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インド会社法解説その18 -株式、新株予約権③-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

新株予約権の解説です。

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インド会社法には、新株予約権(ストックオプションとしての新株予約権、新株予約権付社債その他一切の形態の新株予約権を含む)についての明文規定は存在しません。
すなわち、インド会社法上は、「新株予約権」という単体の制度は存在しません。

新株予約権と同様の機能を持つ手法(以下、説明の便宜上、「新株予約権類似手法」といいます。)をとることはできますが、それらは全て通常の新株発行手続(インド会社法81条1A項(a)。詳細はこちらを参照)を経て行われます。

すなわち、インド会社法の基本的な考え方は、「新株予約権は将来における新株発行の引受けの権利である」というものであり、全ての新株予約権類似手法は、「将来における株式発行」という形で概念整理されています。

したがって、新株予約権類似手法をとる場合、日本の会社法上のストックオプションとしての新株予約権、新株予約権付社債、あるいは通常の新株予約権のいずれに対応する手法をとる場合であっても、通常の新株発行手続を経ることが必要です。
具体的には、Public Companyについては原則として株主総会での特別決議(4分の3以上の賛成)が、Private Companyでは取締役会決議が必要となります(インド会社法81条1A項(a))

もっとも、新株発行手続さえ経れば、どのような新株予約権類似手法もとりうるというわけではなく、それぞれの類型に応じて、一定の規制に従うことが必要とされています。

インドにおける新株予約権類似手法の類型は、大きく分けて以下の3つに分類できます。

①役員または従業員に対するストックオプションの発行
②第三者への、「将来の株式引受権」の発行
③転換社債(convertible debenture)の発行

以下分けて解説します。

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①の方法は、役員または従業員に対して契約により将来の新株発行を約束するというものです。
日本法でいえば、ストックオプションとしての新株予約権の発行に対応します。

手続は、
(a) 通常の新株発行手続を経ていること(Public Companyについては株主総会特別決議を経ていること、Private Companyでは取締役会決議を経ていること)
(b) 役員または従業員との間で、将来の株式割当契約を締結すること
(c) Public Companyについては、インド証券取引法の施行ガイドラインの1つである「1999年従業員のストックオプションおよびその購入についてのガイドライン」(SEBI (Employee Stock Option Scheme and Employees Stock Purchase Scheme) Guidelines, 1999)に従うこと
となります。

(a)が通常の新株発行手続であり、それと(b)とを組み合わせて、「従業員に対する将来の株式引受け権の付与(=ストックオプション)」を実現していることになります。
なお、(c)について、private companyは、上記ガイドラインに従う必要はありません。

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②の方法は、役員や従業員以外の第三者に対して、契約により将来の新株発行を約束するというものです。
日本法でいえば、第三者に対する新株予約権の発行に対応します。

手続は、
(a) 通常の新株発行手続を経ていること(Public Companyについては株主総会特別決議を経ていること、Private Companyでは取締役会決議を経ていること)
(b) 第三者との間で、将来の株式割当契約を締結すること
(c) Public Companyについては、「1956年証券契約規制法」(Securities Contracts (Regulation) Act, 1956)に従うこと
となります。

(a)が通常の新株発行手続であり、それと(b)とを組み合わせて、「第三者に対する将来の株式引受け権の付与」を実現していることになります。
なお、①と同様、(c)について、private companyは、上記ガイドラインに従う必要はありません。

ちなみに、①と比べると、違うのは契約の相手方と従うべき法令、ガイドラインだけであり、このことからも、インド会社法上は従業員に対するストックオプションと第三者への新株予約権の割当が区別されていないことがわかります。

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③の方法は、第三者に対して「将来株式に転換できる社債(debenture)」を発行するというものです。
日本法でいえば、転換型新株予約権付社債の発行に対応します。

手続は、
(a) 通常の新株発行手続を経ていること(Public Companyについては株主総会特別決議を経ていること、Private Companyでは取締役会決議を経ていること)
(b) 通常の社債発行手続(Public CompanyおよびPrivate Companyのいずれについても取締役会決議)を経ていること
(b) 第三者との間で、転換社債(convertible debenture)の引受け契約を締結すること
(c) Public Companyについては、インド証券取引法の施行ガイドラインの1つである「1999年開示と投資家保護に関するガイドライン」(SEBI (Disclosure and Investor Protection) Guidelines, 1999)に従うこと
となります。

(a)が通常の新株発行手続、(b)が通常の社債発行手続であり、それらと(c)とを組み合わせて、「将来株式に転換できる社債(debenture)の発行」を実現していることになります。
なお、(d)について、private companyは、上記ガイドラインに従う必要はありません。

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以上見たとおり、インド会社法上は、「新株予約権」という単体の制度は存在せず、新株発行手続と契約、ガイドライン等を組み合わせて、各種新株予約権と同様の機能を有する手法を採用するという方法をとっています。

そのため、インドの新株予約権の制度を、日本の会社法上の「制度としての新株予約権」の感覚で見てしまうと理解しにくいため、注意が必要です。

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次回は自己株式の買受け(あと余裕があれば株式分割も)についてです。
次回で株式、新株予約権関係は終わり、次々回からは組織再編(事業譲渡、合併、会社分割)を解説したいと思います。

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