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プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制②

前回に引き続き、プレスノート2009年2号および4号発行以前のダウンストリーム・インベストメント規制の状況がどのようなものであったかにつき、解説していきます。

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前回解説したとおり、プレスノート2009年2号および4号発行以前は、foreign owned holding companyについては、プレスノート1997年3号およびプレスノート1999年9号に基づき、ダウンストリーム・インベストメント規制が課されられていました。
(ダウンストリーム・インベストメント規制が適用された場合、当該foreign owned holding companyが他のインド内国会社の株式等を取得する場合、インド外国投資促進委員会(FIPB)の事前承認が必要となります)

さて、プレスノート1997年3号およびプレスノート1999年9号が、直接的に規制しているのは、foreign owned holding companyによる投資です。
そうすると、foreign ownedであってもholding companyでない場合、言い換えれば、事業会社である場合(foreign owned operating company)である場合には、ダウンストリーム・インベストメント規制は適用されないように見えます。

たとえば、日本の自動車会社(A)が、インドに現地法人(B)を設立して工場の操業や自動車販売を行っているとして、たまたま取引先のインド企業(Z)から自社の株式取得を持ちかけられた場合を想定してみましょう。
この場合、現地法人Bの主要な事業目的は自動車の生産、販売ですから、Bはholding companyではなくoperating companyです。

そうすると、取引先の要請に応じて当該取引先の株式を取得したとしても、それはholding companyによる株式取得ではなく、operating companyによる株式取得にすぎず、プレスノート1997年3号およびプレスノート1999年9号のダウンストリーム・インベストメント規制の対象とはならないはずです。

ところが、実際には、上記Bのようなforeign owned operating companyによる株式取得の場合であっても、インド外国投資促進委員会(FIPB)の方針により、ダウンストリーム・インベストメント規制が課されていました。

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「ん? プレスノート1997年3号およびプレスノート1999年9号には、ダウンストリーム・インベストメント規制の対象としてholding companyしか書いていないのに、どうしてFIPBはoperating companyも規制できるの?」

当然の疑問です。

が、実は、これに対する明確な回答はありません。

なぜなら、FIPBは、明文のプレスノートやガイドラインによらず、一方的宣言によりforeign owned operating copmanyについてもダウンストリーム・インベストメント規制を適用していたからです。

しかも、ある日突然「foreign owned operating companyについてもダウンストリーム・インベストメント規制を適用します」と宣言し、過去に他のインド内国会社の株式を取得していたforeign owned operating copmanyに対しても、遡及的に書類提出を求めるという無茶っぷりでした。

このFIPBのスタンスを正当化する根拠を強いて求めるなら、インド外国為替管理法(FEMA)上、FIPBにはFDIの承認に対する一般的、包括的な権限が認められているという点になるかと思われます(法令上は、自動承認はあくまで例外という扱いになっており、原則はあくまで全てのFDIにつきFIPBの事前承認が必要とされているためです)。

FIPBは、上記宣言後、他のインド内国会社の株式等を取得したforeign owned operating copmanyを、foreign owned operating-cum-holding company(=インド非居住者保有の事業兼持株会社)と呼ぶようになり、foreign owned operating-cum-holding companyがダウンストリーム・インベストメントを行う場合、FIPBの事前承認が必要であるとしました。

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さて、ここからが核心です。

上述のとおり、FIPBのforeign owned operating company (operating-cum-holding company)に対するダウンストリーム・インベストメント規制は、明文のプレスノートや通達等によらないものです。
そのため、いったいどのような投資であれば、foreign owned operating companyにダウンストリーム・インベストメント規制が適用されるのかが、まったく見えなくなってしまっていました。

前回解説したとおり、foreign owned holding companyに対するダウンストリーム・インベストメント規制の場合、プレスノート1997年3号およびプレスノート1999年9号という明文の根拠があり、どのような場合にダウンストリーム・インベストメントとしてFIPBの事前承認が必要なのか、また例外はどのような場合に認められるのかがが明示的に規定されていました。
そのため、プレスノート1999年9号の例外要件をみたした場合、ダウンストリーム・インベストメントであっても、例外的に自動承認でFDIを行うことが認められていました。

しかしながら、foreign owned operating companyに対するダウンストリーム・インベストメント規制は明文の根拠がなく、したがって例外がどのような場合に適用されるのかも不明です。
つまり、平たく言えば、FIPBの胸先三寸で規制の内容が決まるのです。

そして、FIPBは、owned operating companyに対するダウンストリーム・インベストメント規制につき、

①foreign owned operating companyによるインド内国会社の株式等の取得は、取得する株式等の数量、割合を問わず、ダウンストリーム・インベストメントに該当する。

②①に該当する場合、例外なく常にFIPBの事前承認が必要である。

とのスタンスをとっていました。

その結果、明文規定のあるforeign owned holding companyによるダウンストリーム・インベストメントについては、プレスノート1999年9号記載の一定の例外要件をみたせば自動承認でのFDIが可能になるにもかかわらず、明文規定のないforeign owned holding companyによるダウンストリーム・インベストメントについては、例外なくFIPBの事前承認が必要となるという、奇妙な逆転現象が生じてしまいました。

明文もなく規制しておきながら、(明文のある規制については認められている)例外を認めない。
これはどう考えても、法治国家として健全な状態とは言えません。

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今回発行された、プレスノート2009年2号および4号は、上記の「明文なき規制状態」、「明文のない規制の方が例外が認められない状態」を是正するとともに、これまで不明確であったダウンストリーム・インベストメント規制の内容を再定義するものです。

かなり解説が長くなってしまいましたが、なんとなくプレスノート2009年2号および4号の重要性をご理解いただけたでしょうか。

なお、プレスノート2009年2号および4号は、もう1つ重要な内容として、「実際にダウンストリーム・インベストメントが行われた場合のFDIの計算方法」を規定しています。
こちらもとても重要です。

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次回は、プレスノート2009年2号および4号により、ダウンストリーム・インベストメントはどのように定義されるに至ったかを解説したいと思います。

また、次々回以降は、実際にダウンストリーム・インベストメントが行われた場合のFDI比率の計算方法について解説していきたいと思います。

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