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インド会社法解説その5 -定款記載事項-

(2008年6月、オンラインでの会社設立申請手続に対応するよう、大幅に記載を修正)

これまで解説してきたとおり、電子署名認証(DSC)および取締役識別番号(DIN)取得後の会社の設立手続には、①商号承認申請、②会社設立登記申請の2段階がありますが、そのいずれの申請においても添付書類として必要となるのが、基本定款(Memorandum of Association)及び附属定款(Articles of Association)です。

インド会社法(Companies Act, 1956)は、法令自体の別紙として、これら両定款のモデルを提示してくれています。
これはなかなかすごいことで、日本で言えば会社法の法令の条文の一部として定款のモデルが規定されているようなものです(法令の別紙は通常法令の一部分とみなされ、公布もされます。)。

インド会社法が上記両定款のモデルを提示しているのは、Schedule1(別紙1)においてです。
以下、ご参考として、インド会社法の全条文のサイトとSchedule1のサイトのリンクを貼り付けておきます(例によってプライベートサイトなので、正確性は完全には保証できません。)。

インド会社法全条文:
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

Schedule1:
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/SCHEDULE%20659%20-%20674/sSCI%20-%20659.htm

Schedule1には、AからEまでの5つのTableがあり、このうちAがいわゆる株式会社の附属定款(Articles of Association)のモデル、Bが同じく基本定款(Memorandum of Association)のモデルとなります。また、Cは「資本金のない保証付株式会社」の基本定款及び附属定款のモデル、Dは「資本金のある保証付株式会社」の基本定款及び附属定款のモデル、Eは無限責任会社の基本定款及び附属定款のモデルとなります。

Table AとBは、いわゆる通常の株式会社(会社は有限責任。株主は出資の限度で責任を負う。日本法上の株式会社に相当する。)の附属定款及び基本定款であり、最もメジャーなタイプの会社のモデル定款になります。
他のタイプの会社は、1つのTableの中に、あるタイプの会社の基本定款と付随定款のモデルがセットで入っていますが、株式会社は最もよく選択される形式ということもあってか基本定款と付随定款が2つのTableに分かれています。ちなみに、なぜか附属定款がA、基本定款がBと順番が逆です。

Table CからEまでは、それぞれのTableの中に、会社の基本定款と付随定款のモデルがセットで入っています。

Table Cは「資本金のない保証付株式会社」、Table Dは、「資本金のある保証付株式会社」のモデル定款です。
「保証付株式会社」は、「原則として会社は有限責任であり、株主は出資の限度で責任を負うが、会社が解散するに至った場合、株主があらかじめ定められた金額を上限として会社の債務に対して責任を負う。」という概念の会社です。
ポイントは、①債権者が株主に直接責任を追及できるのは会社が解散した場合に限られていること、②株主が責任を負う金額は、あらかじめ定められていること(無限責任ではない。)という点です。
なお、Table CとDの相違である資本金の有無は、解散に至った場合に、債権者への引き当て資産としての会社の資本金を持つか持たないかという違いです。

Table Eは、いわゆる無限責任会社(社員(出資主)が無限連帯責任を負う。日本法でいう合名会社に相当する。)のモデル定款です。
「保証付株式会社」との主な相違は、①会社が解散に至っていなくとも社員に責任追及できる、②社員が責任を負う金額に制限がない、の2点です。

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さて、日本企業がインドに進出するにあたって通常設立するのは株式会社であるため、以下ではTable A(附属定款モデル)及びB(基本定款モデル)に絞って解説したいと思います。

まずは基本定款について、Table Bを見ればわかりますが、記載事項はそれほど多くありません。

具体的には、
①会社名(Public Company の場合は最後に「Limited」と入れ、Private Companyの場合は最後に「Private Limited」と入れる。)
②会社の登録住所の所在州名
③事業目的
④有限責任会社である旨
⑤資本金及び総株式数
⑥株式の当初引受人の氏名、住所、保有株式数等
をフォームにしたがって記載することになります。

次に、附属定款について、Table Aには条文が99まであるため、逐一取り上げるのは難しいことから、大項目のみピックアップしたいと思います。

・定義(Interpretation)…第1条
・株式(Share Capital and Variation of Rights)…第2条~46条
・株主総会(General Meetings)…第47条~63条
・取締役会(Board of Directors)…第64条~81条
・執行役(秘書役)(Manager or Secretary)…第82条、83条
・社印(The Seal)…第84条
・配当及び留保金(Dividends and Reserve)…第85条~94条
・計算(Accounts)…第95条~97条
・清算(Winding Up)…第98条
・賠償(Indemnity)…第99条

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ところで、基本定款については、その内容(商号、事業目的等)的に「標準」ということがありえないため、Table Bはあくまでモデル書式にすぎません。

一方、Table Aについては、インド会社法上、会社がその適用を一部または全部排除することを明示した独自の定款を採用しない限り、会社の附属定款として適用されることが規定されています(28条)。
すなわち、Table Aは、デフォルトの附属定款であり、会社設立者あるいは株主により変更されない限り、そのまま会社の附属定款として適用されることになります。そのため、Table Aは、単なるサンプル、モデルを超えた意味を有しており、そのために「標準附属定款」と呼ばれることもある。

特に合弁会社を設立する場合、標準附属定款をそのまま採用した場合には日本企業に不利になることもあるため、日本企業が株主としての権利を守るためには、標準附属定款に手を加えた独自の定款を採用すべきであると考えられます。
もっとも、標準附属定款の規定を取捨選択または修正することは、法令上の必要的記載事項であるかどうかの判断、修正した場合の会社運営への影響等の点で、高度な法律上の知識が必要となるため、各会社の実情に応じて現地の弁護士等の専門家に相談すすべきでしょう。

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次回からは、株式会社の機関について解説していく予定です。

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