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2008年12月

みなし公開会社規制解説その7

前回に続いて、みなし公開会社規制回避の方法の具体例です。

(設例3)
・日本企業Aと、非公開会社であるインド企業Bとの間で、合弁会社Cを設立する。
・Cへの出資比率は、Aが49%、Bが51%とする。
・AとBとは、合弁契約(または株主間契約)において、Cの取締役総数7名のうち、Aが4名の指名権を、Bが3名の指名権を有する旨合意する。

この方法は、「実質的には日本企業がイニシアティブをとるが、みなし公開会社規制を回避すべく、非公開会社であるインド企業Bに過半数の株式を保有させつつ、合弁契約(株主間契約)において日本企業Aが取締役過半数の選任権を得る」というスキームです。

が、前回を読まれた方ならお察しいただけるとおり、この方法でもやはりみなし公開会社規制を回避することはできません。

インド会社法4条1項上の「子会社」の定義である、

①「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))
②「会社の過半数(more than half)の株式が単独株主(親会社)に保有されている会社」(同項(b))
③「子会社の子会社」(同項(c))

のうち、②と③はこの方法で回避できますが、①が回避できないためです。

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その6で解説したとおり、以下の要件を満たす会社は、①にいう「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」とみなされることになります。

(i)全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限(power)を、単独で行使できる法人株主が存在する場合
(ii)(i)について、以下の各事情のいずれかが存在する場合には、法人株主はその取締役の選任権限を有しているとみなされる
(a)当該法人株主による賛成なしには、その者が取締役として選任されえないこと
(b)当該法人株主の役員または社員であることが、その者が取締役として選任されるための要件となっていること
(c)当該法人株主またはその子会社により指名される個人のみが、取締役となりえること

上記への該当性の判断においては、「(i)に該当するかどうか」を直接に判断するのではなく、「個別の取締役の選任権限につき(ii)の(a)から(c)までのいずれかをみたしているかどうかを判断し」、「『選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役』が取締役全員の過半数を超える場合、(i)に該当するものとみなす」というステップを踏むことになります。

さて、設例3では、日本企業Aは合弁会社Cの株式を49%しか保有していませんが、合弁契約(あるいは株主間契約)上、Cの取締役総数7人のうち、4人を指名する権限を有しています。

これは、当該4人の取締役について、上記(ii)の(a)と(c)がみたされていることを意味し、したがって、「選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役」が取締役全員の過半数を超えることから、(i)に該当するとみなされることになります。

そのため、結局合弁会社Cは、日本企業Aから「取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))に該当し、よってインド会社法上Aの子会社に該当してしまいます。

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さて、その5、6、7と、典型的と思われる設例を挙げて、インド会社法上のみなし公開会社規制の回避可能性を検討してきたわけですが、かなり回避が困難な規制であることはご理解いただけたのではないかと思われます。
(やはり、「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」という要件が厳しく、この要件により、取締役会における意思決定を日本企業が支配する状況を作ろうとすると、それにより当該合弁会社は日本企業の「子会社」に該当してしまい、よってみなし公開会社に該当してしまうということになってしまうことになります)

日本企業の現地法人または合弁会社の中には、上記規制の内容を十分理解することなく、単純に株式持分の観点からのみ「子会社」から外れるようにして(要は単独で過半数を持たないようにして)、非公開会社として設立、運営している会社も少なからずあるようですが、それらの現地法人または合弁会社は、コンプライアンス上かなり危険な橋を渡っていることになります。
(なお、みなし公開会社規制に「違反した場合に、どのような問題が生じうるのか」については、もう少し後で詳しく解説したいと思います)

まあ、一番の問題は、現地コンサルタントや日系コンサルタントが、このあたりの複雑な問題を十分に認識することなく、みなし公開会社規制を安易にとらえて設立や運営をアドバイスしている、という点にあるわけですが…

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ただ、合弁会社において、実質的に会社の意思決定権を支配しつつ、みなし公開会社規制を回避する方法がないわけではありません。

次回は、その方法をいくつか挙げて検討してみたいと思います。

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日印EPA交渉が越年へ

日印EPA交渉が越年へ、後発医薬品の承認手続きなどで溝
12月21日12時50分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081221-00000018-yom-int

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日本とインドの間の経済連携協定(EPA)締結に向けた交渉が越年することになり、両国政府が当初目指していた「交渉開始から2年以内」の妥結は絶望的となった。

交渉は、2007年1月末に開始。今月上旬、東京で行われた第11回の交渉でも、インドからの輸出品である後発医薬品の日本国内の承認手続き簡素化などを巡り、両国の溝が埋まらなかった。交渉関係筋は「年内の交渉はない」と語り、越年を認めた。

日印は、06年12月の首脳会談でEPA交渉を「2年以内の可能な限り早期に終える」ことで合意した。だが、今年に入り交渉は難航。インドのシン首相は10月の訪日前、本紙などに「年内合意を望む」と語っていたが、麻生首相と会談後の共同声明では、「可能な限り早期の妥結に期待する」と表現を後退させていた。 

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予想通り、EPA妥結が遅延しました。

まあ、インド人と日本人では時間に対する感覚がまるで違うので(良いとか悪いとかの問題ではなく)、「2年以内」という話自体、あんまりアテにはできないものではあったのですが。

おそらく、インド側に大幅な利益誘導をしない限りは、来年末の段階でもまだ妥結できていないことでしょう。

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みなし公開会社規制解説その6

前回解説したとおり、インド会社法4条1項上、「子会社」は、以下のいずれかに該当するものと定義されています。

①「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))
②「会社の過半数(more than half)の株式が単独株主(親会社)に保有されている会社」(同項(b))
③「子会社の子会社」(同項(c))

そこで、みなし公開会社規制を免れる方法として、次のようなスキームを考えてみます。

(設例2)
・日本企業Aは、子会社B(日本子会社でも外国子会社でも可)を持っている。
・合弁相手方であるインド企業をCとする。
・AとCとの間で、Aが51%、Cが49%の出資比率で合弁会社Dを設立することとなった。
・ここで、素直にAが51%を保有してしまっては、Dが「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社(a private company which is a subsidiary of a company which is not a private company)」に該当してしまうため、Aが49%、Bが2%を保有することとした。
・つまり、Dの株式保有状況は、Aが49%、Bが2%、Cが49%となる。

これは一見うまい方法です。

まず、A、Cがともに49%しか保有していないため、上記②(株式保有割合基準)からは、DはAの子会社にもCの子会社にも該当しません。
また、Bが2%しかしか保有していないので、DはBの子会社にあたらず、上記③(子会社の子会社基準)からも、DはAの子会社とはなりません。

では、①(取締役会構成コントロール基準)からはどうでしょうか?

そもそも、インド会社法4条1項(a)にいう「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」とは、いったいどのような会社をさすのでしょうか。
これについては、次項である4条2項が、次のように規定しています。

(2) For the purposes of sub-section (1), the composition of a company's Board of directors shall be deemed to be controlled by another company if, but only if, that other company by the exercise of some power exercisable by it at its discretion without the consent or concurrence of any other person, can appoint or remove the holders of all or a majority of the directorships; but for the purposes of this provision that other company shall be deemed to have power to appoint to a directorship with respect to which any of the following conditions is satisfied, that is to say:-
(a) that a person cannot be appointed thereto without the exercise in his favour by that other company of such a power as aforesaid;
(b) that a person's appointment thereto follows necessarily from his appointment as director or manager of, or to any other office or employment in, that other company; or
(c) that the directorship is held by an individual nominated by that other company or a subsidiary thereof.

上記規定から、以下の要件を満たす場合には、当該会社は「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」とみなされることになります。

(i)全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限(power)を、単独で行使できる法人株主が存在する場合
(ii)(i)について、以下の各事情のいずれかが存在する場合には、法人株主はその取締役の選任権限を有しているとみなされる
(a)当該法人株主による賛成なしには、その者が取締役として選任されえないこと
(b)当該法人株主の役員または社員であることが、その者が取締役として選任されるための要件となっていること
(c)当該法人株主またはその子会社により指名される個人のみが、取締役となりえること

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インド会社法上、取締役の選任および解任は株主総会普通決議事項とされており(選任につき225条2項、256条3項、257条1項、解任につき284条1項)、株主総会における過半数の賛成により決議可能です。

つまり、最も単純な想定として、ある法人株主が、会社の過半数の株式を保有していれば、その法人株主は上記(i)にいう「全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限を、単独で行使できる法人株主」であるといえることになりそうです。

もっとも、実際の企業活動において、株式の持合関係は必ずしもそれほど単純ではないため、(i)に該当するかどうかを判断する基準として、個別の取締役の選任権限につき(ii)の(a)から(c)までの要件が設けられています。

つまり、「(i)に該当するかどうか」を直接に判断するのではなく、「個別の取締役の選任権限につき(ii)の(a)から(c)までのいずれかをみたしているかどうかを判断し」、「『選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役』が取締役全員の過半数を超える場合、(i)に該当するものとみなす」というやり方で、(i)への該当性が判断されることになります。

ということで、上に述べた「ある法人株主が、会社の過半数の株式を保有する」という場合は、「全ての取締役について、(ii)の(a)と(c)の要件を双方みたす」、「したがって、『選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役』が取締役全員である(当然過半数を超える)ことから、(i)の要件をみたす」という考え方になります。

このあたり、ややこしいので少し整理すると、

「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」に該当するかどうか(4条1項(a))

全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限(power)を、単独で行使できる法人株主が存在するか(4条2項柱書)

個別の取締役の選任権限につき4条2項(a)から(c)までのいずれかをみたしているかどうかを判断し、その結果として、「選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役」が取締役全員の過半数を超えるか(4条2項各号)

という順序で遡っていくことにより判断することになります。

逆にいえば、4条2項各号のいずれかの要件をみたす取締役が過半数を超えている会社は、「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」であり、子会社に該当するということです。

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さて、説例2に戻ります。

設例2で、Aは形式的にはDの株式を49%しか保有していません。

しかしながら、BがAの子会社である以上、BがAの意向を無視して2%の株式の議決権を行使できるはずもないため、結局、Dのすべての取締役について、「(a)当該法人株主による賛成なしには、その者が取締役として選任されえないこと」、「(c)当該法人株主またはその子会社により指名される個人のみが、取締役となりえること」という要件をみたすことになります。

Dのすべての取締役について上記要件がみたされる以上、結局、AはDについて「全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限を、単独で行使できる法人株主」ということになり、したがってDは「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」として、Aの子会社に該当することとなります。

よって、設例2のようなスキームを使ったとしても、やはり合弁会社Dについてみなし公開会社規制を免れることはできません。

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なお、上記とは別の観点からのアプローチとして、

「AとBがDの株主であるとして、BがAの子会社である場合には、親会社の子会社に対する支配力に鑑み、実質的にAがBの保有分を併せて保有しているものとみなされる(すなわち、Dについて、子会社Bの持分が親会社Aの持分に合算される)」

との解釈があります。

これは、①(取締役会構成コントロール基準)による話ではなく、②(株式保有割合基準)による際に、解釈によって子会社の持分を親会社の持分に合算しようという考え方です。
「このような合算解釈を取らないと、子会社に対象会社の株式を分散保有させることにより、いくらでもみなし公開会社規制を免れることができてしまうことになる」ということで、強く支持されている解釈です。

この考え方で、設例2をみると、単純にBの持分2%がAの持分49%に足され、Aが51%を保有しているものとみなされることから、②(株式保有割合基準)に基づいて、DはAの子会社となる、ということになります。

こちらの方が話としては単純で、しかも結論も①(取締役会構成コントロール基準)によったときと同じであることから、わかりやすいのではないかと思われます。

ただ、弱点は、インド会社法上の明文規定ではなく、あくまでも解釈が根拠である、という点です。

とはいえ、この解釈をとったときの結果は、①(取締役会構成コントロール基準)によったときと事実上同じになることから、万一この解釈がインド当局に否定されたとしても、結論としてリスクは生じません。
そのため、とりあえずはこの解釈に基づき、いわば簡易判別式的にみなし公開会社規制がかかるかどうかを判断するというやり方をとったとしても、問題はないと考えられます。

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次回も、みなし公開会社規制回避の方法の具体例を見ていきたいと思います。

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試験終了

ようやく試験が終わりました。

結局、試験期間中は全くブログを更新できませんでした、すみませんm(_ _)m

それにしても、英語の試験がこんなにきついものだったとは…
問題文を読むだけで試験時間を結構消費してしまうため、時間が全然足りませんでした。

結果が怖いところではありますが、ともかく終わったということで、しばらくはお休みです。

冬休みは年明け1月12日まで。
「何もしなくていい休み」をこれだけ与えられるのは久しぶりかも。

年末年始はNYCを拠点にアメリカ国内旅行などでのんびり過ごそうと思います。

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試験が終わったということで、ずっと止まっていたみなし公開会社規制解説を再開したいと思います。

なんとか年内には解説を終えたいと思っています。

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初雪

NYCに初雪が降りました。

天気予報によれば、明日の最低気温はマイナス7℃

12月頭でこれだと、2月になったらどうなるのかと本気で恐れています。
(去年もNYCにいた人の話によれば、マイナス20℃くらいまでいく日もあるそうです)

約2年ぶりの冬がいきなりこんなんで、体を壊さないか心配です…

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試験期間

ロースクールは、12月10日から試験期間に入ります。

そのため、今のところ、試験前にあと1回だけ更新して(みなし公開会社規制の続きをアップする予定です)、その後はしばらく更新頻度を下げる予定です。
現実逃避したくなったときに、1回くらい更新するかもしれませんが…)

ちなみに、ここ最近はペーパーの提出期限や試験の準備に絶賛追われ中です。

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さあ、私は無事試験をクリアして単位をもらえるのでしょうか!?

……んなこと言ってる場合じゃないですね、勉強勉強。

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NYCでのテロ抗議集会(12月1日)

ムンバイでのテロへの抗議として、明日12月1日午後5時(現地時間)から、NYCで学生を中心に、Candlelight Vigil against Mumbai Terrorsit Attack(ろうそく抗議デモ集会)が行われます。

NYCは9・11で同じくテロの被害にあっているということもあり、今回のムンバイテロに対してもきわめて同情的であり、市民の間では反テロの心情が高まっています。

残念ながら、私は同時間帯に大学の授業が被っているため、参加できないのですが(大学の授業を休むことも考えましたが、諸事情を考慮して断念しました)、事前に得た情報からは、千人を超える規模の集会になるのではないかと思われます。

It's not for Mumbai or New York, it's for the world.

今回のテロ事件の全ての犠牲者への哀悼を込めて。

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