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TATAのNano続報

TATA MotorsのNanoは、このブログでも割と関心を持って追いかけているものの1つで、これまでもいくつか記事を書いてきました。

これまで延期に延期を重ね、はたして本当に発売できるのか、実は発売するつもりがないんじゃないかなどと、色々な憶測を重ねてきたわけですが、最近こういう報道がありました。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090209-00000016-nna-int
【インド】タタ自「ナノ」、3月3日発売か テスト完了、秒読み段階に
(2月9日8時30分配信 NNA)

タタ・モーターズは超低価格小型車「ナノ」の販売を3月3日から開始するもようだ。政府関係者によると、この日はタタ・グループ創設者であるジャムセトジ・タタの誕生日に当たるという。同社は部品メーカーへの支払いが滞るほど財務が悪化しており、ナノへの期待はこれまでになく高まっているようだ。

6日付ビジネス・スタンダードによると、1台目の購入者が政治家、俳優、スポーツ選手など有名人になる可能性がある。

同社の関係者は「詳細は話せないが、テストは完了した。準備はすべて整っている」と明らかにした。燃費はガソリン1リットル当たり17~20キロメートルとしており、同関係者は「マルチ・スズキより優れたものになる」とした。

ナノの販売開始は、工場移転問題などで予定から大幅に遅れていた。同社はウッタラカンド州パントナガル工場で先月から標準モデルの走行試験を開始しており、現在は車道への投入が可能になっているという。

価格はエアコンを装備していない廉価グレードが10万ルピー。このほか12万4,000ルピーと13万4,000ルピーの上級グレードも用意するとみられている。

■支払い延滞報道を認める

同社は5日、部品メーカーなど取引先への支払いが滞っているとの報道を認めた。同社のラビ・カント社長によると、タタ・モーターズは特別委員会を設置し、取引先との間で生じた全ての問題を話し合っているという。6日付地元各紙が伝えた。

また、全体の75%に当たる過去9カ月分の請求については、銀行融資などで直ちに支払いを済ませる方針を示した。ただ、カント社長は、具体的な未払い金額については明言を避けたほか、残り25%分については支払いが遅れる可能性も示唆している。

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記事中では発売日が今年3月3日と報じられているわけですが、この手の発売日の予測はこれまで何度も報じられてきていますので、まあ話半分に聞いておいた方がいいでしょう。

それよりも、気になるのが、「同社は部品メーカーへの支払いが滞るほど財務が悪化しており」という報道内容。

自動車は、きわめて多数の部品から成り立っており、そのうち1つ欠けても製造ができない工業製品です。そのため、自動車メーカーは、部品の安定供給に大きな力を注ぎます。部品1つでも欠ければ自動車全体の製造ができず、それを販売して収入を得ることができなくなることから、当然といえば当然です。

さて、自動車メーカーは、部品を下請けの部品メーカーから調達するわけですが、この部品代金の支払いを行わないというのは、将来の部品の安定供給をきわめて危うくします。誰も代金を払ってくれないような会社とは取引したくありませんから、これも当然ですね。

しかも、TATA Motorsの不払いのケースは、「部品の質が基準をみたしていない」や「部品メーカーに対して持っている債権と相殺」など、一応の理由がある不払いではなく、単純に自身の財務状況の悪化によるものです。

自動車製造業における部品調達の重要性に鑑みれば、このように、自動車メーカーの一方的な都合で部品メーカーに支払いを行わないという状況は、通常、自動車メーカーにおける末期症状に近いです。

TATA Motorsは、市場環境の悪化を理由に、検討していた日本でのJDR(日本版預託証券)の上場を断念(無期限延期?)していますが、おそらく上場を断念したより本質的な理由は、部品メーカーへの支払いさえ滞ってしまうような財務状況の悪化にあるのでしょう。
東証も、さすがにいつ破綻するかわからないような会社を上場させるわけにはいかないでしょうから。

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TATAグループ本体による救済の可能性、TATA Motorsのインド独自ブランドとしての存在感、破綻させたときのインド経済に対するダメージなどを考慮すると、TATA Motorsが今後すぐに破綻する可能性は低い(最悪でも政府による救済が入る可能性が高い)と思いますが、それにしても、現状はかなり深刻です。

Nanoは世界的に話題になっていることは確かですので、TATA Motorは、起死回生の策として今後Nanoの発売を急ごうとするでしょう。
昨年の資源高も落ち着き、今ならNano単体でなんとか採算がとれるラインに持ってこれるかもしれません(個人的には、現在の販売価格を維持する限り、採算がとれる日が来るとは思えませんが…)。

その先に何が待っているかはわかりませんが、とりあえず、インドには製造物責任法(PL法)がないのは、Nanoには追い風でしょうね。
サイドミラーが1つしかない車なんて、日本では絶対売れないでしょうが。

とりあえず、TATA Motorsが無事にNanoを発売できるか、その後販売を継続できるか、そもそも会社は存続できるのかについて、今後も注視していきたいと思います。

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ちなみに、ベーシックモデルの価格10万ルピー(1 lakh rupee)は、現在の為替レートだと20万円を切ります。

この価格で自動車を販売できるというのは、心底すごいと思います。

販売が実現かつ継続できれば、の話ですが。

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コメント

タタ・モーターズ、低価格車「ナノ」を4月発売(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36722120090227

「ナノ」の販売や、タタ・モーターズについて、随分失礼なこと(予測)をされてますが、正式に発表となりましたので、あなたの見立てとは違ったということを、”しっかり続報”してください。


投稿: 失礼 | 2009年2月28日 (土) 13時58分

>失礼 様(これはHNということでよいのでしょうか?)

管理人のブログ放置により、レスが遅れてすみません。
おっしゃるとおり、Nanoは4月に発売の旨が正式に発表されたようですね。

失礼な予想というご指摘には、はいそのとおりですという答えになってしまうのですが、Nanoについては「画期的な自動車」ということで世界中のマスコミから礼賛されることが多い中、コスト的な面からみた生産の持続可能性について、懐疑的な目で見る意見があってもいいんじゃないでしょうか。

なお、TATA Motorsの財政難の報道については、その後続報が出てこないところを見ると、誤報または針小棒大な報道なのだったのでしょうね。いずれにしても、現在のインドにおいて、TATA Motorsが倒産するというのは政治的な理由によりほぼありえないので、杞憂ではありますが。

Nanoについては、最近、ハイブリッド車の開発も検討されているようです(もっとも、報道内容を見る限り、単なるアイドリング自動ストップ機能のある自動車というだけで、これをハイブリッドと呼んでいいかどうかは疑問ですが)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090309-00000017-nna-int

個人的にも今後の展開には興味がありますので、折をみて記事で取り上げたいと思います。

投稿: kotty | 2009年3月10日 (火) 15時42分

日経産業新聞に「印タタが世界最安車、ナノ悪路での発進」という記事が出てます。

書き出しに「商品化が疑われ続けた世界最安車がついに産声を上げ、開発を指揮したタタ財閥トップは『この世に不可能なことはない』と胸を張った。」とあるぐらいですから、本ブログの内容は十分一般的な考えだったと言ってよさそうです。


で、例の工場移転問題(同記事によれば、移転費用は二百億ルピー(約三百八十億円)に達したようです)が原因で、初回販売は10万台限定とのこと。
ところが、移転先の工場の稼動は今年末予定で、別の工場で暫定生産するため、初回販売10万台が全て生産されるまで、7月の納車開始から計算しても1年以上かかる見込みだとか。

…10万台限定の意味って!?(汗)

どう見ても、意地と執念で市場投入という形は作った、という程度の評価がせいぜいでしょう(苦笑)


さらに、タタ会長からはこんな発言さえあったとか。

「ナノがホンダ車やトヨタ車でないことを、人々に理解してもらうことが課題になる。欠陥はないが、低コスト車ゆえ幾分洗練に欠ける」

…そうですか(^^;


ということで、これ以上の言葉を費やすこともないでしょうが、とにかくいろんな意味で今後も注目ということでいいと思います(笑)

投稿: | 2009年3月25日 (水) 16時54分

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