« インド外資規制解説その14 -プレスノート2006年第4号和訳- | トップページ | 年末年始 »

インド会社法解説その13 -会社の機関 監査役、監査委員会①-

(2008年7月、監査役の役割についての記載を中心に加筆修正。修正部分には下線を付しています)

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

今回から、監査役と監査委員会の解説です。

--

インド会社法上、監査役(auditor)は、会社の会計監査および監査意見の表明の権限を有する一方、基本的に業務監査権限は有していません(インド会社法227条)。

この点で、インド会社法上の監査役は、原則として業務監査権限を有する日本の会社法上の監査役とは大きく異なっており、むしろ日本でいえば会計監査人に相当する存在です(そのため、選任するのは通常1人のみです)。

インド会社法上、業務監査を行うとされているのは、(3人以上の取締役により構成される)監査委員会となります。
なお、日本の会社法でも、委員会等設置会社においては、監査委員会は取締役会の元に置かれるためことになります
したがって、インドにおける「監査役」、「監査委員会」は、それぞれ日本における「会計監査人」、「委員会等設置会社における監査委員会」に対応するとお考えいただければと思います。

上記整理から、インド会社法上は、「監査役」とは別個の「会計監査人」という地位、役職は存在しません。
このような職責を単に日本語で監査役と呼ぶのは、日本法上の監査役という言葉のイメージとの関係で混乱を招く恐れがあるため、以下では、インド会社法上の監査役は括弧書きをつけて「監査役」と呼ぶことにします。

ちなみに、世界的には、業務監査は取締役会(一元制の場合)または取締役により構成される監査委員会その他の機関(二元性の場合)により行われるのが通常であり、日本の監査役制度は比較法的には非常に珍しい制度となっています
その意味で、インドの制度はむしろワールドスタンダードに沿ったものであり(イギリスの制度をそのまま採用しているので当然といえば当然ですが)、日本における監査役の制度の方が世界的にはイレギュラーであるといえます。

--

さて、上述のとおり、インド会社法上の「監査役」は、日本でいえば会計監査人にあたることから、個人で「監査役」となりうるのは、原則として1949年インド勅許公認会計士法(Chartered Accountants Act, 1949)に基づく勅許公認会計士の資格を有する者のみとされています(インド会社法226条)。

また、日本の会社法上は監査役になりうるのは個人だけですが、インド会社法上は個人のみならずファーム(firm。パートナーシップによる事務所。会計事務所を想定。)も「監査役」となることが可能です(同条)。
上述のとおり、「監査役」は日本の会計監査人とパラレルであることから、このようなファーム(会計事務所)が「監査役」に就任ことも認められるのです。

なお、上記要件を満たすものであっても、以下のいずれかに該当する場合、「監査役」に就任することはできません(インド会社法226条3項)。
・企業
・当該会社の役員または従業員
・会社の共同出資者
・会社から1000ルピー以上の貸付または保証を受けている者
・当該会社の株式(議決権付株式)を保有している者

また、ある会社について、その子会社の「監査役」の要件を満たさない場合、当該会社(=親会社)の「監査役」としても不適格とみなされます。

選任後にこれらの不適格要件を満たすに至った場合、その時点で任期が終了したものとみなされ、「監査役」を退任したものとみなされます。

--

インド会社法上、「監査役」は、株主総会の普通決議により選任され、その任期は定時総会から次回の定時総会までの1年間とされています(インド会社法224条1項)。
ただし、会社設立後最初に選任される「監査役」は、会社登記後1ヶ月以内に取締役会により選任され、その任期は最初の定時株主総会までとなります(同条5項)。取締役会が選任しなかった場合、最初の株主総会(定時株主総会とは限らない)で最初の「監査役」が選任されることになります。

会社が一方的に「監査役」を選任するということはできず、選任の前に「監査役」候補者から選任についての同意書面を取得しておく必要があります。
会社は、選任から7日以内に「監査役」として選任した者に対して選任通知を送付します(同条1項)。

会社から「監査役」として選任された者は、選任通告から1ヶ月以内に、会社登記局(Registrar of Company)に対して書面で当該選任を受諾したか辞退したかを通知する必要があります(同条1-A)。
(ただし、上述の通り、選任前に「監査役」候補者の同意書面を取るため、実際に辞退が生じるのは、健康上の問題など急な事情の変化が生じた場合のみであるのが通常です。)

1人の個人またはファームが「監査役」を選任できる会社数には制限があります(同条1-B、1-C)。この制限数のカウントはかなりややこしいのですが、一般的には、Public Companyの「監査役」となる場合、他に「監査役」として選任されている会社の数が、当該Public Company自身も入れて10社以下である必要があります(ただし、他の全ての会社の資本金が250万ルピー以下であれば、20社まで兼任可能)。
要するに、既に10社から「監査役」に選任されている場合、新たに他のPublic Companyの「監査役」として選任されることは原則としてできないということです。

ちなみに、「監査役」は再任が原則とされており、以下の各場合に当てはまる場合を除いて、「監査役」は再任されなければならないとされています(インド会社法224条2項)。

①「監査役」が再任不適格となった場合
②「監査役」が自ら再任を辞退する書面を会社に提出した場合
③株主総会において、前任の「監査役」を再任せず、その代わりに新たな監査役を選任することを明示的に決議した場合
④新任の「監査役」を選任するための決議が、当該「監査役」の死亡等の理由により行われなかった場合

--

会社が定時株主総会で「監査役」を選任しなかった場合、インド中央政府が代わりに「監査役」を選任します(同条3項)。
このインド中央政府により権限行使のため、会社は、「監査役」を選任できなかった定時株主総会から7日以内に、その事実をインド中央政府に通知しなければならず、これを怠った場合には5000ルピーを上限とした罰金が課されます(同条4項)。

--

「監査役」が、不適格になった等の理由で退任した場合、取締役会が代わりの「監査役」を選任します。この代わりの「監査役」の任期は、退任前の取締役と同じです(したがって、次回の定時株主総会までということになります(同条6項)
ただし、「監査役」が、自発的に辞任した場合、取締役会が代わりの「監査役」を選任することはできず、株主総会でのみ選任することが可能です。そのため、「監査役」が自発的に辞任した場合、臨時株主総会を招集して代わりの「監査役」を選任する必要があります。

--

「監査役」は、インド中央政府の事前承認を得ることを条件として、株主総会の普通決議によって、その任期中いつでも解任することができます(同条7項)。

なお、実際上、この事前承認をもらうためには一定の正当な理由(「監査役」の職務怠慢、会計監査事務の誤りの存在等)が必要だそうで、特に理由がないのに解任するということは難しいそうです。

--

監査役の報酬は、
①監査役が取締役会または中央政府により選任された場合、それぞれその選任者により
②その他の場合、株主総会決議により
決定されます(同条8項)。

--

次回も監査役、監査委員会の解説です。
なお、次回は年明け以降となる予定です(もしかしたら年内にもう一度くらいは更新できるかもしれませんが。)

|

« インド外資規制解説その14 -プレスノート2006年第4号和訳- | トップページ | 年末年始 »

インド会社法解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« インド外資規制解説その14 -プレスノート2006年第4号和訳- | トップページ | 年末年始 »