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プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その3

3 実例

首尾よく合弁パートナー(提携先)から、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトが入手できた場合、これを提出することにより、ほぼ間違いなくインド外国投資促進委員会(FIPB)の承認は得られます。

他方、合弁パートナー(提携先)が、任意での発行を拒否した場合など、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトの入手が困難な場合はどうなるのでしょうか。

既に述べたとおり、プレスノート2005年1号に基づく事前承認申請を認めるかどうかは、あくまでインド外国投資促進委員会(FIPB)の裁量的判断によります。
したがって、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトの提出は必須というわけではありません

そして、近年のインド外国投資促進委員会(FIPB)の傾向として、外国投資家(インド非居住者)が投資の事前承認申請を行う際に、既存のインド側合弁パートナーや提携先からの異議が申し立てられたとしても、既に過去の合弁事業が事実上解消状態にある場合など、その異議が根拠のないものであったり、明白に補償金等目当てであると思われる場合には、当該異議を却下しています(Saudi Arabia's Amiantit対Graphite India事件やKennnametal対Yash Birla事件など)

近年の例では、中国の電気機器製造業者であるTCL Electronicsが、インドの同じく電気機器製造業者であるBaron Internationalを合弁相手として、2001年に立ち上げた合弁事業(合弁会社名はTCL Baron India Ltd)に関し、2003年12月にインド外国投資促進委員会(FIPB)がBaron側の異議を退けて、TCLが単独子会社を設立することにつき承認を与えています。
この事案は、合弁事業が早々にうまくいかなくなったことから、単独での子会社設立を試みたTCLに対して、Baronがインド外国投資促進委員会(FIPB)に対して異議を申し立てたものですが、TCL側が合弁契約の解消、および事実として2年以上にわたって合弁事業が機能していないことを主張、立証したことから、1年余の審査の後、インド外国投資促進委員会(FIPB)はTCLの承認申請を認可するに至っています。

また、日本企業がインド外国投資促進委員会(FIPB)の承認を取得した例として、日本企業である株式会社プライムポリマー(株式会社三井化学の子会社)が、過去の合弁パートナーであるインド企業Tipco Industriesとの合弁事業を解消し、自社の100%子会社を設立しようとした事案が挙げられます。
同事案では、インド外国投資促進委員会(FIPB)は、プライムポリマーとTipcoとの間の合弁事業は機能不全に陥っており、遅くとも2000年には終了したものと認定の上、プライムポリマーの承認申請を認可しています。

このように、外国投資家側で、既に過去の合弁事業や提携が解消済みであること、またはそれらが機能していないことを立証するなど、インド側合弁パートナーや提携先の異議が根拠に欠けるものであることを示した場合、インド外国投資促進委員会(FIPB)が異議を却下し、申請を認可する可能性は十分にあるといえます。

そのため、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトが入手できない場合であっても、必ずしも新規事業を行えないというわけではありません。

ただし、上記の実例は、いずれも既存の合弁や提携が事実上機能していなかった事案であることに注意が必要です

既存の合弁や提携が一定の事業活動を継続している場合など、一応機能している場合には、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトなしにインド外国投資促進委員会(FIPB)が事前承認を与える可能性は、非常に低くなります。
これは、そもそもプレスノート2005年1号の趣旨が既存の合弁や提携の保護であるところ、既存の合弁や提携が事業活動を継続している場合、まさにこの保護の趣旨が妥当するためです。

すなわち、傾向として、インド外国投資促進委員会(FIPB)が事前承認を与え、また相手方の意義を却下するのは、「既存の合弁や提携が機能していないにもかかわらず、相手方が(補償金や最低購入の保証等を目当てに)不合理な主張を行う場合(例:「ノー・オブジェクション・サーティフィケイトを出してほしければ、○○ルピー払え」等)」です。

平たく言えば、ゴネ得は許さないということであり、既存の合弁や提携が機能している場合には、(当初の規制上予定されているとおり)インド外国投資促進委員会(FIPB)は、インド側パートナーを保護する傾向にあります

4 今後の展望

プレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限は、日本企業をはじめとした外国企業にとって、インド進出の大きな足かせになっているため、規制自体の廃止が検討されています。

ただし、現時点では廃止の具体的な予定は立っておらず、廃止がいつごろになるかもまだわからないという状況です。

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解説は以上です。

ちなみに、この論文、実は書いてから既に1年近くが経っています。
未発表のまま暖めすぎたかもしれません…

今後、論文として日の目を見ることはないかもしれませんが、せっかく書いたものではあるので、親心として何らかの形で発表してあげられたらなあとは思っています。

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コメント

先生、御忙しい中早速の更新ありがとうございます。日本語でのインドの情報はなかなか得られないためいつも拝見しています。今後も宜しくお願いします。

投稿: K TKHS | 2010年3月17日 (水) 14時25分

>K TKHS様

コメントありがとうございます。

未発表論文のまま放置していたものを、とりあえず公表することができました(笑)
今後ともお役に立てるような情報を載せられるよう頑張ります!

投稿: kotty | 2010年3月23日 (火) 09時56分

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