う際に、徴収した源泉徴収税を税務当局が認識、管理するための番号です。

ちなみに、インド内国法人(外資系含む)の法人税の実効税率は、33.99%(2008年3月現在)です。

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次回は基本定款(Memorandum of Association)及び附属定款(Articles of Association)を取り上げたいと思います。

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コックローチ・バトル 番外編

http://www.namasute-mumbai.com/bommadam.html#gokiburi

皆さん、ゴキブリ(というか虫全般)には苦労されているようです。

「インドでに住んで『切れない』で暮らすというのは、聖者のような人だけです。」という冒頭の言葉にとても勇気づけられました。

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ムンバイのタクシーについて

以前にも書きましたが、ムンバイには公共の交通機関がバス以外に存在しません。
そのため、自家用車を持たない多くの住民は、移動手段としてバスかタクシーを利用しています。
私自身も、オフィスへの往復はタクシーを使っています。

一般のタクシーは、初乗り13ルピー(約40円)、1時間程度乗っても200ルピー(約600円)と安いのですが、その分、いろいろな面で問題が多く(後述のとおり、問題が多いのにはそれなりの社会的理由があるのですが)、日本のタクシーに慣れている人間が乗ると、ものすごく不愉快な思いをすること間違いなしです。

ムンバイに来て2ヶ月経ちましたが、タクシーにはいまだに慣れず、憎しみの念を込めて問題点を書きたいと思います。
(なお、ムンバイには日本車と遜色ない(とうか日本車の)高級タクシーもありますが、少なくとも今の私の生活だと普段は乗ることはほとんどないため、以下の記載は全て一般のタクシーについてです。)

・車自体の質がものすごく悪い。

Pb020109_2ムンバイの一般的なタクシーの外見はこんな感じです。
日本の昭和30年代のデザイン(たぶん中身も)の車が現役です。サスペンションはなきに等しく、地面の振動がダイレクトに体に伝わってきます。

うっかり段差部分を高速で走ろうものなら、頭を天井にぶつけること間違いなしです。
馬力もまったくなく、ちょっとした坂道でも車がノッキングしはじめます。

扉もきわめて雑な作りになっており、しかも扉が閉まらなくなっても平気でそのまま客を乗せているのでとても危険です。
先日、走行中に突然扉が開いたのですが、もしそのとき扉側にもたれていたらと思うと、生命保険の増額を本気で検討する気になってきます

・汚い
タクシーの座席は果てしなく汚く、タクシーによってはあまりの汚さに乗車をやめなければならないこともあるほどです。
最近では多少汚れていたり、シートに泥がついている程度なら気にせずに乗っていますが、たまに白いはずのシートが焦茶色に変色しているようなタクシーに当たることがあり、そのときはさすがにあきらめて次のタクシーを捜しています。

また、車内の汚さから生じる埃臭さと泥臭さ+運転手の体臭で、タクシー内は基本的に臭いです。
これも多少の匂いなら問題ないのですが、たまに大当たりのタクシーがあり、そのときは下車までの30分間、窓に向かって細く息をしなければならないときがあります。

ちなみに、なぜこんなにもタクシー内が汚く、運転手が臭いかというと、彼らは基本的にタクシーの車内で生活しているからです。
つまり、昼間はお客を乗せて働き、夜は同じところで眠るのです(後に述べるように、少なくともムンバイではタクシーの運転手はホームレス出身の者が多いためです。)。
たまにはシャワーを浴びることもあるのでしょうが、基本はずっと同じ場所で同じ服を着て働き続けています。高温多湿のムンバイで、エアコンの無い車内でシャワーなしで生活し続けているわけです。

ムンバイではタクシーへの乗車は運転手の自宅に入り込むことと同義であると考えれば、けっこうすごい(褒め言葉ではありません)ことだと思います。

・エアコンがない
これは「ムンバイ交通事情」でも書きましたが、一般のタクシーにはエアコンがついていません。
車内が暑いこともさることながら、窓を開け放して走るため、外の排気ガスや悪臭が全て車内に流れ込んできます。

排気ガス+外の埃と悪臭+車内の埃と悪臭+車内の高温=ミラクルゾーン 

の方程式が成り立つわけで、毎日毎日本当にたまりません。

・運転手とコミュニケーションできない
運転手の多くは下層階級出身のため、英語を話せません。
ムンバイのあるマハラシュトラ州の言葉であるマラティー語か、よくてヒンディー語しか話せず、英語は地名が何とかわかるくらいです。

まあ運転手に限らず、日常生活レベルではインド人のほとんどとは英語ではコミュニケーションできないのですが、「こういうふうに目的地に行ってほしい」というのが伝わらないため、あえて遠回りの単純なルートで行かなければならないのが面倒です。

・道を知らない
最近の東京のタクシーの運転手の道の知らなさ加減もひどいですが、ムンバイの運転手はそれに輪をかけてひどいです。
目的地を言っても理解できず、そもそも英語が話せないのが問題をさらにややこしくします。

困るのが、わからないのならわからないと言ってくれればいいのに、わかったようなふりをしてとりあえず車を出してしまう運転手がとても多いこと。
彼らからすれば、道がわからないとして乗車を断れば収入が得られないのでそうするのかもしれませんが、周囲のインド人に道を聞きつつ、あっちに行ったりこっちに行ったりしてグルグル回って余計な時間がかかるのには本当に閉口します。

挙句に、迷った分の距離の運賃も最後にしっかり請求してきて、バトルが始まるわけです。

・地図が読めない
あまりにも道を知らない運転手が多いので、地図を買って常に持ち歩くようになりました。が、地図を見せて説明しようとしたところ、運転手はほぼ全員地図を読めないということがわかりました。
これは、文字通り「地図の読み方を知らない」のであり、「英語が読めない」とか、「読めているが間違ってしまう」(方向音痴)ということではありません。

なるほど、地図というものは「読む教育」を受けなければ読めないのだな、と妙に感心してしまいました。たしかに、そういえば小学校のころ社会で地図の読み方を習ったような記憶があります。
「地図は生まれつき(書いてあるある言語さえわかれば)当たり前に読めるものである」という思い込みを打ち砕いた新鮮な発見でした。

まあそれはそれとして、言葉も通じない、地図を見せても読めない相手にどうやって目的地を伝えるのか(普通無理だろ…)が、毎日の悩みなわけですが。

・運転が荒い
このあたりは「ムンバイ交通事情」で詳しく述べたので、そちらをご参照。
前を見ていると心臓に悪いので、最近は心を無にして俯いて音楽を聴いています。

・ふっかける
これも以前書きましたが、外国人相手には必ず乗車料金をふっかけてきます。
良心的なドライバーでも、必ず料金を切り上げてきます(メーターが42ルピーだったら、平気で50ルピーと言ってきます。)。

さすがにもう騙されることはなくなりましたが、特におつりをもらう場合にきちんと払わせるのが大変です。

・おつりを持っていない
さきほど「おつりをもらう場合」と書きましたが、ムンバイのタクシーの運転手は基本的にほとんど現金を持っていません。
そのため、料金を支払うときは、おつりのないように払うのが原則です。

最初は「おつりがない」とごまかして多くを得ようとしているのかと思っていましたが、どうも彼らは本当に現金を持っていないということがわかってきました。
100ルピー札へのおつりは持っていることもありますが、500ルピー札へのおつりを持っていることはほぼありません。
これは前述のムンバイのタクシー運転手が下層階級であるということと関連します。
彼らは半分ホームレスで、その日稼いだ現金はほとんどその日に使ってしまうため、常にぎりぎりの現金しか持っていません。

そのため、うっかり小銭を持たずにタクシーに乗ってしまうと、おつりの時点でもめることになってしまいます(多くの場合、彼らは当然のように、「おつりはないから払えない。だから全額もらう」という態度をとります。)。

・乗車拒否
ムンバイの運転手は、特に夕方等の混雑時は、距離が近い(それでも20分以上は乗るのですが)と乗車拒否します。
ひどいときには、10件以上の乗車拒否にあい、オフィスを出たのが午後7時なのに、タクシーを捕まえられたのが8時ということもありました。その間、排気ガスと埃だらけの道路で延々立ち続けてタクシーを捕まえようとするわけです。
この乗車拒否が最近の一番の悩みです。

乗りたくもない小汚いタクシーに乗車拒否され続ける切なさを、毎夕味わわなければならないほど悪いことをした覚えはないのですが。

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上記の問題の多くは、ムンバイにおけるタクシーの運転手が下層階級であるということに起因しています。車の中で寝泊りしていることからわかるように、彼らの実態は「定職のあるホームレス」といって差し支えないと思います。

運転手の生活や社会的地位の向上は、インド政府及びムンバイのあるマハラシュトラ州の今後の政治的課題の1つであると思われますが、それはそれとして、毎日タクシーを利用しなければならない身としては、もうちょっとどうにかならないかなあと思います。

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