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ムンバイのタクシーについて

以前にも書きましたが、ムンバイには公共の交通機関がバス以外に存在しません。
そのため、自家用車を持たない多くの住民は、移動手段としてバスかタクシーを利用しています。
私自身も、オフィスへの往復はタクシーを使っています。

一般のタクシーは、初乗り13ルピー(約40円)、1時間程度乗っても200ルピー(約600円)と安いのですが、その分、いろいろな面で問題が多く(後述のとおり、問題が多いのにはそれなりの社会的理由があるのですが)、日本のタクシーに慣れている人間が乗ると、ものすごく不愉快な思いをすること間違いなしです。

ムンバイに来て2ヶ月経ちましたが、タクシーにはいまだに慣れず、憎しみの念を込めて問題点を書きたいと思います。
(なお、ムンバイには日本車と遜色ない(とうか日本車の)高級タクシーもありますが、少なくとも今の私の生活だと普段は乗ることはほとんどないため、以下の記載は全て一般のタクシーについてです。)

・車自体の質がものすごく悪い。

Pb020109_2ムンバイの一般的なタクシーの外見はこんな感じです。
日本の昭和30年代のデザイン(たぶん中身も)の車が現役です。サスペンションはなきに等しく、地面の振動がダイレクトに体に伝わってきます。

うっかり段差部分を高速で走ろうものなら、頭を天井にぶつけること間違いなしです。
馬力もまったくなく、ちょっとした坂道でも車がノッキングしはじめます。

扉もきわめて雑な作りになっており、しかも扉が閉まらなくなっても平気でそのまま客を乗せているのでとても危険です。
先日、走行中に突然扉が開いたのですが、もしそのとき扉側にもたれていたらと思うと、生命保険の増額を本気で検討する気になってきます

・汚い
タクシーの座席は果てしなく汚く、タクシーによってはあまりの汚さに乗車をやめなければならないこともあるほどです。
最近では多少汚れていたり、シートに泥がついている程度なら気にせずに乗っていますが、たまに白いはずのシートが焦茶色に変色しているようなタクシーに当たることがあり、そのときはさすがにあきらめて次のタクシーを捜しています。

また、車内の汚さから生じる埃臭さと泥臭さ+運転手の体臭で、タクシー内は基本的に臭いです。
これも多少の匂いなら問題ないのですが、たまに大当たりのタクシーがあり、そのときは下車までの30分間、窓に向かって細く息をしなければならないときがあります。

ちなみに、なぜこんなにもタクシー内が汚く、運転手が臭いかというと、彼らは基本的にタクシーの車内で生活しているからです。
つまり、昼間はお客を乗せて働き、夜は同じところで眠るのです(後に述べるように、少なくともムンバイではタクシーの運転手はホームレス出身の者が多いためです。)。
たまにはシャワーを浴びることもあるのでしょうが、基本はずっと同じ場所で同じ服を着て働き続けています。高温多湿のムンバイで、エアコンの無い車内でシャワーなしで生活し続けているわけです。

ムンバイではタクシーへの乗車は運転手の自宅に入り込むことと同義であると考えれば、けっこうすごい(褒め言葉ではありません)ことだと思います。

・エアコンがない
これは「ムンバイ交通事情」でも書きましたが、一般のタクシーにはエアコンがついていません。
車内が暑いこともさることながら、窓を開け放して走るため、外の排気ガスや悪臭が全て車内に流れ込んできます。

排気ガス+外の埃と悪臭+車内の埃と悪臭+車内の高温=ミラクルゾーン 

の方程式が成り立つわけで、毎日毎日本当にたまりません。

・運転手とコミュニケーションできない
運転手の多くは下層階級出身のため、英語を話せません。
ムンバイのあるマハラシュトラ州の言葉であるマラティー語か、よくてヒンディー語しか話せず、英語は地名が何とかわかるくらいです。

まあ運転手に限らず、日常生活レベルではインド人のほとんどとは英語ではコミュニケーションできないのですが、「こういうふうに目的地に行ってほしい」というのが伝わらないため、あえて遠回りの単純なルートで行かなければならないのが面倒です。

・道を知らない
最近の東京のタクシーの運転手の道の知らなさ加減もひどいですが、ムンバイの運転手はそれに輪をかけてひどいです。
目的地を言っても理解できず、そもそも英語が話せないのが問題をさらにややこしくします。

困るのが、わからないのならわからないと言ってくれればいいのに、わかったようなふりをしてとりあえず車を出してしまう運転手がとても多いこと。
彼らからすれば、道がわからないとして乗車を断れば収入が得られないのでそうするのかもしれませんが、周囲のインド人に道を聞きつつ、あっちに行ったりこっちに行ったりしてグルグル回って余計な時間がかかるのには本当に閉口します。

挙句に、迷った分の距離の運賃も最後にしっかり請求してきて、バトルが始まるわけです。

・地図が読めない
あまりにも道を知らない運転手が多いので、地図を買って常に持ち歩くようになりました。が、地図を見せて説明しようとしたところ、運転手はほぼ全員地図を読めないということがわかりました。
これは、文字通り「地図の読み方を知らない」のであり、「英語が読めない」とか、「読めているが間違ってしまう」(方向音痴)ということではありません。

なるほど、地図というものは「読む教育」を受けなければ読めないのだな、と妙に感心してしまいました。たしかに、そういえば小学校のころ社会で地図の読み方を習ったような記憶があります。
「地図は生まれつき(書いてあるある言語さえわかれば)当たり前に読めるものである」という思い込みを打ち砕いた新鮮な発見でした。

まあそれはそれとして、言葉も通じない、地図を見せても読めない相手にどうやって目的地を伝えるのか(普通無理だろ…)が、毎日の悩みなわけですが。

・運転が荒い
このあたりは「ムンバイ交通事情」で詳しく述べたので、そちらをご参照。
前を見ていると心臓に悪いので、最近は心を無にして俯いて音楽を聴いています。

・ふっかける
これも以前書きましたが、外国人相手には必ず乗車料金をふっかけてきます。
良心的なドライバーでも、必ず料金を切り上げてきます(メーターが42ルピーだったら、平気で50ルピーと言ってきます。)。

さすがにもう騙されることはなくなりましたが、特におつりをもらう場合にきちんと払わせるのが大変です。

・おつりを持っていない
さきほど「おつりをもらう場合」と書きましたが、ムンバイのタクシーの運転手は基本的にほとんど現金を持っていません。
そのため、料金を支払うときは、おつりのないように払うのが原則です。

最初は「おつりがない」とごまかして多くを得ようとしているのかと思っていましたが、どうも彼らは本当に現金を持っていないということがわかってきました。
100ルピー札へのおつりは持っていることもありますが、500ルピー札へのおつりを持っていることはほぼありません。
これは前述のムンバイのタクシー運転手が下層階級であるということと関連します。
彼らは半分ホームレスで、その日稼いだ現金はほとんどその日に使ってしまうため、常にぎりぎりの現金しか持っていません。

そのため、うっかり小銭を持たずにタクシーに乗ってしまうと、おつりの時点でもめることになってしまいます(多くの場合、彼らは当然のように、「おつりはないから払えない。だから全額もらう」という態度をとります。)。

・乗車拒否
ムンバイの運転手は、特に夕方等の混雑時は、距離が近い(それでも20分以上は乗るのですが)と乗車拒否します。
ひどいときには、10件以上の乗車拒否にあい、オフィスを出たのが午後7時なのに、タクシーを捕まえられたのが8時ということもありました。その間、排気ガスと埃だらけの道路で延々立ち続けてタクシーを捕まえようとするわけです。
この乗車拒否が最近の一番の悩みです。

乗りたくもない小汚いタクシーに乗車拒否され続ける切なさを、毎夕味わわなければならないほど悪いことをした覚えはないのですが。

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上記の問題の多くは、ムンバイにおけるタクシーの運転手が下層階級であるということに起因しています。車の中で寝泊りしていることからわかるように、彼らの実態は「定職のあるホームレス」といって差し支えないと思います。

運転手の生活や社会的地位の向上は、インド政府及びムンバイのあるマハラシュトラ州の今後の政治的課題の1つであると思われますが、それはそれとして、毎日タクシーを利用しなければならない身としては、もうちょっとどうにかならないかなあと思います。

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コメント

いや、最高だね!

タクシーの話は傑作です。

ぼろい(ドアがガクガク)!汚い!くさい!中で暮らしている!冷暖房効かない(窓を開けてる)!おつりを持っていないし、常にround upする!道が分からないくせにとり全部そっくりそのまま、私が中国に行ったころ(1998年)の中国のタクシーでした。しかも日常茶飯でした。
なかったのは、乗車拒否くらいでしょうか。
あと、明記されていませんが、多分、「わけの分からん言い訳をまくし立てる」というのも中国との共通点でしょう(インドのほうがはげしいかも!)。
不合理なふっかけに対しては、たとえ日本円にして5円、10円の話でも、延々と議論をして説き伏せるのに苦労したものです。

この10年で中国は見違えるようになりました。今でも日本に比べると、上記の問題はあります(また、私自身がなれてしまったというのもあるかもしれません)が、驚くほど変わりました。

>先生がいるうちに是非行きたいです! 様

「わけの分からん言い訳をまくし立てる」というのは全くそのとおりで、意味もわからなければそもそも言葉(マラータ語)もわからず、わからない尽くしです。

インドは中国からちょうど10年くらい遅れているような気がします。

ムンバイに来るのは正直あんまりお勧めできませんが、カルチャーショックだけは確実に受けられますので、お待ちしております。

投稿: 先生がいるうちに是非行きたいです! | 2007年11月12日 (月) 22時50分

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