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インド会社法解説その10 -会社の機関 取締役、取締役会②-

(2008年5月一部修正)

インド会社法原文リンク(しつこくてすみませんが、本ブログの記事を何かの参考にする場合、原文を参照することを強くお勧めします。)
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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インド会社法上、取締役会は「会社の取締役の総称」として定義されており、日本の会社法のように「取締役とは別個独立の会社の機関(個々の取締役は取締役会の構成員にすぎない)」という捉え方はされていません。

すなわち、インド会社法252条3項は、「会社の取締役を総称してBoard of directorsと呼ぶ」と規定しており、Board of directorsを取締役によって構成される合議体とは定義していません。
参考 インド会社法252条3項原文
The directors of a company collectively are referred to in this Act as the "Board of directors" or "Board".

したがって、インドには日本のように「取締役会非設置会社」という概念は存在しません(非設置会社の制度が存在しないのではなく、そもそもの「取締役会」の概念が異なるため、取締役が複数いる会社(=全ての種類の会社)は、必ずBoard of directorsを持つということになります。)

また、日本の会社法では、取締役会は意思決定機関であり、執行機関は代表取締役(または取締役)となりますが、インド会社法では、Board of directorsそれ自体が意思決定機関であるとともに執行機関を兼ねます(インド会社法291条)。

このように、インド会社法上のBoard of directorsは、日本の会社法上の取締役会とはやや異なる概念ではありますが、実質的な役割や機能にはあまり相違はないため、以下、インド会社法上のBoard of directorsのことも「取締役会」と呼ぶことにします。

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取締役会の権限は、法令や定款で株主総会やその他の会社の機関(監査委員会等)に留保されている権限以外のほぼ全ての権限におよび、これらについて決議を行うとともに、決定した事項を執行します(インド会社法291条1項)。
また、株主総会の決議により、既に行われた取締役会の行為を無効とすることはできないとされています(同上2項)

インド会社法上、取締役会は原則として3ヶ月に1回以上かつ1年に4回以上開催しなければならないとされています(インド会社法285条)。
ただし、中央政府が官報通知により各種類の会社に対して別途の頻度を指定した場合(例えば、「private non-limited companyについては半年に1回で良い」など)、これに従うことになります(同但書)。

取締役会の召集通知は書面で行われる必要があり、法令上は召集手続の省略は認められていません(インド会社法286条1項)。召集通知は、インド国内にいる取締役については方法を問わず渡せばよく、インド国外にいる取締役については、当該取締役が通常インドにおいて居所としている場所に送達することになります。
ちなみに、この召集通知の送達を召集通知担当の役員が怠った場合、1000ルピーの罰金が課されます。
インド会社法上、召集権者についての定めはなく、通常は定款でManaging Director(日本の会社法でいう代表取締役)が召集権者とされているようです。

取締役会の定足数は、取締役全員の数の3分の1または2人のいずれか多い方とされています(インド会社法287条)。
ただし、議題に関して利益相反が生じる取締役については、定足数にはカウントされず、その反面議論や議決のための投票に加わることができません。
ちなみに、定足数がそろわなかった場合、取締役会は自動的に1週間後の同じ曜日、同じ時刻に延期されます(インド会社法288条)。

取締役会の決議要件は、取締役による過半数の賛成です。
ただし、定款で一定の事項につきこれよりも厳しい決議要件を定めた場合、それに従います。

取締役会の書面決議も可能とされています(インド会社法289条)。
日本の会社法上は、取締役の書面決議は取締役全員の賛成が議案の成立要件とされていますが(したがって、全員一致の場合以外は可決できない)、インド会社法上は、通常の会議による決議と同様、過半数の賛成があれば決議できるとされています。
ただし、インド会社法上の書面決議の場合、決議時点でインド国外にいる取締役は決議に参加できません(定足数にもカウントされません。)

インド会社法上の取締役会の書面決議の成立要件をまとめると、以下のとおりです。
①決議すべき議題に関する書類が、その添付書類とともに全ての取締役に回覧されていること(ただし、インド国外にいる取締役については、その取締役が通常インドの居所とする場所に送れば良い)
②書面決議のための書面回覧を行う時点で、インド国内にいる取締役の数が上記で述べた取締役の定足数を満たしていること(上述のとおり、インド国外にいる取締役は定足数にさえカウントされないため)
③書面により過半数の(定足数にカウントされたインド国内にいる)取締役の賛成が得られること

②について、定足数は決議時点でカウントされるため、例えば、①により、インド国外にいる取締役のインド国内の居所にあらかじめ書面を送っておいて、その後取締役が帰国した時点で書面賛成して決議を成立させるということも可能です。
(2008年5月訂正)
定足数がみたされているか否かは、書面決議を行うべく書類を発送した時点を基準にカウントされると考えられます。
書面決議の場合、会合形式の取締役会と異なり、明確な「決議時点」があるわけではなく、法律上は書面を受け取った者が全員即座にサインして送り返せばその時点で成立してしまうため、基準時は書類発送時点の方が明確であるためです。

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なお、書面決議を行ったことをもって、3ヶ月に1度の取締役会を開催したことにはなりません。3ヶ月に1度の取締役会の開催は、会合形式により行われる必要があります。
このあたりは、日本の会社法と同じですね。

さらに、以下の事項については、書面決議ではなく必ず会議形式による決議により決定、執行されなければならないとされています(インド会社法292条)。
・株式の払い込みを行わない株主に対して支払い要求を行うこと
・自己株式の買取
・社債の発行
・社債以外の借入
・会社資金の投資
・貸付

この条文には、①これらの事項については必ず取締役会決議で行わなければならない(日本の会社法362条4項の取締役決議事項の規定に類似します)という意味と、②これらについては書面決議は認められないという2つの意味があります。
もっとも、①について、同条は、上記のうち社債以外の借入、会社資金の投資および貸付については、取締役会はその決議により、決定権限を取締役で構成される委員会(特にインド会社法上特別に規定される委員会ではなく、会社自身が任意に設置する委員会。以下、「取締役委員会」といいます。)に委譲することができるとしています。

なお、取締役委員会に対して権限委譲が行われた事項については、定足数や決議は当該取締役委員会単位で判断され、書面決議も取締役委員会のレベルで行われます。
取締役委員会の定足数や決議要件、書面決議の要件は、取締役会に準じます。

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次回も引き続き取締役と取締役会についての解説です。
何とか更新ペースを上げられるよう頑張ります。

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