« 試験終了 | トップページ | 日印EPA交渉が越年へ »

みなし公開会社規制解説その6

前回解説したとおり、インド会社法4条1項上、「子会社」は、以下のいずれかに該当するものと定義されています。

①「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))
②「会社の過半数(more than half)の株式が単独株主(親会社)に保有されている会社」(同項(b))
③「子会社の子会社」(同項(c))

そこで、みなし公開会社規制を免れる方法として、次のようなスキームを考えてみます。

(設例2)
・日本企業Aは、子会社B(日本子会社でも外国子会社でも可)を持っている。
・合弁相手方であるインド企業をCとする。
・AとCとの間で、Aが51%、Cが49%の出資比率で合弁会社Dを設立することとなった。
・ここで、素直にAが51%を保有してしまっては、Dが「非公開会社でない会社の子会社である非公開会社(a private company which is a subsidiary of a company which is not a private company)」に該当してしまうため、Aが49%、Bが2%を保有することとした。
・つまり、Dの株式保有状況は、Aが49%、Bが2%、Cが49%となる。

これは一見うまい方法です。

まず、A、Cがともに49%しか保有していないため、上記②(株式保有割合基準)からは、DはAの子会社にもCの子会社にも該当しません。
また、Bが2%しかしか保有していないので、DはBの子会社にあたらず、上記③(子会社の子会社基準)からも、DはAの子会社とはなりません。

では、①(取締役会構成コントロール基準)からはどうでしょうか?

そもそも、インド会社法4条1項(a)にいう「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」とは、いったいどのような会社をさすのでしょうか。
これについては、次項である4条2項が、次のように規定しています。

(2) For the purposes of sub-section (1), the composition of a company's Board of directors shall be deemed to be controlled by another company if, but only if, that other company by the exercise of some power exercisable by it at its discretion without the consent or concurrence of any other person, can appoint or remove the holders of all or a majority of the directorships; but for the purposes of this provision that other company shall be deemed to have power to appoint to a directorship with respect to which any of the following conditions is satisfied, that is to say:-
(a) that a person cannot be appointed thereto without the exercise in his favour by that other company of such a power as aforesaid;
(b) that a person's appointment thereto follows necessarily from his appointment as director or manager of, or to any other office or employment in, that other company; or
(c) that the directorship is held by an individual nominated by that other company or a subsidiary thereof.

上記規定から、以下の要件を満たす場合には、当該会社は「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」とみなされることになります。

(i)全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限(power)を、単独で行使できる法人株主が存在する場合
(ii)(i)について、以下の各事情のいずれかが存在する場合には、法人株主はその取締役の選任権限を有しているとみなされる
(a)当該法人株主による賛成なしには、その者が取締役として選任されえないこと
(b)当該法人株主の役員または社員であることが、その者が取締役として選任されるための要件となっていること
(c)当該法人株主またはその子会社により指名される個人のみが、取締役となりえること

--

インド会社法上、取締役の選任および解任は株主総会普通決議事項とされており(選任につき225条2項、256条3項、257条1項、解任につき284条1項)、株主総会における過半数の賛成により決議可能です。

つまり、最も単純な想定として、ある法人株主が、会社の過半数の株式を保有していれば、その法人株主は上記(i)にいう「全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限を、単独で行使できる法人株主」であるといえることになりそうです。

もっとも、実際の企業活動において、株式の持合関係は必ずしもそれほど単純ではないため、(i)に該当するかどうかを判断する基準として、個別の取締役の選任権限につき(ii)の(a)から(c)までの要件が設けられています。

つまり、「(i)に該当するかどうか」を直接に判断するのではなく、「個別の取締役の選任権限につき(ii)の(a)から(c)までのいずれかをみたしているかどうかを判断し」、「『選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役』が取締役全員の過半数を超える場合、(i)に該当するものとみなす」というやり方で、(i)への該当性が判断されることになります。

ということで、上に述べた「ある法人株主が、会社の過半数の株式を保有する」という場合は、「全ての取締役について、(ii)の(a)と(c)の要件を双方みたす」、「したがって、『選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役』が取締役全員である(当然過半数を超える)ことから、(i)の要件をみたす」という考え方になります。

このあたり、ややこしいので少し整理すると、

「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」に該当するかどうか(4条1項(a))

全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限(power)を、単独で行使できる法人株主が存在するか(4条2項柱書)

個別の取締役の選任権限につき4条2項(a)から(c)までのいずれかをみたしているかどうかを判断し、その結果として、「選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役」が取締役全員の過半数を超えるか(4条2項各号)

という順序で遡っていくことにより判断することになります。

逆にいえば、4条2項各号のいずれかの要件をみたす取締役が過半数を超えている会社は、「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」であり、子会社に該当するということです。

--

さて、説例2に戻ります。

設例2で、Aは形式的にはDの株式を49%しか保有していません。

しかしながら、BがAの子会社である以上、BがAの意向を無視して2%の株式の議決権を行使できるはずもないため、結局、Dのすべての取締役について、「(a)当該法人株主による賛成なしには、その者が取締役として選任されえないこと」、「(c)当該法人株主またはその子会社により指名される個人のみが、取締役となりえること」という要件をみたすことになります。

Dのすべての取締役について上記要件がみたされる以上、結局、AはDについて「全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限を、単独で行使できる法人株主」ということになり、したがってDは「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」として、Aの子会社に該当することとなります。

よって、設例2のようなスキームを使ったとしても、やはり合弁会社Dについてみなし公開会社規制を免れることはできません。

--

なお、上記とは別の観点からのアプローチとして、

「AとBがDの株主であるとして、BがAの子会社である場合には、親会社の子会社に対する支配力に鑑み、実質的にAがBの保有分を併せて保有しているものとみなされる(すなわち、Dについて、子会社Bの持分が親会社Aの持分に合算される)」

との解釈があります。

これは、①(取締役会構成コントロール基準)による話ではなく、②(株式保有割合基準)による際に、解釈によって子会社の持分を親会社の持分に合算しようという考え方です。
「このような合算解釈を取らないと、子会社に対象会社の株式を分散保有させることにより、いくらでもみなし公開会社規制を免れることができてしまうことになる」ということで、強く支持されている解釈です。

この考え方で、設例2をみると、単純にBの持分2%がAの持分49%に足され、Aが51%を保有しているものとみなされることから、②(株式保有割合基準)に基づいて、DはAの子会社となる、ということになります。

こちらの方が話としては単純で、しかも結論も①(取締役会構成コントロール基準)によったときと同じであることから、わかりやすいのではないかと思われます。

ただ、弱点は、インド会社法上の明文規定ではなく、あくまでも解釈が根拠である、という点です。

とはいえ、この解釈をとったときの結果は、①(取締役会構成コントロール基準)によったときと事実上同じになることから、万一この解釈がインド当局に否定されたとしても、結論としてリスクは生じません。
そのため、とりあえずはこの解釈に基づき、いわば簡易判別式的にみなし公開会社規制がかかるかどうかを判断するというやり方をとったとしても、問題はないと考えられます。

--

次回も、みなし公開会社規制回避の方法の具体例を見ていきたいと思います。

|

« 試験終了 | トップページ | 日印EPA交渉が越年へ »

インド会社法解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/448933/26333708

この記事へのトラックバック一覧です: みなし公開会社規制解説その6:

« 試験終了 | トップページ | 日印EPA交渉が越年へ »