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インド会社法解説その22 -組織再編(事業譲渡、合併、会社分割)③-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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今回は、裁判所を通じた合併(Merger / Amalgamation)および会社分割(Demerger)の具体的な手続の解説です。

前回解説したとおり、合併または会社分割を行う場合、存続会社(承継会社)の登録住所地を管轄する高等裁判所(High Court)に対して合併または会社分割の承認の申請を行うことになります。

上記合併または会社分割の承認申請が行われた場合、裁判所が主体となって、存続会社(承継会社)および消滅会社(分割会社)の株主総会および株主総会を招集します。
この株主総会および債権者集会において、それぞれ4分の3以上の賛成が得られること(特別決議の成立)が合併(会社分割)の要件となっています。
ここで「4分の3」というのは、株主についてはその保有する議決権数(後述のとおり、頭数ではありません)、債権者については、全体の債権額に対してその債権者が保有する債権額に基づいてカウントされます。種類株式かどうか、劣後債権もしくは優先債権であるかどうか等は考慮されず、原則として全ての株主および債権者が平等に扱われます。

株主総会だけでなく、債権者集会においても4分の3以上の賛成が必要とされている点は、日本の会社法との大きな相違であるといえます。

なお、実務上、4分の3以上の同意書(Letter of Consent)を各株主および債権者から取得して裁判所に提出した場合、会合形式の株主総会および債権者集会は省略することができると解されています。
当たり前のことのようですが、インド会社法上は株主総会の書面決議が認められていないため、株主(および債権者)の同意書で、実際の会合が省略できるというのは実務上きわめて大きなメリットを有します。

以下、合併を行う場合の具体的な手続例です。
なお、合併と会社分割の手続はほとんど同じですので、会社分割の手続きについては、「合併」を「会社分割」と読み替えていただければと思います。

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1.合併当事者は、合併計画書(Sheme of Amalgamation)(=日本の会社法上の合併契約に相当)を作成し、それぞれ取締役会を招集して、取締役会で合併計画書を承認する。

2.合併当事者は、管轄の高等裁判所に対し、株主および債権者を招集して株主総会および債権者集会を開催することを指示するよう、合併計画書および宣誓供述書(affidavit)を添付して申請する。この申請は、Companies (Court) Rules, 1959 のフォーム33、34を使用して行う(Companies (Court) Rules, 1959のRule67)。
フォーム33、34については、こちらのリンク参照。

3.上記申請の審査の結果、裁判所により、株主総会および債権者集会の召集が決定されたら、合併当事者は、それぞれの召集通知を作成する。召集通知には、合併理由説明書および(出席しない人のための)委任状を添付する。なお、これらの召集通知、合併理由説明書および委任状については、あらかじめ裁判所に提出し、内容について承認を得ておく必要がある。

4.召集通知、合併理由説明書および委任状について裁判所から承認が得られたら、これらと合併計画書を一体にして製本しておく(日本の上場会社の株主総会召集通知のような、ブックレット形式にする)。また、このブックレットとは別に、合併当事者は、裁判所の指示に従って、株主総会および債権者集会の召集の公告を新聞紙面上で行う。

5.合併当事者は、4で作成したブックレット式の召集通知を、株主総会および債権者集会の開催日の21営業日前までに(21日前ではなく、21営業日前であることに注意)、各株主および債権者に通知する(なお、同じく4で述べた召集公告についても、同様に開催日の21営業日前までに行う必要がある。)

6.株主総会および債権者集会の1週間前までに、両会合の議長(この議長は、裁判所により任命される)は、上記4および5の召集公告および召集通知送付を行ったことを宣誓する宣誓供述書(affidavit)を裁判所に提出する。この宣誓供述書には、通知費用の領収書(通常は郵便局の領収書)の原本、召集公告が行われた新聞紙の原本、召集通知が送付された株主および債権者のリストを添付する必要がある。

7.裁判所主導の下、株主総会および債権者集会が開催される。同株主総会および債権者集会においては、裁判所確認済みの合併計画書が、4分の3以上の賛成により承認される必要がある。この株主総会および債権者集会においては、必ず投票(poll)形式により、議決権行使が行われなければならない(Companies (Court) Rules, 1959のRule77参照。したがって、株主総会は頭数ベースではなく、議決権ベースの多数決となる。この点については、こちらを参照)。

8.裁判所から任命された議長は、株主総会、債権者集会のそれぞれの議事報告書を所定のフォームに従って作成し、株主総会および債権者集会の開催日から7日以内または別途裁判官により指定された日までに、裁判所に提出する(Companies (Court) Rules, 1959のRule78)。

9.8の議事報告書提出後に、合併計画書の承認を受けたことの確認書と、合併許可申請書を裁判所に提出する。

10.合併申請の審理(hearing of the petition)の日に、裁判所は中央政府の会社局の地区長(Regional Director, Department of Company Affairs)に対して、通知書を発行する。これは、合併その他の組織再編行為を行う場合、その計画書(この例では合併計画書)に対する中央政府(会社局)の意見表明が必要とされているためである(この通知書については、インド会社法394A条も参照)。また、裁判所は、合併申請当事者に対し、上記通知書を、4で株主総会および債権者集会の招集公告を行ったのと同じ新聞紙(たとえば、Bombay TimesであればBombay Times)に公告するよう命令する。

11.合併当事者は、上記10の通知書を合併許可申請書とともに会社局の地区長に送付する。また、合併当事者は、裁判所の指示に従い、裁判所の指定する日までに、当該通知書を新聞紙上で公告しなければならない。

12.合併当事者は、上記11記載の送付と公告を行ったことを宣誓する宣誓供述書(affidavit)を裁判所に提出する。その際、送付費用の領収書の原本と、公告を行った新聞紙の原本とを、宣誓供述書に添付する。

13.裁判所の登録局(Reistry of High Court)から、合併許可命令を取得し、管轄の会社登記局(Registrar of Companies)に提出する。

14.以上の手続きを経ることにより、合併計画書のとおり合併がなされたものとみなされる。なお、合併計画書について裁判所から条件が付された場合、その条件に従って合併が行われたものとみなされる。

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以上の手続にかかる所要時間は、概ね3ヶ月から6ヶ月(合併当事者の規模等により差があります)となります。
裁判所を通さない事業譲渡(Slump Sale)は、概ね1ヶ月から2ヶ月で完了することから、必ず裁判所を通して行わなければならない合併および会社分割は、裁判所を通さない事業譲渡に比べてかなり時間のかかるプロセスであるといえます。

次回は、合併、会社分割の法的効果について、税務面の効果も含めて解説していきたいと思います。

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