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インド労働法解説その4 -雇用条件規制-

インド労働法上は、特定のケースを除いて就業規則の制定の必要が無いこと、したがって個別契約でも対応することは可能であること(ただし、文書管理の手間等を考えると、服務規程を作成した方が効率的)について、前回解説しました。

今回は、実際に個別契約や服務規程を作成する上で、どのようなルールに従うべきかについて、解説していきます。
なお、特定のケースにおける就業規則(Standing Orders)の作成の際のルールについては、次々回に解説する予定です

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さて、個別契約を締結する場合にせよ、服務規程を作成するにせよ、その内容は自由に定めてよいわけではありません。
たとえば、この人は優秀だからということで、「1日18時間、1週間で108時間働くこと」と日本の大手法律事務所のような無茶な条件を労働契約で定めたとしても、そのような契約は法律に違反し、無効です。

ここでいう「法律」というのは、第1回でリストアップした法律の1つである、

[州名または都市名] 店舗および施設法([  ] Shops and Establishments Act)

です。

この法律は、連邦法ではなく州法なのですが、どの州も同じ名称の法律を制定しているため、法律名の前の州名または都市名で、どの州法かを見分けることになります。

たとえば、デリー連邦直轄領では、「1954年デリー店舗および施設法 (Delhi Shops and Establishments Act, 1954)」が制定されています。
また、ムンバイのあるマハラシュトラ州では、「1948年ボンベイ店舗および施設法(Bombay Shops and Establishments Act, 1948)」が制定されています。

同じように、チェンナイやバンガロールなど、インドの主要都市および州において、都市や州の名称を冠する「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が規定されています。

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さて、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」は、店舗や施設(商業施設)における、全ての被雇用者(workmanであるか否かを問わない)の、労働時間、賃金支払、超過勤務、休暇、休日その他の雇用条件を規制しています。

ただし、同法は州法であるため、その規制はあくまでその州内に適用されるにとどまります。
言い換えれば、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」の内容は、各州によって異なるということです。

日本では労働基準法とその施行規則が、全国画一で、労働時間や賃金支払等の雇用条件を規制していますが、インドでは州ごとに雇用条件規制の内容が異なることに注意が必要です。

ちなみに、インドの労働関係の連邦法で、基本法となる法律は、1947年産業紛争法 (Industrial Disputes Act, 1947)ですが、同法は解雇や労使紛争などについては規定しているもののの、個別の労働条件規制は定めていません。
そのため、「労働条件をどのように定めるか」という観点からは、その州の「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が最も重要な法律であると言えます。

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重要な適用除外として、、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」は、「1948年工場法(Factories Act, 1948)」に基づく保護が適用される工場および工場附属施設の労働者(workman)には適用されません。

「1948年工場法(Factories Act, 1948)」に基づく保護が適用される工場とは、機械作業の場合10人以上、手作業の場合20人以上の労働者(workman)が雇用されている、または過去12か月のいずれかの日に雇用されていた工場をいいます。

このような工場のworkmanについては、連邦法である「1948年工場法(Factories Act, 1948)」(工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、「1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)」)が適用され、同法により労働条件が規制されることから、重ねて「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」による労働条件規制を行う必要が無いためです。

ただし、「1948年工場法(Factories Act, 1948)」や「1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)」が適用されるのは、あくまでその工場で働いているworkmanに対してのみであり、non-workmanに対しては適用がありません。
そのため、上記各法律が適用される場合であっても、工場のnon-workman(工場長などの管理監督者)については、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」の適用がありうることに注意が必要です。

よって、インドに事業所やオフィスのみを置いている日本企業にとっては、その地域を管轄する「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が、工場を保有している日本企業にとっては、「1948年工場法(Factories Act, 1948)」(あるいは「1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)」)ならびに「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が、被雇用者の労働条件を定める上で、最も重要になるといえます。

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さて、何度も述べているとおり、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」は州法であるため、その内容は各州、都市ごとに異なっており、全ての州について法令の内容を個別に解説することは困難です。

そこで、次回は、代表として、最も日本企業の進出が多い地域であろうデリー連邦直轄領の「1954年デリー店舗および施設法 (Delhi Shops and Establishments Act, 1954)」について、その概要を解説したいと思います。

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