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インド会社法解説その9 -会社の機関 取締役、取締役会①-

前回から少し間が空いてしまいました。

最近、この解説を書くにあたって読まなければならない文献、条文の量が増えてきており、1つの記事を書くのに10時間近く英語の文献に目を通さなければならないという状況になっています。
そのため、今後も更新の頻度は落ちる可能性がありますが、できるだけ正確な解説を行うために必要な時間としてご理解をいただければと思います。

インドの法令は発展途上国としてはよく整備されていますが、規定が不十分、あるいは一読しても意味が理解できないという条文も多くあり(基本的に判例法の国であるということもあるのでしょうが)、理解するにはかなりの苦労が伴います。
日本だって旧商法を外国人が読んで意味が理解できたかというと怪しいので仕方がないのでしょうが、研究が進むにつれてわからないことが雪だるま式に増えていく現状に、いささか閉口気味です。

愚痴ですね。

さて、前置きはここまで。

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インドの会社の取締役は、株主総会の普通決議により選任されます(インド会社法255条)。

(以下、例によって条文リンクを貼り付けておきますので、各条文の原文をご参照ください。)
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

同条では、「取締役の選任は株主総会決議による」とだけ規定されており、「普通決議」とは規定されていないのですが、日本の会社法と同様、特別決議事項でない事項についてはすべて普通決議事項であると解されるため、取締役の選任も普通決議事項となるわけです(なお、特別決議事項については「インド会社法解説その7」をご参照ください。)。
ちなみに、解任の場合は「普通決議」(ordinary resolution)と明示されていたりします(インド会社法284条)。

※こういった条文間の文言の不整合から見られるとおり、どうもインドでは、日本の内閣法制局が追い求めるような「法令の文言に対する厳格性(条文文言の一義性)」がないようです。判例法の国なので、成文法の文言の厳格さにはこだわらないということなんでしょうかね。

同条1項は少し変わった規定で、Public Company および「Subsidiary of Private Company」(この概念については、「インド会社法解説その2」をご参照ください)については、定款において「定時株主総会ごとにすべての取締役が退任する」との規定がない場合には、取締役総員の3分の2を下らない数の取締役は、交代あるいは再任されなければならないとされています。

255条は1項と2項があるのですが、原文が少し読みにくいので、インド人弁護士に意味を確認したところ、266条と併せて以下のような原則を示すものであるとのことでした。

1.Public Company および「Subsidiary of Private Company」について、
①定款において「定時株主総会ごとにすべての取締役が退任する」との規定がある場合、定時株主総会ごとに取締役は退任しなければならない(上場会社は基本的にこの規定を置いているようです)。
②一方、定款にそのような規定を設けていない場合、
A 定員の3分の2以上の数の取締役は、「ローテーションで退任する取締役」のカテゴリーに入る。
B 同カテゴリーに入った取締役のうち半分(=定員の3分の1)は、定時株主総会ごと(=1年ごと)に退任する。退任の順序は、在任期間が長い者からとなる。在任期間が同じ取締役が複数いる場合、くじ引きで決める(だって条文にそう書いてあるんだもの)。
C A以外カテゴリーの定員の3分の1未満の取締役については、法令および定款の規定にしたがって選任可能である。任期は定款の規定に従えばよく、定時総会ごとに退任する必要はない(Cについては、創業者一族がこのカテゴリーの取締役につくことが多いようです。)。

2.Private Companyについて
上記Cと同じく、法令および定款の規定にしたがって選任可能である(任期は定款の規定に従えばよく、定時総会ごとに退任する必要はない。)

上記の通常の選任による場合のほか、会社設立時の当初株式の引受人のうち、個人である者は、株主総会で取締役が適式に選任されるまでは、取締役の地位にあるものとみなされます(当初取締役。インド会社法254条)。

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解任については、上で少し述べましたが、取締役は、株主総会での普通決議により、原則としていつでも解任することが可能です(インド会社法284条)。

Private Companyについては、上記のPublic Companyと同じ3分の2のローテーション解任制度を自発的に設けた場合、取締役の解任ができなくなることもあるようです。

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インド会社法上、下記の非適格要件を満たさない限り、取締役には誰でもなることができます。国籍を問わないので日本人でも取締役に就任可能ですし、インドの居住者である必要もありません。
ただし、一定の業種については、いわゆる業法規制により、インドの国籍保有者でなければManaging Director(日本法上の代表取締役)になれない等の制約があります。

取締役の非適確要件については、インド会社法274条に規定されており、以下のとおり日本の会社法とあまり変わらない内容となっています。

・裁判所により心身薄弱者の認定を受けた者
・免責前の破産者
・破産申立者
・有罪判決を受け、6ヶ月以上拘留されて、かつ判決から5年が経過していない者
・当初取締役につき、資本金の払い込みを懈怠した場合
・インド会社法203条の規定により、裁判所から不適格者との認定を受けた者(過去に会社設立、運営、清算に関して有罪判決を受けた者等が該当)

また、取締役は同時に15社を超える会社の取締役を兼ねてはならないとされているため(インド会社法275条)、すでに15社の取締役に就任している場合、さらに別の会社の取締役となることはできません。

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次回は取締役会についての解説です。

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