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インド労働法解説その5 -店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)の内容-

インド労働法解説の続きです。

前回、(工場以外の)オフィス等の施設の勤務条件については、その地域の、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が、労働時間、賃金支払、超過勤務、休暇、休日その他の雇用条件について規制していることを解説しました。

今回は、その「店舗および施設法」の内容の解説です。

といっても、全ての地域の「店舗および施設法」を解説することは難しい(というか、できない)ので、代表例として、デリー連邦直轄領における「店舗および施設法」である「1954年デリー店舗および施設法 (Delhi Shops and Establishments Act, 1954)」のうち、重要な内容に絞って解説したいと思います。

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1.登録義務
法令上は、雇用者は、施設が作業を開始した日から90日以内に、所定の様式、手数料とともに施設の登録の申請を行う必要があるとされています。
登録先は、デリーのLabour Commissionerのオフィスの、Chief Inspectorと呼ばれる係官です。

ただし、1989年11月23日以降、この登録義務は停止されています。
理由はよくわかりませんが、おそらく係官の手が回らないからではないでしょうか。

ということで、現在のところ、デリーでは、オフィスその他の施設の登録は不要です。
(なお、他の地域で同様にこの登録義務が停止されているかは不明です)

2.勤務時間
被雇用者を働かせて良いのは、通常、1日9時間および1週間48時間までです。
被雇用者が1日に9時間または1週間に48時間を超えて勤務した場合には、その超過分の勤務は超過勤務とみなされ、1時間につき、当該被雇用者の通常の1時間あたりの給与の2倍の超過勤務手当てを支払う必要があります。

ただし、原則として、超過勤務を加えても、1週間に54時間を超えて勤務させることはできません。地域によっては、特例としてこの上限が免除されている場合もありますが、その場合でも超過勤務に対する賃金の支払義務は免除されません。

また、被雇用者を連続して働かせて良いのは5時間までで、最低でも5時間おきに30分以上の休憩を挟む必要があります。

3.休暇
雇用者は、最低でも1週間に1日、休みを設ける必要があります(通常は日曜日)。
また、祝日として、独立記念日(8月15日)、共和国記念日(1月26日)、マハトマ・ガンディー誕生日(10月2日)についても休む必要があります。

被雇用者を休日(下記に述べる有給休暇も含む)に勤務させる場合、1時間につき、当該被雇用者の通常の1時間あたりの給与の2倍の超過勤務手当てを支払う必要があります。

被雇用者は、雇用中、1年が経過するごとに、15日以上の特別休暇、および毎年12日以上の有給の臨時休暇または病気休暇を取得することができます。
これらの休暇は、45日を上限として、次年度に繰り越すことができます。

4.女性、若年者の労働制限
13歳未満の子供を雇用することはできません。
また、13歳以上の若年者の場合、1日6時間を越えて働かせることはできず、また最低3時間半ごとに30分以上の休憩を挟む必要があります。

さらに、女性および若年者を、夏季は午後9時から午前7時まで、冬季は午後8時から午前8時まで、施設において勤務させることはできません。

※ …なんというか、若年者についてはともかく、女性については一種の女性差別のような気もしますが、まあそこはお国柄ということで。

5.解雇規制
3か月以上の継続的雇用にあった被雇用者の雇用を終了しようとする雇用者は、当該被雇用者に対し、少なくとも1か月前までの通知(または通知に代わる賃金の支払)を行わなければなりません。
この規定は強行規定であるため、たとえ契約で無通知での解除を規定していたとしても、無効となります。

ちなみに、懲戒解雇の場合、通知義務やそれに代わる賃金の支払い義務は不要です(もっとも、懲戒解雇は非常に面倒な手続を伴うため、実務上は行うことが難しいです)

6.その他の義務

・賃金の適時支払義務

・被雇用者の健康、安全およびその他の福利に関する措置の遵守義務

・記録の保存、休業日および労働時間を記した通知の掲示、被雇用者の名簿の保持、賃金簿の保持義務

・辞令(letter of appointment)の交付義務
辞令には、①雇用者の名前、②勤務させる施設の名前、③被雇用者の名前、父親の名前および年齢、④勤務時間、⑤辞令交付日を記載する必要があります。
※ ③の「父親の名前」あたりがお国柄ですね。

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デリーにオフィスがある場合、被雇用者と雇用契約を締結する際には、上記規制に注意して契約内容を定める必要があります。

なお、「1954年デリー店舗および施設法 (Delhi Shops and Establishments Act, 1954)」の内容については、以下のデリーのLabour Commissionerのウェブサイトのページがとても参考になります。http://www.delhi.gov.in/wps/wcm/connect/doit_labour/Labour/Home/Shops+and+Establishments+Inspectorate/

次回からは、労働契約と就業規則(standing orders)について、もう少し解説していきます。

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コメント

初めてコメントをさせていただきます。

休暇付与日数について質問をさせてください。
現在ハリアナ州にてオフィスを構えておりますが、S&E法(ハリアナ)ですと、
・契約日数20日に対して1日の年次有給休暇
の付与
が記載されております。

この場合の契約日数は”勤務日”と読み替えることができますでしょうか?
それとも文字通り”契約期間”になるのでしょうか?
(Factories Act,1948)では勤務日に
対して付与日数が決められている様ですので
疑問に思い質問をさせていただきます。

ご教示の程よろしくお願いいたします。

投稿: ZATY | 2012年4月 4日 (水) 15時50分

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