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2010年4月

インド労働法解説その9 -非正規雇用(2)-

前回からの続きで、契約労働雇用(Contract Labour)についての解説です。

5 契約労働雇用(Contract Labour)

契約労働雇用とは、使用者が直接労働者を雇用するのではなく、契約業者から労働者を派遣してもらって労働者を使役する雇用形態をいいます。
日本でいう派遣労働に近い概念です。

契約労働雇用を規律する法律は、「1970年契約労働(規制および廃止)法(Contract Labour (Regulation and Abolition) Act, 1970)」です。

同法上、契約労働雇用における使用者、契約労働者、労働者を派遣する者は、それぞれ以下のとおり定義されています。

・使用者(=労働者を実際に使役する者)は、「主たる使用者(principal employer)」と呼ばれます。
「主たる使用者」は、通常使用者である法人または個人のことを意味しますが、場合によっては工場長や施設長など、当該契約労働者が勤務する施設の長を意味することもあります。

・「契約労働者(contract labour)」は、「労働者(workman)であって、主たる雇用者が誰であるかを知りつつ、あるいは知らずに、ある施設(establishment)において、契約業者を通じて勤務する者」と定義されています。
この定義から明らかなとおり、契約労働者は、必ずしも主たる使用者が誰であるかを知っている必要はありません。

なお、「施設(establishment)」は、「産業、取引、事業、製造その他何らかの職務が行われるあらゆる場所」と定義されています。
この定義により、オフィス、工場といったほとんどあらゆる職場が、「施設」に該当することになります。

・労働者を派遣する者は、「契約業者(contractor)」と呼ばれています。
「契約業者」は、「契約労働者を通じて、施設のために一定の成果をもたらすこと(ただし、単に物品や製造品を施設に供給するだけの業務は含まない)を引き受ける者、または施設内の何らかの作業のために請負労働者を供給する者をいい、下請けの契約業者を含む」と定義されています。

下線部が重要で、この規定により、インドにおける契約業者は、必ずしも何らかの成果物の完成を目的として契約労働者を派遣する必要は無く、日常業務のために契約労働者を派遣すること(日本でいう派遣労働的な業務)ができることになります。

なお、日本では、偽装請負の問題に代表されるように、労働者が請負労働者か派遣労働者かの区別が、指揮命令系統の所在と関連して、労働法非常に重要な問題となりますが、インドでは、上記定義により、「契約労働者」は請負的な労働、派遣的な労働のいずれもできることとされているため、請負と派遣の区別は通常問題となりません

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1970年契約労働(規制および廃止)法上、契約労働については、以下の規制が課せられています。

(1) 契約業者に対する規制

20人以上の労働者(workman)を、契約労働者として雇用し、または過去12か月のいずれかの日に雇用していた契約業者は、1970年契約労働(規制および廃止)法の適用対象となり、以下の規制が課せられます。

・免許取得義務
20人以上の労働者(workman)を雇用する者は、州の労働コミッショナー(Labour Commissioner)から契約業者としての業務を営むことにつき、免許を取得する義務を負います。

ご参考:デリーのLabour Commissionerのウェブサイト
http://www.delhi.gov.in/wps/wcm/connect/doit_labour/Labour/Home/

・設備提供義務
契約業者は、1970年契約労働(規制および廃止)法が適用されるすべての施設において、とりわけ休憩室、食堂、衛生的な飲料水、便所、手洗所、応急処置設備を含む、雇用する契約労働者の福利および健康のための設備を提供する必要があります。これらの義務の内容は、施設内に雇用されている契約労働者の数によって異なります。

※契約業者が所定の時までに上記のいずれかの設備を提供しなかった場合には、主たる雇用者がそれらを提供する必要があります。主たる雇用者は、設備を提供するにあたり負担した支出を、契約により契約業者に支払われる金額から相殺する方法、または契約業者から回収する方法のいずれかにより、請負業者に求償することができます

・記録保持義務
契約業者は、雇用する契約労働者、契約労働者によって行われる作業の性質、契約労働者に支払われる賃金率等の登録簿および記録を所定の様式で保持する必要があります。

・賃金支払義務(第一次的義務)
契約業者は、契約労働者として雇用する各労働者への賃金の支払について、第一次的な責任を負います。

(2) 主たる雇用者に対する規制

・登録義務
1970年契約労働(規制および廃止)法が適用されるすべての施設の主たる雇用者は、登録官 (Registering Officer) に施設の登録を申請する必要があります。
ここで、登録官とは、その施設のある州の労働コミッショナー(Labour Commissioner)のことをいいます(労働コミッショナーについては上記参照)。

日本と異なり、インドにおいては、主たる雇用者(=契約労働者を使役する者)の側においても、登録申請が必要になることに注意が必要です。

日本では、いわゆる人材派遣会社側では労働者派遣事業の許可を取得する必要がありますが、労働者の派遣を受ける側では、当該派遣に関して許可や登録を行う必要はありません。
しかしながら、インドでは、契約労働者を使用する側でも、登録が必要となります。

そのため、現地の日系企業が、登録義務に気が付かないまま契約労働者を受け入れてしまうと、登録義務違反の問題が生じることになり、この点十分な注意が必要です。

・記録保持義務
主たる雇用者は、契約業者と同じく、雇用する契約労働者、契約労働者によって行われる作業の性質、契約労働者に支払われる賃金率等の登録簿および記録を所定の様式で保持する必要があります。

・賃金分配立会義務および賃金支払義務(二次的責任)
主たる雇用者は、適切な代理人を任命の上、当該代理人を、契約業者による契約労働者に対する賃金の分配の場に同席させることが義務づけられています。
これは日本にないやり方なので、注意が必要です。

また、契約業者が所定の時までに賃金を支払わなかった場合、または不十分な金額しか支払わなかった場合、主たる義務者は、契約労働者に対して賃金全額または契約業者による支払の不足分を支払う必要があります。
なお、この場合、主たる雇用者は、支払った金額を、契約業者に対する契約料の支払いの相殺または債権回収の方法で、求償することができます。

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ということで、当然のことではありますが、インドにおける契約労働雇用は、日本の派遣労働と似ているものの、大きく異なる部分もあるため、インドにおいて契約労働者を利用する場合、規制内容については十分に注意する必要があります。

次回からは、インドにおける労働組合について解説していきます。

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インド労働法解説その8 -非正規雇用(1)-

インドにも、日本と同じく、正規雇用(full-time labour)と非正規雇用の区別があります。

非正規雇用には、多くの種類がありますが、その主なものは以下のとおりです。

・試用期間(Trial Period)

・パートタイム雇用(Part-time labour)

・臨時労働雇用(Temporary labour / Casual labour)

・季節労働雇用(seasonal labour)

・契約労働雇用(Contract Labour)

なお、正規雇用か非正規雇用かは、労働者(workman)と非労働者(non-workman)との区別とは別次元の問題です。
そのため、非正規雇用であっても非労働者(non-workman)にあたるということはありえますし、反対に、正規雇用であっても労働者(workman)にあたるということもありえます。

ただ、一般的に言って、非正規雇用により雇用された労働者が、管理職的な役割を果たすことは少ないため、「多くの場合には非正規雇用=労働者(workman)にあたる」ということは言えるでしょう。

以下、各非正規雇用の形態について、個別に概要を解説します。

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1 試用期間(Trial Period)

雇用者は、被雇用者の雇用の際に、試用期間を設けることができます。
試用期間は、最大6ヶ月であり、この期間中は、適切な通知さえ行えば、理由なくして解雇することができます(正確には、解雇というよりも、「不採用決定」というべきでしょう)。

実務上、この試用期間はきわめて重要です

後に解説しますが、インドでは、いったん正規雇用した労働者(あるいは非労働者)を解雇することには大きな困難が伴うため、正規雇用にいたる前に、当該労働者について見極めを行い、正式採用か不採用かの決定ができる(しかも理由は不要)試用期間は、企業にとってきわめて有益な制度です。

インド労働法上の解雇の困難さ、労働紛争になった場合の時間とコストのかかり方等を考慮すると、インドで人を雇用する場合、必ずこの試用期間を設けるようにすべきといっても過言ではないくらい、日本企業にとっても重要な制度であるといえるでしょう。

なお、試用期間の繰り返しは認められておらず、たとえば6ヶ月の試用期間の後に、もう一度続けて6ヶ月の試用期間を置くことなどはできません。
これが認められてしまうと、試用期間を連続することにより、企業はいつでも被雇用者を解雇できることになってしまうため、当然といえば当然の規制でしょう。

2 パートタイム雇用(Part-time labour)

いわゆるアルバイト、パート雇用です。
パートタイム雇用とは、1日のうち、限られた時間のみ労働を行う者を雇用することをいいます。

下記3、4との相違は、3、4は一定期間は通常1日フルタイムで働くことが予定されているのに対し、パートタイム雇用は、1日のうち限られた時間のみ働くことが予定されている点です。

労働時間規制、最低賃金規制などは、正規雇用者と同様の規制が課されます。

3 臨時労働雇用(Temporary labour / Casual labour)

臨時労働雇用とは、特定の仕事の完成を目的として、一定期間のみ労働を行う者を雇用することをいいます。

パートタイム雇用が、一般に日常の業務を行うのに対し、臨時労働雇用は、ある特定の仕事の完成を目的として、その完成に必要な期間のみ雇用されるという点で特色があります。

パートタイム雇用と同じく、労働時間規制、最低賃金規制などは、正規雇用者と同様の規制が課されます。

4 季節労働雇用(seasonal labour)

季節労働雇用とは、主に農業において、種まきや収穫など一定の労働力が必要な季節に限って、その期間のも労働を行う者を雇用することをいいます。
いわば、農業版の臨時労働雇用です。

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契約労働雇用(Contract Labour)については、やや規制が複雑なため、次回詳細を解説します。

なお、Contract Labourといった場合、「請負労働」と訳すのが一般的ですが、インドにおけるContract Labourは、日本でいう派遣労働に近いため、誤解、混同を避けるべく、あえて「契約労働」と訳しています。

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インド労働法解説その7 -工場における労働条件とStanding Orders-

前回は、工場以外の雇用における労働契約について解説しました。
今回は、工場(factory)における労働条件と、就業規則(standing orders)について解説したいと思います。

(工場以外の)オフィス等の施設の労働条件については、その地域の、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が適用されますが(内容は前回、前々回と解説したとおりです)、「工場(factory)」については、1948年工場法(Factories Act, 1948)や1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946が適用されます。

ここで、1948年工場法に基づく保護が適用される「工場」とは、

「機械作業の場合10人以上、手作業の場合20人以上の労働者(workman)が雇用されている、または過去12か月のいずれかの日に雇用されていた工場」

を言い、これらの工場については、1948年工場法に基づいて、労働条件が定められる必要があります。

上記要件をみたさない工場(10人または20人未満の工場)については、そもそも1948年工場法の適用対象とならないため、通常の店舗および施設法に基づいて労働条件が定められるべきことになります。

また、工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、1946年産業雇用(就業規則)法が適用され、同法により労働条件が規制されることになります。
いわゆる就業規則としてのStanding Ordersの制定が求められるのは、この場合です。

以下、①workmanが10人以上(あるいは20人以上)100人以下の工場、②workmanが100人超の工場、に分けて解説します。

1 workmanが10人以上(あるいは20人以上)100人以下の工場について

この場合、1948年工場法に従って労働条件が定められ、会社はこれを遵守する必要があるとともに、同条件に従って労働者との間の労働契約が締結される必要があります。

労働条件の詳細については、以下のJETROの「インド労働法に関する調査報告書」の15頁末尾から21頁初めまでを読んでいただくのが早いと思います。
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000147/india091208.pdf

主な規制は、以下のとおりです。

・「工場責任者(occupier)」の任命義務(特定の者を任命しない場合、会社の取締役全員が工場責任者としての責任を負う)

・当局への工場登録義務、検査官による検査に服する義務

・労働者の健康および安全に配慮する義務

・労働者の福利厚生

・労働時間および休暇に関する規制(労働時間は1週48時間、1日9時間を超えてはならなず、最低でも5時間おきに30分以上の休憩が必要。また、1年に240日以上勤務した労働者は、前年の間に勤務した20日につき1日の割合で計算された日数の有給休暇を取得することができる、など)

・若年者雇用に関する規制(14歳未満の児童の雇用の禁止)

2 workmanが100人超の工場について

この場合、1946年産業雇用(就業規則)法が適用され、会社は当該工場について、Standing Ordersと呼ばれる就業規則を定める必要があります。
※ちなみに、1946年産業雇用(就業規則)法の適用対象は、「産業施設(industrial establishment)」であり、これは工場のみならず、鉱山、農場等を含む概念です。したがって、鉱山で100人以上のworkmanを雇用する場合でも、同法は適用されることになります。

「そんなこと言われても、Standing Ordersってどうやって定めればいいんだよ」という声に応えてかどうかはわかりませんが、1946年産業雇用(就業規則)法は、その別表Ⅰとして、モデルStanding Ordersを添付してくれています。

モデルStanding Ordersはこちら↓
「model_standing_orders.doc」をダウンロード

「モデル」といっても、これは単なる見本ではなく、いわば標準約款であり、会社がStanding Ordersの届出を行い、それが認証、施行されるまでは、これがそのまま当該工場に適用されます。
(正確に言えば、「ある産業施設(=工場)について、同工場が1946年産業雇用(就業規則)法の適用対象となった日(=workamが100人を超えた日)から、正式に認証された就業規則が施行される日までの期間、モデル就業規則が当該産業施設で採用されたものとみなされる」ということです)

Standing Ordersの届出、認証手続は、以下のとおりです。

①雇用者(=会社)は、1946年産業雇用(就業規則)法が産業施設に適用されることとなった日から6か月以内に、就業規則(Standing Orders)の案を作成し、その写し5部を関係する「認証官(Certifying Officer)」(=労働コミッショナー(Labour Commissioner)または地域コミッショナー(Regional Commissioner))に提出する

②認証官は、就業規則案を受領した後、雇用者、労働組合(もしあれば)および労働者の代表に事情を聴く適切な機会を与えた後で、必要であれば修正、追加を行った上で認証する。その後、認証された就業規則の写しを7日以内に雇用者に送付する

③認証済就業規則は、認証された写しが雇用者に送付された日から30日が経過した後に施行される

④認証済就業規則は、原則として、策定または最終の修正が施行された日から6か月が経過するまでの間、修正することができない

上記で述べたとおり、1から3までの間は、モデルStanding Ordersがそのまま適用されることになります。

注意すべきは、就業規則(Standing Orders)は、単に届出を行えば良いというものではなく、認証官による認証が必要とされている点です

一般に、モデルStanding Ordersに近ければ近い内容であるほど、認証は下りやすくなり、内容が離れれば離れるほど、(個別的な審査が必要となることから)認証に時間がかかる(場合によってはそのままでは認証が下りない)、と言われています。

そのため、あまりにモデルStanding Ordersからかけ離れた就業規則を制定してしまうと、いつまでも認証がおりず、その間ずっとモデルStanding Ordersが適用され続けるという本末転倒な事態が生じてしまう可能性があります。

よって、雇用者(=会社)が独自のStanding Ordersを制定する場合、必ずしもモデル就業規則と同一である必要はないものの、認証を受けやすくするという観点からは、できるだけモデルに従った内容にすべきと言えるでしょう。

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労働条件、労働契約等に関する解説は、一応これで終了です。

次回は、インドにおける非正規雇用(試用期間、パート、派遣労働者等)について解説したいと思います。

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2010年プレスノート1号の解説

2010年3月25日付けで、2010年プレスノート1号が発行されました。

http://siadipp.nic.in/policy/changes/pn1_2010.pdf

この通達により、一定額以上の外国直接投資(FDI)を行う場合の内閣経済対策委員会(Cabinet Committtee on Economic Affairs)の事前承認が必要となる基準について、これまでは60億ルピー(約120億円)であったのが、倍額の120億ルピー(約240億円)にまで引き上げられました。

内閣経済対策委員会(Cabinet Committtee on Economic Affairs)の事前承認の要否については、こちらの記事で詳細を解説しています。
(ちなみに、Cabinet Committtee on Economic Affairsの日本語訳について、以前は「内閣経済問題委員会」と訳していましたが、その後の検討により、今後は「内閣経済対策委員会」と訳すことにしました)

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さて、2010年プレスノート1号の内容の解説です。

同プレスノートは、まず2.1で、2010年3月25日より前の外国投資の承認権限について、以下のように述べています。

Presently, the recommendations of the FIPB on these proposals with total investment up to Rs. 600 crore are considered by the Finance Minister and those exceeding this amount, by the Cabinet Committee on Economic Affairs (CCEA). Prior to 18.2.2003, proposals of more than Rs. 600 crore were to be approved by the Cabinet Committee on Foreign Investment (CCFI).

これにより、2010年3月25日までの規制内容が、以下のとおりであったことがわかります。

・60億ルピー(Rs. 600 crore。croreはインド独自の単位で、1000万を表します)までの外国投資については、インド外国投資促進委員会(FIPB)の推薦に基づいて、インド金融相(Finance Minister)により承認の可否が検討されること

・60億ルピーを超える外国投資については、インド外国投資促進委員会(FIPB)の推薦に基づいて、内閣経済対策委員会(Cabinet Committtee on Economic Affairs)(2003年2月18日以前は、内閣外国投資委員会(Cabinet Committee on Foreign Investment))により承認の可否が検討されること

いずれもFIPBの推薦に基づくということで、形式的な承認権限は、それぞれインド金融相、内閣経済対策委員会にあるものの、実質的な承認権限はFIPBにあるといえます。

同プレスノート3.1は、これらが2010年3月25日付けで以下のように変更されることを規定しています。

3.1 The Government of India has reviewed the extant policy and it has been decided, with immediate effect, that the following approval levels shall operate for proposals involving FDI under the Government route i.e. requiring prior Government approval:

(a) The Minister of Finance who is in-charge of FIPB would consider the recommendations of FIPB on proposals with total foreign equity inflow of and below
Rs.1200 crore.

(b) The recommendations of FIPB on proposals with total foreign equity inflow of
more than Rs. 1200 crore would be placed for consideration of CCEA. The FIPB
Secretariat in DEA will process the recommendations of FIPB to obtain the approval of
Minister of Finance and CCEA.

(c) The CCEA would also consider the proposals which may be referred to it by the
FIPB/ the Minister of Finance (in-charge ofFIPB).

すなわち、

(a) 120億ルピー以下の外国投資については、FIPBの監督権者であるインド金融相が、FIPBの推薦に基づいて承認の可否を検討すること

(b) 120億ルピーを超える外国投資については、FIPBの推薦が、内閣経済対策委員会の承認の検討にあたって考慮されること。また、当該FIPBの推薦は、インド金融省(Ministry of Finance)の経済対策局(Department of Economic Affairs)に所属するFIPBの事務局長(Secretariat)が、インド金融相または内閣経済対策委員会の承認を取得するために行うこと

(c) 内閣経済対策委員会は、直接FIPBまたはFIPBの監督権者であるインド金融相からの照会も受け付けること

が規定されています。 

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インド政府の内部的な手続の問題はともかくとして、とりあえず本通達において重要なのは、

・外国直接投資(FDI)を行う場合の内閣経済対策委員会の事前承認が必要となる基準について、これまでは60億ルピー(約120億円)であったのが、倍額の120億ルピー(約240億円)にまで引き上げられたこと

・120億ルピー以下のFDIについては金融相が、120億ルピー超のFDIについては内閣経済対策委員会が、それぞておFIPBの推薦に基づいて承認の可否を検討すること

の2点です。

プレスノート2010年1号は、2010年3月25日付けで即日発効しているため、同日以降、上記規定が適用されることになります。

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ちなみに、同通達は、2.2、3.2において、追加で外国投資を行う際、一定の場合には、インド外国投資促進委員会(FIPB)の事前承認が不要となることも規定しています。

これは、「従前はFIPBの事前承認が必要とされていた外国投資について、その後の規制緩和等によりFIPBの事前承認が不要となったものにつき、追加的に投資を行う場合には、追加投資の段階であらためてFIPBの事前承認を得ることは不要」であることを定めたものです。

逆に言うと、2010年3月25日までは、「従前はFIPBの事前承認が必要とされていた外国投資について、その後の規制緩和等によりFIPBの事前承認が不要となったものであっても、追加的に投資を行う場合には、追加投資の段階であらためてFIPBの事前承認を得ることが必要」とされていたわけです。

つまり、当初投資の段階でFIPBの事前承認を取得していた場合、その後たとえ規制緩和がなされたとしても、追加投資の段階でFIPBの事前承認を取得しなければならなかった、ということです。

これは、どう考えても不合理なので(規制緩和後は、新規参入者であればFIPBの事前承認なくしてFDIができるのに、規制緩和前からFDIを行っていた者は引き続き追加投資ごとにFIPBの事前承認を取り続けなければならない)、このような規制の変更がなされたのは、ある意味当然といえるでしょう。

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2010年プレスノート1号の解説は以上です。

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Consolidated FDI Policy

以前、こちらの記事で、2010年ドラフトプレスノートについて紹介しましたが、パブコメ期間を経て、本日2010年4月1日付けで、「Consolidated FDI Policy」として、正式な通達として施行されることとなりました。
(通達としての名称は、Press Noteではなく、Circularとなったようです)

http://siadipp.nic.in/policy/searchmain1.htm

http://siadipp.nic.in/policy/fdi_circular/fdi_circular_1_2010.pdf

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内容を見ると、ドラフト段階では66頁だったのが、施行段階では102頁と大幅に増えています。

もっとも、71頁以降は、別紙として書式等が添付されているだけですので(ちなみに、これらはインド準備銀行のMaster Circularに添付されているものと同じものです)、実質的な増量分は5頁程度といったところでしょうか。

ざっと中身を見ると、外国投資の規制業種に関する記載について、大幅に説明が加わっているところもあり、ドラフト段階からは相当程度変わったといえるでしょう。

以前紹介したとおり、「Consolidated FDI Policy」は、現時点でのインドにおける外資規制をまとめた通達であり、今後も年に2回(毎年4月1日と10月1日)にアップデートが予定されていることから、インドにおける外資規制を概観する際には不可欠となる資料です。

そのため、今後、インドの外資規制について何かを調べる場合、必ず目を通さなければならない資料であるといえるでしょう。

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ということで、現在、鋭意和訳作成中です。

これまでの2006年4号や2008年7号といった重要なプレスノートの和訳は、本ブログで無償で配布していたのですが、今回は(頁数の多さもあって)和訳にかかる手間が半端ではなく、私の所属事務所の協力も大幅に仰がなければならないため、ちょっと本ブログでの掲載は難しいかもしれません。
(このレベルになると、もはや一大著作物になってしまい、私の一存でどうこうできる範囲を超えてしまうためです…)

どこかの論文雑誌に発表はすると思いますので、和訳を参照されたい方は、そちらをご覧いただければと思います。
(なお、事務所主催のセミナー等に来ていただければ、その場で配布されるということはあるかもしれません)

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さて、Consolidated FDI Policyとは別個に、2010年3月25日付けで、2010年プレスノート1号が発行されています。

http://siadipp.nic.in/policy/changes/pn1_2010.pdf

この通達は、こちらの記事で紹介した、一定額以上のFDIを行う場合の内閣経済対策委員会(Cabinet Committtee on Economic Affairs)の事前承認が必要となる基準について、これまでは60億ルピー(約120億円)であったのを、倍額の120億ルピー(約240億円)にまで引き上げたものです。

これについては、次の記事で詳細を解説したいと思います。

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