« インド外資規制解説 -2008年10月10日付けでSSI品目が21品目に- | トップページ | FRBによるゼロ金利政策および量的緩和の採用可能性 »

みなし公開会社規制解説その5

その2からその4までで説明してきたのは、インド内国会社について「外国会社が実質的に100%の株式を保有する場合」の話でしたが、今回からは、「外国会社が形式的にも実質的にも100%は保有しない場合」の話です。
典型的には、日本企業とインド企業で合弁会社を設立する場合が、これにあたります。

さて、日本企業とインド企業との合弁会社の場合、日本企業が形式的にも実質的にも株式を100%保有することはありえないため(もし保有したら、それは「合弁」とは呼びません)、そもそも4条7項但書の適用の余地はありません。
4条7項但書は、「外国会社が実質的に100%保有だが、非公開会社の最低株主数が2人以上であることから、形式的には100%保有できない」という場合に適用が問題となる条文であるため、インド企業が一定の株式を保有することが前提となる合弁会社においては、解釈論に至るまでもなく適用されないことは明らかであるためです。

したがって、このような合弁会社においては『非公開会社でない会社の子会社である非公開会社(a private company which is a subsidiary of a company which is not a private company)』については、当該会社がそれ自体非公開会社の要件をみたしていたとしても、公開会社として扱われる」というみなし公開会社規制がそのまま適用されることになります。

そのため、たとえば、日本企業60%、インド企業40%という持分の非公開合弁会社(それ自体は非公開会社の要件をみたすように設立された合弁会社をいいます。以下同じ)の場合、当該会社はみなし公開会社となります。
(※その2で解説したとおり、ほぼ全ての日本企業は、インド会社法上公開会社に該当するためです)

一方、インド企業70%、日本企業30%という持分の非公開合弁会社の場合、①当該インド企業が公開会社であればみなし公開会社に、②当該インド企業が非公開会社であれば、非公開会社となります。

--

さて、公開会社は非公開会社に比べてコンプライアンス規制が厳しく、運営に手間とコストがかかるため、合弁会社といえども、できれば非公開会社とした方が(=みなし公開会社に該当しないようにした方が)、運営上有利であるといえます。

インド企業(公開会社)側が過半数株式を保有する場合、合弁会社がみなし公開会社となってしまうことはやむをえないとしても、日本企業側が過半数株式を保有する場合、なんとかみなし公開会社規制を免れることはできないでしょうか。

たとえば、以下のような方法はどうでしょう。

(設例1)
日本企業Aが、シンガポールあたりに、インド会社法上の非公開会社の要件をみたすような子会社(SPCでも可。以下B)を設立し、合弁会社の直接の親会社をAではなくBにすることにより、当該合弁会社を「非公開会社の子会社」とする。

結論からいうと、このような方法でインド会社法上のみなし公開会社規制を回避することはできません。

なぜか。

それは、インド会社法上の「子会社」の定義は、単純な「株式を過半数保有されている会社」というだけではないからです。

--

インド会社法上、「子会社(subsidiary)」は、4条1項により、以下のとおり定義されています。
少し長くなりますが、全文を引用します(ちなみに、illustrationという部分も法文の一部です)。

4. Meaning of "holding company" and "subsidiary"
(1) For the purposes of this Act, a company shall, subject to the provisions of subsection (3), be deemed to be a subsidiary of another if, but only if,-
(a) that other controls the composition of its Board of directors; or
(b) that other-
   (i) where the first-mentioned company is an existing company in respect of which the holders of preference shares issued before the commencement of this Act have the same voting rights in all respects as the holders of equity shares, exercises or controls more than half of the total voting power of such company;
   (ii) where the first-mentioned company is any other company, holds more than half in nominal value of its equity share capital; or
(c) the first-mentioned company is a subsidiary of any company which is that other's subsidiary.

Illustration
Company B is a subsidiary of Company A, and Company C is a subsidiary of Company B.  Company C is a subsidiary of Company A, by virtue of clause (c) above.  If Company D is a subsidiary of Company C, Company D will be a subsidiary of Company B and consequently also of Company A, by virtue of clause (c) above; and so on.

--

上記4条1項上、インド会社法上、「子会社」は、以下のいずれかに該当するものと定義されています。
①「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))
②「会社の過半数(more than half)の株式が単独株主(親会社)に保有されている会社」(同項(b))
③「子会社の子会社」(同項(c))

日本で「子会社」と言った場合、専ら上記②のイメージのみを持つことが多いですが、インド会社法上は、②に加えて①と③の要件をみたす会社も「子会社」に該当します。

さて、ここで設例1に戻りましょう。

設例1では、確かに合弁会社の直接の親会社はBであり、②の見地からは合弁会社は「非公開会社の子会社」ということになります。
が、③の見地からは、合弁会社は、(Bの親会社である)Aの子会社にも該当するため、結局日本企業であるAの子会社として、みなし公開会社規制の適用対象となってしまいます。

--

次回以降、いくつか具体的な説例を示して、みなし公開会社規制の回避可能性を検討していきます。

ちなみに、結論から言うと、インド会社法上のみなし公開会社規制は、回避が非常に難しい規制であり、テクニカルな方法でこれを免れるのはきわめて困難です。

|

« インド外資規制解説 -2008年10月10日付けでSSI品目が21品目に- | トップページ | FRBによるゼロ金利政策および量的緩和の採用可能性 »

インド会社法解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/448933/25465185

この記事へのトラックバック一覧です: みなし公開会社規制解説その5:

« インド外資規制解説 -2008年10月10日付けでSSI品目が21品目に- | トップページ | FRBによるゼロ金利政策および量的緩和の採用可能性 »