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プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制①

前回述べたとおり、プレスノート2009年2号は、外国直接投資(Foreing Direct Investment (FDI))における直接的投資(外国企業が直接インド企業の株式等を保有する場合)と間接的投資(外国企業がインド国内に法人を持ち、そのインド法人を通じて他のインド企業の株式等を保有する場合)における、FDI保有比率の計算方法について規定しています。

たとえば、日本企業Aがあるとして、Aが直接インド法人Zの株式を保有する場合、その保有持分がFDI保有持分としてカウントされることは異論はないでしょう。

では、日本企業Aがすでにインド国内に現地法人(あるいは合弁会社)Bを設立しており、そのBがZの株式を保有している場合、FDIはどのようにカウントされるのでしょうか?

そもそも、Aが直接Zの株式を保有するのではなく、現地法人Bを通じて保有することは、インド外国為替管理法上認められているのでしょうか?

後者の疑問への答えがイエスでなければ、そもそも前者の疑問は成立しないことになるため、今回は、まず後者の疑問について、従前の規制と今回のプレスノート2009年2号で変更された部分について、簡単に解説したいと思います。

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インド外国為替管理法上、日本企業などのインド非居住者が、インド国内の現地法人や合弁会社を通じて、さらに他のインド内国会社の株式等を取得する投資は、ダウンストリーム・インベストメント(downstream investment)と呼ばれています。
インド非居住者を上流として、そのインド現地法人(合弁会社)→他のインド内国会社と、投資が下流に流れていくイメージです。

さて、今回のプレスノート2009年2号が出る前は、まず、プレスノート1997年3号により、100%の「foreign owned holding company in India」によるダウンストリーム・インベストメントについては、必ずインド外国投資促進委員会(FIPB)の事前承認が必要である旨が規定されていました(同プレスノート「11」参照)。
プレスノート1997年3号は、以下のDIPP/SIAのサイトから参照可能です。
http://eaindustry.nic.in/handbk/chap008.pdf

その後、プレスノート1997年3号に対する例外を定めるものとして、プレスノート1999年9号が発行されました(例外を定めたものである旨、プレスノート1999年9号の「2」に明記されています)。

プレスノート1999年9号は、プレスノート1997年3号の規定を、「ダウンストリーム・インベストメントの投資手続を単純化すべく、問題についての慎重な検討に基づき(On careful consideration of the matter and with a view to further simplifying the investment procedures for downstream investment)」、一定の例外を設けて、緩和したものです。

具体的には、プレスノート1999年9号の「1」に列挙された各要件をみたす場合には、「foreign owned Indian holding companies」に対して自動承認(automatic route)によるdownstream investmentを可能とする旨規定しています。

「1」には、aからhまでの8つの要件が列挙されており、これらをみたさない限り、自動承認によるダウンストリーム・インベストメントは認められないことから、単純に「一般に自動承認が認められる業種へのFDIであれば、自動承認によりダウンストリーム・インベストメントが認められる」というものではないことに注意が必要です。
なお、aからhまでの要件のうち、a~dやgについては、事実上あまり要件としての意味はありませんが(foreign owned Indian holding companyが、一般に自動承認によるFDIが認められる業種についてFDIを行う場合、これらの要件はほぼ自動的にみたされるため)、e、f、hあたりは、投資者が意識的にみたす必要があります。

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ちなみに、上記であえてforegin owned holding company in Indiaやforeign owned Indian holding companyを、プレスノートの原文ママで書いた理由は、プレスノート1997年3号中でもプレスノート1999年9号中でも、「foreign owned」および「holding company」が定義されていないためです。

これは結構深刻な問題で、何が「foreign owned」なのか、どのような会社が「holding company」なのかの定義がないため、ダウンストリーム・インベストメント規制全体の解釈があいまいになってしまっていました。

とりあえず、多数派の解釈としては、常識的な用語の用法に従い、
・「foreign owned」とは、「インド非居住者に議決権の過半数が保有されている」
・「holding company」とは、「株式保有を主な業務とし、かつ保有株式からの配当やキャピタルゲインを主な収入源とする会社」
を意味すると理解されていました。

したがって、プレスノート1997年3号およびプレスノート1999年9号によって規律されていたダウンストリーム・インベストメント規制とは、「インド非居住者に議決権の過半数が保有されている、株式保有を主な業務とし、かつ保有株式からの配当やキャピタルゲインを主な収入源とするインド内国会社による、他のインド内国会社の株式等を取得する投資行為」であると理解されていたといえます

さて、そうすると、foreign ownedであってもholding companyでない場合、言い換えれば、外国資本の事業会社(foreign owned operating company)である場合には、ダウンストリーム・インベストメント規制は適用されなかったのでしょうか。

たとえば、日本企業である自動車会社が、インドに現地法人を設立して工場の操業や自動車販売を行っている場合、このような現地法人は、株式保有を主な業務としているわけでも、主な収入源が配当やキャピタルゲインというわけでもありません。

このような現地法人については、ダウンストリーム・インベストメント規制は適用されず、プレスノート1999年9号の例外要件をみたさなくとも、自動承認によりダウンストリーム・インベストメントができたのでしょうか。

答えはノーです。

プレスノートに明示的な規定がないにもかかわらず、foreign owned operating companyには、事実上、foreign owned holding companyよりも厳しいダウンストリーム・インベストメント規制が課せられていました。

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少し長くなってしまったため、その理由と規制内容については、次回に解説することとします。

今回の解説の内容はかなりマニアックなので、読者置き去りでないか心配ですが、インドの外資規制を理解する上で、ダウンストリーム・インベストメント規制は避けて通れないため、もうしばらくお付き合いください。

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