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2008年10月

みなし公開会社規制解説その2

みなし公開会社規制とは、「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社(a private company which is a subsidiary of a company which is not a private company)」については、当該会社が上記で述べた非公開会社の要件をみたしていたとしても、公開会社として扱われるとのインド会社法上の規制をいいます(インド会社法3条1項(iv)(c))。

「非公開会社でない会社」とは、インド会社法上の「非公開会社(private company)」に該当しない会社をいいます。
また、「子会社」とは、インド会社法上の子会社の要件(株式の過半数が他者に保有されていることなど。詳細は次回以降に解説します)をみたす会社をいいます。

「非公開会社でない会社」が、インド国外で設立された会社であるときには、当該会社がインドで設立されたと仮定した場合に公開会社に該当することとなる場合には、当該親会社は「非公開会社でない会社」に該当することになるとされます(インド会社法4条7項)。

つまり、日本企業が現地法人や合弁会社を設立する場合、当該日本企業が「非公開会社でない会社」に該当するかどうかは、当該日本企業がインドで設立されたと仮定して、公開会社、非公開会社のいずれの要件をみたすかにより判断されることになります。

日本企業は日本の会社法(あるいは改正前商法)に基づいて設立されていますが、日本の会社法上は、いわゆる非公開会社(日本法上の非公開会社)といえども、定款の明文規定で株主数を制限したり、株式等の公募発行を禁止したりはしていないのが通常です。
日本の会社法上、株主数制限や株式公募発行の禁止等を定款に規定することは禁止されていないと解されますが、そもそも日本の会社の通常のプラクティスとして、そのようなことをいちいち定款に規定するということはほぼありえません。これは法律そのものの発想がインド会社法とは違うからでしょう。

また、日本の会社法上最低資本金規制は撤廃されているものの、インドへの進出を企図する程度の規模を有する会社は50 万ルピー以上の資本金を有しているのが通常でしょう。
また、50万ルピーというのは2008年10月末現在、100万円強ですが、資本金が100万円強しかない会社(通常の事業会社)というのはなかなか見当たりません。

したがって、ほとんど全ての日本企業は、インド会社法上の「非公開会社でない会社」に該当すると考えられます

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日本企業が、「非公開会社でない会社」に該当するとすると、日本企業がインドに設立した子会社となる現地法人や合弁会社は、単体で非公開会社の要件をみたしていたとしても(ちなみに、現地法人や合弁会社が、単体で公開会社の要件をみたす場合、みなし公開会社規制を論ずるまでもなく、当然に公開会社に該当することになります)、全て「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社」に該当し、したがって公開会社として扱われることになりそうです。

もっとも、上記扱いには例外があり、「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社」の株式が、単独または複数の外国会社(a body corporate incorporated outside India)により100%保有されていれば、当該会社は非公開会社として扱われることとなります(インド会社法4条7項但書)。

そのため、日本企業が単独で現地法人を設立する場合、当該現地法人が非公開会社の要件をみたしていれば、当該現地法人は非公開会社として扱われることになります。
また、複数の外国会社株主の合計が100%となる場合でも上記例外規定は適用されるため、例えば日本企業(親会社)本体による株式保有割合を8割とし、その100%外国子会社(インド以外の国に設立された子会社)による株式保有割合を2割とすることによっても、上記例外規定の適用を受けることができます。

要は、「株式の100%が外国会社に保有されている会社」であれば、例外規定が適用されるということであり、100%がどのような割合で保有されているか(単独か複数か、複数として複数株主間の持分割合はどの程度か)は問題とならないということです。

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さて、上で「単独または複数の外国会社」と書きましたが、インド会社法上、非公開会社の最低株主数は2人以上と定められているため(公開会社については7人以上)(インド会社法12条1項)、日本企業を含む外国会社は、形式的には非公開会社の単独株主となることはできません。

実は、この点が、この例外の適用に関してものすごく問題となっています。
詳細は次回に解説します。

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みなし公開会社規制解説その1

いい加減きちんと更新をしよう、ということで、今回から数回に分けてみなし公開会社規制を解説したいと思います。
(多忙によりしばらくインド労働法解説の更新は難しそうです。)

みなし公開会社規制はインドに現地法人や合弁会社を設立する日本企業にとっては避けて通れない規制であり、かつきわめて重要な規制なのですが、某機関に提出した報告書では、やや解説が足りない部分もあるため、あらためてここで詳しく取り上げたいと思います。

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日本企業がインドに現地法人や合弁会社を設立する場合に避けて通れないのが、1956年会社法(Companies Act, 1956。以下「インド会社法」といいます)4条7項のみなし公開会社規制です。

インド会社法上、有限責任会社(limited liability company)は、その資本金額や定款規定により、公開会社(public company)と非公開会社(private company)とに区別されます。

インド会社法上の公開会社と非公開会社の区別は、日本の会社法上の公開会社(日本の会社法2条5号)および公開会社でない会社(いわゆる非公開会社) の区別に類似しており、前者は一定の資本金を有するとともに、株式譲渡が自由とされている会社であり、後者は株式譲渡が定款上制限されている会社です。

公開会社と非公開会社では、株主や取締役の最低必要人数が異なるという組織構成面での相違のほか、非公開会社には公開会社に適用される多くの手続規定、コンプライアンス規定の適用が免除されるという相違があります。

公開会社と非公開会社の相違(非公開会社について、どのような規定が免除されるか)については、下記リンク先のインド会社法解説の別紙1(127ページ)をご参照ください。
http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=05001573

このように、非公開会社に対してはインド会社法上の規制が大幅に緩和されることから、一般に日本企業がインドに現地法人あるいは合弁会社を設立する場合、非公開会社として設立した方が会社運営を行いやすいといえます

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公開会社と非公開会社について、インド会社法は以下のとおり定義されています。

・非公開会社(インド会社法3条1項(iii)

①資本金が10万ルピー以上、かつ
②附属定款(Articles of Association) に次の全ての規定がある会社
(i) 株式譲渡の制限
(ii) 株主数の上限を50人以下(ただし、会社の経営者兼株主はこの人数に含まない)に制限
(iii) 株式および社債の公募発行の禁止
(iv) 株主、取締役またはそれらの親族以外の個人からの借入れの禁止

①について、資本金10 万ルピー未満での有限責任会社の設立は認められていないため、実質的には非公開会社の要件は②のみであるといえます。

なお、②について重要なのは、上記(i)から(iv)の内容が全て附属定款に規定される必要があることです
事実状態として、株主が50人以下であったり、株主、取締役またはそれらの親族以外の個人からの借入れの禁止がなされていなかったとしても、それだけでは非公開会社の要件はみたれさず、あくまでも附属定款に規定があることが必要です。

・公開会社(インド会社法3条1項(iv))

①資本金が50万ルピー以上 、かつ
②非公開会社に該当しないか、または「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社」(下記(2)参照)に該当する会社

①について、資本金が50万ルピー未満の公開会社の設立は認められていません。

なお、非公開会社の商号には、原則として「Private Limited」という文言を入れる必要があり、公開会社の商号には「Limited」という文言を入れる必要があります(インド会社法13 条1 項(a))。
そのため、インドにおいて設立された会社が非公開会社か公開会社かは、通常は商号を見るだけで区別することができます。

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「なるほど、非公開会社の要件はわかった。では、現地法人や合弁会社については、上記の非公開会社の要件をみたすように設立すればいいんだな」

ことはそう単純に運びません。
それが、今回から解説するみなし公開会社規制です。

みなし公開会社規制とは、「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社(a private company which is a subsidiary of a company which is not a private company)」については、当該会社が上記で述べた非公開会社の要件をみたしていたとしても、公開会社として扱われるとのインド会社法上の規制をいいます(インド会社法3条1項(iv)(c))。

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次回に続きます。

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日本が心配です

(今回のテーマは前回の続きともいえるものですが、内容的にはインドとほぼ関係ありません)

前回に引き続いて、さらに日本の経済状況をネットで調べていたところ、種々の悪材料に加え、次回の選挙で政権を取るかもしれない民主党の鳩山幹事長から以下のような発言があったとの報道がありました。
以下、全文引用します。

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時事通信(2008/10/24-18:37)

株価急落、政府不信の表れ=民主・鳩山氏

民主党の鳩山由紀夫幹事長は24日の記者会見で、東京市場での株価急落について「政府・与党が追加経済対策を打ち出そうとしたにもかかわらず株価が下がるのは、政府に対する信頼が全くないということだ。政府の信頼を回復しなければ日本の景気は回復しない」と述べ、早期の衆院解散・総選挙を改めて求めた。 
鳩山氏は「この夏まで政府は『いざなぎ景気を超える』と豪語し、とんちんかんな対応をしてきた。経済、金融の対策を打たず、後手後手に回ってきた結果が株価急落だ」と語った。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008102400887

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…日本、大丈夫かなあ。

言うまでもなく、日本の現在の株価下落は、アメリカの金融危機に端を発する世界的な信用収縮と株価下落の煽りを受け、外国人投資家がなりふりかまわず世界の株式市場から資金を引き揚げていることが主要な理由であり、日本政府の政策に原因があるわけではありません(むしろ、外から見ている限り、日本政府はかなり良い対応をしていると思います)。

日本はこの金融危機において最もダメージが少ない国の1つであり、実際に円の為替レートは急騰しています(まあ、近時の円の急騰は、円に対する信用の増加のほか、円キャリートレードの巻き戻しというのも大きな理由ですが)。

「政府・与党が追加経済対策を打ち出そうとしたにもかかわらず株価が下がるのは、政府に対する信頼が全くないということだ。政府の信頼を回復しなければ日本の景気は回復しない」という鳩山幹事長の発言は、現状認識としては完全にあさっての方向に行っています

現在、世界の主要国で、株価が大幅下落していない国は存在しないため(ついでに言うと、通貨の価値も日本以外のほぼ全ての国で下落しています)、この鳩山幹事長の言を借りるなら、世界中の政府が国民から全く信頼されていないということになってしまいます

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民主党が参議院選挙の余勢をかって政権交代と意気込むのは理解できますし、また個人的には二大政党制は早めに実現した方が長期的には日本の利益につながると思いますが、今はちょっと時期が悪すぎます。

もし今日本で衆議院解散、選挙が行われることになった場合、世界中の国から、「日本は何をやっているんだ、この非常時に」と言われるでしょう。
現状でもし解散、総選挙を行った場合、選挙期間中に新興国のデフォルト連鎖が起こる可能性も少なくなく、その際に「日本は今選挙中なので動けません」などということになろうものなら、今後半世紀は笑い物にされかねません。

ましてや、政権交代が起こった場合に政権を担うべき民主党の幹事長の現状認識がこの程度では…

他の記事を検索しても、民主党はわりと見境なく解散、総選挙を訴えていますが(下記リンク先参照)、今は日本の国内政治を優先する時期ではないことを、首脳陣ももう少し認識してほしいと思います。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200810/2008102100907
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200810/2008102300879&rel=j&g=pol

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ところで、今の日本の空気がわからないのですが、本当に国民は解散、総選挙を望んでいるのでしょうか。
経済にあまり詳しくない人でも、最近の世界経済の状況が普通ではないことは薄々感じているはずで、にもかかわらず政治的空白を生む解散を望む人が多数派ということなのでしょうか。

もしそうなら、本当に日本が心配です。

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(追記)

麻生首相はさすがにわかっていらっしゃるようです。
少し安心しました。

時事通信(2008/10/25-20:32)

日本の国際的役割優先」=早期解散に慎重姿勢-麻生首相内外会見

麻生太郎首相は25日夕(日本時間同日夜)、アジア欧州会議(ASEM)首脳会合の閉幕後、北京市内のホテルで内外記者会見を行い、衆院解散・総選挙の時期について「国内的な政局より、(金融危機対策での日本の)国際的役割を優先する必要性の大きさを改めて感じさせられた」と述べた。世界的な金融危機への対応を優先するため、早期の衆院解散には慎重な姿勢を示した発言とみられる。

首相は、今回の金融危機に関して「100年に一度の国際的な経済危機だ。日本は欧米に比べて傷は浅いが、景気対策で内需を喚起する必要がある」と指摘。その上で、衆院解散の時期について「まだまだいろんなことを考えなければいけない。この段階で、するとかしないとか決めているわけではない」と述べ、判断していないことを強調した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008102500341&j1

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日経の社説

円高だ、円高だと喜んでいたら、日経平均株価がひどいことになっていました(10月23日午前10時で、8000円を切りかねない勢いです)。

で、日本経済の現状はどうなっているんだろうと、日経のサイトなどを見ていたら、以下のような社説が。
(ちょっと長いですが、全文引用します)

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081022AS1K2200222102008.html

社説2 日印連携で金融危機対応を(10/23)

インドのシン首相が来日し、麻生太郎首相との会談で両国関係の強化や金融危機への対応を含めた地域・国際協力の推進で合意した。

インドは民主主義の大国で、日本とは基本的価値を共有している。関係強化がもたらす戦略的な重要性は大きいが、政治交流が活発になったのは2005年に当時の小泉純一郎首相が訪印してからだ。

今回の会談で毎年の首脳訪問や閣僚レベルの政府間交流を継続し、安全保障や地域協力、地球温暖化対策など幅広い分野で連携を強めることになったのは大きな成果である。

折から世界は米国発の金融危機の嵐に見舞われている。経済規模でアジアのトップの日本と、3位のインドが連携する必要性はかつてなく高まっている。

シン首相は危機克服への貢献に意欲を示し、日本が提案している国際通貨基金(IMF)を通じた新興国向け緊急融資制度への協力にも前向きだ。インドは約3000億ドルと世界4位の外貨準備を抱える。アジアなどの新興国の経済不安を和らげるうえでも、具体化を急ぐべきである。

11億人の人口を抱え、中間層の台頭で内需の割合が高いインドは世界経済の下支え役の期待も大きい。金融危機の波及で株価や通貨が下落しているが、シン首相は「影響は比較的軽い」と言う。米国や中国に重点を置いていた日本企業の新たな海外戦略の焦点にもなっている。

インドに進出する日系企業はこの3年間でほぼ倍増した。直接投資も増えているが、昨年の両国の貿易額は103億ドル。インドの対外貿易の3%弱にとどまる。昨年から始まった経済連携協定(EPA)交渉の早期妥結が求められるゆえんだ。

会談では「EPA交渉の実質的進展を歓迎する」として、早期の締結を目指すことを確認した。両国の貿易や投資構造に厚みを持たせるような実のある協定を期待したい。

インドは原子力分野の協力も要請したが、日本政府は原子力協定の交渉入りを当面見送る方針だ。日本は唯一の被爆国として核不拡散への取り組みを求める義務がある。核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、核兵器を保有するインドとの原子力協力には慎重にならざるを得ない。

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日本にいたときから日経の社説には少なからず首をかしげることがあったのですが(もちろん良い記事もたくさんあるのですが…)、これはその類の記事でしょう。

全体として、「今後インドとの関係を深めるべし」という論調には何の異論もないのですが、

>折から世界は米国発の金融危機の嵐に見舞われている。経済規模でアジアのトップの日本と、3位のインドが連携する必要性はかつてなく高まっている。

たとえば、これは無理な注文でしょう。
インドの名目GDPは、10,661億ドル(2007年度:インド政府の発表による)と、当時の順位で世界11位ではありますが、これは10億を超える人口に支えられるところが大きく(要は、人口が多いので、個々の取引が小さくても合計すれば大きくなるということ。中国のGDPが大きくなる理由と似ています)、経済はまだまだ未成熟です。

現在、世界的な金融危機により、新興国と呼ばれる国々からは一斉に資金が引き揚げられており、インドもその例外ではありません。
たとえば、インドの代表的な株価指数であるSENSEXは、この1か月だけを見ても3割下落しており、1年前からは5割下落しています。
http://stock.indochannel.jp/mdata/sensex/lchart_1y.html

まあ、これだけなら、「日経平均だって年初から5割近く下落しているじゃないか!」ということになるのでしょうが、問題は通貨ルピーの価値も同時に落ちているところです。
たとえば、実際に日経自身が、10月22日の記事で以下のように伝えています。

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http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081022AT2M2202X22102008.html
アジア主要通貨、対ドルで下落 インドルピー最安値
【香港=吉田渉】22日のアジア外国為替市場で、主要通貨が対米ドルで下落した。特に韓国ウォン、インドルピーの下落が目立った。欧米の景気悪化を受け投資資金のリスク許容度が低下しており、財政が悪化している国・地域からの資金流出が加速している。(中略)
インドルピーは一時1ドル=49.50ルピーに近付き、対ドルでの最安値を更新した。インド準備銀行(中央銀行)がドル売り介入を実施しているもようだが、株式市場では業績への懸念が強まっているIT産業などからの資金流出が続いている。 (22:44)

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この「通貨安を食い止めるために、中央銀行がドル売り介入を実施している」というのは、典型的な経済基盤が脆弱な新興国の対応であり、売れるドルがなくなった国から順にIMFに駆け込んでいるというのが現状です。
(今のところ、ウクライナ、ベラルーシ、パキスタンの順ですが、これにハンガリー、アイスランドあたりも加わり、最終的に駆け込む国の数がどの程度になるかは、現状、予想すら立ちません)

インドと同時に報じられている韓国は、GDPの規模はインドよりも少し小さい(2007年の順位で12位)ですが、人口が5000万人弱ということを考えると、インドよりもはるかに経済基盤はしっかりしていると言ってもいいでしょう(あくまで比較論的に、ですが)。
その韓国でさえ、現時点で通貨危機の危険にみまわれているのです。

当然、インドに「日本と組んで金融危機に対応する」余裕などなく、下手をするとインド自身がIMF行きになってもおかしくありません
インドは日本と同じく資源国ではないため、主要資源を輸入に頼るほかなく、現在の混乱が長く続けば、デフォルト寸前まで追い込まれる可能性はゼロではないでしょう。

アジアで、「日本と組んで金融危機に対応する」ことができる可能性があるのは中国だけですが、中国のダメージも相当に深いため(上海株価指数は7割以上下落しており、中国でも不動産バブルがはじけています)、今は他の国を助けている余裕などないでしょう。

要するに、日経の「経済規模でアジアのトップの日本と、3位のインドが連携する必要性はかつてなく高まっている」というのは、インドの現状を見ていない無意味な発言と言わざるをえません。
両者が金融危機に何らかの形で「協力」して対応することがありうるとすれば、それは日本による一方的な援助という形をとることになると思われますが、これは普通「連携」とは言わないでしょう。

>シン首相は危機克服への貢献に意欲を示し、日本が提案している国際通貨基金(IMF)を通じた新興国向け緊急融資制度への協力にも前向きだ。インドは約3000億ドルと世界4位の外貨準備を抱える。アジアなどの新興国の経済不安を和らげるうえでも、具体化を急ぐべきである。

上に書いたとおり、現状では、インド自身がIMF行きになってもおかしくないのです。

また、インドの外貨準備高にしても、その中身が問題です。
外貨準備差高の投資先として、米国債を買っていたのか、それともリスクの高い証券(たとえば、フレディマックやファニーメイの証券など)に投資していたのかがわからない以上(後者なら、事実上外貨準備高は張り子の虎です)、これを過信すべきではないでしょう。

ちなみに、2008年7月現在の米国債の保有国ランキングは以下のとおりです(数字の単位は10億ドル)。ランキングに入っていないことから、インドがほとんど米国債を保有していないことは明らかです。

Japan                    593.4   
China, Mainland        518.7   
United Kingdom        290.8   
Oil Exporters          173.9
Brazil                 148.4   
Carib Bnkng Ctrs     147.7
Luxembourg            75.8
Russia                   74.1
Hong Kong           60.6
Switzerland            45.1
Taiwan                 42.3
Norway              41.8
Germany               41.1
Mexico                36.0
Korea               35.3
Turkey                  32.4   
Thailand                31.8
Singapore               31.4      

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続いて、

>11億人の人口を抱え、中間層の台頭で内需の割合が高いインドは世界経済の下支え役の期待も大きい。金融危機の波及で株価や通貨が下落しているが、シン首相は「影響は比較的軽い」と言う。米国や中国に重点を置いていた日本企業の新たな海外戦略の焦点にもなっている。

「影響は比較的軽」くありません。
金融危機の前に続いた資源高と、その後の金融危機による外国資本の引き上げとで、インド経済は激しいダメージを受けています。

まあ、シン首相としては対外的にはそう言うしかないのでしょうが(「危険ですよ~」、とか言っちゃったら投資が来なくなくなります)、それを真に受けるのはまずいでしょう。

>インドに進出する日系企業はこの3年間でほぼ倍増した。直接投資も増えているが、昨年の両国の貿易額は103億ドル。インドの対外貿易の3%弱にとどまる。昨年から始まった経済連携協定(EPA)交渉の早期妥結が求められるゆえんだ。
>会談では「EPA交渉の実質的進展を歓迎する」として、早期の締結を目指すことを確認した。両国の貿易や投資構造に厚みを持たせるような実のある協定を期待したい。

これは一定の意味はあると思います。

現在、インドでは外国の工業製品に豪快な金額の関税がかけられており(たとえば、自動車には100%の関税がかかっています)、これが撤廃されるなら日本にとってのメリットは大きいでしょう。

が、選挙を控えたインド政府が、インドの中小企業の大量倒産を招きかねない関税撤廃に本気で取り組むかどうかは、ものすごく怪しいと言わざるを得ません。
日本はインドから輸入する必要があるものはほとんどないので、EPAの内容はきわめて日本側に有利になることが予想されますが、「相手方に有利なものを急いで締結する」というのは、インド人の気性からして120%ありえないと断言できます。

それこそ、「原子力で協力してくれたら、EPAを締結する」として、原子力分野での協力を交渉カードとして使ってくる可能性もあります。
資源国でなく、かつ核保有国であるインドにとって、日本の原子力発電技術は喉から手が出るほどほしい技術でしょうから。

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ということで、少し長くなりましたが、あまりにも日経の社説がインドの現状を見据えていないことから、懸念+批判をしてみました。

日経は、近年、従前中国への投資を煽ったのと同様に、インドへの投資も煽っていますが、この程度の現状分析で盲目的に煽ってもらっては本当に困ります。
今回の記事だけでなく、これまでの日経のインド関係の記事全体にそういう傾向が見受けられます

インドは、外資にとって決して容易な環境ではありません。
外国直接投資規制そのものは緩和された内容となっていますが、そのことと「現実に進出して上手くいくかどうか」とは別問題です。
実際に進出したら、規制面、文化面で大きな摩擦が生じることは、既に多くのインドに進出した日本企業が経験しているところです。

日印の友好、協力関係を深めることは、今後とも必要ですが、ぜひとも日経には、「正確な取材と現状分析に基づく的確な提言」をお願いしたいところです。

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(追記)

今回の記事の目的は、インドの現状を正しく分析することにあり、日経を批判することは主眼ではありません。

たまたまネットを検索していて日経の社説が目についたため、それに対する反論という形で論を展開したことから日経批判の形になっていますが、日経以外のマスコミの認識も大同小異でしょう。

とにかく、マスコミには、インド投資を無批判に煽ることだけはやめてほしいと思います。
中国のときの二の舞にならないためにも。

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更新予定

日本から戻ってきて以降、えらい時差ボケにあたっています(現在、午前4時)。

もともと時差ボケには弱いのですが、特に東に行くときは本当にダメージを受けます。
旅行や仕事で世界中いろいろなところに行きましたが、日本からNYへの移動は一番きつく、調整までに1週間以上かかることも珍しくありません。

戻ってきて以降、大量のアサインメントと授業のキャッチアップに追われており、また今週末にはレポートの提出期限が控えているなど、ちょっとしばらくブログを更新できそうにありません。

今年7月以降、まともにブログを更新できておらず、ちょっとこのブログ自体どうしようかといろいろ考えています。
現状のまま中途半端に続けてもしょうがないような気もしており、いったん休止という形にすることも検討しています。

内容のない更新ばかりが続いており、定期的にこのブログを訪れてくださっている方には本当に申し訳ないです。

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参加証券(Participatory Notes)発行規制の全面撤廃

突貫帰国でのセミナー2件を終え、これからNYCに戻ります。
(ちなみに、この記事は成田空港のラウンジで書いています)

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さて、以前、参加証券(Participatory Notes)に対する規制について紹介しましたがこの規制、2008年10月6日付でSEBIにより全面的に撤廃されています。

SEBI Lifts Curb On P-Notes

The 12-month-old restriction on P-notes has been finally removed on October 6, 2008 by the Securities and Exchange Board of India (SEBI). The SEBI in an official statement said that from now onwards Foreign Institutional Investors (FII) can use P-notes. According to SEBI Chairman C B Bhave, the regulator ensured to lift the 40 per cent restriction for issuance of P-notes for both cash and derivative segments. Experts opine that this move by SEBI will help to revive the stock markets affected by global financial meltdown.

http://www.india-server.com/news/sebi-lifts-curb-on-p-notes-4206.html

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当時は金融市場の過熱を懸念して、外国機関投資家(FII)による参加証券(Participatory Notes)の発行を規制したわけですが、ここしばらくの世界的な金融危機とそれに伴うインド株式市場の暴落を受け、結局規制は全面的に解除されることになりました。

当初の規制が「18か月以内のポジションの解消」を規制内容の1つとしていたことからすれば、規制発効から1年経過していないこの時点で規制を全面撤廃するのは朝令暮改と言われても仕方ないでしょうが、現在の株式市場、金融市場の混乱を見ると、なりふり構っていられないといったところでしょうか。

とはいえ、既に世界全体から流動性が失われている現状では、この規制撤廃の効果はそれほど期待できないでしょうが…

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蛇足

世界経済全体の混乱を尻目に、一留学生としては単純に円高を喜んでいたりします。

さて、どのタイミングで留学資金(円)をドルに換えるべきか…

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傾くインド経済 -ICICI Bankで取り付け騒ぎ-

ICICI Bank faces a run in South Gujarat
http://timesofindia.indiatimes.com/articleshow/43103827.cms

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インド最大の民間商業銀行であるICICI Bank(実は私も口座を持っていたりします)のサウスグジャラートにある支店で、取り付け騒ぎが起きました。

資源高に伴うインフレと、アメリカの金融危機に端を発する世界経済全体の変調を受け、年初来、インド経済は傾きっぱなしなわけですが、ついに(地方都市でとはいえ)ICICI銀行で取り付け騒ぎが起きたかと思うと、いったいどこまで落ちていくのかと恐ろしくてなりません。

アメリカの金融危機を受け、世界中の金融機関が決済用のドルを確保しに走った結果、現在世界の主要インターバンク市場含むではドルが枯渇状況に陥っており、LIBORが4%を超えるという恐ろしい事態になっています。
(ちなみに、10月に入ってからは、東京市場もドル供給がほとんどできなくなっています)

マーケットでドルが調達できない金融機関は、やむをえず主要国の中央銀行によるドル放出供給に参加しているのですが、この供給に参加できているのはほぼ日米欧の金融機関だけであり、インドをはじめとした発展途上国は、このドル供給から排除されています。

その結果、発展途上国では貿易決済その他に必要なドルが調達できず、金融機能が目詰まりを起こしています。
今回のICICI Bankの取り付け騒ぎも、この流れと無関係ではないでしょう。
それだけに根が深いといえるかもしれません。

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ちなみに、私はインドに行く際に、インドの経済ニュースをこまめにチェックするためのモチベーションにしようと思って、インド株式ファンドを購入したのですが(購入時期は2007年8月)、2008年10月現在、なんとファンドの基準価格は当時の半額以下になってまっています。

結構な金額を購入したため(金額があまりに小さいと興味が失せてモチベーションが維持できないかも、とか余計なことを考えたため)、含み損が半端なく、現在解約したくてももはや解約できないくらいのマイナスになっています。

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実はこういう事態になっているのはインドだけではありません。

いわゆる経済新興国と言われている中国、ブラジルでは、去年の後半以降、軒並みすごい勢いで主要株式市場の株価が暴落しています。たとえば、中国ではすでに株価は年初の半額以下になっています。

ロシアに至っては、あまりの株価暴落っぷり(こちらも年初の半額以下になっています)に証券取引所を一時的に閉鎖し、一切の売り買いができないようにするという荒業に出ています。
お国柄というか、さすがのがぶり寄りですね。

とりあえず、BRICsとか言ってた奴、出てこい。

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一時帰国

10月2日(木)(日本時間3日(金))から、セミナーのために日本に一時帰国します。

めっきり更新頻度が落ちたにもかかわらず、変わらずこのブログを見てくださっている皆様とも、セミナーでお会いする機会があるかもしれません。

NYCは(日本製品の調達も含めて)生活にそれほど不便がないため、インドにいたときほど帰国に心躍るというわけではありませんが、それでも日本に帰れるのは楽しみです。

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