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インド会社法解説その23 -組織再編(事業譲渡、合併、会社分割)④-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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さて、今回は合併および会社分割の効果の解説です。

1 法律上の効果

(1) 対価
合併の場合、存続会社は、合併の対価として、新規に株式を発行し、消滅会社の株主に対して割り当てます。

会社分割の場合、承継会社は、会社分割の対価の支払方法として、①新規に株式を発行し、分割会社の株主に対して割り当てる方法(日本の会社法(旧商法というべきか)で言えば、人的分割に相当)、②同様に新規に発行した株式を分割会社に割り当てる方法(いわゆる物的分割に相当)のいずれかを選択することができます。
もっとも、2以下で述べるとおり、②物的分割型の方法をとった場合、繰越損失が引き継げなくなるなどの税務上のデメリットが生じるため、ほとんど全てのケースにおいて、①人的分割型の方法が取られています。

ちなみに、インド会社法上、合併(分割)対価は基本的に上記いずれかの方法で支払われる必要があり、日本の会社法のような合併(分割)対価の柔軟化は図られていません。

(2) 債権債務
合併の場合、存続会社は消滅会社の債権債務関係を全て承継します。
また、会社分割の場合、承継会社は、分割対象事業にかかる債権債務関係(分割計画書において特定される)を、分割会社から承継します。

(3) 労働者の承継
(※)インドにおいて、被雇用者は、管理業務に従事するnon-workmanと、管理業務以外の業務に充実するworkmanの2つのクラスに分かれます。このうち、合併や会社分割の際の引継ぎが問題となるのは、基本的に後者のworkmanのみです。non-workmanは、インド労働法上、「労働者」としては扱われず、原則として労働法上による保護対象になりません。

合併の場合、消滅会社の労働者は、特段の手続なくして全て存続会社に承継されるのが原則です。
また、会社分割の場合、分割対象事業に従事していた労働者は、特段の手続なくして分割会社から承継会社に承継されるのが原則です。

ただし、上記労働者の自動承継は、
①承継される労働者の従事する業務が、当該合併または会社分割により阻害されないこと
②承継される労働者について、労働条件が移籍前よりも不利になっていないこと
③労働者を承継する存続会社(承継会社)が、合併契約または分割契約上、退職金(当該合併または会社分割がなければ受領できていたであろう退職金と同額である必要がある)の支払い義務を引き受けていること
の3つの要件のいずれか1つでも満たしていない場合には認められず、そのような場合、消滅会社(分割会社)は、1947年産業紛争法(Industrial Dispute Act, 1947)25F条に従って、労働者に対して退職金を支払う必要があります。

なお、この1947年産業紛争法(Industrial Dispute Act, 1947)25F条は、通常解雇の場合にも適用される条文であり、インドで労務関係の仕事に携わっている場合、かなり頻繁に出てくる条文です。
同条によれば、会社が労働者を解雇(retrenchment)する場合、①1年以上継続勤務した労働者に対する1ヶ月以上前の通告、②1年以上継続勤務した労働者に対する退職補償金(勤続年数×各年の15日分の賃金相当額)の支払い、さらに③インド政府への届出が必要とされています。

どうもインドでは、「1年以上継続勤務した労働者」を特に保護する発想があるようであり、上記解雇規定でも、1年以上継続勤務していない労働者は保護対象とされていません。

ちなみに、このあたりの労働者の引継ぎの規制は、事業譲渡(Slump Sale)の場合でも同じです。

(4) 許認可、ライセンス等の承継
合併の場合、消滅会社が保有していた許認可やライセンス等は、存続会社に承継されます。ただし、全くの無条件というわけではなく、当該許認可やライセンスの根拠法上の手続(届出等)を行うことが必要です。これらの手続は、合併申請を受けた裁判所のもと、行われることになります。

一方、会社分割の場合、分割会社はまだ存続しているため、分割会社が保有していた許認可やライセンスは当然には承継会社には承継されません。したがって、会社分割の場合、分割手続と平行して、当該許認可やライセンスの根拠法上の、許認可(ライセンス)移転手続を行うことが必要です。もっとも、実務上は、合併の場合とほとんど手続は変わりません。

2 税務上の効果

(1) 合併の場合
以下の要件を全てみたす場合、存続会社は消滅会社の繰越欠損金を繰越して引き継ぐことが可能です。
①消滅会社において、繰越欠損金を生じさせた事業が合併前に3年以上営まれていること。また、承継される固定資産の75%以上を合併の2年前から保有していること。
②存続会社において、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の事業を継続すること。また、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の固定資産の75%以上を保有し続けること。
③消滅会社が、製造業、加工業、ソフトウェア開発業等、指定された一定の事業を営んでいること(商社事業、サービス事業の場合、繰越欠損金の繰越不可)

また、合併の際に、存続会社が承継する固定資産の含み益に対するキャピタルゲイン課税は、以下の要件を全てみたす場合には非課税となります。
①消滅会社において、承継される固定資産の75%以上を合併の2年前から保有していること。
②存続会社において、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の事業を継続すること。
③存続会社において、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の固定資産の75%以上を保有し続けること。

上記から明らかなとおり、キャピタルゲイン課税の回避要件は、繰越欠損金の繰越要件とほぼ同じです。
要は、繰越欠損金の繰越要件を満たしていれば、キャピタルゲイン課税も回避できるということです。

(2) 会社分割の場合
以下の要件を全てみたす場合、承継会社は分割会社の繰越欠損金を、繰越して引き継ぐことが可能です。ただし、繰越欠損金の全てを繰り越せるわけではなく、分割対象事業の規模に応じて繰越欠損金の分割がなされることになります。
①承継会社が、会社分割の対価の支払方法として、新規に株式を発行し、分割会社の株主に対して割り当てる方法(いわゆる人的分割)をとっていること
②分割会社の株主の4分の3以上が、承継会社の株主となっていること

承継会社が分割会社から承継する固定資産の含み益に対するキャピタルゲイン課税の回避要件は、上記の繰越欠損金の繰越要件と同じであるため、上記要件を満たしている限り、承継会社にキャピタルゲイン課税がなされることはありません。

(3) 事業譲渡(Slump Sale)の場合
ついでに事業譲渡の場合の解説も。

事業譲渡(裁判所を通さないもの)の場合、繰越欠損金を引き継ぐことはできず、また承継する固定資産の含み益に対するキャピタルゲイン課税は回避することができません。さらに、営業権の償却費を損金参入することもできません。
税務上は、事業譲渡は合併、会社分割に比べて不利であるといえます。

なお、裁判所を通す事業譲渡を行った場合、繰越欠損金の一部引継ぎが可能となり、またキャピタルゲイン課税を一部回避することができますが、効果が中途半端であること、裁判所を通す場合、合併や会社分割と手間が変わらなくなってしまうことから、この方法がとられることは実務上ほとんどないそうです。

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組織再編の解説は今回で終了し、次回からは解散、清算について解説したいと思います。

このインド会社法解説も、気がつけば20回を超えていました。
なんとか30回くらいまでで完結させたいと思います。

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