« プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その3 | トップページ | Consolidated FDI Policy »

インド労働法解説その6 -工場以外の雇用におけるモデル労働契約-

今回から、インド労働法解説を再開します。

さて、前回までで、

1 インドには就業規則制定の一般的義務はないこと

2 したがって、被雇用者との契約は、全て個別の労働契約とすることも可能であること(もっとも、全て個別契約としてしまうと文書管理が大変なので、実務上は服務規程を作成して、契約書には「労働条件は服務規程に従う」等と記載することが行われていること)

3 それらの労働条件は、

①工場および工場附属施設については、1948年工場法(Factories Act, 1948)に基づいて(ただし、工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、「1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)」)に基づいて)

②工場以外のオフィス等の施設の勤務条件については、その地域の、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」に基づいて

それぞれ定められること

を解説してきました。

--

では、実際にはどのような契約を結べばよいのか(工場については、どのような規則を定めればよいのか)、というのが次の問題となります。

まず、工場以外のオフィス等の施設については、個別の労働契約(または服務規程方式)で対応すべきことになります。

労働契約は、各施設に応じてさまざまなものがありえますが、モデルとなる労働契約としては、下記JETROのサイトの「インド労働法調査別添1~3」が役立つのではないかと思われます。
http://www.jetro.go.jp/world/asia/in/reports/07000147

ちなみに、このJETROの報告書は、インドの労働法の概要についてまとめたものであり、報告書本文には和訳もついていますので(なお、別添1~3には和訳はついていません)、インドの労働法について調べる場合、何かと参考になるのではないかと思われます。

別添1は一般的な雇用契約書(workman、non-workmanいずれにも使用可能です)、別添2はマネジメントクラスと契約する場合の別添1から変更点、別添3は外部のアドバイザリー等と契約する場合の契約書、のそれぞれ雛形となっています。
(「別添3は、そもそも労働契約じゃないんじゃないのか?」という無粋な突っ込みはなしです)

もちろん、別添1や2の雛形をそのまま利用する必要はなく、また各事業所、施設ごとに特殊性があることを考えるとそうすべきでもありませんが、報告書本文と併せて読むことにより、ある程度インドにおける労働契約のイメージがつかめるのではないかと思います。

なお、このサンプル契約は、デリー準州における、「1954年デリー店舗および施設法 (Delhi Shops and Establishments Act, 1954)」に定められた労働条件に基づく契約であり、他の州(=当該州の店舗および施設法が適用される)においては、このサンプル契約をベースとすることはできないことに十分に注意すべきです

別添1のサンプル契約において、契約条項の主なポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。

・全ての条項は、1954年デリー店舗および施設法に定められた労働条件に従う

・被雇用者がworkmanの場合、期間の定めのある雇用とする
→期限切れにより契約期間を更新しないことは、基本的には解雇には該当せず、解雇規制が適用されないため

・雇用終了後の競業避止義務条項は原則無効
→ただし、心理的な抑制効果を狙い、あえて競業避止義務条項を設けることもある

・賞与の支給について定める場合、支給は雇用者の裁量によることを明確に定める
→被雇用者の権利と解されるような書き方はしない

・知的財産権の雇用者への帰属
→いわゆる職務発明が、雇用者に帰属するよう定める

・労働者の守秘義務の規定

もちろん、他にも事業所や施設の特殊性、あるいは事業形態等により、さまざまな労働契約上のポイントが生じえるため、このサンプル契約の雛形を、名前だけ適当に入れてそのまま使う、ということは避けた方が良いでしょう。
契約が詳細なだけに、かえって将来紛争が生じたときに、会社側に不利になる可能性があります(例:「これだけ詳細な契約であるにもかかわらず、この点については定めていないのだから、これについては労使間で合意する意思がなかった」と、労働審判等において認定される可能性など)。

--

一方、工場については、1948年工場法や1946年産業雇用(就業規則)法が適用されるため、上記サンプル契約等を利用することはできません。

以前解説したとおり、1948年工場法に基づく保護が適用される「工場」とは、「機械作業の場合10人以上、手作業の場合20人以上の労働者(workman)が雇用されている、または過去12か月のいずれかの日に雇用されていた工場」をいいます。
これらの工場については、1948年工場法に基づいて、労働条件が定められる必要があります(なお、上記要件をみたさない工場については、そもそも1948年工場法が適用されないため、通常の店舗および施設法に基づいて労働条件が定められるべきことになります)。

ただし、工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、1946年産業雇用(就業規則)法が適用され、同法により労働条件が規制されることになります。
いわゆる就業規則としてのStanding Ordersの制定が求められるのは、この場合です。

ということで、次回、①workmanが10人以上(あるいは20人以上)100人以下の工場、②workmanが100人超の工場に分けて、どのような労働条件を定めれば良いのか(またはどのような規則を定めればよいのか)を解説していきたいと思います。

|

« プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その3 | トップページ | Consolidated FDI Policy »

インド労働法解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/448933/33941877

この記事へのトラックバック一覧です: インド労働法解説その6 -工場以外の雇用におけるモデル労働契約-:

« プレスノート2005年第1号および第3号に基づく投資制限とNOC(ノー・オブジェクション・サーティフィケイト) その3 | トップページ | Consolidated FDI Policy »