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インド会社法解説その24 -会社の清算①-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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(※ 以下、2008年4月25日に内容を一部訂正しました)

インド会社法上、会社の清算(winding up)には、以下の2つの方法があります(インド会社法425条)。

・裁判所清算(winding up under the order of the court)
→裁判所の命令による清算
2003年のインド会社法改正により、法令上は、内国会社法裁定所(National Company Law Tribunal。法文上はTribunalと記載されています)が命令主体となるとされていますが、2008年4月現在、NCLTはまだ発足していないため、改正前と同様、命令主体は裁判所となっています。

・自主清算(voluntary winding up)
→株主総会決議による清算

裁判所清算は、一定の事由が生じた場合に、裁判所の命令により会社が清算される場合の清算方法、自主清算は、株主総会決議での決定により会社が清算される場合の清算方法を、それぞれいいます。

ここで、「裁判所」、「自主」という「清算」の前に付く言葉は、手続主体を表します。すなわち、前者では、主として裁判所が手続主体となり、後者では、主として会社自体が手続主体となります。いずれの場合も実際に清算手続を進めるのは会社清算人ですが、その任命主体が裁判所か会社自身であるかという相違があります。

裁判所清算は日本法上の特別清算に、自主清算は日本法上の通常清算にそれぞれ相当します(もちろん、趣旨や手続等は異なりますが)。
なお、日本の会社法は、「解散」と「清算」とを、手続の段階として明確に区別していますが、インド会社法は、両者を厳格に区別していないため、本解説では、「winding up」に相当する言葉を「清算」と呼んで、清算手続について解説することとします。

以下、裁判所清算と自主清算とを分けて解説します。

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裁判所清算

1 裁判所清算が行われる場合

裁判所清算が行われる場合は。インド会社法433条において列挙されており、それぞれ以下の場合に裁判所清算が行われることになります。

(a) 株主総会特別決議により、会社を裁判所清算により清算する旨が決議された場合
(b) 会社登記局(Registrar of Company)への法定報告を怠った場合や、法定株主総会の開催を怠った場合(法定株主総会とは、public companyにおいて、設立後6ヶ月以内に開催される法定株主総会を言い、そこで報告されるのが、「法定報告」と呼ばれる取締役の経歴等について報告する書類である)
(c) 会社設立後1年間にわたって事業を開始しない場合または事業を中止した場合
(d) 株主の数が、最低株主数(公開会社について7人、非公開会社について2人)を下回った場合
(e) 会社がその負債を返済できない場合
(f) 裁判所が、会社が清算されるべきであると判断した場合
(g) 5年間続けて貸借対照表および損益計算書または年次報告書を会社登記局に提出しなかった場合
(h) 会社が、インドの主権や独立、州の安全、外国との友好関係、公の秩序、体制、モラルに違反して行動した場合
(i) インド会社法424G条に基づき、会社がSick Industrial Company(財務状況が悪化した会社)と認定され、かつ財務面で回復不能と判断されたことにより、裁判所が解散相当であると認めた場合

上記のうち、(f)がいわゆる一般条項であり、他の条項にぴったり当てはまるものがない場合、本項を理由として裁判所清算が行われることになります。
判例、解釈上、これに該当すると解釈されている場合のうち、代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

・デッド・ロックにより、会社が運営できなくなってしまった場合
・会社の事業目的が達成できないことが明らかになった場合
・会社が事業を継続できなくなった場合
・多数株主が少数株主の権利を蔑ろにしていると認められる場合
・会社が組織的に詐欺的行為その他の違法行為を行っていると認められる場合
・会社の解散が公共の利益に合致すると認められた場合

2 手続

裁判所清算は、裁判所に対する申立てにより行われます。
すなわち、裁判所が、特に申し立てもないのに、突然職権により清算命令を出すということはありません。

申立て主体は、インド会社法439条に規定されており、会社、債権者、出資者(株主)、会社登記局、(場合によって)中央政府などがあります。

申請書には、会社の状況を報告する書類(statement of affairs)を添付する必要があります。
また、会社自身以外から、裁判所清算の申請がなされた場合で、会社が清算に反対している場合、会社はその申請添付の説明書面に対する反論書面を提出することができます(インド会社法439A条)。

裁判所は、期日を開くなどして、清算申請を審理し、清算相当と認めた場合、清算命令(order for winding up)を出します。
裁判所は、清算命令を出した場合、公共清算人(official liquidator)を任命の上(インド会社法448条)、清算命令を出した日から2週間以内に、公共清算人および会社登記局に、清算命令が出たことを通知します。

また、清算命令から21日以内に、公共清算人に対して、会社の状況報告書(statement of affairs)が提出されます(インド会社法454条)。
状況報告書には、以下の事項が記載される必要があります。
・会社の資産、負債
・債権者の名前、所在および職種ならびに債権の概要(担保債権か無担保債権かの区別、担保の概要等)
・会社に起因するその他の債務
・その他公共清算人が必要とする情報

公共清算人は、その状況報告書の記載等を元に、会社について調査を行うとともに清算を進め、遅くとも清算命令から6ヶ月以内に、裁判所に対して報告書を提出します。
報告書には、以下の事項が記載される必要があります。
・資本金額ならびに資産および負債の額
・会社に清算に至るについて何らかの失敗があった場合、その失敗の内容
・会社の設立、運営および失敗について、更なる質問調査を行う必要があると思料される場合、その旨

裁判所は、公共清算人による清算手続の進行中、監査委員会(committee of inspection)を選任して、公共清算人の行為を監視させることもできます(インド会社法464条

公共清算人が全ての清算事務を終えた場合、または裁判所が配当原資の不足等により、これ以上清算事務を進めても無益であると判断した場合(日本法でいう手続廃止に相当します)、裁判所は会社清算終了命令(order of dissolution)を出します。
当該命令の日をもって、会社の清算は終了したものとみなされます(インド会社法481条)。

ちなみに、これらの清算命令や会社清算終了命令は、当該命令を出した裁判所がどの州の裁判所であるかにかかわらず、インド全国において効力を有します(インド会社法482条)。
日本と異なり、インドは州制度を採っているため、このような規定が必要となります。

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その他細かい規定を1つ1つ見出すと切りがないのですが、とりあえず概要ということで、裁判所清算の解説はこの程度にしておきたいと思います。
手続の詳細を確認したいという場合、インド会社法433条から483条までの原文をご参照ください。

次回は、自主清算の解説です。

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