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FRBによるゼロ金利政策および量的緩和の採用可能性

(今回の記事はインドと直接の関係はありません。広く言えば関係はありますが…)

米国FRBがゼロ金利政策+量的緩和の導入を検討しているようです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081121-00000407-reu-bus_all

以下、少し長いですが、記事を引用します。

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[シカゴ 20日 ロイター] 

 米経済がスパイラル的な下降局面となるなか、連邦準備理事会(FRB)が金利水準をゼロとし、当面継続するとの見方が高まっている。
 10月の消費者物価指数(CPI)が過去最大の低下率となりデフレリスクが高まるなか、斬新な金融政策をとるとの予想もでてきた。
 JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は、12月と1月の連邦公開市場委員会(FOMC)で2回の0.5%ポイントずつ利下げし、史上初めてのゼロ金利にすると予想している。その上でデフレリスクにより「FRBは2009年いっぱいはゼロ金利政策を続けるだろう」と述べた。
 20日発表された週間新規失業保険申請件数は54万2000人と16年ぶり高水準となった。
 フェローリ氏は「労働市場の緩みが拡大している状況ではデフレとなる可能性が高い。その上、金融がタイトな状況で、緩みが改善するのが遅れている」と述べた。
 12月のFOMCは予定された1日ではなく、2日開催されると発表されたことで、FRBが何らかの大胆な政策を考えているとの見方が強まった。金利先物市場では、年末の金利水準が0.25―0.5%になることを織り込んでいる。
 FRBのコーン副議長は19日、デフレが定着するリスクに対して積極的な措置を講じる必要があるとの見解を示した。
 4キャストのアナリスト、ルディ・ナーバス氏は「最近の経済指標や10月FOMC議事録、コーン副議長発言をみると、FRBはこれまで考えられていたほど、ゼロ金利を嫌がっていないようだ」と述べた。
 セントルイス地区連銀のブラード総裁は20日、デフレ回避のためには量的緩和が必要となる可能性がある、と述べた。
 ゼロ金利は、米経済の反転に向けたFRBの措置の終了を意味しない。
 ナーバス氏は「景気刺激とデフレリスクの拡大回避に向けて、他の政策措置も必要となるだろう。FRBは、現在のFF金利目標を維持することができないため、政策金利の設定プロセスが効果的ではないと判断する可能性が高い」と述べた。
 FF金利は過去数週間、目標の1.0%を下回り、20日終盤には0.375%で推移している。
 コーン副議長をはじめFRB当局者は、すでに銀行システムの準備水準を高めるための「量的緩和」プログラムを開始したことを確認している。
 サンフランシスコ地区連銀のエコノミスト、グレン・ルードブッシュ氏は、金利目標に加え、あるいは代替措置として、準備預金残高の目標設定を検討するべきとの見解を示した。その上で「いずれ連邦公開市場委員会(FOMC)声明に準備預金をめぐる協議の内容を盛り込む必要が出てくる可能性がある」と述べた。
 アナリストによると、量的緩和を拡大する前にFRBは口先介入を行う可能性がある。フェローリ氏は「現在の景気の苦境を説明し、相当な期間低金利を続けることを、まずは市場に伝えるというのが最も可能性が高い」と述べた。
 ルードブッシュ氏も短期金利が「ゼロあるいはゼロに近い水準」にある場合、「FF金利を一定期間、低水準に維持するとの確約」が景気支援への主要な戦略になると指摘した。
 このような時間軸の公約は長期金利押し下げの一助となり、ひいては住宅市場も支援することになる。
 (Ros Krasny記者;翻訳 村山圭一郎) 

(引用終了)

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もしFRBが本気でゼロ金利政策と量的緩和を採用しようとしているのであれば、はっきり言って無茶だと思います。

私見ではありますが、ゼロ金利政策および量的緩和を米国FRBで導入するのは極めて困難というか、ドル基軸通貨制を維持したいのであれば絶対にやってはいけない行為です

日本では、日銀がゼロ金利政策と量的緩和を導入した結果、膨大な円キャリートレードが生じ、円の価値は長期的に下落しました(ちなみに、日銀の両政策が日本国内の景気浮揚につながったかどうかについては、実ははっきりしていません)。

同じことを米国FRBで行った場合、「ドルキャリートレード」とも言うべき事態が起こることになりますが、それは米国からのドルの流出につながり、またドルがドルキャリートレードの借り手の国でその国の通貨に両替するために売られる結果、ドル安を引き起こします。

そもそも、米国は、恒常的な貿易収支赤字を、米国に流入する資本による資本収支黒字でファイナンスすることにより、経常収支の黒字を維持している国(成熟した債務国家)なので、ゼロ金利政策が導入され、米国内への投資の投資効率が減少するとともに、量的緩和の結果生じると思われるドルキャリートレードによりドル流出が起こった場合、資本収支が赤字に転落し、その結果、経常収支までも大幅な赤字になってしまうことが予想されます。

ただでさえ、恒常的な財政赤字を抱えている米国で、経常収支の大幅な赤字化が起こり、それが長期化するということになると、米国の経済ファンダメンタルは傷つけられ、その結果としてさらなるドル安を招きます。

それでも、ドルが基軸通貨である間は、FRBがドルを刷りまくることにより、資本収支および経常収支の赤字をカバーできます。しかし、ドルの流通量が増えれば増えるほど、ドルの価値が低下していくことは避けられません。

そのため、ドルの価値低下が臨界点に達したところで、ニクソンショックと同じレベルのドルの価値信認の低下が起こり、その結果として基軸通貨の移行の動きが生じることが予想されます

では、その「臨界点」はどのように訪れるのでしょう。

現時点ではユーロも円も、ドルに代わるほど強くないため、基軸通貨の移行の動きはそれほど強くありませんが(それでも、フランスのサルコジ大統領あたりは、すでにドル基軸通貨制維持に反対しています)、上記シナリオでドルの価値が低下し続けた場合、どこかで「これならユーロや円の方がまし」という状態に至ってしまうことになると考えられます。

具体的にFRBがどの程度ドルを刷ったらそのような状態に至るのかまではわかりませんが、金融危機による米国のダメージの深さの程度によっては、意外に「その時」は早く来るかもしれません。

もし、ドルに対する世界の信任が失われ、決済通貨の円やユーロへの移行が進めば、現在のドル基軸通貨制そのものが崩壊しかねません

そうなると、米国は、「基軸通貨であるドルを刷って国家の赤字をカバーする」という方法が取れなくなるため、自力で財政再建に取り組むしかなくなりますが、これまでドルの基軸通貨性に胡坐をかいていた感の強い米国が、地道に負担の大きい財政再建に取り組むかは正直疑問であり、最悪、米国国内で強硬派が台頭して、世界情勢がきわめて不安になる可能性すらあります。

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ということで、ドルの基軸通貨制を揺らがせかねないゼロ金利政策と量的緩和をFRBが採用するのは、はっきり言って無茶だと思います。
米国国内の景気浮揚のことだけ考えれば、ゼロ金利政策も量的緩和も適切な解ではあるのですが、ドルは米国一国の通貨ではなく、世界の基軸通貨なのです。そして、米国はその事実を利用して自国の赤字をファイナンスしているのです。

日本がゼロ金利政策と量的緩和を同時に採用できたのは、所詮は円は基軸通貨ではなく、円の価値下落の影響も、基本的には日本国内とその周辺地域の問題にとどめることができたからです

それでも、円キャリートレードという副作用が発生し、日本円の価値は長期にわたって低空飛行を続けました(まあ日本は製造業立国の国家なので、輸出という観点からはかえって都合が良かったのですが)。
また、世界中の国々(特にアジア諸国とオセアニア)は、多かれ少なかれ今回の金融危機に伴う円キャリートレードの巻き戻しで痛い目にあっています。

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このあたり、FRBが何を考えているのかはわかりませんが、上記をすべてわかった上での深算遠謀があるのか、それとも「なんだかんだいっても、ドルの基軸通貨制が崩れることはないだろう」と、単純にたかをくくっているだけなのか…。

とりあえず、世界平和のために、前者であることを切実に祈ります。

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