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プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制⑪

プレスノート2009年2号および4号の解説シリーズの最終回です。

今回の解説も、前々回で定義した用語を用いて行います。

前回解説したとおり、間接投資(ダウンストリーム・インベストメント)において、インド内国投資会社が行うインド内国再投資先会社への再投資分が、外国投資比率の計算に含まれるかどうかは、オールオアナッシング的に決定されます。

つまり、インド内国投資会社が、

①インド居住者(個人、会社双方を含む)によって所有かつ支配されている場合、当該インド内国投資会社がインド内国再投資先会社に対して行う投資は、一切外国投資比率の計算には含まれません。

②他方、インド非居住者によって所有かつ支配されている場合には、当該インド内国投資会社がインド内国再投資先会社に対して行う投資は、100%外国投資比率の計算に参入されます。

ここで、上記のうち、特に①を利用することにより、間接投資を通じて、あるインド内国再投資先会社に対する投資比率を、事実上投資上限を超えて引き上げることが可能になります。

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たとえば、プレスノート上、外国直接投資(FDI)の自動承認上限が49%の業種(電気通信事業等)を営むインド内国会社Zに、日本企業Aが投資する場合を想定します。

このような事業を営むインド内国会社Zに対して、直接投資のみで投資するとすれば、自動承認ルートでは49%以上は投資できません。

しかし、先にインド国内に合弁会社Pを設立し、その合弁会社から間接投資(ダウンストリーム・インベストメント)を行うことで、実質的な投資割合を引き上げることができます。

すなわち、日本企業Aによる合弁会社Pへの投資比率を49%とし、Pがインド側合弁パートナー(=インド非居住者)によって所有、支配されている形にすれば、上記①の原則から、PからZへの投資は、外国投資分には含まれません

このことを利用して、AからZへの直接投資で49%を投資しつつ、AがPを通じてさらに51%の投資を行うことで、実質的にAの投資比率を73.99%(49%+49%×51%)にまで引き上げることが可能です。

なお、Z側から見れば、Pに投資する外国会社はAと同一である必要はなく、たとえば他の外国会社BがPに投資している場合であっても、外資を呼び込む割合が増えるという意味では同じ効果が生じます。

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もっとも、上記①にかかわらず、インド当局は、「本来の外国投資の投資上限を超えて実質的投資を行うことは許されない」との立場をとっているようです

たとえば、「単一ブランド小売業」については、外国直接投資(FDI)の上限は51%となっています。

理屈上は、日本企業Aが、出資比率を49%とする合弁会社Pとともに投資することにより、直接投資分49%+間接投資分24.99%(49%×51%)として、実質的投資比率を74%近くまで引き上げることも可能なはずです。
この場合、上記①の原則によれば、間接投資分の24.99%は外国投資比率には計算されないはずであるためです。

しかしながら、これが許されるとなると、出資比率49%の合弁会社を投資用に設立することにより、いくらでも外国直接投資(FDI)上限を実質的に超えることが可能となってしまいます。

たとえば、インドでは、「単一ブランド以外の小売業」については、外国直接投資が全面的に禁止されていますが、これについても49%の合弁会社Pを設立し、そのPが同事業を営むZに対して98%投資することで、外国企業が実質的に48%の外国投資を行うことが可能となってしまいます。
ちなみに、この場合、Zを100%子会社とするのは、「100%子会社における外国投資比率は、親会社であるインド内国投資会社の外国投資比率と同じとなる」というルールにより、不可です。Zが100%子会社である場合、このルールの適用により、自動的にAのZに対する出資比率も49%とみなされてしまいます)

そのため、①のルールにかかわらず、実質的計算(49%×○%など)の結果、直接投資分と間接投資を合わせた投資比率が、本来の外国投資比率の上限を超える場合、そのような投資は認められないという解釈がとられているようです。

ちなみに、この解釈を敷衍すれば、外国投資が全面的に禁止されている業種については、外資が0.0001%でも入っているインド内国会社は一切投資できない(1%であれ不可能)ことになってしまいます。
(0.0001%であっても、掛け算の結果はゼロにはならないので、外国直接投資(FDI)全面禁止の場合、0.0001%×1%分だけ、実質的計算でゼロを上回ってしまう)

はたして、インド当局がここまでの立場をとっているかどうかは、現状では良くわからないため、今後の実例の集積を待つことが必要になるかと思われます。

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プレスノート2009年2号および4号の解説シリーズは、今回で終了です。

次回からは、数回を使って、間に挟まれているプレスノート2009年3号の内容を解説したいと思います。

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