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インドの公開買付規制

インドの公開買付規制について論文を書きました。
近いうちにどこかの法律雑誌で発表する予定です。

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インドの公開買付規制と、日本の金融商品取引法上の公開買付規制との最大の相違点は、インドでは、既存株式の市場外取引のみならず、新株の第三者割当および既存株式の市場内取得についても、単体で公開買付規制の対象となっている点です。

日本でも、2006年12月の証券取引法(現金融商品取引法)の改正により、既存株式の市場外取引との組み合わせでいわゆる急速な買付けに該当すると判断されるものについては、市場内取得および新株発行のいずれも公開買付規制の対象となっています。

しかしながら、インドでは、新株第三者割当および既存株式の市場内取得が単体で公開買付規制の対象となります。

つまり、既存株式の市場外取得はもちろん、
1.新株第三者割当により株式を取得する場合
2.証券取引所で株式を購入する場合
のいずれについても、その取得が公開買付規制の保有比率要件をみたす限り、公開買付規制が適用されることになります。
※ただし、2について、インドの証券取引所で株式を購入できるのは、外国機関投資家(FII)だけなので、普通の日本企業はどのみち証券取引所を通じた株式購入はできません(もっとも、これについてもインド国内の証券会社の自己勘定ルートを通じた迂回手段があったりします)。

これは結構衝撃的なことで、上記1、2がそれぞれ単体で公開買付規制の対象となる結果、インドでは、15%ラインを超えるときに公開買付けを免れることは事実上できません。

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インドにおいて、公開買付規制の根拠となっている法令は、「1992年インド証券取引委員会法(Securities and Exchange Board of India Act, 1992)」 およびその施行規則である「1997年株式の大量取得および公開買付けに関する規則(Securities and Exchange Board of India (Substantial Acquisition of Shares and Takeovers) Regulation, 1997。以下「1997年公開買付規則」といいます)」です。

1997年公開買付規則上、直接的であると間接的であるとを問わず、新株第三者割当または既存株式の市場内取得もしくは相対取引による取得の方法により、上場会社の議決権ある株式 を一定割合以上取得する場合、株式取得者には公開買付義務が課されます(同規則2条1項(k))。

具体的には、以下に該当する場合、株式取得者は公開買付けを行わなければなりません(下線部は私が付けた強調です)。

①単独でまたは共同保有者(person acting in concert) と併せて、上場会社の議決権ある株式の15%以上を取得することになる、新株第三者割当を受けまたは既存株式の市場内取得もしくは相対取引を行う場合(同規則10条)
②単独でまたは共同保有者と併せて、上場会社の15%以上55%未満の議決権ある株式を保有している者が、さらに一事業年度内に5%を超える議決権を取得することになる新株第三者割当を受け、または既存株式の市場内取得もしくは相対取引を行う場合 (同規則11条1項)
③単独でまたは共同保有者と併せて、上場会社の55%以上かつ上場廃止基準(75%または場合により90%) に達しない数の議決権ある株式を保有している者が、追加で議決権ある株式を1つでも取得することになる新株第三者割当を受け、または既存株式の市場内取得もしくは相対取引を行う場合(同規則11条2項)

①について、「15%以上を取得することになる」とは、株式取得後の議決権保有割合が15%以上となる場合という趣旨であり、したがって、たとえば既に14%保有している者が追加で1%取得しようとする場合であっても公開買付規制が課されることになります。

ここで、上述のとおり、インドでは、既存株式の相対取引のみならず、新株の第三者割当および既存株式の市場内取得についても、単体で公開買付規制の対象となっています。このことは、日本企業を含む外国企業がインド上場会社の株式を取得するための、事実上全ての方法が公開買付規制の対象となっていることを意味します。

これと、上記①とを併せ読むと、
「15%以上保有することになる、事実上全ての取得行為が公開買付規制の対象となる」
=「15%以上保有することになる場合、公開買付けを免れる方法は事実上ない
という解釈になるわけです。

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というようなことを連々と書きました(笑)

論文では、公開買付けの具体的手続やスケジュール、その他株式取得上の価格規制等も書いています。
ご興味があれば、探して読んでみてください(一応10月頭くらいまでには発表される…はずです)。

ちなみに、以下はインド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India)のウェブサイトで公表されている1997年公開買付規則の全条文です。
論文と突き合わせて読むと、興味深いかもしれません(とっても疲れますが)。
http://www.sebi.gov.in/acts/act15a.html

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コメント

水を差すようで大変心苦しいんですが、本日の日刊インド新聞で「MA規制を緩和検討」のような記事が出ていましたよ。原文をあたっていないので詳細は不明ながら、承認を得るのに時間がかかりすぎて株価が変動してしまうことへの苦情に対応だったような、感じです。

>大関 様
インド外資規制や証券関係規制は制度変更が頻繁にあるので、もうこれはしょうがないです。論文を書こうとすると、とりあえず「書こうと思った日の状況」について書くしかないんですよね…

ただ、今回の改正は、規制自体の緩和というよりも、公開買付規制の手続の迅速化についての改正のようです。
公開買付けが必要となる場合や適用除外要件など、基本的な部分には変更がなく、公開買付けを行う際の届出やそれに対する承認等を迅速化するための改正だけであれば、今回の論文の内容にはほとんど影響はないと思います。

投稿: 大関 | 2008年9月10日 (水) 22時01分

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