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駐在員事務所および支店の設立、運営、閉鎖等に関する事項の変更(その1)

2009年12月30日に、インドにおける支店(Branch)および駐在員事務所(liaison office)の設立、運営、閉鎖等の要件および手続を変更する旨の通達が、インド準備銀行(RBI)から発行されました。

インド準備銀行の通達は、以下のサイトで参照可能です。
http://www.rbi.org.in/Scripts/NotificationUser.aspx

今回および次回で解説する通達は以下の2つです。

1 主として設立の要件および手続について規定(以下、便宜上「通達(1)」といいます)
http://rbidocs.rbi.org.in/rdocs/notification/PDFs/3109APDIR23.pdf

2 主として設立後の諸手続について規定(以下、同じく便宜上「通達(2)」といいます)
http://rbidocs.rbi.org.in/rdocs/notification/PDFs/APD24311209.pdf

これらの通達の宛名は、承認取引者カテゴリーI銀行(Authorised Dealer Category – I banks)となっています。理由は後述します。

まずは、通達(1)の内容について解説したいと思います。

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1 実体要件の数値基準の設定

これまでは、外国会社がインドに支店や駐在員事務所を設けるにあたり、利益や資産等の実体要件は明示的には設定されておらず、外国会社は所定の設立手続を踏み、インド準備銀行の認可を取得すれば、支店や駐在員事務所を設立することができました。

通達(1)は、外国会社による支店や駐在員事務所の設立について、一定の実体要件を設けることを明確にしています。

なお、このことは、支店や駐在員事務所設立の規制の強化を意味するものではありません。

確かに、これまでは支店や駐在員事務所の設置について、明確な数値基準としての実体要件は規定されていませんでしたが、そのことは実体要件の不存在を意味するものではなく、実際には、インド準備銀行が認可を与えるかどうかの審査を行う際に、外国会社がどの程度の利益や資産を有しているかについては、認可の可否にあたっての考慮の対象とされていました。

今回の通達(1)は、この「実体要件は事実上考慮されるが、どの程度の数値基準をみたしていればインド準備銀行の認可が下りるかはケースバイケース」という不透明性を解消すべく、明確な数値基準を設定したものであり、したがって、実質的には規制強化にはあたりません

数値基準は、通達(1)の別紙Aに記載されており、その内容は以下のとおりです。
ご参考までに、原文も併記しておきます。

(1) 実績基準(Track Record)
・支店については、自国の直近5年間の会計年度において利益の実績があること(a profit making track record during the immediately preceding five financial years in the home country.)

・駐在員事務所については、自国の直近3年間の会計年度において利益の実績があること(a profit making track record during the immediately preceding three financial years in the home country)

(2) 純資産基準(Net Worth)
「純資産」とは、公認会計士によって認証された最新の財務諸表上の払込資本金および剰余金の合計から、無形固定資産を控除したものをいう(total of paid-up capital and free reserves, less intangible assets as per the latest Audited Balance Sheet or Account Statement certified by a Certified Public Accountant or any Registered Accounts Practitioner by whatever name]).

・支店については、10万米ドル相当額以上(not less than USD 100,000 or its equivalent)

・駐在員事務所については、5万米ドル相当額以上(not less than USD 50,000 or its equivalent)

なお、申請者が上記要件はみたさないものの、いずれかの会社の子会社である場合には、別紙Dの書式に従って、親会社から「Letter of Comfort (支援念書)」を発行してもらうことにより、上記要件をみたしたものとみなすことができます。
ただし、その場合、親会社自身が上記実体要件をみたしていなければなりません。
(Applicants that do not satisfy the eligibility criteria and are subsidiaries of other companies may submit a Letter of Comfort from their parent company as per Annex D, subject to the condition that the parent company satisfies the eligibility criteria as prescribed.)

2 設立手続の変更

従前は、外国会社による支店や駐在員事務所の設立申請は、Form FNC-1と呼ばれる書式および添付書類を直接インド準備銀行に提出して行うものとされていました。

しかしながら、今回の通達以降(=事実上2010年から)は、外国会社は、Form FNCと呼ばれる書式(通達(1)の別紙Cに添付。内容的にはForm FNC-1とほぼ同じもの)を、承認取引者カテゴリーI銀行(Authorised Dealer Category – I banks)に提出し、承認取引者カテゴリーI銀行が、申請者の身元確認や書類の確認を行った上で、インド準備銀行に提出するという手続を踏まなければならないことになりました。

すなわち、インドに支店や駐在員事務所を設立しようとする外国会社は、申請書類の書式および添付書類を、直接インド準備銀行に対して提出するのではなく、承認取引者カテゴリーI銀行を経由して提出しなければならないことになりました

ここで、2010年ドラフトプレスノートによれば、「承認取引者カテゴリーI銀行(Authorised Dealer Category – I banks)」とは、「承認取引者であって、その時々にインド準備銀行から全ての当座勘定取引および資本勘定取引を扱うことを認められている銀行(商業銀行、国立または都市の協同銀行)をいう」と定義されています。

(原文はこちら↓)
2.5 ‘AD Category-I Bank’ means a Bank( commercial, State or urban cooperative) which is an Authorized Dealer and allowed to deal in all current and capital account transactions by RBI from time to time.

インド国内の大手の商業銀行(commercial bank)であれば、まずもってこの登録を受けているため、「承認取引者カテゴリーI銀行=大手の銀行」と考えて、ほぼ間違いありません。

承認取引者カテゴリーI銀行は、申請会社の背景、支配株主の素性、活動内容および場所、資金源などについて精査を行い、さらに本人確認を行った上で、自身のコメントおよび推薦を付した上で、インド準備銀行に申請書類を行わなければなりません。
(The designated AD Category - I bank should exercise due diligence in respect of the applicant’s background, antecedents of the promoter, nature and location of activity, sources of funds, etc. and also ensure compliance with the KYC norms before forwarding the application together with their comments/ recommendations to the Reserve Bank.)

このように、承認取引者カテゴリーI銀行に与えられている役割を見る限り、今回の改正は、インド準備銀行が楽をするために設立認可審査業務を効率化するために、その権限の一部を承認取引者カテゴリーI銀行に譲渡したものであると評価できそうです。

なお、この間接提出方式については例外が設けられており、銀行、保険会社の支店の場合、これまでどおり申請書類はインド準備銀行に直接提出することとされています。
また、SEZ(特別経済区域)において、製造業またはサービス業を営むために支店を設立する場合、そもそもインド準備銀行の認可が不要とされているため、この場合もやはりインド準備銀行への設立認可申請書類の提出は不要です。

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次回も、通達(1)の解説を続けます。

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