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インド会社法解説その17 -株式、新株予約権②-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

今回は、種類株式について、前回の内容を一部訂正するとともに、補足説明をしたいと思います。

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前回、「インド会社法上定められている株式の種類は、普通株式(equity share)と優先株式(preference share)のみです(インド会社法85条、86条)。」と書きましたが、その後もう少し調べたところ色々とわかったため、以下のとおり補足訂正します。

インド会社法上、株式の種類は、大カテゴリーとしては確かに普通株式(equity share)と優先株式(preference share)しか存在しないのですが、普通株式(equity share)の下に、classと呼ばれるサブ分類があります
つまり、普通株式(equity share)という大カテゴリーの中に、小カテゴリーとしてのclass shareがあり、このclass shareの中で、それぞれ議決権や配当について異なる定めができるのです。

以下、インド会社法86条の原文を引用します。

The share capital of a company limited by shares shall be of two kinds only, namely:-
 (a) Equity share capital-
  (i) with voting rights; or
  (ii) with differential rights as to dividend, voting or otherwise in accordance with such rules and subject to such conditions as may be prescribed;
 (b) Preference share capital.

上記86条の(a)の下に(i)と(ii)の規定がありますが、これがclass shareについての定めであり、普通株式(equity share)の中でclassを作って、配当や議決権について異なる定めができることの根拠規定となります。
(ちなみに、上記規定で(b)の下には項目がないことは、優先株式(preference share)には普通株式(equity share)のようなclass shareはないことを意味します。)

すなわち、インドの種類株式の構成は、
①普通株式(equity share)と優先株式(preference share)という大カテゴリーでの区別
②普通株式(equity share)の中でのclass shareという区別
という2段階構成になっているのです。

ただし、class share間で権利を異ならせることができるのは、通常、配当および議決権に関する権利のみであり、日本の会社法のように、特定のclassの株式に取得条項を付けたり拒否権を付けたりするということはできません。
言い換えれば、class shareとは、配当と議決権についてのみ異なる定めができる株式のクラスであり、それ以外については他の普通株式(equity share)と同じ扱いをすべきということになります。

また、class shareは、全く自由自在な設計が認められているわけではなく、その設計はインド会社法施行規則上の一定のルールに従う必要があります。
このルールは結構複雑なため、残念ながらフォローができていません。結構時間をかけて読んだのですが、そうおいそれと要約できるものではありませんでした…

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さて、上記インド会社法86条(a)(ii)に基づいて、「配当優先権が認められる、議決権のない普通株式(equity share)」というclass shareを作ったとします。

このclass share(以下、説明の便宜上、「配当優先無議決権equity share」といいます。)は、大カテゴリーとしての優先株式(preference share)とは何が異なるのでしょうか。
以下、主な相違点を列挙します。

1.残余財産分配への優先権の有無
上で述べたとおり、class shareにおいて異ならせることができるのは、配当および議決権に関する権利のみであることから、「配当優先無議決権equity share」は、破産や会社解散の際の残余財産分配については優先権を有しません。

2.法定議決権保有事項の有無
また、前回述べたとおり、優先株式(preference share)には法定議決権保有事項(利益配当、減資、会社の解散、残余財産分配等についての決議)が定められていますが、普通株式(equity share)のclass shareにはそのようなものはありません。したがって、「配当優先無議決権equity share」については、これらについても議決権なしとすることが可能です。

3.20年以上の償還(転換)義務の有無
前回述べたとおり、優先株式(preference share)発行から最長でも20年以内に償還されなければなりませんが、「配当優先無議決権equity share」はあくまで普通株式(equity share)の一種ですので、そのような償還義務はありません。

※ちなみに、前回の解説では漏れてしまいましたが、優先株式(preference share)は必ずしも償還する必要はなく、普通株式(equity share)に転換することも可能です。
償還が予定されている優先株式(preference share)は、redeemable preference shareと呼ばれ、普通株式(equity share)への転換が予定されている優先株式(preference share)は、convertible preference shareと呼ばれます。
要するに、「20年以内に優先株式(preference share)が存在しなくなればよい」のであり、その方法は償還でも普通株式(equity share)への転換でもどちらでもかまわないということです。

なお、まだ十分な検討をしたわけではありませんが、「配当優先無議決権equity share」であれば、無議決権かつ優先配当としつつ、一定期間内の償還または転換義務を避けることができるため、預託証券の原株式に適する可能性があります。

4.株式資本上の分類
これも前回の解説漏れですが、普通株式(equity share)と優先株式(preference share)とは、実は株式資本レベルでも区別されています。
すなわち、前者により構成される資本金は普通株式資本(equity share capital)、後者により構成される資本金は優先株式資本(preference share capital)と、それぞれ呼ばれており、定款や登記上も区別されています。
要するに、会社の登記簿謄本の「資本金欄」を見ると、普通株式資本(equity share capital)、の金額と、優先株式資本(preference share capital)の金額が別々に書いてあるということです。

したがって、配当優先無議決権equity shareの権利内容をいかに優先株式(preference share)に近づけたとしても、両者は株式資本上別物と分類されているため、配当優先無議決権equity shareの金額を優先株式資本(preference share capital)にカウントすること等はできないということです。

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以上、冒頭でも述べましたが、インドの種類株式の構成は、
①普通株式(equity share)と優先株式(preference share)という大カテゴリーでの区別
②普通株式(equity share)の中でのclass shareという区別
という2段階構成になっています。

ちなみに、原文の文言では、①が「kinds of shares」、②が「class share」と呼ばれています。

上記のような種類株式の2段階構成は、日本の会社法上の種類株式の構成とかなり異なるため、なかなか理解が難しいところではありますが、そのうち上記分類を整理した論文を書いてみたいと思います。
ていうか、誰か学者さん、書いてくれないかな…

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種類株式については制度自体が複雑なこともあり、今回は内容が少しわかりにくいかもしれません(書いている側も理解するのが大変でした…)。

次回は新株予約権を中心に解説したいと思います。

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