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みなし公開会社規制解説その7

前回に続いて、みなし公開会社規制回避の方法の具体例です。

(設例3)
・日本企業Aと、非公開会社であるインド企業Bとの間で、合弁会社Cを設立する。
・Cへの出資比率は、Aが49%、Bが51%とする。
・AとBとは、合弁契約(または株主間契約)において、Cの取締役総数7名のうち、Aが4名の指名権を、Bが3名の指名権を有する旨合意する。

この方法は、「実質的には日本企業がイニシアティブをとるが、みなし公開会社規制を回避すべく、非公開会社であるインド企業Bに過半数の株式を保有させつつ、合弁契約(株主間契約)において日本企業Aが取締役過半数の選任権を得る」というスキームです。

が、前回を読まれた方ならお察しいただけるとおり、この方法でもやはりみなし公開会社規制を回避することはできません。

インド会社法4条1項上の「子会社」の定義である、

①「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))
②「会社の過半数(more than half)の株式が単独株主(親会社)に保有されている会社」(同項(b))
③「子会社の子会社」(同項(c))

のうち、②と③はこの方法で回避できますが、①が回避できないためです。

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その6で解説したとおり、以下の要件を満たす会社は、①にいう「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」とみなされることになります。

(i)全てのまたは過半数の取締役を選任しまたは解任する権限(power)を、単独で行使できる法人株主が存在する場合
(ii)(i)について、以下の各事情のいずれかが存在する場合には、法人株主はその取締役の選任権限を有しているとみなされる
(a)当該法人株主による賛成なしには、その者が取締役として選任されえないこと
(b)当該法人株主の役員または社員であることが、その者が取締役として選任されるための要件となっていること
(c)当該法人株主またはその子会社により指名される個人のみが、取締役となりえること

上記への該当性の判断においては、「(i)に該当するかどうか」を直接に判断するのではなく、「個別の取締役の選任権限につき(ii)の(a)から(c)までのいずれかをみたしているかどうかを判断し」、「『選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役』が取締役全員の過半数を超える場合、(i)に該当するものとみなす」というステップを踏むことになります。

さて、設例3では、日本企業Aは合弁会社Cの株式を49%しか保有していませんが、合弁契約(あるいは株主間契約)上、Cの取締役総数7人のうち、4人を指名する権限を有しています。

これは、当該4人の取締役について、上記(ii)の(a)と(c)がみたされていることを意味し、したがって、「選任権限について(a)から(c)のいずれかの要件がみたされている個別の取締役」が取締役全員の過半数を超えることから、(i)に該当するとみなされることになります。

そのため、結局合弁会社Cは、日本企業Aから「取締役会の構成をコントロールされうる会社」(4条1項(a))に該当し、よってインド会社法上Aの子会社に該当してしまいます。

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さて、その5、6、7と、典型的と思われる設例を挙げて、インド会社法上のみなし公開会社規制の回避可能性を検討してきたわけですが、かなり回避が困難な規制であることはご理解いただけたのではないかと思われます。
(やはり、「他の者から取締役会の構成をコントロールされうる会社」という要件が厳しく、この要件により、取締役会における意思決定を日本企業が支配する状況を作ろうとすると、それにより当該合弁会社は日本企業の「子会社」に該当してしまい、よってみなし公開会社に該当してしまうということになってしまうことになります)

日本企業の現地法人または合弁会社の中には、上記規制の内容を十分理解することなく、単純に株式持分の観点からのみ「子会社」から外れるようにして(要は単独で過半数を持たないようにして)、非公開会社として設立、運営している会社も少なからずあるようですが、それらの現地法人または合弁会社は、コンプライアンス上かなり危険な橋を渡っていることになります。
(なお、みなし公開会社規制に「違反した場合に、どのような問題が生じうるのか」については、もう少し後で詳しく解説したいと思います)

まあ、一番の問題は、現地コンサルタントや日系コンサルタントが、このあたりの複雑な問題を十分に認識することなく、みなし公開会社規制を安易にとらえて設立や運営をアドバイスしている、という点にあるわけですが…

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ただ、合弁会社において、実質的に会社の意思決定権を支配しつつ、みなし公開会社規制を回避する方法がないわけではありません。

次回は、その方法をいくつか挙げて検討してみたいと思います。

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