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2010年3月

インド労働法解説その6 -工場以外の雇用におけるモデル労働契約-

今回から、インド労働法解説を再開します。

さて、前回までで、

1 インドには就業規則制定の一般的義務はないこと

2 したがって、被雇用者との契約は、全て個別の労働契約とすることも可能であること(もっとも、全て個別契約としてしまうと文書管理が大変なので、実務上は服務規程を作成して、契約書には「労働条件は服務規程に従う」等と記載することが行われていること)

3 それらの労働条件は、

①工場および工場附属施設については、1948年工場法(Factories Act, 1948)に基づいて(ただし、工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、「1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)」)に基づいて)

②工場以外のオフィス等の施設の勤務条件については、その地域の、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」に基づいて

それぞれ定められること

を解説してきました。

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では、実際にはどのような契約を結べばよいのか(工場については、どのような規則を定めればよいのか)、というのが次の問題となります。

まず、工場以外のオフィス等の施設については、個別の労働契約(または服務規程方式)で対応すべきことになります。

労働契約は、各施設に応じてさまざまなものがありえますが、モデルとなる労働契約としては、下記JETROのサイトの「インド労働法調査別添1~3」が役立つのではないかと思われます。
http://www.jetro.go.jp/world/asia/in/reports/07000147

ちなみに、このJETROの報告書は、インドの労働法の概要についてまとめたものであり、報告書本文には和訳もついていますので(なお、別添1~3には和訳はついていません)、インドの労働法について調べる場合、何かと参考になるのではないかと思われます。

別添1は一般的な雇用契約書(workman、non-workmanいずれにも使用可能です)、別添2はマネジメントクラスと契約する場合の別添1から変更点、別添3は外部のアドバイザリー等と契約する場合の契約書、のそれぞれ雛形となっています。
(「別添3は、そもそも労働契約じゃないんじゃないのか?」という無粋な突っ込みはなしです)

もちろん、別添1や2の雛形をそのまま利用する必要はなく、また各事業所、施設ごとに特殊性があることを考えるとそうすべきでもありませんが、報告書本文と併せて読むことにより、ある程度インドにおける労働契約のイメージがつかめるのではないかと思います。

なお、このサンプル契約は、デリー準州における、「1954年デリー店舗および施設法 (Delhi Shops and Establishments Act, 1954)」に定められた労働条件に基づく契約であり、他の州(=当該州の店舗および施設法が適用される)においては、このサンプル契約をベースとすることはできないことに十分に注意すべきです

別添1のサンプル契約において、契約条項の主なポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。

・全ての条項は、1954年デリー店舗および施設法に定められた労働条件に従う

・被雇用者がworkmanの場合、期間の定めのある雇用とする
→期限切れにより契約期間を更新しないことは、基本的には解雇には該当せず、解雇規制が適用されないため

・雇用終了後の競業避止義務条項は原則無効
→ただし、心理的な抑制効果を狙い、あえて競業避止義務条項を設けることもある

・賞与の支給について定める場合、支給は雇用者の裁量によることを明確に定める
→被雇用者の権利と解されるような書き方はしない

・知的財産権の雇用者への帰属
→いわゆる職務発明が、雇用者に帰属するよう定める

・労働者の守秘義務の規定

もちろん、他にも事業所や施設の特殊性、あるいは事業形態等により、さまざまな労働契約上のポイントが生じえるため、このサンプル契約の雛形を、名前だけ適当に入れてそのまま使う、ということは避けた方が良いでしょう。
契約が詳細なだけに、かえって将来紛争が生じたときに、会社側に不利になる可能性があります(例:「これだけ詳細な契約であるにもかかわらず、この点については定めていないのだから、これについては労使間で合意する意思がなかった」と、労働審判等において認定される可能性など)。

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一方、工場については、1948年工場法や1946年産業雇用(就業規則)法が適用されるため、上記サンプル契約等を利用することはできません。

以前解説したとおり、1948年工場法に基づく保護が適用される「工場」とは、「機械作業の場合10人以上、手作業の場合20人以上の労働者(workman)が雇用されている、または過去12か月のいずれかの日に雇用されていた工場」をいいます。
これらの工場については、1948年工場法に基づいて、労働条件が定められる必要があります(なお、上記要件をみたさない工場については、そもそも1948年工場法が適用されないため、通常の店舗および施設法に基づいて労働条件が定められるべきことになります)。

ただし、工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、1946年産業雇用(就業規則)法が適用され、同法により労働条件が規制されることになります。
いわゆる就業規則としてのStanding Ordersの制定が求められるのは、この場合です。

ということで、次回、①workmanが10人以上(あるいは20人以上)100人以下の工場、②workmanが100人超の工場に分けて、どのような労働条件を定めれば良いのか(またはどのような規則を定めればよいのか)を解説していきたいと思います。

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プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その3

3 実例

首尾よく合弁パートナー(提携先)から、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトが入手できた場合、これを提出することにより、ほぼ間違いなくインド外国投資促進委員会(FIPB)の承認は得られます。

他方、合弁パートナー(提携先)が、任意での発行を拒否した場合など、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトの入手が困難な場合はどうなるのでしょうか。

既に述べたとおり、プレスノート2005年1号に基づく事前承認申請を認めるかどうかは、あくまでインド外国投資促進委員会(FIPB)の裁量的判断によります。
したがって、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトの提出は必須というわけではありません

そして、近年のインド外国投資促進委員会(FIPB)の傾向として、外国投資家(インド非居住者)が投資の事前承認申請を行う際に、既存のインド側合弁パートナーや提携先からの異議が申し立てられたとしても、既に過去の合弁事業が事実上解消状態にある場合など、その異議が根拠のないものであったり、明白に補償金等目当てであると思われる場合には、当該異議を却下しています(Saudi Arabia's Amiantit対Graphite India事件やKennnametal対Yash Birla事件など)

近年の例では、中国の電気機器製造業者であるTCL Electronicsが、インドの同じく電気機器製造業者であるBaron Internationalを合弁相手として、2001年に立ち上げた合弁事業(合弁会社名はTCL Baron India Ltd)に関し、2003年12月にインド外国投資促進委員会(FIPB)がBaron側の異議を退けて、TCLが単独子会社を設立することにつき承認を与えています。
この事案は、合弁事業が早々にうまくいかなくなったことから、単独での子会社設立を試みたTCLに対して、Baronがインド外国投資促進委員会(FIPB)に対して異議を申し立てたものですが、TCL側が合弁契約の解消、および事実として2年以上にわたって合弁事業が機能していないことを主張、立証したことから、1年余の審査の後、インド外国投資促進委員会(FIPB)はTCLの承認申請を認可するに至っています。

また、日本企業がインド外国投資促進委員会(FIPB)の承認を取得した例として、日本企業である株式会社プライムポリマー(株式会社三井化学の子会社)が、過去の合弁パートナーであるインド企業Tipco Industriesとの合弁事業を解消し、自社の100%子会社を設立しようとした事案が挙げられます。
同事案では、インド外国投資促進委員会(FIPB)は、プライムポリマーとTipcoとの間の合弁事業は機能不全に陥っており、遅くとも2000年には終了したものと認定の上、プライムポリマーの承認申請を認可しています。

このように、外国投資家側で、既に過去の合弁事業や提携が解消済みであること、またはそれらが機能していないことを立証するなど、インド側合弁パートナーや提携先の異議が根拠に欠けるものであることを示した場合、インド外国投資促進委員会(FIPB)が異議を却下し、申請を認可する可能性は十分にあるといえます。

そのため、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトが入手できない場合であっても、必ずしも新規事業を行えないというわけではありません。

ただし、上記の実例は、いずれも既存の合弁や提携が事実上機能していなかった事案であることに注意が必要です

既存の合弁や提携が一定の事業活動を継続している場合など、一応機能している場合には、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトなしにインド外国投資促進委員会(FIPB)が事前承認を与える可能性は、非常に低くなります。
これは、そもそもプレスノート2005年1号の趣旨が既存の合弁や提携の保護であるところ、既存の合弁や提携が事業活動を継続している場合、まさにこの保護の趣旨が妥当するためです。

すなわち、傾向として、インド外国投資促進委員会(FIPB)が事前承認を与え、また相手方の意義を却下するのは、「既存の合弁や提携が機能していないにもかかわらず、相手方が(補償金や最低購入の保証等を目当てに)不合理な主張を行う場合(例:「ノー・オブジェクション・サーティフィケイトを出してほしければ、○○ルピー払え」等)」です。

平たく言えば、ゴネ得は許さないということであり、既存の合弁や提携が機能している場合には、(当初の規制上予定されているとおり)インド外国投資促進委員会(FIPB)は、インド側パートナーを保護する傾向にあります

4 今後の展望

プレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限は、日本企業をはじめとした外国企業にとって、インド進出の大きな足かせになっているため、規制自体の廃止が検討されています。

ただし、現時点では廃止の具体的な予定は立っておらず、廃止がいつごろになるかもまだわからないという状況です。

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解説は以上です。

ちなみに、この論文、実は書いてから既に1年近くが経っています。
未発表のまま暖めすぎたかもしれません…

今後、論文として日の目を見ることはないかもしれませんが、せっかく書いたものではあるので、親心として何らかの形で発表してあげられたらなあとは思っています。

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プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その2

2 規制の運用状況とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト)

プレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限により、インド外国投資促進委員会(FIPB)に対して投資の事前承認申請を行う場合、当該事前承認の審査においては、既存のインド側合弁パートナーや提携先が、外国投資家による新たな合弁や提携を了承しているかどうかが重視されます

すなわち、既存のインド側合弁パートナーや提携先が新たな合弁や提携を了承している場合、申請は認められやすくなり、他方反対している場合には認められにくくなります。

これは、プレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限の趣旨は既存のインド側合弁パートナーや提携先を保護する点にあるところ、既存のインド側合弁パートナーや提携先が外国投資家による新たな合弁や提携について了承している場合には、当該既存のインド側合弁パートナーや提携先を保護する必要がなくなるためです。

そのため、プレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限によりインド外国投資促進委員会(FIPB)に対して事前承認申請を行う場合、既存のインド側合弁パートナーや提携先からノー・オブジェクション・サーティフィケイト(No Objection Certificate)(ノー・オブジェクション・レター(No Objection Letter)とも呼ばれます)を入手し、インド外国投資促進委員会(FIPB)に提出することが行われます

ノー・オブジェクション・サーティフィケイトとは、既存のインド側合弁パートナーや提携先が、外国投資家による、同一業種における新たな合弁や提携に対して異議がないことを表明する書面のことをいいます。

事前承認申請を認めるかどうかはあくまでインド外国投資促進委員会(FIPB)の裁量的判断によるため 、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトを提出したからといって、必ず申請が認められるわけではありませんが、これを提出することにより、申請が認められる可能性は非常に高くなります(なお、その3で述べるとおり、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトを提出しなくとも申請が認められる可能性もあります)。

通常、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトを発行するかどうかは既存のインド側合弁パートナーや提携先の任意であるため、これを発行してもらうためには既存のインド側合弁パートナーや提携先との交渉が必要となります。
一般には、一定の金銭的補償や最低購入(または売却)額の保証など、一定の補償または代替措置を合意した上で、既存のインド側合弁パートナーや提携先からノー・オブジェクション・サーティフィケイトを発行してもらうことが多いようです。

もっとも、補償金の釣り上げ目的や、事業遂行上の思惑から、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトの発行に難色を示すインド側合弁パートナーや提携先も少なくありません。

そのため、この規制は、過去にインドで合弁事業を立ち上げたが、うまくいかずに合弁解消、新規合弁(あるいは100%現地法人)設立を目指す多くの日本企業にとって、大きなハードルとなっています。

なお、既存のインド側合弁パートナーや提携先との間の合弁契約や技術提携契約、商標使用契約において、「同一事業分野につき外国投資家側が別途合弁会社を設立すること(あるいは技術提携契約や商標使用契約を締結すること)には反対しない」旨の条項が規定されている場合、当該契約条項を根拠に、無償でノー・オブジェクション・サーティフィケイトの発行を要求することが可能となります。

契約を作成した法律事務所等が、プレスノート1998年18号(その後のプレスノート2005年1号および3号)に基づく投資制限を十分に意識していた場合、「外国投資家側が要求した場合、インド側合弁パートナー(提携先)は、ノー・オブジェクション・サーティフィケイトを無償で発行しなければならない」旨の文言を契約に明記している可能性もあります。

そのため、日本企業がプレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限によりインド外国投資促進委員会(FIPB)に対して事前承認申請を行う場合、

①まずは既存のインド側合弁パートナーや提携先との間の合弁契約や技術提携契約、商標使用契約を見直し、競業禁止やノー・オブジェクション・サーティフィケイトについて規定している条項があるかどうかを確認する

②そのような条項がない場合、既存のインド側合弁パートナーや提携先とコンタクトを取り、任意にノー・オブジェクション・サーティフィケイトを発行してもらえるよう交渉する

というステップを踏むことになります。

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その3に続く

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プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その1

最近、プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限について質問を受けることが多いのですが、そういえば本ブログでこの点は詳細に解説していなかったなあと思い、既存の未発表論文を手直しする形で、一気に解説を掲載したいと思います。

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1 規制の概要

「プレスノート2005年1号および3号に基づく投資制限」とは、インド非居住者による同一事業分野における重複的な投資または技術提携等の禁止をいいます。

プレスノート2005年1号は、既にインド内国会社と合弁会社を設立したり、技術提携契約や商標使用契約などを結んでいる外国投資家(インド非居住者)は、同一事業分野において別途投資を行おうとするとき(具体的には現地法人を設立したり、同業他社と合弁会社を設立したり、同業他社に投資するなど)、または技術提携契約もしくは商標使用契約を締結しようとするときには、下記に述べる一定の例外に該当する場合を除き、インド政府の事前承認を得なければならない旨を規定しています。

また、プレスノート2005年3号は、プレスノート2005年1号の射程範囲の明確化のために発行されたものですが、これによれば、プレスノート2005年1号によるインド政府の事前承認が必要なのは、2005年1月12日の時点で既にインド非居住者がインド内国会社と合弁会社を設立していたり、技術提携契約や商標使用契約を締結している場合に限定されるとされます。
すなわち、インド非居住者がインド内国会社と合弁会社を設立したり、技術提携契約もしくは商標使用契約を締結したのが、2005年1月12日よりも後であれば、プレスノート2005年1号の規制は適用されません

この規制の趣旨は、既存のインド側合弁パートナーや提携先を保護する点にあります。

プレスノート2005年1号以前は、「同一事業分野」だけでなく「関連事業分野」についても事前承認が必要とされていたため、プレスノート2005年1号は、その規制を緩和したものであるといえます。
※ プレスノート2005年1号の前に同様の規制を定めていたのはプレスノート1998年18号でしたが、同プレスノートでは、「同一事業分野(same fields)」だけでなく「関連事業分野(allied fields)」の場合でも事前承認が必要とされ、かつプレスノート2005年1号には規定されている下記例外も認められていませんでした。
そのため、既存の合弁パートナーや技術提携先が存在する場合のインド非居住者による投資制限は、プレスノート2005年1号よりも広範であり、外国企業によるインド進出の大きな障害となっていました。

なお、「同一事業分野」かどうかの判断基準は、プレスノート1999年10号に規定されており、プレスノート2005年3号もこの基準を踏襲することが規定されています。

具体的には、National Industrial Classification (NIC) 1987 Codeによる産業分類の4桁の数字(class number)が同一である事業分野については、「同一」の事業分野とみなされます。
(National Industrial Classification (NIC) 1987 Codeの名称中に「1987」とあるのは、最初のコード分類が1987年に行われたからであり、このコード自体はその後数回にわたってアップデートされています)

National Industrial Classification (NIC) 1987 Codeの最新版(2008年版)は、以下のリンク先で参照可能です。
http://www.mospi.gov.in/nic_2008_17apr09.pdf

上記リンク先の26頁以降、産業コード番号が記載されており、既存の事業とこれから営もうとする事業の内容について、4桁の数字(最上段のセルで「class」とある部分)が一致すれば、「同一事業分野(same fields)」ということになります。

上記の規制の例外として、プレスノート2005年1号は、2005年1月12日の時点で合弁会社や技術提携契約等が存在している場合であっても、以下の各場合には、インド政府の事前承認は不要となると規定しています。

①インド非居住者がベンチャーキャピタルファンド(Venture Capital Funds (VCF))を通じて投資する場合(すなわち、当該インド非居住者が外国ベンチャー投資家(Foreign Venture Capital Investor(FVCI))に該当する場合)

②インド非居住者または既存の合弁相手のいずれかによる既存の合弁会社の持分保有割合が3%未満の場合

③既存の合弁会社または提携事業が休眠状態である場合のいずれかに該当する場合

ここで、プレスノート2005年1号による「インド政府による事前承認」とは、インド外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board (FIPB))の承認を意味します。

この承認は、あくまでプレスノート2005年1号の規制に対する承認であって、一般に外国直接投資(FDI)において自動承認の限度を超える場合の承認とは異なります。
そのため、外国投資家が新たに現地法人等を設立しようとする場合で、プレスノート2005年1号が定める状況に該当する場合、外国直接投資(FDI)が自動承認の限度を超えていなくとも、インド外国投資促進委員会(FIPB)による(プレスノート2005年1号の規制に関する)事前承認が必要となります。

なお、以上はあくまでもインド政府による規制の問題であって、プレスノート2005年1号上、合弁契約、技術提携もしくは商標使用契約の当事者間の契約レベルにおいて、別途の会社設立や技術提携等を禁止することは妨げられていません。
したがって、2005年1月12日の前後を問わず、インド非居住者とインドとの間の合弁契約や技術提携、商標使用契約において、契約条項としてインド非居住者側によるこれらの行為を禁止することは可能であり、インド非居住者がこれに違反した場合、契約違反の問題が生じることとなります。

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その2に続く

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駐在員事務所および支店の設立、運営、閉鎖等に関する事項の変更(その6)

通達(2)の解説の続きです。
今回は、第5項(ii)以降の解説です。

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第5項(ii)

第5項(ii)は、駐在員事務所の認可期間の延長について規定しています。
通達(1)では、主として手続的なことが規定されていた(解説その4参照)のに対し、本項目では、延長が認められるための実体要件が規定されています。

2010年2月1日以降、指定された承認取引者カテゴリーⅠ銀行(AD Category-I bank)は、インド準備銀行(RBI)により認められたオリジナルの認可期間の満了の日から、3年間の認可期間延長を行うことができるとされています。
ただし、認可期間延長のためには、指定された手続に従うことのほか、以下の要件をみたしている必要があるとされています。

・当該駐在員事務所が、認可期間中、年次活動報告書(Annual Activity Certificate)を提出していること(なお、承認取引者カテゴリーⅠ銀行に延長権限を認める本制度の施行初年度だけは、承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、インド準備銀行の地方局に対して、当該駐在員事務所がインド準備銀行の地方局に期限までに年次活動報告書を提出していたかどうかを問い合わせることができ、その確認結果をもとに本要件がみたされているかどうかを判断するとされています)

・当該駐在員事務所が承認取引者カテゴリーⅠ銀行に開設している口座が、インド準備銀行の認可に規定された条件に従って利用されていること

認可期間延長は、延長申請の受理から可能な限り早く審査され、概ね1ヶ月以内に与えられます。
承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、駐在員事務所から認可期間の延長申請を受けた場合、これをインド準備銀行に通知する必要があり、その際、必要な場合にはオリジナルの駐在員事務所設立認可書のレファレンスナンバーと、当該駐在員事務所の固有特定番号(Unique Identification Number (UIN))とを通知します。

なお、銀行や保険会社、またはノンバンク金融会社(NBFC)やインフラ開発を除く建設開発事業を営む会社の駐在員事務所については、上記と異なる延長手続に服しますが、これについてはその4の3で解説したとおりです。

第5項(iii)

支店と駐在員事務所の閉鎖について規定されています。

2010年2月1日以降、支店および駐在員事務所の閉鎖手続は、(これまで同手続を行ってきた)インド準備銀行ではなく、承認取引者カテゴリーⅠ銀行により行われます。
閉鎖手続は、2000年5月3日発行のインド準備銀行通達であるNotification No. FEMA 13/2000-RBに従って行われます。

閉鎖申請の際の必要書類については、その4の4で解説したとおりです。
さらに、場合によっては、上記書類に加えて、インド準備銀行が指定する書面の提出が必要とされることもあります。

承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、閉鎖しようとする支店または駐在員事務所が、それぞれ年次活動報告書を適式に提出していることを確認しなければなりません。制度開始初年度など、必要な場合には、承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、年次報告書の提出状況をインド準備銀行の中央局または地方局に問い合わせることができます。

必要書類が全て提出された後、承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、書類審査の結果問題がない場合には、支店または駐在員事務所の閉鎖を認め、承認取引者カテゴリーⅠ銀行に開設された当該支店または駐在員事務所の口座を閉鎖するとともに、外国の事業体に口座に入っていた残金の送金を行うことができます。

支店または駐在員事務所の閉鎖を認めた場合、承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、当該閉鎖の事実をインド準備銀行(駐在員事務所の場合、地方局。支店の場合、中央局)に通知する必要があります。
当該通知に際しては、全ての書類が提出され、かつ審査に問題がなかったことを宣言する書面を添付しなければなりません。

もし書類が整っていない場合、承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、当該閉鎖申請をインド準備銀行に、自らの意見ととももに送付し、インド準備銀行により指示を仰ぐ必要があります。

第6項

支店または駐在員事務所に関する全ての書類は、承認取引者カテゴリーⅠ銀行において保管される必要がある旨規定しています。
当該書類は、承認取引者カテゴリーⅠ銀行の内部監査役またはインド準備銀行の検査の対象となります。

第7項

今回承認取引者カテゴリーⅠ銀行への権限委譲がなされなかった事項については、引き続きインド準備銀行が権限を有し、承認取引者カテゴリーⅠ銀行は、当該事項につきインド準備銀行に問い合わせる必要がある旨規定しています。

第8項から第10項

事務連絡的な規定であるため、解説は省略します。

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以上で通達(2)の解説は終了です。

今回の解説シリーズを通じて、現在のインドにおける駐在員事務所または支店の設立手続がどのようなものか、概ねおわかりいただけたのではないかと思います。

ポイントをまとめると、

1 設立申請、認可期間延長申請、年次報告書の提出、閉鎖申請等の、支店または駐在員事務所の運営に係るほとんど全ての手続は、(インド準備銀行ではなく)承認取引者カテゴリーI銀行(Authorised Dealer Category – I banks)に対して行う

2 承認取引者カテゴリーⅠ銀行とは、インド準備銀行から全ての当座勘定取引および資本勘定取引を扱うことを認められている銀行(平たく言えば、外為取引を扱える銀行)をいう。
中大手の銀行は、ほぼ全てこの指定を受けている。

3 支店または駐在員事務所は、担当となった承認取引者カテゴリーⅠ銀行において、支店または駐在員事務所運営のための銀行口座を開設する必要がある

といったあたりでしょうか(3については、通達には明示的には書かれていませんが、閉鎖手続についての解説を読む限り、これが前提とされていると考えられます)。

ということで、今後、インドで支店または駐在員事務所の開設を考えている日本企業の方は、まずは担当となってくれる承認取引者カテゴリーⅠ銀行を探すところから始める必要があります

おそらく、外国会社の支店または駐在員事務所の担当になりたがる承認取引者カテゴリーⅠ銀行は多数あり(手数料収入が増えるため)、その中にはどこかのコンサルと提携している銀行もあるであろうことから、担当となる承認取引者カテゴリーⅠ銀行を探すこと自体はそれほど難しくないと思います。

後は、担当手数料の問題で、「こちらの銀行は安いがこちらの銀行は高い」ということはあるかもしれません。もちろん、安いにこしたことはありませんので、複数の銀行から見積もりをとって比較するということくらいはやってもいいかもしれませんね。

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以上で本解説シリーズは終了です。

次回からは、中断していたインド労働法解説を再開したいと思います。

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たまには

最近まじめな解説記事しか書いておらず、欲求不満がたまっています

全然インドの日常の話を書いていないので、「弁護士がつづるインドの法律事情とムンバイの生活事情」という本ブログの副題も、看板に偽りありの状態になっちゃってますね。まあ、インドからはもう離れているのでしょうがないんですけど。

ということで、たまにはインド法に関係のない話を(別の機会に書いた文章の再掲ですが)。

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ある日、友人の結婚式に出席したところ、余興として3つの箱の中からハワイペア旅行のチケットをあてるというゲームが始まりました。

あなたは幸運にもゲームの参加者に選ばれ、A、B、Cの3つの箱の中から1つを選ぶことに。

箱の中の1つにはハワイペア旅行のチケットが入っていますが、残り2つは空っぽです。

司会者は、どの箱に当たりのチケットが入っているかを知っていますが、もちろん教えてはくれません。

あなたは、とりあえずあてずっぽうでBを選びました。

その後、司会者は場を盛り上げるため、Aの箱を開けて中が空っぽであることを示しました(もちろん、司会者はどの箱が正解かを知っていますから、わざとはずれの箱を開けたのです。)

その後、司会者はあなたに言いました。

「今なら選択を変えられますよ。Bの箱のままでいいですか、Cの箱に変えますか。」

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こういう直感と数学的結論が異なる問題が大好きです(もちろん、ベースはモンティ・ホール問題)。

暇つぶしに考えてみてください。

え、なんでこんなこと書いたかって?

インド準備銀行のサイトがダウンしていて、通達を参照できず、終わらせる気満々だった外資規制の解説の続きが書けかったからですよ、ええ(怒)

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駐在員事務所および支店の設立、運営、閉鎖等に関する事項の変更(その5)

今回から、通達(2)の解説です。

通達(2)の正式名称は、「RBI/2009-2010/279 A. P. (DIR Series) Circular No.24」です。
リンク先はこちら↓
http://rbidocs.rbi.org.in/rdocs/notification/PDFs/APD24311209.pdf

ちなみに、通達(1)の正式名称は、「RBI/2009-2010/278 A. P. (DIR Series) Circular No. 23」です。

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前回まで解説してきた通達(1)は、主として駐在員事務所および支店の設立や閉鎖等に関する内容でしたが、今回から解説する通達(2)は、主として駐在員事務所や支店の存続中の各種手続について規定しています。
(なお、通達(1)、(2)は、いずれも2009年12月30日に発行されています)

もっとも、内容的に被る部分も多く、後述のとおり、第5項以外は通達(1)の規定の繰り返しに近いといえます。

通達(2)は、全部で10の項目から成ります。
全体で重要なポイントとしては、通達(1)、(2)の各規定の効力発生日が規定されている点で、いずれも効力発生日は2010年2月1日とされています(したがって、現時点で既に効力発生しています)

各項目の内容は以下のとおりです。
第5項以外は、ほぼ通達(1)の内容と重複しています。

第1項
前置きとして、インド準備銀行(RBI)が、承認取引者カテゴリーI銀行(Authorised Dealer Category – I banks)に、支店や駐在員事務所の設立、閉鎖、(駐在員事務所につき)有効期限の延長等に関する手続権限を委譲するに至った経緯が簡単に説明されています。

第2項
支店や駐在員事務所の設立手続において、承認取引者カテゴリーI銀行が行うべき事項を規定しています。

具体的には、設立申請にあたって、承認取引者カテゴリーI銀行は、以下を行う必要があります。
①設立申請書類を、その添付書類およびコメント、(設立の可否に関する)推薦とともに、インド準備銀行(RBI)の担当局に送付すること
②申請者の背景、申請者の会社支配者の素性、事業活動の内容と場所、資金源等についてデュー・ディリジェンスを行うこと
③①の書類送付の前に、本人確認手続(compliance with KYC norms)を行うこと(※「KYCとは、「Know Your Customer」の略で、日本での金融機関等による本人確認手続にに相当します)

第3項
銀行および保険会社の支店や駐在員事務所については、例外的に直接インド準備銀行(RBI)と保険規制開発局(IRDA)が、それぞれ直接申請を受理すること、また銀行および保険会社の支店や駐在員事務所が特別経済区域(SEZ)に設立される場合、インド準備銀行の事前承認は不要となる旨が規定されています。

第4項
全ての支店および駐在員事務所に、固有特定番号(Unique Identification Number (UIN))が割り振られ、今後の各種提出書類においては必ずUINを記載すべきこと、また2010年2月1日以降は、現存する支店や駐在員事務所も、(直接インド準備銀行に各種手続を申請するのではなく)承認取引者カテゴリーI銀行を通じて手続すべき旨が規定されています。

第5項
本項は、通達(1)に記載されていない内容を定めています(時間がなければここだけ読めば、通達(2)については事足りるといってもいいくらいです)

第5項(i)

第5項には、(i)から(iii)までの小項目がありますが、このうち(i)は、支店および駐在員事務所の年次活動報告書(Annual Activity Certificate)の提出方法の変更について定めています。
年次活動報告書とは、当該支店または駐在員事務所が、インド準備銀行(RBI)により認可された活動のみを行っていることを証明する文書のことをいいます。

2010年2月1日より前は、支店や駐在員事務所は、年次活動報告書(書式が通達(2)の別紙に添付されています)を、その監査人(Auditor。当該支店や駐在員事務所の会計監査を行う者)から直接インド準備銀行の本店または管轄地方局に提出させなければならないとされていました。
(なお、提出の主体は、あくまで監査人であって、支店や駐在員事務所ではありません。報告の趣旨が、「当該支店または駐在員事務所が、インド準備銀行(RBI)により認可された活動のみを行っていることの証明」であることから、第三者である監査人が証明を行う必要があるためです)。

この手続が変更され、2010年2月1日以降は、支店および駐在員事務所は、その監査人から、3月31日付けで作成された年次活動報告書を、同年の4月30日までに、(インド準備銀行ではなく)承認取引者カテゴリーI銀行に提出するとともに、その写しを所得税(国際課税)事務局長(Directorate General of Income Tax (International Taxation))宛に提出すべきこととなりました(ちなみに、宛先はDrum Shape Building, I.P. Estate, New Delhi 110002です)。

なお、支店または駐在員事務所がインド国内に1つしかない場合は、当該支店または駐在員事務所が上記提出手続を行い、複数ある場合には、基幹事務所(Nodal Office)が、全ての支店または駐在員事務所の年次活動報告をとりまとめて提出することになります。

年次報告書の提出を受けた承認取引者カテゴリーI銀行は、年次報告書を精査し、支店または駐在員事務所の活動が、インド準備銀行(RBI)により認可された活動のみを行っていることを確認します。

もし、監査人が認可された活動以外の活動を行っていることを報告しており、あるいは承認取引者カテゴリーI銀行が、(監査人の問題なしとの報告にもかかわらず)精査の過程で認可された活動以外の活動を行っていることを発見した場合、承認取引者カテゴリーI銀行は、直ちにその旨を、①駐在員事務所の場合にはインド準備銀行(RBI)の管轄地方局に、②支店の場合にはインド準備銀行(RBI)の本店に、コメントを付した年次報告書の写しとともに報告しなければなりません。

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第5項(ii)以降は、次回解説します。

なお、このシリーズは次回で最終回の予定です。

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