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インド会社法解説その15 -会社秘書役-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

今回は会社秘書役の解説です。

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会社秘書役(Company Secretary。米国ではCorporate Secretary)は、日本の会社法上は存在しない役職ですが、英米法系の会社法では会社の重要な役職とされており、会社内部や株主の管理を行うとともに、会社のコンプライアンスについての責任を負います。また、文書管理もその重要な権限であり、対外的な文書が会社秘書役の名前で出されたり、会社秘書役の認証により文書の真正の証明が行われるということが一般的です。

日本語の感覚で「秘書」(あるいは英語の感覚で「Secretary」)というと、上司の補佐的な役割の職務との感覚を持ちますが、会社秘書役は、上記のとおり強い権限を有しており、その会社内での地位も高いのが通常です。
その意味で、日本語の訳としては、「秘書役」よりも「事務総長」という言葉の方が適切かもしれません(実際、国際連合の事務総長は、英語で書くと「Secretary-General」となります。)。

ちなみに、日本企業が海外(英米法系の国)に進出した際に、「あなたの会社のCompany Secretaryは誰か」と聞かれた場合、「日本法にはそのような概念はありません」と説明する対応のほか、総務部の部長をCompany Secretaryであると答えるとの対応があるようです。

さて、インド会社法383A条は、資本金(授権資本価額ではなく、実際に払い込まれた資本金)が2000万ルピー(約6000万円)以上の会社については、社内に常任の会社秘書役(whole-time secretary)を持たなければならない旨定めています。ただし、会社の取締役が2人しかいない場合、取締役が会社秘書役を兼任することは禁止されます(同条1項本文)。

また、同条は、資本金が100万ルピー(原文:「10 lakh rupees」。「lakh」というのは、インド独自の単位で、「10万」を意味します。)以上、2000万未満の会社については、直接社内に会社秘書役を持つ必要はないものの、会社がインド会社法の全ての規定に従っているかどうかについての証明書を、外部の会社秘書役から取得し、会社登記局に提出する必要があります(同条1項但書)。
この証明書は、インド会社法施行規則により定められた書式を用いて、定められた期間、条件に従って記載される必要があり、また、証明書を発行する外部の会社秘書役は、発行する時点で実際に他の会社の常任の会社秘書役に就任している者である必要があります。
なお、この証明書については、その写しを、定時株主総会に提出される取締役会の報告書に添付する必要があります。
これらの規定の趣旨は、一定規模があるにもかかわらず、会社秘書役を持たない会社について、コンプライアンスを確保するという点にあります。

これらの規定に違反した場合、改善されるまで1日最大500ルピーの罰金が貸される可能性があります。
罰金そのものは大した金額ではありませんが、「過去○年間罰金を課されたことがないこと」というのが公共入札等の要件となっていることが多いため、会社に対する制裁として機能しうるという仕組みだそうです(もっとも、日本ほどその実効性は強くないそうですが)。

ちなみに、従前はインド会社法378条から383条までに、会社秘書役は法人または事務所でなければならないという規制や、会社財務役(treasurer)という役職についての定めがあったりしたのですが、2000年12月のインド会社法改正で、378条から383条までがまとめて削除されたため、現在は、上記一定以上の資本金を有する会社は会社秘書役を持たなければならないと規定する383A条のみが残っているという状況です。

冒頭のリンク先では、まだ378条から383条が残っていますが、これらは単に改正を反映していないというだけだと思います。
まあ、日本の法令データ提供システムのようなオフィシャルなものではなく、プライベートでやっているサイトなのでしかたないですね…。

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ところで、インド会社法上、Company Secretaryには誰でもがなれるわけではなく、Company Secretaryの資格要件として、Company Secretary Degreeと呼ばれる資格を有し、かつInstitute of Company Secretaries of Indiaという機関に登録していることが必要とされています。

インドにおいて、Company Secretary Degreeは、Chartered Accountant(公認勅許会計士)資格と同様の公的資格であり、インド人弁護士に聞いたところ、資格試験の難易度はそれなりに高いとのことです(合格率は2~3%)。
少なくとも、インドにおいては法学部(ロースクール)さえ卒業すれば基本的に付与される弁護士資格よりも希少価値のある資格であり、有資格者の数はそれほど多くはないようです。

しかも、試験に合格しただけではCompany Secretary Degreeの有資格者として Institute of Company Secretaries of Indiaに登録することはできず、登録するためには、試験合格後15ヶ月のインターンシップが必要となります。このあたりは日本の会計士試験の会計士補制度と似ています。

15ヶ月のインターンが終わると、晴れて Institute of Company Secretaries of Indiaに登録することができ、会社のCompany Secretary となることができます。

このCompany Secretary Degreeの資格取得および登録の困難さを、雇う側の会社から見ると、「会社のCompany Secretary (特にwhole-time Company Secretary)となってくれる人材を探してくるのはそんなに簡単ではない」、ということになります。

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次回は株式および新株予約権です。
その後は解散、清算の予定です。

なお、インド会社法上の株主の権利(株主総会の普通決議事項、特別決議事項、少数株主権)について今まとめており、できたらアップするかもしれません(ただし、論文として発表することになった場合には、論文発表まではアップを控える可能性があります)。

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