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インド会社法解説その6 -会社の機関 株主総会①-

今回から数回に分けて、インド会社法(Companies Act, 1956)上の会社の機関の解説をしていきたいと思います。

ちなみに、教科書的な順序だと、機関よりも先に株式についての解説が来るのが普通ですが、ちょっとまだ株式については研究が進んでおらず、また、日本の会社がインドに現地法人やJVを設立する場合に、種類株式等を発行するのはかなり後の話になるかと思われるため、まずは全ての株式が普通株式であるとの前提に基づいて、機関について解説していきたいと思います。

また、ブログ本文で言及している条文については、下記リンクからインド会社法全条文にとべますので、ご参照ください。

http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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インド会社法上、株主総会には定時株主総会と臨時株主総会があります。

インド会社法上、定時株主総会の開催について定めるのは166条です。
同条によれば、会社は15ヶ月に1回以上の頻度で定時株主総会を開催しなければならないとされています(ただし、最初の定時株主総会は設立時から18ヶ月以内に開催すれば足りるとされています。)。

一方、開催の時期については特に規定はありません。
ただし、日本の決算報告書に相当するAnnual Returnという書類が定時株主総会に提出され、承認を受けなければならないとされているところ、Annual Returnは6ヶ月以内に作成されたものでなければならないとされているため、会計年度の末日から6ヶ月以内というのが事実上の定時株主総会の開催期限となります。

ちなみに、会社の会計年度について、インド税法上、法人税の課税年度が4月1日から3月31日までと定められていることから、多くの会社は決算期を4月1日から3月31日までとしています。
このあたりは日本と同じですね。
なお、定時株主総会の開催頻度が15ヶ月に1回以上とされていることと対応して、会計年度も15ヶ月まで延長可能です(さらに3ヶ月を上限として延長することも可能ですが、その場合初年度を除いては会社登記局(Registrar of Company)の承認が必要です。)。

一方、臨時株主総会については、会社は所要の手続きさえ踏めば、いつでもこれを開催することができます。

なお、上記の例外として、会社設立後最初の株主総会(定時株主総会とはまた別の総会)については、会社設立後1ヶ月経過後6ヶ月以内に開催しなければならないとされています(インド会社法165条)。
これは、法令上の株主総会(Statutory Meeting)と呼ばれており、決算書類等の承認の代わりにStatutory Reportという一定の事項を記載した書類を承認するための総会です。

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以下、株主総会関係条文を逐条的に解説します。

株主総会の招集通知は、開催日の21日前までに発送されなければならないのが原則ですが、定時株主総会においては議決権を持つ株主全ての同意を得た場合、臨時株主総会においては95%の株主の同意を得た場合には、召集期間を短縮することも可能です(インド会社法171条)。

召集通知は、全ての株主に対して送付されますが、①株主が死亡した場合や破産した場合等においては当該株主の代理人に、②インド国内に登録住所がない株主において、当該株主が法定監査人を書類の受取人として指定している場合、当該法定監査人に、送付されることとなります(インド会社法172条)。

また、召集通知には、開催日時、場所及び決議事項が記載され、決議事項によっては決議内容を説明する文書の添付が必要とされます(インド会社法173条)。

株主総会の定足数は、Public Companyにおいては5人、Private Companyにおいては2人となります。ただし、定款でこれより多い人数を定めている場合、それに従います(インド会社法174条)。
出席者が保有する議決権の割合ではなく、人数で定足数を決めているところがユニークです。

実はこのことは結構重要で、たとえば、合弁会社(Public Company)において、出資比率(保有議決権数)が日本側60%、インド側40%である場合であっても、株主の人数(名目的株主を含む。)が日本側2人、インド側5人であれば、定款に定足数の加重規定がない限り、インド側の株主が全員出席するだけで定足数がみたされてしまうということになります。
株主総会決議は出席株主のみによる議決権行使により行われるのが原則であるため、公開会社である合弁会社においてインド側の株主の人数が5名を超えている場合、合弁パートナーとの意見の不一致等を理由として日本側の株主が株主総会をボイコットしたとしても、インド側の株主のみで株主総会を開催し、普通決議事項および特別決議事項ともに決議できてしまうことになるのです。
そのため、インドで合弁会社を設立する場合、議決権数のみならず株主数にも注意する必要があり、定款で定足数を加重するなどの対応が必要となると考えられます。

なお、同じインド会社法174条によれば、株主総会の予定開催時刻から30分を過ぎても定足数を満たさず、株主から株主総会不成立の要求が出た場合、当該株主総会は不成立となるとされています。
この場合、取締役会が別の日程を指定するか、日程指定がない場合、ちょうど1週間後の同じ時間、場所で株主総会が開催されることになります。このやり直しの株主総会でも、30分過ぎても定足数が集まらなかった場合、定足数を満たしたものとみなされます。
(個人的に、ものすごーくインドっぽい規定だと思います。174条3項や5項に「『half an hour』以内に行われなかったら…」と大真面目に規定されているのですが、その前に時間に遅れるなよと。)

株主総会の議長は、定款に記載された者が務めますが、定款に規定のない場合、その場で多数決で選任されます(インド会社法175条)。

Proxy(委任状)により株主総会に代理人を出席させることも可能ですが、この場合、代理人は株主総会において発言することはできず、議決権を行使できるのみとなります(インド会社法176条)。
ちなみに、決議は原則として挙手で行うべしとインド会社法177条に規定されています(投票による議決権行使も可能)。

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少し長くなりましたので、今回はこれくらいにして、次回でもう一度株主総会を取り上げたいと思います。

とりあえず、このあたりの手続きは全てインド会社法の条文に細かく規定されていますので、条文を読めばほぼ理解できてしまいます。
インド会社法全条文の日本語訳があればとても便利だと思います。
自力で作る気は全くありませんが。

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コメント

色々と勉強になりました。弊社は2008年半ばからデリーに拠点を持つ現地法人ですが、この度、現地企業との技術譲渡契約の予定ですがロイヤリティ(イニシャル及びランニング)の源泉徴収の仕組みはどうなっているのでしょうか?ご教示いただければ幸いです

住吉謙思
Yamato Scale Indea Pvt Ltd

投稿: 住吉謙思 | 2010年11月 1日 (月) 20時57分

住吉様

初めまして。
コメントありがとうございます。

2005年6月以降の技術ライセンスに関するロイヤリティに対しては、イニシャル、ランニングを問わず、10%(実効税率10.5575%)の源泉徴収の対象となります。
したがって、貴社現地法人が支払いを受領する際には、イニシャルであれランニングであれ、上記税率の金額の源泉徴収後の金額を受領することになります。
(なお、上記見解が正しいかどうかについては、必ず現地の会計事務所に確認していただけますようお願いいたします。

インドの税制については、下記JETROのウェブサイトも参考になります。
http://www.jetro.go.jp/world/asia/in/invest_04/

投稿: kotty | 2010年11月 2日 (火) 22時43分

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