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インド会社法解説その16 -株式、新株予約権①-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

少し間が空いてしまいました。
今回から、株式と新株予約権についての解説です。

※今回から条文にリンクを入れてみました。過去ログ分についても、時間があるときにリンクを入れていければと思っています。

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◎株式の種類

インド会社法上定められている株式の種類は、普通株式(equity share)と優先株式(preference share)のみであり、その他の種類株式について特に規定がありません(インド会社法85条86条)。
このあたり、会社法の施行に伴って、議決事項制限株式や取得条項付株式といった種類株式の定めが設けられた日本とはかなり状況が異なります。

public companyについては、上記インド会社法上に明文規定のある普通株式と優先株式のみが発行できることとされているため、発行できる株式の種類は上記2種類のみとなります。

一方、private companyについては、インド会社法90条2項が同条85条から89条までのprivate companyへの適用を除外していることから、定款に定めを設けることにより他の種類の株式を発行することも可能です。ただし、インド人弁護士に聞いたところ、優先株式以外の種類株式が発行されたという実例はあまり聞かないとのことでした。
「private companyが発行できる種類株式」という点については、まだ議論が成熟しておらず、たとえば定款で規定すれば拒否権付株式(黄金株)が発行できるのか(種類株式についての定款自治はどの程度認められるのか)といった論点はあまり議論されていないようです。

議論が複雑になることを避けるため、とりあえず以下では、普通株式と優先株式に絞って解説したいと思います。

普通株式の保有者は、全ての事項について議決権を有する一方、利益配当については通常の権利のみ有します。
他方、優先株式の保有者は、当該優先株式につき附属定款上認められた権利についてのみ議決権を有する一方、利益配当や残余財産分配について優先的権利を有します(インド会社法87条

優先株式に議決権が認められる事項は以下のとおりです。
アからエまでは法定議決権留保事項であり、これらについて議決権を認めない優先株式は発行できません。
ア 利益配当
イ 減資
ウ 会社の解散
エ 残余財産分配
オ その他附属定款において優先株式の権利として認められた事項

優先株式について、日本の会社法と大きく異なるところは、発行から最長でも20年以内に償還されなければならないという点です(インド会社法80条5A項。)。
すなわち、優先株式については、20年を最長として、または定款でそれよりも短い償還期間を定めた場合、その期間に従って償還されなければならなりません。

そのため、優先株式を恒久的に保有することはできず、どこかの時点で必ず償還しなければならないということになります。このあたりの性質は、株式というよりはむしろ社債と似ています。
この性質ゆえに、例えば優先株式を預託証券の原株式とすることなどは事実上できません。

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◎株式発行手続

設立の際の株式発行については、設立手続の際の中での資本金の払い込みにより行われるため、以下ではもっぱら会社設立後の新株発行の手続に絞って解説したいと思います。

普通株式、優先株式を問わず、会社設立後に追加で新株を発行する場合の手続は、大きく分けて、①会社設立後一定期間経過後の既存株主への発行、②会社設立後一定期間経過前の既存株主への発行または発行時期を問わない第三者への発行、③役員および従業員への発行の3つがあります。
①から③の場合で、それぞれ手続が異なるため、以下、場合を分けて手続の概要を解説します。

①会社設立後一定期間経過後の既存株主への発行

会社は、設立から2年経過するか、設立後最初に行われた新株引受権に基づく株式の割り当てから1年経過するかのいずれか早い時期以降、既存株主に対して株式を追加的に発行(=新株発行)することができます(インド会社法81条1項)。
この既存株主への新株発行は、public companyとprivate companyとを問わず株主総会決議事項とはされていないため、会社の種類がいずれであっても新株発行の決定自体は取締役会決議により行われます。

ただし、インド会社法79条により、株式を市場価格または公正価格(非上場の場合に、株式の価格として公正とみなされる価格)よりも低い価額で発行する場合、株主総会の通常決議(過半数の賛成)が必要となるため、たとえば無償割当を行う場合等、市場価格または公正価格よりも低い価格で割当を行う場合、割当価額について株主総会の通常決議による承認を得る必要があります。

②会社設立後一定期間経過前の既存株主への発行または発行時期を問わない第三者への発行

①の要件を見たさない既存株主への新株発行を行う場合、および発行時期を問わず第三者に新株を発行する場合、public companyについては、原則として株主総会での特別決議(4分の3以上の賛成)が必要となります(インド会社法81条1A項(a))。株主総会通常決議で新株発行を行うことも可能ですが、その場合、中央政府の認可を得る必要があります(インド会社法81条1A項(b))。
①で述べたとおり、株式を市場価格または公正価格よりも低い価額で発行する場合、割当価額について別途株主総会の通常決議による承認を得る必要がありますが、この場合、1回の株主総会で発行についての特別決議(あるいは通常決議)および発行価額についての通常決議を行うべきことになります。

一方、private companyについてはこれらの規定が適用とならないため、株主総会の特別決議なくして(通常は取締役会決議により)、新株発行が可能です。ただし、株式を市場価格または公正価格よりも低い価額で発行する場合、割当価額について株主総会の通常決議による承認を得る必要があることは同じです。

③役員および従業員への発行

インド会社法では、役員および従業員への報酬、褒賞の一環として、通常よりも安い価格で発行する株式を、sweat shareと呼んでいます(インド会社法79A条)。
意訳すると、「会社のために流した汗に対する対価としての株式」といったところでしょうか。

public companyとprivate companyとを問わず、sweat shareを発行する場合、株主総会の特別決議が必要となります。
なお、この場合、「通常よりも安い価格」というのがそもそものsweat shareの定義に含まれているため、市場価格や公正価格よりも低い価額で株式を発行する場合であっても、発行価額についての株主総会決議を別途経ることは不要となります。

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次回も株式と新株予約権の解説です。

正直、株式と新株予約権のところは制度がかなり複雑で、把握に四苦八苦しています…

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