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インド会社法解説その25 -会社の清算②-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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今回は自主清算(voluntary winding up)の解説ですが、その前に1点訂正を。

前回、

「自主清算は、株主総会決議または債権者の申立てにより、会社が清算される場合の清算方法をいいます」

と解説しましたが、「または債権者の申立てにより」という部分は誤りでしたので、以下のとおり訂正します。
(なお、以下の訂正は既に前回の記事に反映されています)

自主清算(voluntary winding up)は、株主総会決議によって会社が清算される場合の清算方法をいいます。

債権者が、「自主清算」を申し立てるということはできません。

ではなぜ、前回、「債権者の申し立てによるものも自主清算に含まれる」という解説をしてしまったかというと」、"creditors' voluntary winding up”(インド会社法488条5項)という概念を勘違いしてしまったためです。

詳しくは、下の方で説明しますが、インド会社法上、自主清算(voluntary winding up)には、株主の自主清算(members' voluntary winding up)と、債権者の自主清算(creditors' voluntary winding up)の2種類があり、前者は、自主清算の際に会社がその債務を全て支払うことができる旨の宣言が行われた場合の自主清算の呼称、後者は、自主清算の際に会社がその債務を全て支払うことができる旨の宣言が行われなかった場合の自主清算の呼称となります。

株主の自主清算(members' voluntary winding up)と、債権者の自主清算(creditors' voluntary winding up)とでは、手続内容に一部相違があるのですが、清算開始の局面では、株主総会決議(それが普通決議であるにせよ、特別決議であるにせよ)から開始するということに変わりなく、債権者の申立てにより自主清算が開始するということはありません。

前回の解説は、"creditors' voluntary winding up"を、「債権者の申立てによる自主清算」と誤解してしまったことによるものであり、ここに訂正します。
大変失礼いたしました。

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インド会社法484条は、自主清算が行われる2つの場合を以下のとおり定めています。
①附属定款に会社の存続期間が規定されているときに当該期間を経過した場合に、またはその他附属定款に規定されている解散事由に該当した場合に、会社が株主総会普通決議により自主清算を行うことを決定したとき(同484条1項(a)
②会社が株主総会特別決議(4分の3以上の賛成)により、自主清算を行うことを決定したとき(484条1項(b))

これらの株主総会決議が行われたと同時に自主清算は開始します(同486条)。
自主清算開始後は、会社は原則として全ての事業を停止する必要がありますが、自主清算が完了するまでは権利義務の主体となることができます(同487条)。

株主総会に自主清算議案が提案されるにあたっては、取締役会(取締役が1人の場合、当該取締役)は、宣誓書(affidavit)により、会社に債務が存在しないことまたは取締役が当該宣言において定める一定期間内(ただし、清算手続開始後3年以内である必要がある)に、全ての債務を弁済できる見込みであることの宣言(以下、説明の便宜上、「債務弁済見込宣言」といいます)を、裁判所において行うことができます(同488条1項)。

債務弁済見込宣言は、自主清算の株主総会決議の日に先立つ5週間以内に行われる必要があり、このこの期間よりも前あるいは後になされた債務弁済宣言は無効となります(488条2項(a))。

また、債務弁済見込宣言を行うにあたっては、上記宣誓書のほか、以下の書類が揃っている必要があります(488条2項(b))。

①監査済みの、前期末から債務弁済見込宣言前の一定の日までの損益計算書および当該一定の日時点での貸借対照表(「債務弁済宣言前の一定の日」とは、実務的に可能な限り債務弁済見込宣言に近い日をいいます)
②債務弁済見込宣言日時点での、資産および負債の明細書(statement)
③①および②についての監査報告書

取締役会は、宣言後、上記宣誓書および添付書類を、会社登記局(Registrar of Company)に提出します。

後述のとおり、債務弁済見込宣言がなされているかどうかにより、自主清算の方式が株主の自主清算(members' voluntary winding up)となるか債権者の自主清算(creditors' voluntary winding up)となるかが定まり、その後の手続に相違が生じます。
(前者の場合、株主の意思に従って比較的自由に自主清算を進められるのに対し、後者の場合、債権者の意思が重視されることから債権者集会における意思決定等の手続が多く必要とされます)。

そのため、取締役会が債務弁済見込宣言を合理的な根拠なく行った場合について、6ヶ月以下の懲役もしくは5万ルピー以下の罰金または両者の併科が罰則として定められています(同488条3項)。
さらに、「合理的な根拠の有無」については推定規定が存在し、債務弁済見込宣言から5週間以内に自主清算の株主総会決議が行われたものの、債務弁済見込宣言において定められた期間内に弁済が行われなかった場合には、債務弁済見込宣言は合理的な根拠なく行われたものと推定されます(同条4項)。

これは、事実上、期間内に債務弁済が完了しなかったことについての結果責任を問うものであることから、債務弁済見込宣言を行う場合、同宣言の期間内に債務を確実に弁済できるかどうか、十分に検討する必要があります。

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債務弁済見込宣言が行われた上で、株主総会決議により自主清算が開始した場合には、その自主清算は、インド会社法上、株主の自主清算(members' voluntary winding up)と呼ばれます。
一方、宣言が行われずに、株主総会決議により自主清算が開始した場合には、その自主清算は、インド会社法上、債権者の自主清算(creditors' voluntary winding up)と呼ばれます(同488条5項)。

株主の自主清算の手続は、インド会社法489条から498条まで、債権者の自主清算の手続きは、同法499条から509条までに規定されており、両者の手続は勿論異なるのですが、いずれも比較的細かい手続き上の相違であることもあり、以下では必要な場合を除いて特に区別をせずに解説することにします。

いずれにしても、自主清算の株主総会決議が行われた場合、自主清算を決議した株主総会の議事録は、会社登記局に提出されるとともに、新聞紙面上で公告される必要があります。

株主の自主清算の場合、清算人(liquidator)は、株主総会決議により選任され、報酬額も同時に定められます(同490条)。この決議は、自主清算の株主総会決議と同時に行われるのが通常です。
一方、債権者の自主清算の場合、清算人は、債権者集会および株主総会の双方で選任される必要があります。債権者集会と株主総会が、異なる人物を選任した場合、債権者集会の選任が優先されます(同502条)。

会社は、清算人の選任後、会社登記局に対して、選任した清算人について報告する必要があり、また新聞紙上に清算人の選任を公告する必要があります。これらの報告、選任公告は、上記自主清算決議の報告、公告と同じ機会に行われるのが通常です。

清算人は、会社の全ての資産を売却の上、負債の全てを弁済し、かつ資本金の返還を行います。さらに余剰金がある場合、出資比率に応じて株主に分配します(同510条から512条まで)。

株主の自主清算の場合、清算人は、必要に応じて債権者集会や株主総会を招集、開催することができます(同495条496条)。
一方、債権者の自主清算の場合、清算人は、必ず債権者集会を召集する必要があります(同500条)。

会社の資産が負債および資本を弁済するに満たない場合、一定の優先債権から弁済が行われます。
具体的には、税金、労働者への賃金などに優先弁済権が認められます(同530条)。
さらに、資本についても、優先株式には優先返還がなされるなど、一定の順位に従って変換が行われます。

清算人は、全ての清算行為(資産売却、負債弁済、資本返還、余剰金分配)を終えると、最終の株主総会(final meeting)を召集、開催します(同497条509条)。
最終株主総会は、清算人による清算過程の説明を目的として開催されます(同497条1項、509条1項)。
この最終株主総会の議事録は、自主清算を決定した株主総会の議事録と同様、会社登記局に提出されるとともに、新聞紙上で公告される必要があります。

さらに、最終株主総会の終了後、清算人は、自主清算に関する報告書を、裁判所の選任する公共清算人(official liquidator)に対して提出し、公共清算人はその精査を行います。精査の結果、当該会社清算が、債権者や出資者の利益あるいは公共の利害に反すると認められた場合、公共清算人は裁判所(内国会社法裁定所の施行後は内国会社法裁定所)に対してその旨報告し、その報告に対する裁判所の審査が終了するまでは、会社の清算結了は認められません(497条6項以下、509条6項以下)。

公共清算人の精査の結果、特に問題がないと認められた場合、清算人は最終株主総会の議事録を会社登記局に提出します。
この時点で清算手続きは全て完了し、会社は法的に存在しなくなります。

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以上を踏まえて、自主清算(株主の自主清算の場合)のモデル手順をまとめると、

1 自主清算を決議する臨時株主総会の日を定め、その日から遡って5週間以内に、債務不存在または債務弁済見込宣言を行えるよう、添付書類の準備も含めて、取締役会において準備する。

この場合において、添付書類には、
①監査済みの、前期末から債務弁済見込宣言前の一定の日までの損益計算書および当該一定の日時点での貸借対照表(「債務弁済見込宣言前の一定の日」とは、実務的に可能な限り債務弁済見込宣言に近い日をいう)
②債務弁済見込宣言日時点での、資産および負債の明細書(statement)
③①および②についての監査報告書
が含まれるため、監査に必要な時間も考慮して、「債務弁済見込宣言前の一定の日」を定める必要がある。

2 取締役会で、会社の自主清算を行うこと、債務不存在または債務弁済見込宣言を行うこと、自主清算を決議すべく臨時株主総会を開催することを決議する。

3 取締役が、宣誓書を作成し、添付書類とともに、裁判所において債務不存在または債務弁済見込宣言を行う。宣誓書および添付書類は、会社登記局に提出する。

4 同宣言の日から5週間以内に臨時株主総会を開催し、自主清算を決議する。同時に、清算人を選任する。株主総会議事録は会社登記局に提出するとともに、新聞紙上で公告する。

5 清算人が、資産売却、負債弁済、資本返還、余剰金分配等の清算行為を行う。

6 清算完了後、最終株主総会を招集、開催し、自主清算の過程を説明する。また、清算人は、自主清算に関する報告書を、裁判所の選任する公共清算人(official liquidator)に対して提出し、公共清算人はその精査を行う。

7 精査の結果、問題がなかった場合、清算人は最終株主総会の議事録を会社登記局に提出する。

※なお、5以下の手続きについては、裁判所清算(winding up under the order of the court)もこれとほとんど同じとなります。

自主清算に関するその他の細かい手続については、インド会社法484条から560条までをご参照ください。

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今回は少し長くなってしまいました。

次回に会社清算に伴う諸問題をいくつか取り上げ、会社清算関係の解説を終了したいと思います。

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