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2010年7月

インド居住者、非居住者間の株式譲渡価格規制の改正(4)

前回まで解説してきた新価格規制をまとめると、以下のとおりとなります。

1.インド居住者から非居住者への株式譲渡の場合

・インド国内で上場されている株式については、SEBIガイドラインに従って行われる株式の優先割当の割当価格を下回らない価格

・非上場株式については、SEBIの登録を受けているカテゴリー1のマーチャントバンカーまたは勅許会計士が、DCF評価法に基づいて決定する公正価格を下回らない価格

での譲渡の場合、当該株式譲渡につき、 インド準備銀行の事前承認は不要。

2.インド非居住者から居住者への株式譲渡の場合

・インド国内で上場されている株式については、SEBIガイドラインに従って行われる株式の優先割当の割当価格を上回らない価格

・非上場株式については、SEBIの登録を受けているカテゴリー1のマーチャントバンカーまたは勅許会計士が、DCF評価法に基づいて決定する公正価格を上回らない価格

での譲渡の場合、当該株式譲渡につき、 インド準備銀行の事前承認は不要。

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上記を比較して見れば明らかですが、新価格規制では、①インド居住者から非居住者への株式譲渡の場合と、②インド非居住者から居住者への株式譲渡の場合の価格規制とは、表裏一体となっています。

すなわち、同じ価格を基準として、①の場合には下回らない価格、②の場合には上回らない価格との制限がかかっているわけです。

そして、①、②どちらの場合も、インド居住者に有利な価格規制となっています
①の場合、インド非居住者は居住者から株式を安く買うことができず、②の場合、インド非居住者は居住者に株式を高く売ることができないというわけです。

今に始まったことではありませんが、わりと露骨な自国民優遇策ですね。

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なお、以上の規制は、あくまでインド居住者、非居住者間で、外国直接投資(FDI)に関して株式の譲渡が行われる(FDIとして投資する、FDIからイグジットする)場合にのみ適用されます。

したがって、居住者間同士での譲渡や、非居住者間同士での譲渡の場合には、この価格規制は適用されません。
(よって、日本企業同士がインド内国会社の株式を譲渡する場合、自由に価格設定ができます)

また、外国直接投資(FDI)ではなく、外国ポートフォリオ投資による株式取得(インド国内の証券取引所において株式投資目的で株式を取得する場合)についても、この価格規制は適用されません。

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インド居住者、非居住者間の株式譲渡価格規制についての解説は、以上です。

ちなみに、居住者であれ非居住者であれ、インド国内で上場されている株式を取得する場合、公開買付規制が問題となってきますが、現在インドではこの公開買付規制の抜本改正が審議されています。

現在の案のまま改正が行われた場合、公開買付けのトリガーは25%超の取得となり(現在のトリガーは15%)、かつ実際に公開買付けが行われる場合、買付者に常に全部買付義務が課されることになるなど、従前の規制に比べて大幅に規制が変更されることになります。

このあたり、もう少し改正案が煮詰まってきたところで、一度取り上げられればと思っています。

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インド居住者、非居住者間の株式譲渡価格規制の改正(3)

前回の続きです。

2.インド非居住者から居住者への譲渡

日本企業が、インド企業や個人等のインド非居住者に対して、他の既存のインド内国会社の株式を相対取引で譲渡する場合がこれにあたります。
前回解説した1がインド投資への入口の場面であるとすると、こちらは出口の場面といえるでしょう。

(1) 旧価格規制

インド居住者から非居住者に対して譲渡される株式の価格は、以下の価格である必要があり、これ以外の価格で譲渡する場合(高くても低くても不可)、インド準備銀行の事前承認が必要となります。

①上場株式の場合、

(i) インド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカー(merchant banker)または証券取引所に登録されている株式仲買人(stock broker)を通じて譲渡するときは、市場価格

(ii) 譲渡が(i)に掲げる方法以外によるときは、譲渡日から起算して過去1週間の日毎の高値および安値の平均から上下5%の範囲内の価格

②非上場株式または上場株式のうち証券取引所での売買高が低調であるものの場合、

(i) 譲渡価格の合計が200万ルピー以下のときは、当該株式譲渡の対象となっているインド内国会社の監査人(会計監査人)からの株式の評価に関する証明書に基づき、現在有効な評価方法により当事者間で合意した価格

(ii) 譲渡価格の合計が200万ルピーを超えるときは、
(a) 株価収益倍率(price earning multiple)に連動する1株当たり利益に基づく価格もしくは簿価倍率(book value multiple)に連動する純資産価格に基づく価格のうち、いずれか高い方
(b) インド準備銀行が定める小口取引(全ての保有株式がスクリーン取引システム(screen based trading system)を通じて5取引日以内に売却される取引)の市場実勢価格、または
(c) 当該株式譲渡の対象となっているインド内国会社の監査役の評価額と、勅許会計士またはインド証券取引委員会に登録されているカテゴリー1のマーチャント・バンカーの評価額のいずれか低いほうの価格
の中から、譲渡人が任意に選択した価格

(2) 新価格規制

インド非居住者から居住者に対して譲渡される株式の価格が、以下の価格を上回る場合には、当該取引につきインド準備銀行の事前承認が必要となります。

①インド国内で上場されている株式の場合、インド証券取引委員会(SEBI)ガイドラインに従って行われる株式の優先割当の割当価格

②非上場株式の場合、SEBIの登録を受けているカテゴリー1のマーチャントバンカーまたは勅許会計士が、DCF評価法に基づいて決定する株式の公正な評価額

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一見して、ものすごくシンプルになったのがわかるのではないでしょうか。

この新価格規制は、インド居住者→非居住者の株式譲渡の場合の価格規制と裏表になっています。
このあたり、次回にまとめとして解説します。

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インド居住者、非居住者間の株式譲渡価格規制の改正(2)

前回述べたとおり、今年2010年5月4日のインド準備銀行(RBI)による通達により、インド居住者、非居住者間の外国直接投資に関わる株式譲渡価格規制は全面的に改正されています。

上記インド準備銀行の通達は、以下の同銀行のウェブサイトで参照可能です。

http://www.rbi.org.in/scripts/NotificationUser.aspx?Id=5647&Mode=0

(PDF版はこちら)
http://rbidocs.rbi.org.in/rdocs/notification/PDFs/FDIE050410.pdf

ちなみに、正式な通達の名称は、「RBI/2009-10/445 A. P. (DIR Series) Circular No.49」であり、「Foreign Direct Investment (FDI) in India - Transfer of Shares / Preference Shares / Convertible Debentures by way of Sale - Revised pricing guidelines」という長いタイトルがつけられています。

第5項に、「These directions will become operative with immediate effect.」とありますので、本通達は、2010年5月4日時点で効力発生しています。

別紙1(Annex 1)に、新旧の価格規制を比較した表がありますが、原文をざっと見ただけで、ずいぶんシンプルになったとの印象を持つのではないでしょうか(特に非居住者から居住者への譲渡について)。

以下、①インド居住者から非居住者への譲渡、②インド非居住者から居住者への譲渡について、それぞれ旧規制と新規制を比較して解説します。

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1.インド居住者から非居住者への譲渡

日本企業が、インド企業や個人等のインド居住者から、他のインド内国会社の既存株式を相対取引で取得する場合がこれにあたります。

(1) 旧価格規制

インド居住者から非居住者に対して譲渡される株式の価格が以下を下回る場合には、当該取引につきインド準備銀行の事前承認が必要となります。

①インド国内で上場されている株式の場合、譲渡日現在の市場価格

②非上場株式の場合、資本発行監査局(Controller of Capital Issues)が定めるガイドライン(※同ガイドラインは、インドの勅許会計士による価格査定を要求しています)に従って、勅許会計士(Chartered Accountant)が決定する株式の公正な評価額

(2) 新価格規制

インド居住者から非居住者に対して譲渡される株式の価格が以下を下回る場合には、当該取引につきインド準備銀行の事前承認が必要となります。

①インド国内で上場されている株式の場合、インド証券取引委員会(SEBI)ガイドラインに従って行われる株式の優先割当の割当価格

②非上場株式の場合、SEBIの登録を受けているカテゴリー1のマーチャントバンカーまたは勅許会計士が、DCF評価法に基づいて決定する株式の公正な評価額


ここで、①にいう「インド証券取引委員会(SEBI)ガイドラインに従って行われる株式の優先割当の割当価格」とは、以下のいずれかの価格のうち高い方を下回らない価格をいいます。

(i) 割当日から起算して過去6ヶ月の株価の終値の週毎の最高値および最安値の平均
(ii) 割当日から起算して過去2週間の株価の終値の週毎の最高値および最安値の平均

このSEBIガイドラインの原文は、以下のSEBIのウェブサイトにて参照できます(13.1.1項参照)
http://www.sebi.gov.in/commreport/rep245a1.html

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次回に続く。

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インド居住者、非居住者間の株式譲渡価格規制の改正(1)

ここ3週間ほど、怒涛のように仕事が忙しく、全く更新できていませんでしたが、ようやく少し落ち着いたので、更新を再開します。

さて、今回取り上げるテーマは、インド居住者、非居住者間の株式譲渡価格規制の改正です。

インドでは、インドの外為法である1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)上、インド居住者と非居住者の間の外国直接投資に関わる株式譲渡について、価格規制が課せられています。

すなわち、インド居住者と非居住者の間で、外国直接投資の出資またはイグジットとして株式の譲渡が行われる場合、当事者が合意に基づいて自由に価格を決定できるわけではなく、一定の規制に従って価格を決定する必要があるということです。

たとえば、日本企業がインド企業を買収して子会社にする場合、あるいは取引先のインド企業に出資する場合(出資の場面)、創業者等のインド居住者から、日本企業(=インド非居住者)に対して、株式の譲渡が行われることになりますが、このときの価格は、上記価格規制に従って定められる必要があります。

一方、日本企業がインド子会社をインド居住者に売却する場合(イグジットの場面)など、インド非居住者から居住者に対して株式譲渡が行われる場合についても、同様に上記価格規制に従う必要があります。

このように、インド居住者と非居住者の間の株式譲渡については、いわゆる相対取引であっても当事者が自由に価格を決められるわけではありませんので、十分に注意が必要です。

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さて、今年2010年5月4日のインド準備銀行(RBI)による通達により、この価格規制が全面的に改正されています。

そこで、次回以降、改正前の価格規制と改正後の価格規制を比較して、何がどう変わったかを解説したいと思います。

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あああ

今週も更新できなかった…

来週からは心を入れ替えて頑張ります。

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インドにおける基本税務番号(PAN)取得について(その2)

前回、インドの合弁会社や現地法人等から源泉徴収税の対象となる支払い(ロイヤリティやサービス料等)を受ける外国企業については、事実上PANの取得が義務付けられることを解説しました。

今回は、具体的なPANの取得手続についての解説です。

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PANの取得申請は、Form49Aと呼ばれるフォームを、インド所得税局(Income Tax Department)が指定する登録代行業者に、添付書類とともに提出することにより行います。
登録代行業者は、National Securities Depositary Limited (NSDL)、およびUTI Technology Services Limited (UTITSL)の2社となり、いずれかの登録代行業者を選択することになります(やってくれることは、どちらの代行業者も同じです)。

Form49は、以下のインド所得税局のウェブサイトでダウンロード可能です。
http://www.incometaxindia.gov.in/pan/overview.asp
(直接リンクはこちら)
http://law.incometaxindia.gov.in/DITTaxmann/IncomeTaxRules/pdf/Form49aE.PDF

また、Form49Aは、インターネットを通じてオンラインで提出することもできます。

(ガイドラインはこちら)
http://www.incometaxindia.gov.in/archive/PAN%20-%20Online%20Application_06302010.pdf

オンラインでForm49Aを提出する場合、NSDL、またはUTITSLのいずれかの登録代行業者のサイトを通じて行います。

NSDLのオンライン提出のページはこちら↓
https://tin.tin.nsdl.com/pan/index.html

UTITSLのオンライン提出のページはこちら(こちらのサイトは、なぜかここ数日繋がりにくくなっているようです)↓
http://www.utitsl.co.in/utitsl/uti/newapp/newpanapplication.jsp

ただし、オンラインで提出できるのは、あくまでForm49A本体だけであり、添付書類については、Form49Aをオンラインで提出した後、すみやかにNSDLまたはUTITSLに郵送する必要があります。

Form49Aの記入方法については、下記のNSDLのサイトに、詳しく記載されています。
http://www.tin-nsdl.com/downloads/Form-49A_110708.pdf

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続いて添付書類です。

外国人または外国企業がPAN取得申請を行う場合に、Form49Aとともに提出すべき添付書類については、↓のNDSLの説明書の10頁目以降に詳細が記載されています。
http://www.taxguru.in/wp-content/uploads/2010/05/2010-339-Annexure-I.pdf

これによると、外国企業がPANを取得する場合、まず、ID証明として、以下のいずれかが必要となります。
(1) インド国内で外国会社としての登記を行っている場合(具体的には、インド国内に支店や駐在員事務所を持っている場合)には、その登記簿謄本の写し
(2) インド国内で外国会社としての登記を行っていない場合、本国における登記簿謄本であって、公証およびインド大使館による認証(日本企業の場合、外務省によるアポスティーユで代用可)を受けたもの

また、会計事務所や法律事務所を代理人として代理申請を行う場合、当該代理人に対する委任状(公証、認証が必要)の原本も、提出する必要があります。

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Form49Aの記載に不備が無く、また添付書類がそろっていれば、概ね申請から2週間前後でPANが交付されます。

PANは、インドにおける税務手続上のID番号ともいうべきものであり、今後インド国内で税務申告その他税務に関する手続を行う場合には、必ずPANを記載する必要があります(ちなみに、PANは10桁の番号です)。

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PAN取得に関する解説は以上です。

インド企業または自社の合弁会社、現地法人から、源泉徴収税の対象となる支払い(ロイヤリティやサービス料等)を受けている日本企業の方は、本解説その他の文献等を参考に、すみやかにPAN申請を進められた方が良いでしょう。

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更新再開

すっかり放置プレイが板についてきました
ちょっと忙しくなると、更新する暇も意欲もなくなってしまうこの頃です。

2週間ほど続いた怒涛の日々が、ようやく一段落したので、更新を再開します。

ええと、何を書いてたんだっけ…

と、自分で書いたものを読み返すことしばし

そうそう、PANの取得手続ですね。

今日中には書いてアップしたいと思います。

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