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インド会社法解説その27 -会社備置書類-

インド会社法原文リンク
http://www.vakilno1.com/bareacts/companiesact/companiesacts.htm

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インド会社法およびその関連法令上、会社は、さまざまな書類を(主としてその登記上の所在地に)備置、保管しなければなりません。

恐ろしいのは、会社がこの義務に違反した場合、書類保管の責任者(取締役、会社秘書役等)に対して、(過料等の行政罰ではなく)罰金または懲役といった刑事罰が課される可能性があるところです。

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※ 書類備置義務違反に関するものだけではなく、インド会社法の特徴として、取締役その他の会社役員(officer)の義務について定める規定は、多くの場合義務違反があった場合の罰則も同時に定めており、手続違反を含むほとんどの義務違反のケースにおいて、取締役や会社秘書役等の役員個人に対して刑事罰が課される可能性があります。

日本の会社法では、手続違反の場合、行政罰としての過料が課されるだけであるのに対し(日本会社法976条参照)、インドの会社法では手続違反であっても刑事罰が課されることに注意する必要があります。

ちなみに、これらの罰則は、「義務を懈怠した役員(officer who is in default)」に対して課されるものとされていますが、どのような場合に「義務を懈怠した」と言えるかについては個々のケースごとに異なり、必ずしも明確な基準があるわけではありません。

もっとも、インド会社法5条は、懲役や罰金等の刑事罰処罰に際して、「義務を懈怠した役員」とみなされる者を規定しています。
同条によれば、マネージング・ディレクター(managing director)、常勤取締役(whole-time director)、マネージャー(manager)、会社秘書役(company secretary)その他一定の要件をみたす者については、会社による義務懈怠行為が生じた場合、「義務を懈怠した役員」とみなされ、実際にそれらの者がどのような行動をとっていたかにかかわらず、当該義務懈怠について責任がある者とみなされ、処罰対象となります。

そのため、現地法人や合弁会社において、マネージング・ディレクターや常勤取締役の地位にある者は、義務違反が生じた場合には、実際の勤務状況その他にかかわらず、「義務を懈怠した役員」として、個人として刑事訴追され、刑事罰を追及される可能性があることに、十分に注意する必要があります。

一方、これらに該当しない平取締役等の会社役員については、義務懈怠は擬制されず、刑事訴追を行う側が当該役員の義務懈怠を立証する必要があります。
この場合、訴追された取締役等は、違反行為が故意によるものではなかったこと、および違反を防止するために相当の注意を尽くしたことを立証できれば(必ずしも立証義務はないが、防御手段の1つとして立証できれば)、通常法的責任を問われることはありません。

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以下では、会社がどのような事業を営んでいるかにかかわらず、インド会社法に基づいて一般的に備置が要求される書類について説明します。
もちろん、会社が営む事業によっては、当該事業を規律する法令(いわゆる業法その他の規制法)により、さらに他の書類の備置、保管義務が課せられている可能性もあるので注意が必要です。
 
ちなみに、書類のうち、取締役等による署名がなされているものなど、性質上紙ベースで保管しなければならないと解されるものを除き、全ての備置、保管書類は電磁的記録により保管することが可能です。
したがって、たとえば株主名簿(インド会社法150条)などは、必ずしも印刷して紙ベースで保管する必要はなく、電磁的記録としてパソコンその他の記録媒体中にデータ保管されていれば足ります。

1 会計帳簿(books of account)

会社は、その登記上の住所(registered office)に会計帳簿(books of account)を備え置く必要があります(インド会社法209条1項)。この会計帳簿には、以下の事項が記載されていなければなりません。
①会社が受領し、または支出した全ての金額、
②会社が売却または購入した全ての商品の金額
③会社の資産および負債
④会社が複数の事業を行っている場合、事業別の明細

会計帳簿はその関連書類とともに、少なくとも8年間保管されなければならず(209条4A項)、この義務に違反した場合、文書管理の責任者に対して6ヶ月以下の懲役または10000ルピー以下の罰金が課される可能性があります(同209条5項)。
会社登記局およびインド中央政府は、いつでもこれらの会計帳簿および関連書類を検査(inspection)することができるとされています(同209A条)。

2 各種議事録

会社は、その開催した株主総会、取締役会および取締役小委員会の議事録(minute)を、その登記上の住所において保管しなければなりません(インド会社法193条196条)。
保管期間について特に定めはなく、したがって、これらの議事録は、会社が存続する限り保管され続ける必要があります。
株主は、いつでも株主総会議事録を閲覧する権利を有していますが、取締役会議事録の閲覧は、必ずしも権利としては保障されていません(同196条)

3 その他備置すべき書類

その他、インド会社法上、会社の登記上の住所に備置すべき書類は以下のとおりです。
(条文リンクは省略しています)

書類の種類

保管期間

根拠条文

会社設立認証書(Certificate of Incorporation

無期限(会社が存続する限り)

34

35

営業開始証明書(Certificate of Commencement of Business)(公開会社のみ)

無期限(会社が存続する限り)

149

基本定款(Memorandum of Association

無期限(会社が存続する限り)

12

附属定款(Articles of Association

無期限(会社が存続する限り)

26

株主名簿(Register of Members

無期限(会社が存続する限り)

150

社債権者名簿(Register and Index of Debenture Holders

社債償還後15年間

152

(附属定款に基づいて外国で株主名簿または社債権者名簿を保管する場合の)外国名簿(Foreign Register

外国での保管をやめるときまで

157

自己証券の買取記録簿(Register of Securities Bought Back

無期限(会社が存続する限り)

77A

会社資産に対する課金記録簿(Register of Charges

無期限(会社が存続する限り)

143

貸借対照表(Balance Sheet)、損益計算書(Profit and Loss Statement)、取締役報告書(Director’s Report)および監査役報告書(Auditor’s Report

株主総会提出の日から8年間

209

年次報告書(Annual Return)および添付書類の写し

会社登記局提出日から8年間

159

会社名で保有しない株式または証券に対する会社の投資記録簿(Register of Investment

無期限(会社が存続する限り)

49

取締役の利益相反取引に係る契約の記録簿(Register of Contractrs

無期限(会社が存続する限り)

301

取締役、マネージング・ディレクター、マネージャーおよび会社秘書役名簿(Register of Directors, Managing Director, Manager and Secretary

無期限(会社が存続する限り)

303

取締役による会社の株式保有の記録簿(Register of Directors’ Shareholding

無期限(会社が存続する限り)

307

企業間融資及び投資の記録簿(Register of Inter-Corporate Loans and Investments

無期限(会社が存続する限り)

372A

合併書類および合併消滅会社の会計帳簿等(Documents relating to Amagmation and Amalgamated Company

中央政府による処分の許可が出るまで

396A

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今回でインド会社法解説は完結の予定だったのですが、全体を読み返してみて、かなり重要な会社設立の際の取締役識別番号(DIN)取得の話と、利益配当についての解説が抜けていたので、次回にこれを補足で解説して一応完結ということにします。

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コメント

初めまして、インドの会社設立の事を書いておられたので、実はインドで起業を考えてますが、会社設立など、何処にお願いしたら安心、かつお手頃価格で出来るか?もし、ご存じでしたら、教えて頂けたらと思いまして、ずうずうしくも思い切って書き込みした次第です、宜しくお願いします!!

投稿: 菊地です | 2012年8月25日 (土) 22時27分

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