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インド会社法解説その8 -会社の機関 株主総会③-

(2008年2月、5月に一部修正加筆)

名目的株主に関して、会社法解説その2では、

「株主A、Bがいるとして、BがCのために名目的株主となっている場合、Bはその保有する株式について自らの意思で議決権を行使したり、配当益等の利益を受領したりすることはできず、Cのためにそれらの全てを行うことになります。」

と書きましたが、当事者のほか、議決権についての記載に誤りがありましたので、以下のとおり訂正させていただきます(本文は既に訂正済みです)。

「たとえば、株主A、Bがいるとして、BがAのために名目的株主となっている場合、Bはその保有する株式について配当を受けることはできず、AがBに代わって配当を受領することとされています(ただし、いわゆる共益権に属する株主総会における議決権は、名目的株主(B)の元に留保されます)。」

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前々回に株主総会の定足数について解説したのですが、その関係で少し補足説明をしたいと思います。

会社法解説その2で述べたとおり、インド会社法では、株主の最低人数が定められており、その数はPublic Companyにつき7人、Private Companyにつき2人とされています。
この規制ゆえに、たとえば外国企業が実質100%子会社を設立したい場合、「Nominal shareholder」(名目的株主)を利用することになります。

名目的株主については、インド会社法187C条が定めており、それによれば、名目的株主は、そのbeneficial interestを他の株主に受けさせることができるとされています。

原文(下線部は筆者による)
187C条1項
Notwithstanding anything contained in section 150, section 153B or section 187B, a person, whose name is entered, at the commencement of the Companies (Amendment) Act, 1974, or at any time thereafter, in the register of members of a company as the holder of a share in that company but who does not hold the beneficial interest in such share, shall, within such time and in such form as may be prescribed, make a declaration to the company specifying the name and other particulars of the person who holds the beneficial interest in such share.

上記187C条1項にいうbeneficial interestには、株主総会における議決権は含まれません。
日本法的にいうと、beneficial interestは、専ら配当を受ける権利等の自益権のことをいい、会社の経営に参与する権利(共益権)はここには含まれません。

すなわち、名目的株主は、配当を受ける権利を第三者(実質的株主)に与えることはできますが、株主総会における議決権を与えることはできません。
したがって、名目的株主といえども、株主総会における議決権は有していることになります。そのため、名目的株主は、株主総会における定足数を構成する株主としてカウントされます。

以前述べたとおり、株主総会の定足数は、Public Companyにおいては5人、Private Companyにおいては2人(ただし、定款でこれより多い人数を定めている場合、それに従う(インド会社法174条))。ですが、名目的株主も数のカウントに含まれるということです(議決権を保有しているので当然といえば当然ですが)。

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株主総会には、proxy(委任状)により代理人が出席することも可能とされています(インド会社法176条)。
ただし、代理人には株主総会における発言権がなく、ただ議決権を行使できるのみです。

株主がproxyを与えられる者について、法令上は特に制限はありません。ただ、上場会社では、定款の規定により、代理人は株主に限っていることが多いようです。
なお、名目的株主が実質的株主に対してproxyを出すということも認められています。

また、株主が法人の場合、当該株主は取締役会決議により、株主総会に出席する代表者(representative)を選任することができます(187条1項(a))。
この「代表者(representative)」は、上記「代理人(proxy)」とは別の概念であり、上述のとおり、後者は株主総会における発言権がないのに対して、前者は株主総会における発言権を有します。

したがって、株主総会で質問等を行う予定である場合、株主が法人である場合には代表者を選任し、また株主が個人である場合、自ら株主総会に出席する必要があるということになります。

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株主総会決議における議決のとり方は、挙手により行われるのが原則です(インド会社法第177条)。

決議要件は、前回述べたとおり、通常決議につき出席株主の過半数の賛成、特別決議につき出席株主の4分の3以上の賛成ですが、挙手による決議が行われる場合、保有議決権数ではなく挙手人数により決議の成否が決まります(つまり、1議決権1票ではなく、1人1票となります)。
この点、どのような場合でも保有議決権数を基準として多数決を行う日本の会社法と大きく異なるため、十分な注意が必要です。

たとえば、出資比率(保有議決権数)が日本側60%、インド側40%であるが、株主数は日本側2人、インド側5人であればという合弁会社(Public Company)を想定します。

このケースで、日本側株主およびインド側株主の全員が株主総会に出席した場合で、インド側株主全員が賛成挙手し、日本側株主全員が反対挙手した場合、5対2で賛成挙手者が過半数を超えているため、保有議決権数は日本側株主の方が上回っているにもかかわらず、通常決議が成立してしまいます。
また、同じケースで、もし日本側株主が1人欠席すれば、4分の3以上の賛成挙手により、特別決議さえ成立してしまいます。

一方、定款に規定がある場合、およびインド会社法上投票による決議が必要とされる場合、株主総会決議は投票により行われ、この場合には多数決の基準は議決権数となります。
インド会社法上、投票による決議が必要とされるのは、①Public Companyにおいて、5万ルピー以上の株式資本を有する出席株主または総議決権の10分の1以上を保有する出席株主が議長に請求した場合、②Private Companyにおいて、出席株主が7人以下の場合出席株主1人が、出席株主が8人以上の場合出席株主の2人以上が議長に請求した場合、③その他の会社(保証付有限会社、無限責任会社)の場合、総議決権の10分の1以上を保有する株主が議長に請求した場合となります(インド会社法第179条第1項)。

以上から、日本企業がインドに合弁会社を設立する場合、法的リスク回避の見地から、
・定款に株主総会決議は投票による旨の規定を設ける
・株主の頭数を一定以上確保する(これは株主総会の定足数が議決権数ではなく頭数ベースとなっていることに対する対応にもなります)
・上記がいずれもインド側合弁相手により拒否されるなどした場合、株主総会ごとに日本側出席株主が必要に応じて投票による決議を議長に請求する
といった対応が必要となると考えられます。

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株主総会の審議、決議の内容については、株主総会開催日から30日以内に議事録を作成する必要があります(インド会社法193条)。
議事録には、株主総会の議長が署名します。

また、株主総会における決議内容は、同様に株主総会開催日からから30日以内にRegistrar of Company(会社登記局)に提出されなければなりません。
そのため、実務的には30日以内に議事録を作成し、その議事録を会社登記局に提出するという手順で処理がなされます。

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次回からは取締役、取締役会の解説です。

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