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2008年4月

ぶらりインド旅

日本は今GW真っ只中。
というわけで、便乗して、今日の夜からインド 国内を回ってきたいと思います。

一応、予定スケジュールは以下のとおり。

4月30日  国内便で午後8時ムンバイ発、午後10時デリー着(予定)。デリー泊。

5月1日 早朝、チャーターした車でアグラに向けて出発。タージ・マハルとアグラ城跡を観光。同日中にデリーに戻り、デリー泊。

5月2日 午前10時半の国内便で、デリーからバラナシに向けて出発。ガンジス河で沐浴。同日、バラナシ泊。

5月3日 バラナシからブッダ・ガヤに電車(またはバス)で移動。仏陀が悟りをひらいた(と言われている)菩提樹と、そこに建立された大菩提寺(マハー・ボーディ)を観光。 同日中にバラナシに戻り、バラナシ泊。交通機関の状況によっては、2日中にブッダ・ガヤに移動して、ブッダ・ガヤで宿泊する可能性あり。

5月4日 午前10時半の国内便で、バラナシからムンバイに。

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かなりタイトなスケジュールですが、行きたいと思っていたところにまとめて行けるということもあり、とても楽しみです。

ちなみに、今回の旅行にはPCは持って行きません。
帰ってきた後に、簡単な旅行記をアップしたいと思います。

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え?
会社法解説の更新?

頑張ります…

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だめだ

忙しいです。

合弁契約作成、インド規制和訳のチェック、論文執筆等で、身動きが取れません。

インド滞在半年を超えたあたりから、相談が尋常でなく増えてきており、もはや1人で案件を回すのにも限界が見えています。

裏を返せば、それだけ今インドでは日本弁護士の需要があるということなのでしょうが。

だんだん家に帰る時間が、日本時代と変わらなくなってきたなあ…

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熱波

<インド>気温40度突破 熱波で25人死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080423-00000108-mai-int

4月23日20時17分配信 毎日新聞

 【ニューデリー支局】本格的な夏を迎えたインド東部から北部にかけてでは、今週に入り気温がぐんぐん上昇し、早くも40度を突破した。地元テレビは23日、東部オリッサ州で熱波のため25人が死亡したと伝えた。
猛暑のインドでは日中、富裕層の多くが冷房を利かせた室内に閉じこもる。一方で貧しい肉体労働者は屋外での仕事を休めない。熱波による死者の多くが、こうした貧しい労働者だ。
少年が暮らすスラムは、躍進するインド経済を象徴する、首都ニューデリー郊外の新興都市グルガオンにある。小枝は自宅の小屋の屋根をふくために使われる。同じ街に暮らしながら、背景に見える高級マンション群に住む富裕層と、少年の生活が交わることは決してない。

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デリーも大変ですが、ムンバイも厳しいです。

暑い…

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インドの格差は今に始まったことではないのですが、それでもこういう記事を見ると、書き手のやりきれなさが伝わってきます。

とはいえ、当のインド人は、格差をそれほど気に病んでいなかったりします。
なぜなら、それが「当たり前」だから。

なんせ3000年前から綿々と格差社会を営んできた国。
格差が「カースト」として社会制度化された国。
年季が違います。
1000年前も、2000年前も、大量の餓死者が出ている横で、マハラジャが食べきれない食事を捨てていたのです。

いい悪いを超えて、それがこの国の当然であるのなら、外国人がとやかく言うことではないのかもしれません。

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ところで、記事中の「少年」とか「小枝」とかって何なんでしょう。
説明も写真もありませんね。

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インドの単位

インドにおいて、10万は「1,00,000」と表記されます。

コンマの位置がおかしいのではないか、というのはごもっともな疑問。

インドでは、lakh(ラック)という10万を意味する単位が使用されています。
その普及率や半端ではなく、百万についても、「1 million」ではなく「10 lakh」と表記されているほどです。
上記コンマの位置は、このlakhを表すためのものです。

と、ここまでなら割とよくある話

どの国にも、その国独自の単位というものはありますし、その国の日常生活レベルでそれを使っている分には全く問題ありません。

恐ろしいのは、99%のインド人が、このlakhを世界共通の単位だと思い込んでいること

そのため、外国人相手に数字を言う場合にもlakhを使い、相手が混乱していると、「なんでわからないの?」という目で見てきます。
また、取引において外国の会社(日本企業含む)に出すインボイスにも、平気で「52,00,000」などと書き、受け取った外国の経理担当者が、数字に間違いがあるのではないかと真剣に悩む事態が頻繁に生じています。

さらには、会社によっては、会社の決算報告(上場会社の場合、外国人にも開示される)にも、数字がlakhで記載されているという徹底ぶり。

そういえば、先日発表のあったTATA自動車のNano(世界最安の車)の世界に向けたキャッチコピーも、「1 lakh car (ワンラックカー)」でした。
まあたしかに、語呂はいいのでしょうが、これで「10万ルピー(約30万円)の車」とわかった人が、世界でインド人以外に何人いるのやら

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lakhは、インドからイギリスに逆輸入され、一応英語という扱いになっているようですが、イギリス人でlakhを使っている人を見たことがないので、やはり使っているのはインド人だけです。

「lakhはインドでしか通じない単位である」と知ったときのインド人の驚きは、民明書房が架空の出版社であることを知った90年代の男子中高生の驚きに匹敵するとかしないとか

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ちなみに、lakhの上はcrore(クロール)という単位であり、こちらは1000万を意味します。
1crore = 100lakh です。
lakhのコンマと組み合わせて、インドでは1000万円は、「1,00,00,000」と表記されます。

croreは、lakhほど頻繁に見るというわけではありませんが、それでもインドで生活していると、色々なところで目にします。

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なんだかんだ言いましたが、インドで生活していて、一度lakhの使い方に慣れてしまうと、ものすごく便利な単位だったりします。

日本人駐在員同士の間で、「○○さんの家の家賃は何ラックくらいですか?」、「1.8ラックです」などという会話が普通に交わされているのを見るにつけ、人間の順応力ってすごいなあと。

もちろん、私も今では日常会話で当たり前のようにlakhを使っています。

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小ネタ

デリーの友人の話

「デリーのゴルフ場で、深いラフに打ち込んでしまって、ボールを捜していたら、茂みからコブラが出てきた」

ゴルフも命がけのようです。

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インド会社法解説その24 -会社の清算①-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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(※ 以下、2008年4月25日に内容を一部訂正しました)

インド会社法上、会社の清算(winding up)には、以下の2つの方法があります(インド会社法425条)。

・裁判所清算(winding up under the order of the court)
→裁判所の命令による清算
2003年のインド会社法改正により、法令上は、内国会社法裁定所(National Company Law Tribunal。法文上はTribunalと記載されています)が命令主体となるとされていますが、2008年4月現在、NCLTはまだ発足していないため、改正前と同様、命令主体は裁判所となっています。

・自主清算(voluntary winding up)
→株主総会決議による清算

裁判所清算は、一定の事由が生じた場合に、裁判所の命令により会社が清算される場合の清算方法、自主清算は、株主総会決議での決定により会社が清算される場合の清算方法を、それぞれいいます。

ここで、「裁判所」、「自主」という「清算」の前に付く言葉は、手続主体を表します。すなわち、前者では、主として裁判所が手続主体となり、後者では、主として会社自体が手続主体となります。いずれの場合も実際に清算手続を進めるのは会社清算人ですが、その任命主体が裁判所か会社自身であるかという相違があります。

裁判所清算は日本法上の特別清算に、自主清算は日本法上の通常清算にそれぞれ相当します(もちろん、趣旨や手続等は異なりますが)。
なお、日本の会社法は、「解散」と「清算」とを、手続の段階として明確に区別していますが、インド会社法は、両者を厳格に区別していないため、本解説では、「winding up」に相当する言葉を「清算」と呼んで、清算手続について解説することとします。

以下、裁判所清算と自主清算とを分けて解説します。

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裁判所清算

1 裁判所清算が行われる場合

裁判所清算が行われる場合は。インド会社法433条において列挙されており、それぞれ以下の場合に裁判所清算が行われることになります。

(a) 株主総会特別決議により、会社を裁判所清算により清算する旨が決議された場合
(b) 会社登記局(Registrar of Company)への法定報告を怠った場合や、法定株主総会の開催を怠った場合(法定株主総会とは、public companyにおいて、設立後6ヶ月以内に開催される法定株主総会を言い、そこで報告されるのが、「法定報告」と呼ばれる取締役の経歴等について報告する書類である)
(c) 会社設立後1年間にわたって事業を開始しない場合または事業を中止した場合
(d) 株主の数が、最低株主数(公開会社について7人、非公開会社について2人)を下回った場合
(e) 会社がその負債を返済できない場合
(f) 裁判所が、会社が清算されるべきであると判断した場合
(g) 5年間続けて貸借対照表および損益計算書または年次報告書を会社登記局に提出しなかった場合
(h) 会社が、インドの主権や独立、州の安全、外国との友好関係、公の秩序、体制、モラルに違反して行動した場合
(i) インド会社法424G条に基づき、会社がSick Industrial Company(財務状況が悪化した会社)と認定され、かつ財務面で回復不能と判断されたことにより、裁判所が解散相当であると認めた場合

上記のうち、(f)がいわゆる一般条項であり、他の条項にぴったり当てはまるものがない場合、本項を理由として裁判所清算が行われることになります。
判例、解釈上、これに該当すると解釈されている場合のうち、代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

・デッド・ロックにより、会社が運営できなくなってしまった場合
・会社の事業目的が達成できないことが明らかになった場合
・会社が事業を継続できなくなった場合
・多数株主が少数株主の権利を蔑ろにしていると認められる場合
・会社が組織的に詐欺的行為その他の違法行為を行っていると認められる場合
・会社の解散が公共の利益に合致すると認められた場合

2 手続

裁判所清算は、裁判所に対する申立てにより行われます。
すなわち、裁判所が、特に申し立てもないのに、突然職権により清算命令を出すということはありません。

申立て主体は、インド会社法439条に規定されており、会社、債権者、出資者(株主)、会社登記局、(場合によって)中央政府などがあります。

申請書には、会社の状況を報告する書類(statement of affairs)を添付する必要があります。
また、会社自身以外から、裁判所清算の申請がなされた場合で、会社が清算に反対している場合、会社はその申請添付の説明書面に対する反論書面を提出することができます(インド会社法439A条)。

裁判所は、期日を開くなどして、清算申請を審理し、清算相当と認めた場合、清算命令(order for winding up)を出します。
裁判所は、清算命令を出した場合、公共清算人(official liquidator)を任命の上(インド会社法448条)、清算命令を出した日から2週間以内に、公共清算人および会社登記局に、清算命令が出たことを通知します。

また、清算命令から21日以内に、公共清算人に対して、会社の状況報告書(statement of affairs)が提出されます(インド会社法454条)。
状況報告書には、以下の事項が記載される必要があります。
・会社の資産、負債
・債権者の名前、所在および職種ならびに債権の概要(担保債権か無担保債権かの区別、担保の概要等)
・会社に起因するその他の債務
・その他公共清算人が必要とする情報

公共清算人は、その状況報告書の記載等を元に、会社について調査を行うとともに清算を進め、遅くとも清算命令から6ヶ月以内に、裁判所に対して報告書を提出します。
報告書には、以下の事項が記載される必要があります。
・資本金額ならびに資産および負債の額
・会社に清算に至るについて何らかの失敗があった場合、その失敗の内容
・会社の設立、運営および失敗について、更なる質問調査を行う必要があると思料される場合、その旨

裁判所は、公共清算人による清算手続の進行中、監査委員会(committee of inspection)を選任して、公共清算人の行為を監視させることもできます(インド会社法464条

公共清算人が全ての清算事務を終えた場合、または裁判所が配当原資の不足等により、これ以上清算事務を進めても無益であると判断した場合(日本法でいう手続廃止に相当します)、裁判所は会社清算終了命令(order of dissolution)を出します。
当該命令の日をもって、会社の清算は終了したものとみなされます(インド会社法481条)。

ちなみに、これらの清算命令や会社清算終了命令は、当該命令を出した裁判所がどの州の裁判所であるかにかかわらず、インド全国において効力を有します(インド会社法482条)。
日本と異なり、インドは州制度を採っているため、このような規定が必要となります。

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その他細かい規定を1つ1つ見出すと切りがないのですが、とりあえず概要ということで、裁判所清算の解説はこの程度にしておきたいと思います。
手続の詳細を確認したいという場合、インド会社法433条から483条までの原文をご参照ください。

次回は、自主清算の解説です。

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Smog on the Water

最近のムンバイの朝はこんな感じです↓
(写真は、他のムンバイ在住日本人のブログからの引用です)

Smog

朝焼けのムンバイ

リンク元                             


Smog1_2

その2時間後くらいのムンバイ

リンク元                                    

これがどっちも朝焼けの霧でなく、光化学スモッグというのが、この街の恐ろしいところです。

毎朝、この中に出勤していく、神風特攻隊日本男児駐在員が約200人

印度国にて、お国と会社のために健康と命をささげる勇者たち。

労咳で死んだら、最近映画の公開の件で色々と話題になっている某神社に祀ってもらえたりするのでしょうか。

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ついでに、この記事を書いているときに、知らない間に右腕をゴキブリが這っていたのも、この街の恐ろしいところです。

気づいた瞬間、絶叫。

なぜこんなに人懐っこいんだ…

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コックローチ・バトル6 -天翔記-

ここは印度警察署。
今日も多くのお巡りさんが、市民の安全を守り続けています。

増え続ける犯罪を少しでも未然に防止すべく、印度警察署の生活課では、専門の相談員が市民の皆さんの相談を受け付けています。

おや、男の人が警察署に入ってきましたよ。
どうやら、生活課に相談に来たようです。

肩を落としていますね。
どうやら、何か困ったことがあるようです。
どんな相談でしょう。

(プライバシー保護のため、音声を変えています)

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「あのう、こちら生活課でしょうか」
「はい、そうです。本日は何かご相談でしょうか」
「あ、はい。ちょっと困っていることがありまして」
「わかりました。それでは、こちらの申込書にお名前と住所をいただけますでしょうか」

10分後

「お待たせしました。本日はどのようなご相談でしょうか」
「ええと、ちょっと困ったことがあるんですが」
「どういったことでしょうか」
「誰かに見られている気がするんです」
「と言いますと?」
「はっきりとはわからないんですが、生活を監視されているような気がするというか」
「すみません、ちょっと話が見えにくいんですが」
「ああ、ごめんなさい。順序だててお話した方がよろしいですかね」
「そうしていただけると助かります」

男の人は、少しうつむいて話し始めました。

「私、一人で住んでいるんですが、家の中に誰かがいるような気がするんです」
「それも最近じゃなくて、住み始めた当時から気配を感じるんです」
「先日も、洗面所に入った瞬間に、誰かに見られているような視線を感じて…」
「暖かくなるにつれて、その気配はさらに増えたような気がします」

メモを取っていた相談員さん、首をかしげました。

「ええと、ちょっとよくわからないんですが、あなたは一人暮らしで、家の中には誰もいないはずなのに、誰かの気配を感じるということですか」
「ええ、まとめるとそういうことになると思います」
「その『誰か』を実際にご覧になったことはありますか」
「いや、姿を見たことはありません」
「何か具体的な被害にあわれたことはありますか」
「一応あります」
「一応、といいますと?」
「たとえば、食料棚が荒らされたとかですね」
「なるほど、食料を荒らされたんですか」
「いや、荒らされたような感じがする、ということです」
「え?荒らされていたわけじゃないんですか」
「荒らされていたんじゃないかと」
「…ちょっとすみません。荒らされていたんですか、荒らされていなかったんですか、どっちですか?」
「荒らされていたと思うんですけど」
「質問を変えます。食料棚の食料が無くなったり、開封されていたり、位置が移動していたりということがあったんですか」
「そういったことはありませんでした」
「それじゃ、なぜ荒らされたとわかるんですか」
「そういう気がするというか」

おやおや、相談員さん、少し困っているみたいですね。

「ちょっと話を変えましょう。他に何か被害に合われたことはありますか」
「あの、歯ブラシを…」
「盗られたんですか」
「いや、歯ブラシを撫で回されたんです」
「撫で回す?」
「ええ、『誰か』が歯ブラシを足で撫で回しているところの影を見ました」
「影?」
「黒いものが蠢いていたので」
「それは大変ですね。影をご覧になったと。本体の姿はご覧になりましたか」
「いや、そこまでは」
「影だけが見えたんですね」
「そうです。気持ち悪かったので、歯ブラシはすぐに交換したんですけど、もしかしたらこれまでも自分の見ていないところで撫で回されていたのかと思うと、気持ち悪くて…」
「これからも見ていないところで、という可能性もありますよね」
「そうなんです。それが怖くて怖くて」
「でも、本体はご覧になっていないわけでしょう。気のせいだったということはありませんか」
「そうだといいんですけど…」

相談員さん、だんだん苛々してきたみたいですね。

「ちょっと今の段階では具体的な被害がはっきりしないので、事件として扱うことは難しいかもしれませんね」
「はあ、そうですか」
「連絡先をお教えしておきますので、今後、その『誰か』の姿をはっきり見たり、何か危害を加えられそうになったら、ご連絡いただけますか」
「わかりました」
「危険を感じたら、すぐに連絡してください」
「はい。暑くなってきて、大きな影に出くわすことも増えてきたので、危ないと思ったらすぐに連絡するようにします」
「暑さと関係あるんですか?」
「暑くなると活動が活発になるというか」
「…少しお疲れのようですので、心の健康の専門家の方にもご相談された方がいいかもしれませんね」

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ここは印度警察署の生活課。
今日も市民の皆さんたちの安全を守っています。

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インド会社法解説その23 -組織再編(事業譲渡、合併、会社分割)④-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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さて、今回は合併および会社分割の効果の解説です。

1 法律上の効果

(1) 対価
合併の場合、存続会社は、合併の対価として、新規に株式を発行し、消滅会社の株主に対して割り当てます。

会社分割の場合、承継会社は、会社分割の対価の支払方法として、①新規に株式を発行し、分割会社の株主に対して割り当てる方法(日本の会社法(旧商法というべきか)で言えば、人的分割に相当)、②同様に新規に発行した株式を分割会社に割り当てる方法(いわゆる物的分割に相当)のいずれかを選択することができます。
もっとも、2以下で述べるとおり、②物的分割型の方法をとった場合、繰越損失が引き継げなくなるなどの税務上のデメリットが生じるため、ほとんど全てのケースにおいて、①人的分割型の方法が取られています。

ちなみに、インド会社法上、合併(分割)対価は基本的に上記いずれかの方法で支払われる必要があり、日本の会社法のような合併(分割)対価の柔軟化は図られていません。

(2) 債権債務
合併の場合、存続会社は消滅会社の債権債務関係を全て承継します。
また、会社分割の場合、承継会社は、分割対象事業にかかる債権債務関係(分割計画書において特定される)を、分割会社から承継します。

(3) 労働者の承継
(※)インドにおいて、被雇用者は、管理業務に従事するnon-workmanと、管理業務以外の業務に充実するworkmanの2つのクラスに分かれます。このうち、合併や会社分割の際の引継ぎが問題となるのは、基本的に後者のworkmanのみです。non-workmanは、インド労働法上、「労働者」としては扱われず、原則として労働法上による保護対象になりません。

合併の場合、消滅会社の労働者は、特段の手続なくして全て存続会社に承継されるのが原則です。
また、会社分割の場合、分割対象事業に従事していた労働者は、特段の手続なくして分割会社から承継会社に承継されるのが原則です。

ただし、上記労働者の自動承継は、
①承継される労働者の従事する業務が、当該合併または会社分割により阻害されないこと
②承継される労働者について、労働条件が移籍前よりも不利になっていないこと
③労働者を承継する存続会社(承継会社)が、合併契約または分割契約上、退職金(当該合併または会社分割がなければ受領できていたであろう退職金と同額である必要がある)の支払い義務を引き受けていること
の3つの要件のいずれか1つでも満たしていない場合には認められず、そのような場合、消滅会社(分割会社)は、1947年産業紛争法(Industrial Dispute Act, 1947)25F条に従って、労働者に対して退職金を支払う必要があります。

なお、この1947年産業紛争法(Industrial Dispute Act, 1947)25F条は、通常解雇の場合にも適用される条文であり、インドで労務関係の仕事に携わっている場合、かなり頻繁に出てくる条文です。
同条によれば、会社が労働者を解雇(retrenchment)する場合、①1年以上継続勤務した労働者に対する1ヶ月以上前の通告、②1年以上継続勤務した労働者に対する退職補償金(勤続年数×各年の15日分の賃金相当額)の支払い、さらに③インド政府への届出が必要とされています。

どうもインドでは、「1年以上継続勤務した労働者」を特に保護する発想があるようであり、上記解雇規定でも、1年以上継続勤務していない労働者は保護対象とされていません。

ちなみに、このあたりの労働者の引継ぎの規制は、事業譲渡(Slump Sale)の場合でも同じです。

(4) 許認可、ライセンス等の承継
合併の場合、消滅会社が保有していた許認可やライセンス等は、存続会社に承継されます。ただし、全くの無条件というわけではなく、当該許認可やライセンスの根拠法上の手続(届出等)を行うことが必要です。これらの手続は、合併申請を受けた裁判所のもと、行われることになります。

一方、会社分割の場合、分割会社はまだ存続しているため、分割会社が保有していた許認可やライセンスは当然には承継会社には承継されません。したがって、会社分割の場合、分割手続と平行して、当該許認可やライセンスの根拠法上の、許認可(ライセンス)移転手続を行うことが必要です。もっとも、実務上は、合併の場合とほとんど手続は変わりません。

2 税務上の効果

(1) 合併の場合
以下の要件を全てみたす場合、存続会社は消滅会社の繰越欠損金を繰越して引き継ぐことが可能です。
①消滅会社において、繰越欠損金を生じさせた事業が合併前に3年以上営まれていること。また、承継される固定資産の75%以上を合併の2年前から保有していること。
②存続会社において、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の事業を継続すること。また、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の固定資産の75%以上を保有し続けること。
③消滅会社が、製造業、加工業、ソフトウェア開発業等、指定された一定の事業を営んでいること(商社事業、サービス事業の場合、繰越欠損金の繰越不可)

また、合併の際に、存続会社が承継する固定資産の含み益に対するキャピタルゲイン課税は、以下の要件を全てみたす場合には非課税となります。
①消滅会社において、承継される固定資産の75%以上を合併の2年前から保有していること。
②存続会社において、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の事業を継続すること。
③存続会社において、合併後少なくとも5年間は、消滅会社の固定資産の75%以上を保有し続けること。

上記から明らかなとおり、キャピタルゲイン課税の回避要件は、繰越欠損金の繰越要件とほぼ同じです。
要は、繰越欠損金の繰越要件を満たしていれば、キャピタルゲイン課税も回避できるということです。

(2) 会社分割の場合
以下の要件を全てみたす場合、承継会社は分割会社の繰越欠損金を、繰越して引き継ぐことが可能です。ただし、繰越欠損金の全てを繰り越せるわけではなく、分割対象事業の規模に応じて繰越欠損金の分割がなされることになります。
①承継会社が、会社分割の対価の支払方法として、新規に株式を発行し、分割会社の株主に対して割り当てる方法(いわゆる人的分割)をとっていること
②分割会社の株主の4分の3以上が、承継会社の株主となっていること

承継会社が分割会社から承継する固定資産の含み益に対するキャピタルゲイン課税の回避要件は、上記の繰越欠損金の繰越要件と同じであるため、上記要件を満たしている限り、承継会社にキャピタルゲイン課税がなされることはありません。

(3) 事業譲渡(Slump Sale)の場合
ついでに事業譲渡の場合の解説も。

事業譲渡(裁判所を通さないもの)の場合、繰越欠損金を引き継ぐことはできず、また承継する固定資産の含み益に対するキャピタルゲイン課税は回避することができません。さらに、営業権の償却費を損金参入することもできません。
税務上は、事業譲渡は合併、会社分割に比べて不利であるといえます。

なお、裁判所を通す事業譲渡を行った場合、繰越欠損金の一部引継ぎが可能となり、またキャピタルゲイン課税を一部回避することができますが、効果が中途半端であること、裁判所を通す場合、合併や会社分割と手間が変わらなくなってしまうことから、この方法がとられることは実務上ほとんどないそうです。

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組織再編の解説は今回で終了し、次回からは解散、清算について解説したいと思います。

このインド会社法解説も、気がつけば20回を超えていました。
なんとか30回くらいまでで完結させたいと思います。

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インド会社法解説その22 -組織再編(事業譲渡、合併、会社分割)③-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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今回は、裁判所を通じた合併(Merger / Amalgamation)および会社分割(Demerger)の具体的な手続の解説です。

前回解説したとおり、合併または会社分割を行う場合、存続会社(承継会社)の登録住所地を管轄する高等裁判所(High Court)に対して合併または会社分割の承認の申請を行うことになります。

上記合併または会社分割の承認申請が行われた場合、裁判所が主体となって、存続会社(承継会社)および消滅会社(分割会社)の株主総会および株主総会を招集します。
この株主総会および債権者集会において、それぞれ4分の3以上の賛成が得られること(特別決議の成立)が合併(会社分割)の要件となっています。
ここで「4分の3」というのは、株主についてはその保有する議決権数(後述のとおり、頭数ではありません)、債権者については、全体の債権額に対してその債権者が保有する債権額に基づいてカウントされます。種類株式かどうか、劣後債権もしくは優先債権であるかどうか等は考慮されず、原則として全ての株主および債権者が平等に扱われます。

株主総会だけでなく、債権者集会においても4分の3以上の賛成が必要とされている点は、日本の会社法との大きな相違であるといえます。

なお、実務上、4分の3以上の同意書(Letter of Consent)を各株主および債権者から取得して裁判所に提出した場合、会合形式の株主総会および債権者集会は省略することができると解されています。
当たり前のことのようですが、インド会社法上は株主総会の書面決議が認められていないため、株主(および債権者)の同意書で、実際の会合が省略できるというのは実務上きわめて大きなメリットを有します。

以下、合併を行う場合の具体的な手続例です。
なお、合併と会社分割の手続はほとんど同じですので、会社分割の手続きについては、「合併」を「会社分割」と読み替えていただければと思います。

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1.合併当事者は、合併計画書(Sheme of Amalgamation)(=日本の会社法上の合併契約に相当)を作成し、それぞれ取締役会を招集して、取締役会で合併計画書を承認する。

2.合併当事者は、管轄の高等裁判所に対し、株主および債権者を招集して株主総会および債権者集会を開催することを指示するよう、合併計画書および宣誓供述書(affidavit)を添付して申請する。この申請は、Companies (Court) Rules, 1959 のフォーム33、34を使用して行う(Companies (Court) Rules, 1959のRule67)。
フォーム33、34については、こちらのリンク参照。

3.上記申請の審査の結果、裁判所により、株主総会および債権者集会の召集が決定されたら、合併当事者は、それぞれの召集通知を作成する。召集通知には、合併理由説明書および(出席しない人のための)委任状を添付する。なお、これらの召集通知、合併理由説明書および委任状については、あらかじめ裁判所に提出し、内容について承認を得ておく必要がある。

4.召集通知、合併理由説明書および委任状について裁判所から承認が得られたら、これらと合併計画書を一体にして製本しておく(日本の上場会社の株主総会召集通知のような、ブックレット形式にする)。また、このブックレットとは別に、合併当事者は、裁判所の指示に従って、株主総会および債権者集会の召集の公告を新聞紙面上で行う。

5.合併当事者は、4で作成したブックレット式の召集通知を、株主総会および債権者集会の開催日の21営業日前までに(21日前ではなく、21営業日前であることに注意)、各株主および債権者に通知する(なお、同じく4で述べた召集公告についても、同様に開催日の21営業日前までに行う必要がある。)

6.株主総会および債権者集会の1週間前までに、両会合の議長(この議長は、裁判所により任命される)は、上記4および5の召集公告および召集通知送付を行ったことを宣誓する宣誓供述書(affidavit)を裁判所に提出する。この宣誓供述書には、通知費用の領収書(通常は郵便局の領収書)の原本、召集公告が行われた新聞紙の原本、召集通知が送付された株主および債権者のリストを添付する必要がある。

7.裁判所主導の下、株主総会および債権者集会が開催される。同株主総会および債権者集会においては、裁判所確認済みの合併計画書が、4分の3以上の賛成により承認される必要がある。この株主総会および債権者集会においては、必ず投票(poll)形式により、議決権行使が行われなければならない(Companies (Court) Rules, 1959のRule77参照。したがって、株主総会は頭数ベースではなく、議決権ベースの多数決となる。この点については、こちらを参照)。

8.裁判所から任命された議長は、株主総会、債権者集会のそれぞれの議事報告書を所定のフォームに従って作成し、株主総会および債権者集会の開催日から7日以内または別途裁判官により指定された日までに、裁判所に提出する(Companies (Court) Rules, 1959のRule78)。

9.8の議事報告書提出後に、合併計画書の承認を受けたことの確認書と、合併許可申請書を裁判所に提出する。

10.合併申請の審理(hearing of the petition)の日に、裁判所は中央政府の会社局の地区長(Regional Director, Department of Company Affairs)に対して、通知書を発行する。これは、合併その他の組織再編行為を行う場合、その計画書(この例では合併計画書)に対する中央政府(会社局)の意見表明が必要とされているためである(この通知書については、インド会社法394A条も参照)。また、裁判所は、合併申請当事者に対し、上記通知書を、4で株主総会および債権者集会の招集公告を行ったのと同じ新聞紙(たとえば、Bombay TimesであればBombay Times)に公告するよう命令する。

11.合併当事者は、上記10の通知書を合併許可申請書とともに会社局の地区長に送付する。また、合併当事者は、裁判所の指示に従い、裁判所の指定する日までに、当該通知書を新聞紙上で公告しなければならない。

12.合併当事者は、上記11記載の送付と公告を行ったことを宣誓する宣誓供述書(affidavit)を裁判所に提出する。その際、送付費用の領収書の原本と、公告を行った新聞紙の原本とを、宣誓供述書に添付する。

13.裁判所の登録局(Reistry of High Court)から、合併許可命令を取得し、管轄の会社登記局(Registrar of Companies)に提出する。

14.以上の手続きを経ることにより、合併計画書のとおり合併がなされたものとみなされる。なお、合併計画書について裁判所から条件が付された場合、その条件に従って合併が行われたものとみなされる。

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以上の手続にかかる所要時間は、概ね3ヶ月から6ヶ月(合併当事者の規模等により差があります)となります。
裁判所を通さない事業譲渡(Slump Sale)は、概ね1ヶ月から2ヶ月で完了することから、必ず裁判所を通して行わなければならない合併および会社分割は、裁判所を通さない事業譲渡に比べてかなり時間のかかるプロセスであるといえます。

次回は、合併、会社分割の法的効果について、税務面の効果も含めて解説していきたいと思います。

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シャワータイム・ブルース3 -解決編-

シャワーのお湯の出の悪さに苦しみ続けたこの数ヶ月間(詳細は参照)。

ようやくお湯がまともに出るようになりました。

機械の調子が良くなったから、では勿論なく、単純に暑くなってきたからですが。

3月末から4月にかけて、ムンバイの気温はぐんぐん上昇しており、今では日中の気温は35度を超えています。
先日ゴルフに行った際には、熱射病の兆候が出たほどで、今では昼間に活動するのはかなり厳しくなっています。

色々試してもどうにもならなかったシャワーの温度の問題が、春になり、夏が近づくとともに勝手に解決したあたり、大自然とともに生きていると言えないこともないような気がします。

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ムンバイは海が近いこともあり、いくら暑くなっても気温の上昇は40度くらいまでで止まるのですが(その代わり湿度が高い)、大変なのはデリーです。
デリーは内陸にある分、寒暖差が激しく、暑くなるときは半端でなく暑くなります。
なんでも、去年の6月は気温が48度に達したとか。

体温よりも10度以上高い気温の中で、果たして人間が生きて行けるのかとても謎なのですが、インド人は生きているようですので(あと日本人を含む外国人駐在員も)、まあ何とかなるのでしょう。

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さて、デリーのことを心配している場合ではありません。

うちにはエアコンがないため(正確には、あるけど壊れています)、40度でも十分致死の暑さです。

去年のセカンドサマー(雨季後もう一度暑くなる10月、11月)は、部屋に打ち水をしてしのぎましたが、これから本格的な夏を迎えるにあたり、エアコンなしでは不安が否めません。
日本でだって、今時エアコンなしに夏を過ごすなんて考えられないのに…

唯一の頼りは天井備え付けのファンですが、これも気温が一定のところを超えてしまうと暑い空気をかき混ぜているだけになり、ほとんど機能しなくなります。

ムンバイに来てから一通りの辛酸は嘗め尽くしてきましたが、世に謳われるインドの夏の暑さは未体験ということもあり、エアコンなしで耐えられるか不安が募ります。

インドの日本人駐在員の中でも、ここまで丸腰で夏に立ち向かう人もあんまりいないんじゃないでしょうか。
ひのきのぼうとぬののふくだけでラスボスに挑まされる気分です。

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インド公務員からの賄賂要求

公務員からの賄賂要求。
インドに限らず、発展途上国でビジネスをしようと思うと必ず出てくるのがこの問題です。

日本では、公務員の汚職や天下りがよく叩かれていますが、日本はアジアの中では例外的に公務員の汚職がきわめて少ない国です。
中国やインド、その他の東南アジアの国々の公務員の腐りっぷりを見ていると、日本の公務員は痛々しいほど清潔だと言っていいと思います(もちろん、だからと言って、たまに起こる贈収賄を大目に見ていいというわけではありませんが)。

多くのアジア諸国では、公務員(特に下級公務員)による一般市民や企業への賄賂要求は日常茶飯事であり、裁判官でさえ、有利な判決を餌に当事者に賄賂を要求してくることが珍しくありません。
一昔前の中国などはその典型ですし、インドでも、高等裁判所(High Court)より下の裁判所(Subordinate Court)での判決はあまり信用できないと、インド人自身が言っています。

おそらく、ほとんどの日本人にとって、「裁判になったときに、裁判官にお金を渡して自分に有利な判決をもらう」というのは、そもそも思いつきすらしないでしょう。
その一事をとっても、日本は、相対的には世界的に見てもかなり公正な司法制度を実現していると思います(日本の司法制度に問題がないわけではありませんが)。

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少し本題からそれました。

さて、インドでビジネスを展開する場合、なんだかんだで公務員から賄賂を要求されることが頻繁にあります。

主な類型としては、以下の2つがあります。

①会社の登記申請等、何らかの申請をした場合に、それを迅速に処理してもらうために賄賂を渡すという類型
②公務員(主に下っ端役人)が、日常業務を妨害したり言いがかりをつける等の嫌がらせを行い、それをやめて欲しければ金をよこせという類型

①、②いずれの類型も、公務員が正面からはっきりと金銭要求を行うことは少なく、①であれば、「通常どおり処理すれば○ヶ月かかりますよ」と言うことにより、暗に「迅速に処理して欲しければ金をよこせ」との含みを持たせること、②であれば、「お前の行為は違法だ」と言いがかりをつけて、驚いた相手方が何とか丸くおさめようとするのに乗じて金を取ろうとすることが行われます。

インドでは、公務員は上に行けば行くほど清廉であり、こういった理不尽な金銭要求をすることは少なくなるのですが、現場の木っ端役人はひたすら小遣い稼ぎに精を出しています。

で、これについて、インドに進出している日系企業がどういう対応をとっているかというと、ほとんどの日系企業はこういった役人の賄賂要求に応じてしまっているのが実情です。

日本で同じことをやったらものすごい問題になるのでしょうが、インドで現場にいる日本人駐在員が役人にお金を渡してしまう気持ちはよくわかります。

賄賂を要求してくるときのインド小役人のウザさといったら、筆舌に尽くしがたく、たとえば①の場合、お金を渡さなかったら数ヶ月単位で未処理のまま放置されるということも珍しくありません。また、②の場合、お金を渡すまで延々嫌がらせが続き、日常業務が完全にストップしてしまうということもよく聞きます。

欧米系企業の場合、コンプライアンスがきっちりしていることもあり、「手続きが遅れようが嫌がらせをされようが、出せないものは出せない」という毅然とした対応がとられることが多いのですが、日系企業は、「その程度のことでこれが解決できるなら…」という発想になりがちであり(そのあたり、日本人もやはり根本的にはアジア人の発想なのだなあと)、かえってインド小役人の格好の標的になっているようです。

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とはいえ、日本人が外国で公務員に対して賄賂を渡すことは、いくつかの法律上の問題点をはらんでいます。

この点は、経済産業省のウェブサイトに詳しいのですが、まず、外国公務員に対する贈賄は、日本が締結し、批准しているOECD贈賄防止条約(国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約)に違反する可能性があります。

また、同条約を受け、日本の不正競争防止法第18条1項は、「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。」と規定しており、これにも違反する可能性があります。
なお、不正競争防止法については、同法21条2項6号により、上記18条1項に違反した場合の罰則が定められており、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」と、それなりに重い罰が科せられます。

ここでポイントとなるのは、OECD贈賄防止条約については、その正式名称の「国際商取引における」という部分、また不正競争防止法については、18条1項の「国際的な商取引に関して」という文言です。

結論からいうと、OECD贈賄防止条約上も、不正競争防止法上も、「手続を円滑化のみを目的とした『少額の「円滑化のための」支払い(Facilitation Payments)』については、犯罪となりません。
↓経済産業省作成ウェブサイトのQ&AのQ5参照。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/zouwai/faq.html

したがって、商取引に関連しない形でインドの公務員に賄賂を渡すのであれば、少なくともOECD贈賄防止条約あるいは不正競争防止法上は犯罪とならないということになります。

上記①、②の類型は、いずれも手続きの円滑化という側面が強く、商取引自体には関連していないのが通常であるため、これらのケースで賄賂を渡しても、日本法上は犯罪にならないものと考えられます。

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「なんだ、だったら大丈夫じゃないか」と思われた方。
ちょっと早いです。

インドでも、公務員に対する贈賄は、一応インド刑法(Indian Penal Code, 1860)上、違法とされており、インド国内の刑法に従って処罰を受ける可能性があります。
とはいえ、賄賂を要求している側の木っ端役人が逮捕されたのをほとんど聞いたことがないので、そのリスクはものすごく低いということなのでしょうが。

いずれにしても、日系企業が、インドの公務員に賄賂を渡す場合、その賄賂による見返りが商取引に関するものである場合には日本法に違反すること、また、商取引に関するものでない場合でも、インド刑法上違法として当局の詮索をうけるリスクは一応ありうることを念頭に置いておいたほうが良いと思います。

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なお、①、②の類型のうち、①については公務員の処理手順の問題であることもあり、渡さないための対応というのはちょっと考えにくいのですが、②については、
(1) 木っ端役人に所属部署、氏名を名乗らせる
(2) 所属部署に連絡して、上司に現状を訴える
(3) それでもとまらない場合、当該部署を所管する中央省庁に連絡する
等の手順を踏むことにより、ぴたりと請求がやむことがあります。

インドはものすごい階級社会なので、特に公務員社会では上司からの命令は効果てきめんなようです。

この際、「命令されなきゃ賄賂要求(もちろん違法行為)がやめられないのか?」という突っ込みは置いておくとして。

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インド会社法解説その21 -組織再編(事業譲渡、合併、会社分割)②-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

だいぶ間が空いてしまいましたが、会社法解説を再開したいと思います。
今回からは、合併と会社分割についての解説です。

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インド会社法上、合併(Merger / Amalgamation)または会社分割(Demerger)を行う場合、裁判所に対して申請を行う必要があります。
日本の会社法上は、合併であれ会社分割であれ、基本的に存続会社(承継会社)と消滅会社(分割会社)の合意さえあれば手続きを進めることができますが、インドでは裁判所に対して合併または会社分割申請をする必要がある点、日本と大きく異なります。

具体的には、存続会社(承継会社)の登録住所地を管轄する高等裁判所(High Court)に対して合併または会社分割の承認の申請を行い、許可が出た時点で初めて合併または会社分割を行うことができます。
ただし、会社側が必要な手続きを踏んでおり、かつ当該組織再編がインドの独占禁止法(2008年4月現在、Monopolies and Restrictive Trade Practice Act, 1969。なお、今年中に同法の改正版であるCompetition Act, 2002が施行予定)に違反する等の事情がない限りは、裁判所の「許可」は下りることから、裁判所に申請するといっても、当事者のみの合意で行うのと実質的にはそれほど違いはありません。

なお、2002年の会社法改正により、合併や会社分割の申請先は、裁判所(Court)から内国会社法裁定所(National Company Law Tribunal)に改正されていますが、2008年4月現在に至っても、同改正は未施行であるため、現時点でも申請先は裁判所となります。

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さて、合併および会社分割についても、その定義は1961年インド所得税法(Income Tax Act, 1961)においてなされています。

具体的には、1961年インド所得税法第2条1B項は、合併(Amalgamation)について、以下のとおり定義しています(ちょっと長めですが、全文引用します)。

(1B)   "Amalgamation", in relation to companies, means the merger of one or more companies with another company or the merger of two or more companies to form one company (the company or companies which so merge being referred to as the amalgamating company or companies and the company with which they merge or which is formed as a result of the merger, as the amalgamated company) in such a manner that - 

(i) all the property of the amalgamating company or companies immediately before the amalgamation becomes the property of the amalgamated company by virtue of the amalgamation;

(ii) All the liabilities of the amalgamating company or companies immediately before the amalgamation become the liabilities of the amalgamated company by virtue of the amalgamation;

(iii) Shareholders holding not less than nine-tenths in value of the shares in the amalgamating company or companies (other than shares already held therein immediately before the amalgamation by, or by a nominee for, the amalgamated company or its subsidiary) become shareholders of the amalgamated company by virtue of the amalgamation,  otherwise than as a result of the acquisition of the property of one company by another company pursuant to the purchase of such property by the other company or as a result of the distribution of such property to the other company after the winding up of the first mentioned company;

上記を要約すると、全ての資産および負債が消滅会社から存続会社に引き継がれ、かつ原則として消滅会社の10分の9を超える株式の株主が存続会社の株主となることが、インド会社法上の合併(Amalgamation)の定義ということになります。

また、会社分割(Demerger)については、同じく1961年インド所得税法第2条第19AA項に定義されています。こちらも長いですが、引用します。

(19AA) "Demerger", in relation to companies, means the transfer, pursuant to a scheme of arrangement under sections 391 to 394 of the Companies Act, 1956 (1 of 1956), by a demerged company of its one or more undertakings to any resulting company in such a manner that -   (i) All the property of the undertaking, being transferred by the demerged company, immediately before the demerger, becomes the property of the resulting company by virtue of the demerger;

(ii) All the liabilities relatable to the undertaking, being transferred by the demerged company, immediately before the demerger, become the liabilities of the resulting company by virtue of the demerger;

(iii) The property and the liabilities of the undertaking or undertakings being transferred by the demerged company are transferred at values appearing in its books of account immediately before the demerger;

(iv) The resulting company issues, in consideration of the demerger, its shares to the shareholders of the demerged company on a proportionate basis;

(v) The shareholders holding not less than three-fourths in value of the shares in the demerged company (other than shares already held therein immediately before the demerger, or by a nominee for, the resulting company or, its subsidiary) become shareholders of the resulting company or companies by virtue of the demerger,  otherwise than as a result of the acquisition of the property or assets of the demerged company or any undertaking thereof by the resulting company;

(vi) The transfer of the undertaking is on a going concern basis;

(vii) The demerger is in accordance with the conditions, if any, notified under sub-section (5) of section 72A by the Central Government in this behalf. 

Explanation 1 : For the purposes of this clause, "undertaking" shall include any part of an undertaking, or a unit or division of an undertaking or a business activity taken as a whole, but does not include individual assets or liabilities or any combination thereof not constituting a business activity.

Explanation 2 : For the purposes of this clause, the liabilities referred to in sub-clause (ii), shall include -  (a) The liabilities which arise out of the activities or operations of the undertaking;

(b) The specific loans or borrowings (including debentures) raised, incurred and utilised solely for the activities or operations of the undertaking; and

(c) In cases, other than those referred to in clause (a) or clause (b), so much of the amounts of general or multipurpose borrowings, if any, of the demerged company as stand in the same proportion which the value of the assets transferred in a demerger bears to the total value of the assets of such demerged company immediately before the demerger.

上記を要約すると、譲渡事業に関する全ての資産および負債が簿価で承継会社に引き継がれ、かつ原則として分割会社の4分の3以上の株式の株主が存続会社の株主となること、承継会社は承継事業の対価として株式を発行すること、事業が存続すること、1961年インド所得税法第72A条第5項(損失の引継ぎ条項)の条件に沿ったものであること等が、会社分割の要件であり、これらを満たすものが会社分割と定義されるということになります。

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定義は結構重要なので(特に会社分割の方)、ちょっと分量を割いて書いてみました。
その分、今回は内容がスカスカですが、まあリハビリということで。

次回から、合併および会社分割の具体的な手続や効果の解説に入りたいと思います。

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巡り巡ってJDR

以前、タタ自動車によるジャガー、ランドローバー買収の話を書いたわけですが、今度はこういうニュースが。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080402-00000113-reu-bus_all

印タタ自動車、今夏にも東証上場=報道
[東京 2日 ロイター] 2日付日本経済新聞や共同通信などの国内メディア報道によると、インドのタタ自動車<TAMO.BO>が今夏にも東証に上場する見通し。株式とほぼ同じ機能を持つ日本預託証券を上場、解禁後の第1号になるという。
タタ自動車は上場に際し、日本市場で資金調達する公算が大きく、規模は1000億円を超える可能性がある、としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080402-00000042-jij-int

印タタ自動車、今夏にも東証上場へ=日本預託証券の第1号
時事通信
インド有力財閥タタグループ傘下のタタ自動車が今夏にも東京証券取引所に上場する見通しであることが2日、分かった。株式とほぼ同じ機能を持つ日本預託証券(JDR)方式による上場第1号となる。JDRは証券会社を通じて円建てで売り買いできるため、個人投資の拡大にもつながりそうだ。
JDRは円建て証券で、欧米で一般的に使われている預託証券(DR)の日本版。外国企業は自社株を日本の信託銀行に預け、それを裏付けに預託証券を発行、上場する仕組み。
昨秋の改正信託法や金融商品取引法施行により、国の規制で海外に株式を直接上場できないインド、台湾などの企業がJDRを活用して日本市場に上場できるようになった。上場が実現すれば、高成長が見込めるアジアなど外国企業の上場誘致に弾みが付きそうだ。 

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ああ、それに使うのね。

日本で調達されたお金が、巡り巡ってジャガーとランドローバーの買収(正確には、買収資金の穴埋め資金)に使われる、ということのようです。

結局ジャパンマネーがジャガーとランドローバーの買収に使われるということで、なんだか複雑だなあ…

インド企業による日本版預託証券(JDR)の発行については論文を書いたところでもあり(インド側の預託証券発行規制については、たぶん現時点では日本で一番詳しいんじゃないかと思います)、今後の展開が興味津々です。

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ガンジス河でバタフライ

駐在員仲間から借りて、見てみました。

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思ったよりも良くできていて、とても面白かったです。

インド人やインドの様子のデフォルメ、カリカチュアライズ加減も絶妙。
最初の空港のインド人のシーンなど、画面で見ていると「んなアホな」という感じも受けますが、海外1人旅初心者がインドにいったら、だいたいこんな印象を受けるでしょう。

「インドに住みつつ、日本でインドをネタにしたドラマを見る」というのは何だか不思議な感じですが、とにかく純粋に楽しめました。

エンターテインメント作品としての完成度は高く、とりあえず見て絶対に損はないと思います。

(以下、ネタバレを含むので未見の方はご注意ください。)

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長澤まさみの体当たり演技がすごかったです。

ガンジス河でのバタフライのシーンは勿論、ホーリーでの色水シーンや、顔面をヤモリに這わせているシーン、蛇を首に巻いているシーンなど、「よくここまでやるなあ」というものばかり。
さすが一流の女優は、作品のためならどういう演技でも厭わないんですねえ。

ストーリーは平凡なのですが、長澤まさみの魅力が前面に出ることにより、それを補ってあまりある素晴らしい内容となっていました。

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個人的に嬉しかったのは、中谷美紀の出演。

この人が書いた「インド旅行記1、2、3」は、インド赴任が決まってから熟読しました。
(今の家にも持ってきています。)
今の日本で、本当の意味でインドが語れる女優はこの人しかいないと思います。

中谷美紀を主人公を導く役に配したあたり、このドラマのスタッフの「本気度」が伺えました。

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その他、細かいところも本当に良くできています。
インド人の狡猾さと優しさが同居するところや、独特の適当さ、時間感覚の緩さも良く表現されており、見ていてうなずくところも多かったです。

少々気になった点は以下のとおり。

・コルカタ??

目的地がガンジス河のあるバラナシなのに、なぜ最初のシーンがコルカタからになるのかがよくわかりません。コルカタには日本からの直行便はないのですが、日本から直接コルカタに到着したような描写になっています。

通常、インドに旅行に行く場合、成田からの直行便のあるデリーから入るのですが(実際、ドラマ中でもデリーのインディラ・ガンディー空港に到着したという描写があります)、デリーからバラナシへの距離とコルカタからバラナシへの距離とはほとんど変わらないため、あえて遠回りして行こうと思わない限り、コルカタに国内線で移動する理由もありません(日本で例えると、静岡に行くのに、成田に到着した後、わざわざ国内線で名古屋まで移動しているようなものです)。

他の部分の完成度からして、多分スタッフもわかっていてやっているのではないかと思うのですが、このドラマを見た人が、「バラナシにはコルカタから行くもの」というように思い込んでしまわないか、ちょっと心配です。

・食あたり描写がない

作中、長澤まさみが開封されたボトルに生水を詰めて「ミネラルウォーター」と称して売っているものを買わされ、飲んでしまうシーンがありましたが、その後特に食あたりや下痢のシーンはなし。

大人の理由により、そのようなシーンは入れられなかったのかもしれませんが、海外旅行初心者がインドで生水なんて飲んだら、入院してもおかしくありません。
なんせ、歯磨きをミネラルウォーターでしていてもお腹を壊す国ですから。

てっきり何かの伏線かと思って見ていたのですが、その後特に何の描写もなかったので、ちょっと拍子抜けしてしまいました。

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さて、このドラマに触発されたからというわけではないですが、4月末か5月頭に、バラナシ、ブッダガヤと回ってきたいと思います。

ガンジス河でバタフライはしないと思いますが、沐浴くらいはするかもしれません。
ブッダガヤーでは、マハーボーディ寺院の菩提樹下で日頃の煩悩を落としてきたいと思います。

ちなみに、私が日本に出張していた間、いつもテニスをしているムンバイ日本人会のメンバーで、ガンジス未経験の人たちが、連れ立ってバラナシに旅行に行ってきたそうです。
もう一生来ないかもしれないから、ということで、参加者中2人ほどガンジス河に飛び込んだそうですが、1人はものもらい(おまけに発熱)、もう1人は結膜炎になったそうです(完全実話)。

…本当に長澤まさみは偉いと思います。

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3月末

3月末が締め切りの仕事を一通り上げ、ようやく一段落つきました。

出張から帰ってきて以来、留守の間に溜まっていた仕事と、3月末締め切りの仕事とが重なり、ブログの更新もままなりませんでしたが、ようやく今週あたりからぼちぼちと会社法解説を再開できそうです。

「質疑応答」については、メールにていくつかご質問をいただいており、追って公開したいと思います。

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先週末、土曜日はムンバイ日本人会大人の部にさらわれ、昼から夜中まで麻雀卓を囲んでいました。
私が人生で出会ったルールの中で最も激しいインフレ麻雀。
1半荘でマイナス140とか、ルール設定がおかしいですから。
やはり、刺激の少ないムンバイにいると、こういうところでも刺激を求めてしまうのでしょうか…

しかも、メンバーがほとんどセミプロ。
お願いだから、ツモるときのわずかな目の動きだけで待ちをあてないでください…

ようやく解放されて家に帰った後、「商社って怖いなあ」と思ったとか思わないとか。

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日曜日は、人事異動で日本に帰る方の送別会に参加しました。

帰国する人が皆、満面の笑みで帰っていくのは駐在地としてのインドの特徴かもしれません。

行く人送る人、別れを惜しみつつ、また飲みすぎ気味で週末は終わったのでした。

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