« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »

2009年11月

プレスノート2009年3号の解説(後編)

最近ちょっとばかり忙しいです。

これが「最近」だけなのか、「これからずっと」なのかわからないところが、事務所での業務に復帰するのをぎりぎりまで遅らせた理由の1つだったりします、ええ。

さて、プレスノート2009年3号の解説の続きです。

--

前回解説したとおり、プレスノート2009年3号は、投資上限がある事業分野について、「所有または支配の発生または移転」がある場合には、たとえそれが投資上限の範囲で行われている場合であっても、事前の政府承認(多くの場合インド外国投資促進委員会(FIPB)の承認)が必要である旨定めています。

ここで、ツボは、所有または支配の「移転」だけでなく「発生」も対象となっていることです。

つまり、株式取得や合併等による株式移転により、既存のインド内国会社の所有または支配が移転する場合だけでなく、会社を新たに設立する場合(=所有または支配が発生する)も、政府(多くの場合FIPB)の事前承認が必要となりうるということです。

具体的には、プレスノート2009年3号は、投資上限が定められている業種または事業分野において、以下のいずれかの行為を行う場合には政府(FIPB)の承認が必要となる旨定めています(3.1項)。

①インド内国会社が外国投資を受け入れて設立され、かつインド非居住者に所有される場合

②インド内国会社が外国投資を受け入れて設立され、かつインド非居住者に支配される場合

③合併、買収等を通じてインド非居住者に対して株式を移転することにより、インド居住者およびインド内国会社(インド居住者に所有または支配されているもの)により所有または支配されている既存のインド内国会社の支配がインド非居住者に移転する場合

④合併、買収等を通じてインド非居住者に対して株式を移転することにより、インド居住者およびインド内国会社(インド居住者に所有または支配されているもの)により所有または支配されている既存のインド内国会社の所有がインド非居住者に移転する場合

 
プレスノート2009年3号の記載に合わせて4つに分けて書きましたが、①と②、③と④の相違は、「所有」と「支配」だけですので、行為類型としては実質的には2種類のみです。
①、②は設立、③、④は支配権移転の類型ですね。

--

なお、上記はあくまでも「投資上限がある事業分野」に適用される規制ですので、100%の外国投資が自動承認ルートで許容されている業種または事業分野には適用されません(3.2項)。

これはとても重要な例外です。

インドの外資規制は、ネガティブ・リストによる自動承認制をとっており、プレスノートで指定された特定の業種または事業分野以外は、全て100%まで自動承認ルートでの外国投資が認められています。

そのため、ほとんどの業種または事業分野については、プレスノート2009年3号の規制は適用されないことになります

とはいえ、外資に対する投資上限のある事業分野については、所有または支配の移転の場合に事前届出義務が課されるようになったことからすれば、全体としてはプレスノート2009年3号は外資規制を強化するものと評価せざるをえません。

ということで、プレスノート2008年7号別紙一覧表で投資上限が定められている業種または事業分野において、所有または支配を取得(会社設立による取得、株式移転による取得の双方を含む)する場合には、このプレスノート2009年3号の規定に十分にご注意ください。

--

プレスノート2009年3号の解説はこれで終わりです。

次回の外資規制解説は、内閣経済問題委員会(CCEA)の承認が必要な外国投資について、簡単に解説したいと思います。

その後は、インド会社法の大規模な改正案であるCompanies Bill, 2009の解説を考えていますが、ちょっと多忙になってきていることもあり、まだ未定です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

プレスノート2009年3号の解説(前編)

前回までの解説は、「プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制」でしたが、3号はどうしたの、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

ということで、今回から前後編に分けて、プレスノート2009年3号の解説をします。

--

プレスノート2009年3号は、2号、4号の内容とは基本的に関係ありません。
もちろん、外資規制にかかる内容ではあるのですが、2号、4号とは全く異なることを定めているのが3号です。

順番的には、2、3、4号の順番で発行されており、かつ2号と3号が異なる内容を定めているにもかかわらず、その次に出た4号が2号を補足する内容であったことについて、「『2号の内容、意味不明』っていうクレームが多すぎる。しょうがない、4号を補足で出すか」とか考えているインド政府商工省(MCI)の職員が目に浮かんだのは、筆者の妄想です、ええ。

--

さて、プレスノート2009年3号は、外国直接投資(FDI)規制において、投資上限が定められている事業分野において、インド居住者から非居住者へのインド内国会社の所有または支配が発生または移転する場合の事前承認の要否についてのガイドラインを定めています。

ここで、ポイントとなるのは、「所有または支配の発生または移転」という部分です。
(「支配」および「所有」の定義については、こちらをご参照ください)

従来(すなわちプレスノート2009年3号発行以前)は、インド居住者からインド非居住者への株式の発行または移転は、事業分野別の取得条件および取得上限規制に従う限り、事前の政府承認なくして実行が可能とされていました(いわゆる自動承認ルート)。

たとえば、投資上限が51%(51%まで自動承認)の事業分野について、日本企業が上限一杯投資して、51%を保有する形で合弁会社を設立する場合について、投資自体は上限の範囲で行われていることから、事前の政府承認は不要であったわけです。

しかしながら、プレスノート2009年3号は、投資上限がある事業分野について、「所有または支配の発生または移転」がある場合には、たとえそれが投資上限の範囲で行われている場合であっても、事前の政府承認(FIPBの承認)が必要である旨定めています。

上記の例において、日本企業は51%を取得することから、日本企業において合弁会社の所有が発生することになります。

したがって、プレスノート2009年3号によれば、上記の例の場合、日本企業は自動承認による投資上限である51%の範囲内で投資しているにもかかわらず、その投資についてFIPBの事前承認が必要ということになります

--

なんだ?これって外資規制の強化じゃないか?

と思われた方。

そのとおりです。

少なくとも、プレスノート2009年3号の文言からは、外資に対する投資上限のある事業分野においてインド非居住者がインド内国会社を所有したり支配したりする場合については、従来よりも規制が強化されていると言わざるをえません。
(なお、後編にて詳細を解説しますが、さすがに100%自動承認の事業分野については、インド非居住者がインド内国会社を所有、支配することになる場合であっても、FIPBの事前承認は不要とされています)

ただし、当局がこのような外資規制の強化を本当に意図しているのかどうかについては、よくわかりません。

インドの専門家たちも、このプレスノートを見たときには、さすがになんじゃこれは、と思ったらしく、このプレスノートが外資規制の強化を意図するものであるかどうかについて、専門家の間でも盛んに議論がなされています。

ただ、プレスノート2009年3号の文言を見る限り、規制は強化されているといわざるをえませんので、投資上限のある事業分野に投資を行おうとしている日本企業は、十分に留意する必要があります。

--

後編では、プレスノート2009年3号の規定内容の詳細を解説します。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

NYBar(ニューヨーク州司法試験)の結果

受験のために、本ブログの更新を一時停止していたNYBar(ニューヨーク州の司法試験)ですが、本日合格発表があり、なんとか合格していました。

受験の手ごたえがあまり良くなく、不合格も覚悟していただけに、合格していてほっとしました。

日本で弁護士として働くにあたって、ニューヨーク州弁護士の資格がどの程度実際に役に立つのかという疑問はあるものの、受験にかけた時間や労力を考えると、合格できたことはその報いとして素直に嬉しいです。
とりあえずは、米国留学の集大成として、1つ形に残るものを手にできてよかったなあと。

ちなみに、実際にニューヨーク州弁護士として登録するためには、来年2月の宣誓式を経る必要があるため、もう一度ニューヨークに行く大義名分ができたというのが、おまけではあるものの実は結構嬉しかったりします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制⑪

プレスノート2009年2号および4号の解説シリーズの最終回です。

今回の解説も、前々回で定義した用語を用いて行います。

前回解説したとおり、間接投資(ダウンストリーム・インベストメント)において、インド内国投資会社が行うインド内国再投資先会社への再投資分が、外国投資比率の計算に含まれるかどうかは、オールオアナッシング的に決定されます。

つまり、インド内国投資会社が、

①インド居住者(個人、会社双方を含む)によって所有かつ支配されている場合、当該インド内国投資会社がインド内国再投資先会社に対して行う投資は、一切外国投資比率の計算には含まれません。

②他方、インド非居住者によって所有かつ支配されている場合には、当該インド内国投資会社がインド内国再投資先会社に対して行う投資は、100%外国投資比率の計算に参入されます。

ここで、上記のうち、特に①を利用することにより、間接投資を通じて、あるインド内国再投資先会社に対する投資比率を、事実上投資上限を超えて引き上げることが可能になります。

--

たとえば、プレスノート上、外国直接投資(FDI)の自動承認上限が49%の業種(電気通信事業等)を営むインド内国会社Zに、日本企業Aが投資する場合を想定します。

このような事業を営むインド内国会社Zに対して、直接投資のみで投資するとすれば、自動承認ルートでは49%以上は投資できません。

しかし、先にインド国内に合弁会社Pを設立し、その合弁会社から間接投資(ダウンストリーム・インベストメント)を行うことで、実質的な投資割合を引き上げることができます。

すなわち、日本企業Aによる合弁会社Pへの投資比率を49%とし、Pがインド側合弁パートナー(=インド非居住者)によって所有、支配されている形にすれば、上記①の原則から、PからZへの投資は、外国投資分には含まれません

このことを利用して、AからZへの直接投資で49%を投資しつつ、AがPを通じてさらに51%の投資を行うことで、実質的にAの投資比率を73.99%(49%+49%×51%)にまで引き上げることが可能です。

なお、Z側から見れば、Pに投資する外国会社はAと同一である必要はなく、たとえば他の外国会社BがPに投資している場合であっても、外資を呼び込む割合が増えるという意味では同じ効果が生じます。

--

もっとも、上記①にかかわらず、インド当局は、「本来の外国投資の投資上限を超えて実質的投資を行うことは許されない」との立場をとっているようです

たとえば、「単一ブランド小売業」については、外国直接投資(FDI)の上限は51%となっています。

理屈上は、日本企業Aが、出資比率を49%とする合弁会社Pとともに投資することにより、直接投資分49%+間接投資分24.99%(49%×51%)として、実質的投資比率を74%近くまで引き上げることも可能なはずです。
この場合、上記①の原則によれば、間接投資分の24.99%は外国投資比率には計算されないはずであるためです。

しかしながら、これが許されるとなると、出資比率49%の合弁会社を投資用に設立することにより、いくらでも外国直接投資(FDI)上限を実質的に超えることが可能となってしまいます。

たとえば、インドでは、「単一ブランド以外の小売業」については、外国直接投資が全面的に禁止されていますが、これについても49%の合弁会社Pを設立し、そのPが同事業を営むZに対して98%投資することで、外国企業が実質的に48%の外国投資を行うことが可能となってしまいます。
ちなみに、この場合、Zを100%子会社とするのは、「100%子会社における外国投資比率は、親会社であるインド内国投資会社の外国投資比率と同じとなる」というルールにより、不可です。Zが100%子会社である場合、このルールの適用により、自動的にAのZに対する出資比率も49%とみなされてしまいます)

そのため、①のルールにかかわらず、実質的計算(49%×○%など)の結果、直接投資分と間接投資を合わせた投資比率が、本来の外国投資比率の上限を超える場合、そのような投資は認められないという解釈がとられているようです。

ちなみに、この解釈を敷衍すれば、外国投資が全面的に禁止されている業種については、外資が0.0001%でも入っているインド内国会社は一切投資できない(1%であれ不可能)ことになってしまいます。
(0.0001%であっても、掛け算の結果はゼロにはならないので、外国直接投資(FDI)全面禁止の場合、0.0001%×1%分だけ、実質的計算でゼロを上回ってしまう)

はたして、インド当局がここまでの立場をとっているかどうかは、現状では良くわからないため、今後の実例の集積を待つことが必要になるかと思われます。

--

プレスノート2009年2号および4号の解説シリーズは、今回で終了です。

次回からは、数回を使って、間に挟まれているプレスノート2009年3号の内容を解説したいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

プレスノート2009年2号および4号とダウンストリーム・インベストメント規制⑩

前回、外国投資における外資比率の計算方法について解説しましたが、特に間接投資の場合についてはややこしく、なかなかわかりづらい面もあるため、今回は具体例を中心に解説したいと思います。
(用語の定義については、前回の解説参照)

なお、直接投資については、その計算方法がきわめて単純(=インド非居住者が、インド国内の現地法人等を介さずに、直接投資を行った場合、その投資分は全てそのまま外国投資比率に参入される)なので、今回は解説を繰り返しません。

--

1. 再投資を行うインド内国投資会社が、①インド居住者によって所有かつ支配されている場合、または②インド居住者によって所有かつ支配されているインド内国会社によって所有かつ支配されている場合

この場合、当該インド内国投資会社が行うインド内国再投資先会社への再投資分は間接投資の計算には含まれません。
平たく言えば、この場合、外国投資比率はゼロとして扱われます

たとえば、日本企業Aが、インド企業B(インド居住者が保有するインド内国会社)、と出資比率を、それぞれ26%、74%とする合弁会社Cを設立したとします。
このとき、AとBとの間に、Cの取締役の選任に関する株主間契約等による合意はなく、通常の株式保有割合にしたがって、BはCの過半数の取締役の選任権を有するとします。

このCが、他のインド企業Zの株式を80%取得したとします。
この場合のZの外国投資比率は、どうなるでしょうか。

答えはゼロです。
Cはインド企業Bにより所有かつ支配されているため、Zには外国投資はなされていないという扱いになります。

つまり、「もともとCには26%の外資が入っているから、80%×26%で…」といった計算はしないということです。

したがって、Cによる投資は、外資規制(インド外国為替管理法に基づく外国直接投資規制)を受けません。

なお、もしAとBとの間に、Cの取締役の選任に関する合意があり、Aが保有割合は26%であるにもかかわらず、株主間契約により、Cの過半数の取締役の選任権を有する場合、Cは日本企業Aに「支配」されているため、下記2が適用されます。

2. 再投資を行うインド内国投資会社が、上記①②に該当しない場合、またはインド内国投資会社が非居住者によって所有もしくは支配されている場合

この場合、インド内国投資会社によるインド内国再投資先会社に対する再投資は全て間接投資として扱われます。
つまり、インド内国投資会社による再投資分は全て外国投資の比率として計算されます

上記同じ例で、合弁会社Cに対する出資比率が、日本企業Aが74%、インド企業Bが26%であるケースを想定して下さい。

この場合、Cが他のインド企業Zの株式を60%取得すると、その全部が外国投資比率に参入されます
1の場合と同じく、「もともとCには74%の外資が入っているから、60%×74%で…」といった計算はしません。

あくまで、60%全部が外国投資比率として計算されます。

Cによる投資は、外資規制を受けます。
したがって、Cが、たとえば保険事業など、26%が外国投資の上限とされている事業分野を営む会社であった場合、このような60%の取得は認められないということになります。

--

この2の場合の外国投資比率の計算方法については、例外があります。

すなわち、再投資がインド内国投資会社によって100%所有される子会社に対してなされる場合には、かかる再投資によるインド内国再投資先会社における外資比率は、インド内国投資会社に対する外資比率に限られます

つまり、当該子会社における外国投資比率は、親会社であるインド内国投資会社の外国投資比率と同じとなります

同じく、合弁会社Cに対する出資比率が、日本企業Aが60%、インド企業Bが40%であるケースを想定して下さい。

この場合、もしCが、Zの株式を100%所有し、完全子会社にした場合、Zの外国投資比率はCと同じ60%になります。

2の計算方法(原則)に従えば、「Cはインド非居住者であるAによって所有されているのであるから、その投資分は全て外国投資となり、したがって、Zへの外国投資比率は100%」となるはずです。

しかし、上記例外があるため、Zへの外国投資比率は、Cと同じ60%となるのです。

この例外により、取得しようとする会社が外資規制上投資上限のある事業分野を営む場合であっても、100%子会社とすることで、外資規制による投資上限を超えることができるようになります

たとえば、同じく、合弁会社Cに対する出資比率が、日本企業Aが60%、インド企業Bが40%であるケースで、Cが電気通信事業(外資規制上の投資上限は74%)を営むインド企業Zの株式を取得しようとしたとします。

ここで、2の原則がそのまま適用されてしまうと、CはZの株式を74%までしか取得できないはずです。
しかし、この例外が適用されることにより、CはZの株式を100%取得できるのです(100%取得した場合のZの外資比率は60%となります)。

すなわち、Cが外資規制上投資上限のある事業分野を営む会社を取得しようとする場合、100%取得したほうがかえって投資上限規制を免れることができることもありうるということです。

--

以上のルールをもとに、次回は、「外資規制上投資上限のある事業分野を営む会社」を日本企業が可能な限り実質的に支配する方法について、応用を考えてみたいと思います。

次回で、このプレスノート2009年2号および4号の解説シリーズを最終回としたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

開催報告

本ブログ上で告知したとおり、先週金曜日に、申し込みをいただいた方々と飲み会を開催しました。

参加者の皆様全員が、インドでビジネスをされている方、あるいはインド法の研究をされている方で、貴重なお話を伺いつつ、楽しいひとときを過ごすことができました。

参加者の皆様には、急な告知の中、またご多忙の中ご足労いただき、本当にありがとうございました。
実務上の疑問点、インドでの生活、インド人の気質についてなどなど、さまざまなお話が聞けて、本当に参考になりました。

とりあえず、皆さん苦労されているなあ…

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »