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The Symphony Orchestra in India

先週金曜日、National Centre for the Performing Arts(NCPA。ムンバイにある国立劇場)で行われたクラシックコンサートに行ってきました。
NCPAを本拠地とするオーケストラであるSymphony Orchestra in India(SOI)に所属されている日本人の方のご紹介です。

NCPAは、ムンバイ随一(というか唯一)のおしゃれスポット、Nariman Pointにあります。
おそらく全世界のHiltonの中で最も宿泊費が高いであろうHilton Mumbai(宿泊費は最安でも500米ドル以上)とOberoi Hotelの真向かいです。

チケットは、前から3列目で400ルピー。
2列後になると値段が倍以上に跳ね上がるということもあり、紹介していただいた方のご好意で「安い中で一番良い席」をとってもらうことができました。
さすがに3列目だと少し前過ぎる感はありますが、音はよく響いており、あまり気になりません。

NCPAは今回初めてだったのですが、入り口、ホールともに素晴らしい設備です。
大きさはともかく、内装は芸術的なセンスも含めて日本の新国立劇場にも劣りません。
まさにインドの「陽」の面を象徴するかのような建物です。
中にいる人達も、皆いかにも「富裕層」というオーラを全身から出していました。

NCPAの入り口

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NCPAのホール内と舞台。ホールは少し小さめですが、音響は良いです。

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50ルピーで販売されていたプログラム

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開始は午後7時とされていましたが、当然のごとく30分ほど遅延
ほぼ予想どおりの遅れです。というか、1時間以上の遅れは覚悟していたので、むしろ拍子抜けでした。

オーケストラの団員が入場。
??
インド人がほとんど見当たりません。
見た目金髪碧眼でどうみても欧米人というのが6割、黒髪黒目のアジア人が3割くらいで、インド人っぽく見えるのはせいぜい1割くらいです(その理由は後でわかりました)。

1曲目はモーツァルトのSymphony in C major No. 36 KV 425 “Linzer”。
日本では「リンツ」という名前で親しまれている、天才モーツァルトがオーストリアのLinz滞在時に4日間で書き上げた交響曲です。
どうでもいいですが、日本語ではなんで「リンツ」なんでしょうね。「リンツの交響曲」という愛称なんだから、英語のように「Linzer」と形容詞にするのが正しいと思うのですが(読み方は、リンツァー(ドイツ語読み)またはリンザー(英語読み))。

これは良かったです。
音がとても安定していて、予想していたよりもはるかに良い演奏でした。

2曲目はベートーベンのTriple Concerto。
ピアノ、バイオリン、チェロの協奏曲です。

これは駄目。
ピアノの人はともかく、バイオリンは音程はずしまくり、チェロは音がかすれているなど、とてもではないですがまともな協奏曲として聞くにたえません。
なんでこんなのがソリストとして出てるんだろう?
今日はたまたま調子が悪かったんだろうか。
ちなみに、ソリストは双方とも欧米系の人で、インド人ではありませんでした。

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2曲目の後の休憩時間に、オーケストラの一員として出演されていたSOI所属の日本人の方と10分ほどお話する時間がありました。

やはり団員の中にインド人はほとんどいないとのことで、今回のオーケストラのメンバーの大半はウィーンから来ているとのこと。指揮者もコンサートマスターもウィーンから招かれているそうです。
道理で手堅いわけだ。

なぜインド人が少ないのかと聞いたところ、「まだまだインドではクラシックの楽器演奏が普及しておらず、プロオーケストラに出演できるような技術を持った人間がほとんどいないため」とのことでした。

事情はわからなくもありませんが、インド国内のオーケストラでインド人が1割程度しかいないってどうなんだろう。技術的に稚拙であるとしても、もっとたくさんインド人を使わないとレベルの底上げができないんじゃないだろうか。
外国人傭兵部隊のようなオーケストラ構成を思い出しながら、相槌を打っていました。

インド随一の先進都市であるムンバイでもこの状況なので、インドが本当の意味で自前のオーケストラを持つことができるのは当分先になりそうです。
なお、これは勝手な推測ですが、コンサートは単体では大赤字だと思います。ホール自体に1000人くらいしか入らない上、安い席だと200ルピー、一番高い席でも1500ルピー程度ということは、座席平均800ルピーとして全席売れたとしても80万ルピー(約240万円)にしかならないわけで、ウィーンから数十人単位で来ているオケ団員の渡航費用にさえなりません。おそらく文化事業ということで補助金が出ているのでしょうが、それにしても厳しい収支です。

ちなみに、おそるおそる「2曲目は本当にあれでよかったのか」と聞いてみたところ、その方の感想としても、2曲目は音外しまくりだったとのことです。
が、2曲目でバイオリンを弾いていたのは、SOIの音楽監督で、SOIで最も偉い人(しかもその日本人の方の師匠)だそうです。

……今日は調子が悪かったのでしょう、たぶん。

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休憩終了後、本日最後のプログラムであるムソルグスキーのPictures at an exhibition(展覧会の絵)が始まりました。

これは1曲目と同じく良かったです。
寄せ集めのオーケストラということを感じさせない安定した演奏でした。
とりあえず、協奏曲でソロを張れる人材の育成というのが、SOIの優先課題といったところでしょうか。

アンコールは、近日中に上演が予定されているMadama Butterflyのアリア2曲でした。
日本人役をやっていたのが本当の日本人だったので、少し驚きました。

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全体として、今回のSOIのコンサートはとても楽しめました。
少なくとも400ルピーの価値は十分にあったと思います。

公演回数がものすごく少ない(4月を起点にシーズン開始で、今回は第4シーズンなのですが、公演回数は全部で6回しかありません)のがとても残念ですが、5月には2008年度の第1シーズンが開催されるようですので、また機会があれば是非見に行きたいです。

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コメント

クラッシック音楽にも通じているとはさすがです(笑)。
ただ、このコンサート、公演だけでペイさせようとはしてないでしょうね。団員はNCPA内のフラットに住んでいますが、現在の家賃は月額100万ルピー(!)になっています。もちろん、政府が多少援助しているのかもしれませんが。
ここには以前は商社の支店長が多く住んでいましたが、この金額のせいで今はほとんどの方が退居されました。。。

>まさこの 様

本当に今のムンバイの不動産賃料の値上がりは異常です。
「ドルベースに直して世界で一番高い」と断言できます。

実体経済が日本の10分の1以下の国が、不動産賃料の水準だけが東京の3倍近いというのはいったい何事でしょうか。
ホテルの宿泊費も異常な水準です。あの程度の設備のHiltonで、NYのロックフェラーセンター脇のHiltonの倍以上の宿泊費ってありえないです。

ムンバイ(というかインド全土)の現在の不動産市況は確実にバブルなので、間違いなく数年後にははじけると思います。
その前に、ムンバイからは日本企業を含めて外国企業が次々に撤退していくと思います。事業コストが高すぎます。

投稿: まさこの | 2008年2月20日 (水) 17時12分

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