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プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制⑤

前回から大分間が空いてしまいましたが、第5回の解説です。

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前回は、「『誰に対して投資するのか?』という点を基準として規制内容を定めるという、ダウンストリーム・インベストメントの基本概念を解説し、併せて、その「誰」が「純事業会社」である場合につい解説しました。

今回は、その「誰」が、他のタイプの会社である場合について解説していきます。

項目番号は、いずれもプレスノート2009年4号の項目番号です。

4.2.2 事業会社兼投資会社(Operating-cum-investing company)に投資する場合

(原文)
Operating-cum-investing companies: Foreign investment into such companies would have to comply with the relevant sectoral conditions on entry route, conditionalities and caps with regard to the sectors in which such companies are operating. Further, the subject Indian companies into which downstream investments are made by such companies would have to comply with the relevant sectoral conditions on entry route, conditionalities and caps in regard of the sector in which the subject Indian companies are operating.

上記規定上、事業会社兼投資会社に対する外国投資は、関連する業種または事業分野における投資条件や投資上限規制を遵守する必要があり、かつ当該事業会社兼投資会社が行うインド内国会社への投資も関連する業種または事業分野における投資条件や投資上限規制を遵守しなければならないとされています。

すなわち、事業会社兼投資会社については、まず①外資から当該事業会社兼投資会社に対する投資の段階で、通常の外国直接投資(FDI)規制と同じ規制が課せられます。
さらに、②当該事業会社兼投資会社が、他のインド内国会社に投資する段階でも、FDI規制が課せられます。

ここで重要なのは②の方です。

上記事業会社兼投資会社は、インド法に基づいてインド国内に設立された会社であるため、形式的にはインド居住者に該当します

したがって、当該事業会社兼投資会社をインド居住者として扱い、外資規制を一切及ぼさないという規制のあり方も、理屈上は可能なはずです。

しかし、いくら形式的にはインド居住者であるとはいえ、その会社が外国資本により所有またはコントロールされている場合、実質的にはその会社は外国資本と同じです。

そこで、「形式的にはインド法人であり、インド居住者である事業会社兼投資会社であっても、当該会社が外国資本により所有またはコントロールされている場合、その会社による他のインド内国会社への投資は、外国直接投資(FDI)として扱うよ」というのが、②で言っていることです。

まあ、このあたりは、日本でも対内直投の届出のときに、日銀が同じような扱いをしていますし、理屈上も納得しやすいところです。

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4.2.2 純投資会社(Investing company)に投資する場合

(原文)
Investing companies: Foreign Investment in Investing Companies will require the prior Government/FIPB approval, regardless of the amount or extent of foreign investment. The Indian companies into which downstream investments are made by such investing companies would have to comply with the relevant sectoral conditions on entry route, conditionalities and caps in regard of the sector in which the subject Indian companies are operating.

上記規定上、投資のみを行う投資会社に対する外国投資は、外国投資の額、範囲にかかわらず、インド政府(多くの場合は外国投資促進委員会(FIPB))の事前の承認を得なければならず、かつ当該投資会社が行うインド内国会社への投資も、関連する業種または事業分野における投資条件や投資上限規制を遵守しなければならないとされています。

すなわち、純投資会社については、まず①外資から当該純投資会社に対する投資の段階で、投資の額や範囲にかかわらずインド政府(FIPB)による事前承認を得なければならないとの規制が課せられます。
さらに、②当該純兼投資会社が、他のインド内国会社に投資する段階で、FDI規制が課せられます。

②については、事業会社兼投資会社の場合と同じ扱いですので、説明は繰り返しません。

純投資会社については、むしろ①が特色で、外資がインド国内に投資会社を設立して(あるいはもともとあるインド国内の投資会社に出資して)、インド内国会社に投資を行おうとする場合、出資額がいくらであろうが、常にFIPBの事前承認が必要となることになります。

これは、「外資がインド国内の投資会社を通じて他のインド内国会社に投資することを全面的に把握する」というFIPBの姿勢を明確に示す規制であるといえます。

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5.0 非事業・非投資会社に投資する場合

(原文)
For companies which do not have any operations and also do not have any
downstream investments, for infusion of foreign investment into such companies,
Government/FIPB approval would be required, regardless of the amount or extent
of foreign investment. Further, as and when such company commences business(s)
or makes downstream investment it will have to comply with the relevant sectoral
conditions on entry route, conditionalities and caps.

非事業・非投資会社って何? というのが、最初の疑問ではないかと思われます。
平たく言えば、事業も投資も行っていない会社です(実際にそのように定義されています)。

定義上、事業も投資も行っていないわけですから、非事業・非投資会社がダウンストリーム・インベストメントを行うことはありえません
これは、「純事業会社」が、その定義上、ダウンストリーム・インベストメントを行うことはありえないのと同様です。

もっとも、ある時点では、非事業・非投資会社であったとしても、後に事業を開始したり、投資を行ったりする可能性はありえます

その点を考慮し、非事業・非投資会社に対しては、上記プレスノート2009年の項目5.0により、以下のような規制が定められています。

すなわち、①非事業・非投資会社に対して外国投資を行う場合には、純投資会社に対する場合と同様、外国投資の額、範囲にかかわらず、インド政府(FIPB)の承認が必要となります 。
また、②非事業・非投資会社が事業を開始する場合またはダウンストリーム・インベストメントを行う場合には、通常のFDI規制と同様の規制が課せられます。

この内容から、基本的には非事業・非投資会社には、純投資会社と同様の規制が定められているといえます

「なぜ事業も投資も行っていない会社なのに、純投資会社と同じ厳格な規制(①の段階で常にFIPBの事前承認が必要となるため)が課されるの?」

ごもっともな疑問です。

純投資会社に対するダウンストリーム・インベストメント規制は、会社の種類ごとの4つの類型の中でももっとも厳格な規制です。
なぜ事業も投資も行っていない会社に対して、純事業会社や事業会社兼投資会社よりも厳格な規制が課せられているのか?

おそらく、FIPBは、上記で述べた、「事後的に事業を開始したり、投資を行ったりする可能性」を重視しているのだと思います。

もし、非事業・非投資会社に対して、純事業会社と同程度のゆるい規制のみを課すとしたら、「外資がまず適当な休眠会社を設立し、ある程度時間がたってから、投資会社に転向する」といった形で規制の潜脱ができることになってしまいます。

上でも述べましたが、純投資会社に対するダウンストリーム・インベストメント規制は、①の段階で常にFIPBの事前承認が必要となるという厳格な規制です。

もし、非事業・非投資会社なら、この規制が適用されないのであれば、ちょっと頭のいい外資系投資会社なら、まずは事業も投資も行わない会社を設立して(仮定上、設立段階ではFIPBの事前承認は不要ということになります)、しばらくの期間休眠させ、ある程度ほとぼりが冷めたところで、その会社を使って投資活動を始めれば、①の規制をスルーできてしまうことになります。

これを防ぐため、非事業・非投資会社について、純投資会社と同じ厳格な規制を課していると考えられます。

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前回からの半年程度の期間が空いているため、次回はこれまでの解説をまとめつつ、「ダウンストリーム・インベストメント規制とはいったい何なのか」という点をもう一度明確にしたいと思います。

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