« 2010年プレスノート1号の解説 | トップページ | インド労働法解説その8 -非正規雇用(1)- »

インド労働法解説その7 -工場における労働条件とStanding Orders-

前回は、工場以外の雇用における労働契約について解説しました。
今回は、工場(factory)における労働条件と、就業規則(standing orders)について解説したいと思います。

(工場以外の)オフィス等の施設の労働条件については、その地域の、「店舗および施設法 (Shops and Establishments Act)」が適用されますが(内容は前回、前々回と解説したとおりです)、「工場(factory)」については、1948年工場法(Factories Act, 1948)や1946年産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946が適用されます。

ここで、1948年工場法に基づく保護が適用される「工場」とは、

「機械作業の場合10人以上、手作業の場合20人以上の労働者(workman)が雇用されている、または過去12か月のいずれかの日に雇用されていた工場」

を言い、これらの工場については、1948年工場法に基づいて、労働条件が定められる必要があります。

上記要件をみたさない工場(10人または20人未満の工場)については、そもそも1948年工場法の適用対象とならないため、通常の店舗および施設法に基づいて労働条件が定められるべきことになります。

また、工場で働くworkmanの数が100人を超える場合、1946年産業雇用(就業規則)法が適用され、同法により労働条件が規制されることになります。
いわゆる就業規則としてのStanding Ordersの制定が求められるのは、この場合です。

以下、①workmanが10人以上(あるいは20人以上)100人以下の工場、②workmanが100人超の工場、に分けて解説します。

1 workmanが10人以上(あるいは20人以上)100人以下の工場について

この場合、1948年工場法に従って労働条件が定められ、会社はこれを遵守する必要があるとともに、同条件に従って労働者との間の労働契約が締結される必要があります。

労働条件の詳細については、以下のJETROの「インド労働法に関する調査報告書」の15頁末尾から21頁初めまでを読んでいただくのが早いと思います。
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000147/india091208.pdf

主な規制は、以下のとおりです。

・「工場責任者(occupier)」の任命義務(特定の者を任命しない場合、会社の取締役全員が工場責任者としての責任を負う)

・当局への工場登録義務、検査官による検査に服する義務

・労働者の健康および安全に配慮する義務

・労働者の福利厚生

・労働時間および休暇に関する規制(労働時間は1週48時間、1日9時間を超えてはならなず、最低でも5時間おきに30分以上の休憩が必要。また、1年に240日以上勤務した労働者は、前年の間に勤務した20日につき1日の割合で計算された日数の有給休暇を取得することができる、など)

・若年者雇用に関する規制(14歳未満の児童の雇用の禁止)

2 workmanが100人超の工場について

この場合、1946年産業雇用(就業規則)法が適用され、会社は当該工場について、Standing Ordersと呼ばれる就業規則を定める必要があります。
※ちなみに、1946年産業雇用(就業規則)法の適用対象は、「産業施設(industrial establishment)」であり、これは工場のみならず、鉱山、農場等を含む概念です。したがって、鉱山で100人以上のworkmanを雇用する場合でも、同法は適用されることになります。

「そんなこと言われても、Standing Ordersってどうやって定めればいいんだよ」という声に応えてかどうかはわかりませんが、1946年産業雇用(就業規則)法は、その別表Ⅰとして、モデルStanding Ordersを添付してくれています。

モデルStanding Ordersはこちら↓
「model_standing_orders.doc」をダウンロード

「モデル」といっても、これは単なる見本ではなく、いわば標準約款であり、会社がStanding Ordersの届出を行い、それが認証、施行されるまでは、これがそのまま当該工場に適用されます。
(正確に言えば、「ある産業施設(=工場)について、同工場が1946年産業雇用(就業規則)法の適用対象となった日(=workamが100人を超えた日)から、正式に認証された就業規則が施行される日までの期間、モデル就業規則が当該産業施設で採用されたものとみなされる」ということです)

Standing Ordersの届出、認証手続は、以下のとおりです。

①雇用者(=会社)は、1946年産業雇用(就業規則)法が産業施設に適用されることとなった日から6か月以内に、就業規則(Standing Orders)の案を作成し、その写し5部を関係する「認証官(Certifying Officer)」(=労働コミッショナー(Labour Commissioner)または地域コミッショナー(Regional Commissioner))に提出する

②認証官は、就業規則案を受領した後、雇用者、労働組合(もしあれば)および労働者の代表に事情を聴く適切な機会を与えた後で、必要であれば修正、追加を行った上で認証する。その後、認証された就業規則の写しを7日以内に雇用者に送付する

③認証済就業規則は、認証された写しが雇用者に送付された日から30日が経過した後に施行される

④認証済就業規則は、原則として、策定または最終の修正が施行された日から6か月が経過するまでの間、修正することができない

上記で述べたとおり、1から3までの間は、モデルStanding Ordersがそのまま適用されることになります。

注意すべきは、就業規則(Standing Orders)は、単に届出を行えば良いというものではなく、認証官による認証が必要とされている点です

一般に、モデルStanding Ordersに近ければ近い内容であるほど、認証は下りやすくなり、内容が離れれば離れるほど、(個別的な審査が必要となることから)認証に時間がかかる(場合によってはそのままでは認証が下りない)、と言われています。

そのため、あまりにモデルStanding Ordersからかけ離れた就業規則を制定してしまうと、いつまでも認証がおりず、その間ずっとモデルStanding Ordersが適用され続けるという本末転倒な事態が生じてしまう可能性があります。

よって、雇用者(=会社)が独自のStanding Ordersを制定する場合、必ずしもモデル就業規則と同一である必要はないものの、認証を受けやすくするという観点からは、できるだけモデルに従った内容にすべきと言えるでしょう。

--

労働条件、労働契約等に関する解説は、一応これで終了です。

次回は、インドにおける非正規雇用(試用期間、パート、派遣労働者等)について解説したいと思います。

|

« 2010年プレスノート1号の解説 | トップページ | インド労働法解説その8 -非正規雇用(1)- »

インド労働法解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/448933/34187856

この記事へのトラックバック一覧です: インド労働法解説その7 -工場における労働条件とStanding Orders-:

« 2010年プレスノート1号の解説 | トップページ | インド労働法解説その8 -非正規雇用(1)- »